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■夏の日の想い出・雪月花(8)

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「結局、AYAはどうするつもりなんですかね?」
 
私は11月下旬にAYAの元マネージャー高崎充子と偶然会ったので尋ねた。彼女は現在同じ事務所のLLLという女子中生3人のユニットを担当している。
 
「歌手を辞めるつもりはないと思うよ。少し休みたくなったんじゃないかなあと私は思っているんだけどね」
と彼女は言う。
 
「今年は休養期間ですか」
「充電期間というか」
「8月にmaze city(迷路の町)を歌って今回はstep by stepで少し立ち直ってきてるんじゃないか、とファンは言ってますね」
 
「まあローズ+リリーみたいに2年も3年も休むってことはないだろうけどね」
 
「でもこの業界は1年も休めば事実上引退したとみなされるから」
「あんたたちは逆に自分たちは引退しました、なんて公言してたね」
「というか、そもそも私たちはデビューしてなかったとみなされたし」
「結局、ケイもマリもどこの事務所とも契約したことはなかったし、蘭子も∴∴ミュージックと契約してないし」
 
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「ローズ+リリーって、だから契約形態を見たら最初からずっとアマチュアなんですよ、実は。ローズクォーツとかKARIONはプロですけどね」
 
「年100億を稼いでいてもアマか。とんでもないアマだな」
 
「この業界の契約形態も変わりました。チェリーツインみたいに最初からずっとインディーズなんてユニットもあるし」
と私は言う。
「あの子たちはメジャーに行く必要がないし、行く意味も無い。テレビやラジオの番組とかに出るのも困難でふつうの形での広報活動も難しい」
「しゃべられないのではラジオ番組は不可能ですよね」
「少女Xと少女Yは絶対にメディアには露出しない方針みたいだからね」
 
チェリーツインはボーカルの星子・虹子は言語障碍のため歌えないので、ライブではセットに擬態したり、文楽の黒子のような衣装で顔まで隠している2人の女性が代理歌唱する。この2人がデビュー当時からずっと変わっていないのは確認されているが、彼女たちは名前も顔も出さない。ファンの間で「少女X」「少女Y」と呼ばれている。美空は彼女たちと知り合いのようだが!?
 
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なお、星子・虹子はツイッターには結構書き込みをするのでフォロワーの数が凄い。お花と動物と童話が好きな、心優しき女性たちである。彼女たちは運転免許も持っているし、放送大学を卒業間近らしいし、外国童話の翻訳とかもしているし、しゃべることができないことを除けばふつうに日常生活ができる。器質的には問題無いらしく、あくまで知的なもので、療育手帳のBを持っている。Bは軽い障碍の人向けのものである。ふだんは親戚が経営している北海道の牧場で牛の世話をしたり、牛乳の配達をしたりしている。
 
「そういえば少女Yには男の娘疑惑がありますよね」
と私は言う。
「それ関係者に訊いても笑っているか誤魔化されるかで、よく分からん」
と充子。
 
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チェリーツインは、しまうららさんや松原珠妃の事務所・ζζプロなのだが、ボーカル2人がデリケートな精神を持っているので、取材は拒否だし、情報も一切出ないようにコントロールしているようだ。珠妃に尋ねてみたものの社内でも実際問題として詳しいことを知っているのは、しまうららさんのみらしい。
 
「あの子たちとの古い知り合いらしい友人(美空)に訊いても『秘密』と言われたんです」
「XとYに関してはほんとに一切情報を出さない方針みたいね。ただね」
「はい?」
 
「XとYはもらった報酬の7割をある所に寄付しているらしい」
「福祉施設か何かですか?」
「そういうものではないみたい。宗教とかでもない。私に教えてくれた人もよくは知らないみたいだったけど」
 
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「ゆみちゃん、メール送っても返事が無いんですけど、もし会ったら、私たちが一度食事でもしようと言ってたと伝えてください」
「OKOK」
 

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「でもトナカイさんって誰なんですか?」
「今言ってたチェリーツインを一時期実質プロデュースしてた人なんだけどね」
「へー!」
 
「北原春鹿っていうんだよ。本名は。北の鹿だからトナカイ」
「そういうことですか!」
 
「アキ北原のお姉さんだよ」
「へー! それでAYAに関わってきたんですか。アキさんの方は今どうなさっているんですか?」
 
充子はテーブルを立つと窓の外を見ながら言った。
 
「亡くなったんだよ。AYAがデビューする直前に」
「そうだったんですか」
「あんた、醍醐春海さんとお友達なんだって?」
「あ、はい」
「彼女の方がアキさんのことはよく知っていると思うよ」
「え〜〜!?」
 
