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■夏の日の想い出・愛と別れの日々(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-02-10  
「私が運転して行くから寝てるといいよ」
と言われて、亮平は
「そうかい?じゃ頼もうかな」
と言って、自分の愛車マツダRX-9の助手席で目をつぶった。
 
「着いたよ」
という声で目を覚ますと、放送局の駐車場である。
「ありがとう」
 
亮平は政子にキスをして一緒に降りる。ただ一緒にいるところをあまり人には見られたくないので、先に政子が手を振って帰っていき、その後、放送局の通用門から中に入った。
 
入館証を見た守衛さんが一瞬変な顔をしたが、何だろう?と思いながら中に入る。
 
売店でコーヒーを買っていたら、ちょうど近くに居た俳優・高橋和繁が
「わっ、もしかして大林さんですか?」
などと言うので
「え?そうだけど、俺どうかした?」
と答える。
 
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「いや、その何というか、路線変更なさったんですか?」
「別に変わってないと思うけど、なんで?」
 
そんなことを言いながらレジを済ませ、一緒に売店の外に出る。
 
「鏡、見られました?」
と高橋が訊く。
「へ?」
と言って亮平はバッグから手鏡を取り出して顔を見た瞬間
 
「ぎゃっ!」
と声を挙げた。
 
その時、大林を見たカメラを持った芸能記者が飛んでくると、いきなりフラッシュを焚いて大林を撮影した。ついでに高橋も並んでいる所を撮られたので、その日の芸能ニュースには、写真入りでこんな記事が載った。
 
《大林亮平が性転換!?高橋和繁と熱愛中?》
 

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2019年2月3日、政子は女の子を出産した。
 
政子は前年6月3日に体外受精によりこの子を受精させて妊娠したので、予定日は2月24日だったのだが、少し早く出てきた。政子は妊娠が成功してすぐの頃から、この子が女の子であることを確信し《あやめ》という名前を付けていた。
 
父親が誰かというのは公表しなかったので、世間では随分あれこれ憶測をしていたようだが、それを知っていたのは、体外受精をしてくれたお医者さん以外では、私と青葉くらいであったろう。
 
(千里が巫女の力を取り戻したのは2019年3月)
 
世間で噂されていた《父親候補》の中で、昨年春に交際していた俳優のNさんは『僕は関係無いと思うんだけど、念のため』などと言って、出産祝いを持ってきてくれた。実際政子はNさんと1度だけホテルに行ったものの、裸で抱き合って、まだ入れる前に唐突に政子が詩を書き始めてしまったので、結局1度も実際のセックスはしないままで終わったらしい。
 
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もうひとり父親候補と噂された上島先生は『身に覚えは無いけど、愛弟子の出産のお祝いに』と言って、奥さんの春風アルトさんと連名で出産祝いに加えてベビー服やベビーシートなどをプレゼントしてくれた。アルトさん自身もこの時期妊娠中で、3月に生まれたのでこちらも私と政子の連名で出産祝いを贈った。(これは上島先生とアルトさんの間に結婚11年目にして初めて産まれた子供である)
 
政子の妊娠出産に伴う休業期間は2018年10月から2019年7月と設定されていたので、2019年8月にはローズ+リリーの全国アリーナツアーを行った。ちなみに私はこの月、KARIONの1年半ぶりの全国ツアーも同時にやっており、いくつかの地区では、同じ会場でお昼すぎからKARIONのライブ、夕方からローズ+リリーのライブなどとやったケースもあった。(2時間ほどでKARIONのセットを片付けてローズ+リリーのセットを組み立てないといけないので、大変だったようである)
 
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私が春以来の絶不調から抜けて、やっと作曲活動も再開したというのを聞き、◇◇テレビの響原部長が同局で秋から始まるドラマ『立つ!』の主題歌の作成を依頼してきた。私たちは著作権をこちらに留保できるという条件なら書くと返事し、部長も局の会議に諮ってそれを了承したので、著作権の1%だけを◇◇テレビ系列の音楽出版社が持つ条件で『朝焼け』という曲を書いた。
 
歌も歌ってくれということだったので、8月中旬にツアーの合間を縫って録音が行われた。この録音をした時に演出家さんが政子を見て、
 
「君、千代姫のイメージにぴったり。千代姫役でドラマにも出ない?」
と熱心に口説いた。
 
政子はこういうのはあまり好きではなかったものの、演出家さんが本当に乗せ上手だったので、
「やってもいいかなあ」
と言い、ドラマにも半年間出演することになった。
 
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ドラマは徳川三代将軍家光が亡くなり、若き家綱が後継将軍になり、それまでの幕府の方針を転換していわゆる《文治政治》を始める時期を描いたもので、由井正雪の変がそのクライマックスとなっている。
 
4月20日 家光死去 
7月23日 丸橋忠弥捕縛。26日由井正雪自刃 30日金井半兵衛自害 
8月10日 丸橋忠弥磔刑。 
8月18日 将軍宣下 
 
当時家綱は11歳(今の年齢の言い方で言うと9歳)だったのだが、このドラマでは17歳であったことにして、アイドルの前田智士が演じている。千代姫は家綱の姉で本当は当時15歳であったがドラマでは25歳ということにして政子が演じる。大林亮平が千代姫の夫で尾張徳川家の徳川光義(史実通り27歳)を演じており、政子が演じる千代姫と大林が演じる光義が協力して、まだ若い家綱をサポートし、高橋和繁が演じる光義のライバル・紀州徳川家の徳川光貞(25歳)や頭の硬い幕閣たちに対抗していくというのが、物語のプロットであった。
 
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私はサービス精神皆無の政子にそんな大役が務まるのか不安だったのだが、政子は本を読むとき、その中の登場人物になりきって没入するタイプである。それでこのドラマでも、完璧に役にはまりこみ、結構な熱演をしたようだ。家に帰ってきても千代姫調に
 
「わらわはお腹が空いた」
「おやつを持て」
「寝るぞよ」
 
などとやっていた。
 
そしてこのドラマでの共演をきっかけに、政子と大林亮平は現実にも恋人として交際するようになったのである。
 
政子はドラマの中でキスした時に
「この人は私の運命の人かも」
と思ったなどと、私の前でおのろけを言っていた。私は少し嫉妬しながらも、政子の言葉を微笑ましく聞いていた。
 

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ドラマは比較的好調であった。
 
丸橋忠弥役に、性別非公開の俳優・丸山アイを起用したのがドラマに妖しげな雰囲気を添えており、アイの忠弥は老若男女様々な姿に変装して、あちこちの大名屋敷や豪商の館に入って行っては密談をする。
 
「アイちゃん、本当は男なの?女なの?」
と政子は本人に直接訊いたらしいが
「秘密」
としか言われなかったらしい。アイは男声では男にしか聞こえない話し方をするし女声ではやはり女にしか聞こえない話し方をする。雰囲気もガラリと変わる。アイって男女ふたり居るのではと思いたくなるほどである。
 
この番組は、夏の間野球中継が行われる時間帯のドラマなので3月で終了というのは決まっているのだが、来期もまた大林・高橋の徳川光義・光貞をメインにしてドラマを制作するかもなどという話もあったようである。ただ政子がドラマをやっていると、音楽活動の方に影響が出ることもあり、響原さんと町添さんの話し合いにより、来期は政子は出演しない方針であった。
 
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1月。政子は妊娠した。
 
「亮平さんの子供?」
と私が訊くと
「もちろん」
と言って、何だか嬉しそうにしていた。既に番組の収録はほぼ完了しており、撮影には影響ないと本人は言っていた。
 
2月、政子は自宅の敷地内に小さな離れを建て始めた。
「そこで亮平さんと暮らすの?」
「オフの時はね」
 
「マーサの自宅に置いてる私の荷物は引き上げようか?」
「冬とは母屋の方でHして、リョーちゃんとは離れでHする。妻妾同居かな」
「なんかそれ言葉の使い方が違う気がするけど」
 
以前ならボーイフレンドを作りながらも私とのセックスも続けていた政子が、大林さんとの交際開始以来、私をセックスに誘わなくなったので、かなり本気なんだろうなと私は思っていた。
 
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「結婚するの?」
「式には何人くらい呼ぼうかなあ。私が考えても漏れそうだから、冬、悪いけど招待する人のリスト作ってくれない?」
「いいよ」
 

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このドラマの最終話は2月下旬に撮影が終了した。
 
3月3日、政子の実家で、豪華なひな人形の段飾りを前に、あやめにお乳をあげながら(この時期、政子は新たな妊娠によってお乳は停まっているので、あやめにおっぱいをあげていたのは私だけである)楽曲のアレンジ作業をしながら、晩御飯を作っている政子のお母さんと話していた私は、玄関のドアが開く音を聞いた。
 