「アキさんが亡くなって、間もなくロイヤル高島さんも亡くなって。誰も引き受け手がいなくなって上島さんがプロデュースを引き受けてくれた」
「そんな中で2人辞めちゃうし」
「そうそう。あの時、自分はどうなるんだろうって不安でしょうがなかったと、ゆみちゃん言ってたよ」
「でしょうね」
「だから上島さんや雨宮さんには物凄く恩義を感じているみたい」
「雨宮先生も関わっているんですか?」
 
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「上島さんって、実際問題として楽曲は書くけど、制作にはほとんど関わらないでしょ?」
「確かに!」
 
「AYAの実際の制作は毎回いろんな人が指揮してるよ。雨宮先生のお弟子さんもしばしば担ぎ出されている」
 
「あれ?トナカイさんも雨宮先生のお弟子さんですか?」
「妹のアキさんが雨宮先生の1番弟子だったんだよ」
「全然知らなかった!」
「お姉さんは別に雨宮さんとは関係無いんだけど、何かと引っ張り出される」
 
「雨宮先生って強引ですからね!」
「そうそう」
 

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11月23日。
 
小学校の時からの友人である若葉がシングルマザーになった。彼女は極度の男性恐怖症で、男性の恋人を作ることはできない。しかし子供は欲しいと言って男性の友人から精子を提供してもらい、人工授精で子供を作ったのである。純粋にタネをもらうだけということで、認知も求めないことにしている。
 
「女の子だったのね」
「うん。なんか可愛い」
 
お見舞いに行った私たちにベッドに寝ている若葉は本当に嬉しそうな顔で言った。
 
「遺伝子上の父親さんには見せた?」
「見せてあげたよ。認知しようか?と言われたけど、私は最初からタネをもらっただけだからと言って断った」
 
「いや、父親さんとしても自分の遺伝子を引き継ぐこどもは可愛いと思う」
「何か関わりたがりそうにしてたから、誕生日のプレゼントくらいは受けてもいいと言った。匿名でね」
「ほほお」
「あと、私とセックスしたかったら、あと3回まではしてもいいと言ってチケット渡した」
「チケット制なのか!?」
 
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「この子は予定通り冬葉(かずは)という名前でもう出生届出してもらったよ」
と若葉。
 
「何かその名前すごく気になるんですけどー」
と私は言う。
 
「男の子だったら女装させて育てようかと思ったのに残念」
「女の子なら男装させて育てるとかは?」
「私、男嫌いだもん」
「あ、そうか」
 
「でもこの子の遺伝子上の父親はスポーツマンだから、この子スポーツしたがるかもね」
「若葉もスポーツウーマンだもんね。陸上とかテニスとか水泳とかバスケとか色々してたよね」
 
「うん。何をするといっても応援してあげるよ」
 
「お相撲さんになりたいと言ったら?」
などと政子が訊くと
 
「うーん。本人がどうしてもなりたいのならいいんじゃない」
と若葉。
 
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「いいの〜!?」
 
「女の子は入門させてくれないのでは?」
「その時はおちんちんでもくっつけて。おっぱいは元々お相撲さんはある人多いから構わないかな」
「そのおちんちんはどこから調達するの?」
「おちんちん要らない人はたくさんいるから、誰かから1本もらえば」
「ふむふむ」
 

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「若葉ちゃん、お母さんになったのか。今度お見舞いに行ってこよう」
と私のマンションを訪問した千里は言った。
 
若葉は何度か私あるいは和実にくっついてくる形でクロスロードの集まりに出ているので、千里とも顔見知りである。
 
「若葉は男性恐怖症で男の子とつきあえないから、一時は本人も自分は子供を産めないだろうなと思ってたらしい。でも男性の友人に精子を提供してもらって妊娠できたんだよ。認知無し・恋愛無しの条件で」
と私は経過を説明する。
 
「子供作れないというと、雨宮先生は男の娘を妊娠させて出産させたことあるなんて言ってたね」
と政子が言うと
 
「私も子供作っちゃった」
と千里が言う。
 
「千里、まさか妊娠したの?」
と政子が訊く。
 
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「もうすぐ4ヶ月目に入る。私が産む訳じゃないけどね。でもこれ桃香には内緒にしといて」
と千里は言った。
 
「千里は父親になるの?」
という政子の質問に対して、千里は微笑んで言う。
 
「私、その子とお母さんになってあげる約束したんだよ。もう7年も前だけど。やっと、あの子と会えるかと思うと、ちょっと嬉しい」
 
「千里、もしかして未来の自分の子供に出会った?」
「親子3人で何度か遊んだよ」
 
私は前々から思っていた疑問を出す。
「千里ってさ、時間通りに生きてないよね?」
 

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千里はその質問には答えず唐突に別の話題を出す。
 
「アキ北原さんのことだけどね」
「うん」
「凄く優秀な人だったよ。音楽系の高校でしっかり鍛えられている。ピアノもヴァイオリンもうまかったし、歌が凄くうまかった」
 
「へー」
「でも大学はなぜか法学部に入った」
「ほうがくって、民謡とか雅楽とか?」
「そっちの邦楽じゃなくて、法律の法学」
「なぜ?」
「司法試験の短答式までは合格してる」
「随分方向転換したね」
「でも大学卒業した後は司法試験の勉強はせずにバンド活動始めた」
「分からん!」
 
「雨宮先生があいつは迷走人生だと言ってた。でも自分のこと言われてるみたいな気がするよ。迷走人生って」
 
と千里が言うと、私も少し心が痛む面がある。
 
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「だけど雨宮先生って男の娘が好きだよね〜」
と千里は言った。
 
私は目をぱちくりさせた。
 
「まさかアキ北原さんって男の娘?」
 
「アキ北原さんの場合は女の息子さんに近いかな」
「FTMなの?」
「仮面男子だよ」
「ああ、そういうことか」
 
「プライベートでは女の格好していても、それを知り合いには一切見せない。男を装って社会生活を送っていたんだ」
 
「そういう人って多いみたいだよね」
と政子は千里が持って来てくれたお菓子を摘まみながら言う。
 
「たぶん人生迷走してたのも、性別問題のせいだと思う。でも亡くなるまで全然私はそのこと知らなくて、てっきり普通の男性かと思ってた。でも実は性転換手術までしてたんだよ」
と千里。
 
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「そこまでしててもカムアウトしないんだ?」
と政子は言うが
「カムアウトすることで全てを失うから」
と私は言う。
 
「男として築いてきたものは全て失うだろうね」
と千里。
「女として築いていけばいいのに」
と政子。
「女とみなしてくれないんだよ。性転換して戸籍まで女に直しても、それでも強引に男とみなそうとする人は多いから」
と私。
「犯罪者か何かみたいな扱いする人もあるよね」
と千里。
 
「就職の面接でかなりきついこと言われたでしょ、千里」
と私は彼女を気遣って言った。
「気にしてたら生きていけないけど、さすがの私も怒りで眠れなかった日もある」
と千里は言う。相当ひどい侮辱を受けたのだろう。
 
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「就活とかしないで、音楽家の専業になりなよ」
「1月くらいまで頑張ってダメだったらそうするかも」
 
「そうしなよ。もし収入が不安定なのなら、こちらから少し仕事回してもいいよ」
「ありがとう。私、友達に恵まれているなとよく思う」
 
「冬もお友達に恵まれているよね」
と政子が訊く。
 
「うん。そういう方面では私も冬も凄く恵まれていると思う。第1に理解してくれる友人が小さい頃から居た。私にしても冬にしても早い時期から女物の服を調達できた。そして早い時期から女性ホルモンを入手できた。そして16-17歳で性転換することができた」
と千里は言う。
 
「えーっと、私、女物の服とか調達できなかったし、女性ホルモンは高校卒業してから始めたし、性転換したのは19歳の時だけど」
と私は言ってみたが
 
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「またそういう嘘をつくし」
と政子が言う。
 
「冬はお姉さんがいたからね。姉がいると女物の服は容易に入手できる。私の場合は叔母ちゃんがくれてたんだよ」
と千里。
 
「ほほぉ」
 
「冬は幼稚園の頃から女性ホルモン取ってたみたいだからパーフェクトだよね。私は女性ホルモンは中1の時からなんだよね。小学生の頃はエステミックスを飲んでたんだよ」
と千里。
「ああ、エステミックスは私も飲んでたけど、私は女性ホルモンは高校時代までは控えてたんだよね」
と私は言ったが
「それが嘘だということは、若葉ちゃんの証言で明らか」
と政子に言われる。
「う・・・・」
 
「私も冬も高校1年で性転換してるしね」
と千里は言ったが
 
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「いや、蓮菜さんの話を聞くと、千里は小学4年生頃に性転換しているし、麻央ちゃんとかの話を聞くと、冬も小学2年生頃には性転換している」
と政子は言う。
 
千里はそれを明確には否定しないまま言った。
 
「要するに、私も冬も、実は男なのに女の身体を偽装していた時期と、実はもう女になっているのに、まだ男の身体であるかのように装っていた時期があるからね。それで友人の証言も曖昧になるんだよね」
 
「それ前半は同意だけど後半は違う」
と私は言ったのだが
 
「いや、千里の意見に賛成。結局、冬って生まれてすぐ性転換したんでしょ?」
と政子が言う。
 
「なんでそうなるの!?」
 
 
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■夏の日の想い出・雪月花(8)

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