「お帰り」
と声を掛けたのだが、政子は疲れたような顔をして入って来て、居間のソファに座った。
 
「亮平さんとデートしてたんでしょ? 遅くなるかと思ったのに」
「別れちゃった」
 
「なんで?」
「うーん。ドラマが終わったら、私の気持ちも冷めちゃったというか」
「そんな。亮平さんすごくいい人なのに」
「冬が付き合ってもいいよ」
「私は既に彼氏がいるから充分」
 
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「あんた妊娠してんじゃないの?」
とお母さんが言うが
「赤ちゃんは産むよ。それは産んでいいと言ってくれた。養育費も払うと言われたけどそれは断った」
「なんで?くれるというのはもらっておけばいいじゃん」
とお母さん。
「いつまでも関わりを続けたくないもん。別れたらそれで終わり」
「あんたドライだもんねー」
とお母さんは半ば呆れている感じだった。
 

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政子はこの大林亮平の子供を2020年10月18日に出産した。男の子で大輝と名付ける。
 
「私、女の子2人育てたかったんだけどなあ。この子、性転換しちゃったらダメかなあ」
と政子が言う。
「親が勝手に性転換しちゃいけないよ。本人が成長してからそれを望むなら応援してあげるけどさ」
と私は答える。
 
「じゃ、本人が望むようになるように、女の子の服を着せて育てようかな」
「やめときなよー」
 
「じゃこの輝子と命名した出生届は没にして、大輝の方で出生届け出すか」
「男の子で女名前にしちゃ可哀想だよ」
 
大林さんは政子と大輝を病院まで見舞いに来てくれて。1歳半になるあやめとも何だか仲良くしていた。政子は要らないと言ったのだが、実際この出産に伴う病院の費用は、政子のお母さんと大林さんとの話し合いで、大林さんが全部支払ってくれた。
 
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「認知は拒否されてるからしないけど、僕の遺伝子を受け継ぐ子供だもん。もし良かったら時々でも会わせてくれないかな」
「うーん。まあ会うくらいはいいよ」
と政子もそれは受け入れた。
 
大林さんはそれから毎月政子に養育費を送ってくるようになる。政子は要らないと言ったのだが
「これは僕が自分の息子である大輝に送るもの」
と大林さんが言ったので、政子は私に頼んで「唐本大輝」名義の銀行口座を作り、大林さんはそこに毎月けっこうな金額を振り込んできた。むろん政子はこの中身に一切手を付けなかったので、この子が高校大学に進学する頃にはかなりの金額になっているだろう。
 
(あやめ・大輝は昔の約束に基づき、出生して間もなく私が養子にしているので、ふたりとも唐本の苗字である。政子は中田のままなので苗字の違う母子であり、そのため不都合が起きる場合もあるので、母子対象の集まりに、私は随分母親としてふたりを連れて出席している)
 
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大輝の父親についても、それが誰かは公開していないし、知っている人は少数である。政子と亮平の交際も、○○プロが睨みを利かせていたので一切報道されていない。
 
なお、この妊娠出産の影響で政子は再び2020年5月から2021年2月までライブ活動を休んだ。そして休業明けの3月、政子はまた新しいボーイフレンドを作った。
 
ロック歌手の百道大輔であった。
 
ロックファンの間ではむしろ彼の兄の百道良輔の方が評価は高い。ただ良輔は音楽もぶっとんでいるが生活もぶっ飛んでいて、若い頃は随分週刊誌を騒がすスキャンダルを連発していた。それも数年前に覚醒剤で捕まって以来、なりを潜めているし、レコード会社からも契約を切られてしまったので自主制作で音源を発表しているが、gSongsなどでのダウンロード数は結構あり、おかげで彼も何とか音楽で食べていけているようだ。
 
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しかし黒い噂は常にあるので放送局などは彼を絶対番組には出演させないし、音楽のランキングを集計している会社も彼の作品は集計対象から外している。
 
これに対して弟の百道大輔は品行方正で、高校時代には生徒会長を務め、大学でも卒業式の総代になるなど、いつも《良い子》であった。音楽も耳なじみの良い、ポップスに近い曲を発表している。テレビの画面に登場する時もライブでもだいたいスーツを着てネクタイをしていいるし、髪も七三に分けていていて、ちょっと見にはふつうのサラリーマンである。
 
私は政子のこの交際に反対した。
 
「冬、嫉妬してるの?」
「嫉妬はマーサがボーイフレンド作る度にしてるけど、今まで私がマーサの交際に反対したりしたことなかったでしょ?」
「うん」
 
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「彼はちょっとやばいと思う。深みにはまらない内にやめなよ」
「私は大輔のこと好きだから付き合う」
 
そう言って政子は私の反対を押し切って大輔との交際を継続した。
 

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