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■寒里(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2013-02-17
 
それは青葉が小学1年生の夏休み。例によって一家は食べるものが無く、学校は夏休みなので給食も無いため、未雨・青葉の姉妹は連日お腹を空かせていた。
 
発端は曾祖母・賀壽子の古い友人で北海道に住む霊能者の北畠が、賀壽子を集会に誘ったことであった。
 
千壽子は大船渡の出身で、賀壽子とは隣の尋常小学校に通っていた。しかし当時からふたりとも「ライバル」意識を持っていたらしい。ふたりとも霊感が強かったが、見えるものの傾向が少し違い、賀壽子は「この世のものではないもの」が見える人で、親戚の人が宮司をしていた神社で巫女としてスカウトされて活動していたが、千壽子は「この世のものが見える人」いわゆる透視が得意で、親戚の人が住職を務めるお寺で失せ物探しや病気の診断などに借り出されていた。
 
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名前の「壽子」の所が同じなので、ふたりをしばしば混同する人もあり、それでよけいライバル心があったという。戦時中に結婚した夫が、戦後好況であった北海道の炭鉱で働くため北海道に渡ったが、その後もずっと賀壽子とは手紙のやりとりをしていた。
 
賀壽子は最初弟子の佐竹を連れていくつもりだったのが、佐竹が、また山形に住む父の調子が悪いようなので様子を見に行くといい、代わりに孫の真穂が夏休みだしということで付き添いで行くことになった。真穂は小学6年生である。
 
そして、曾祖母は当然の如く、青葉も連れていくことにした。当時賀壽子のパワーはかなり衰えていて、「動力供給源」になってくれる青葉が一緒でないと霊的な仕事ができない状態であった。
 
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賀壽子が青葉の家に来て、母の礼子に「青葉を借りていっていい?」と言うと礼子は「うん。連れてって、御飯食べさせてあげて」と言い「ついでに未雨も連れて行かない?」と言った。未雨も「わあ!北海道?行きたい、行きたい」
というので、ついでに連れていくことにした。母はたぶん娘2人がいない間はボーイフレンドの所に行っておくつもりなのだろう。母は父が不在がちでお金も家に入れないため、2年くらい前から彼氏を作っており、経済的にも依存していたが、子供とはあまり会わせないようにしていた。
 
そういう訳で、賀壽子は小学生3人(小1の青葉・小5の未雨・小6の真穂)を連れ、北海道に渡ったのである。
 
集会は元々、千壽子の友人で道内に住む「教組様」の神殿落成20周年で内輪の知り合いを招待して、ささやかな記念行事をしたのに伴うもので、折角遠くから来た人も多いからということで、その記念行事の翌日、札幌で改めて友人同士で食事会でもということになったのである。賀壽子はその教祖様とは面識が無かったのだが、「これだけメンツが集まるなら、あの人も呼びたいね」
といったリストに入れられて、招待が掛かった。交通費と宿泊費は教祖様が、付き添いの3人の分まで含めて出してくれた。
 
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記念行事は、信者さんたちが100人くらい集まっていた他、千壽子たち霊能者関係が10人ほど来ていた。未雨は霊感ゼロなので「わあ、龍の像が格好良い」
などといってはしゃいでいたが、多少の霊感を持っている真穂は少し緊張した顔をしていた。
 
「ねえ、青葉ちゃん、私あまりよく分からないけど、色々いるよね?」
と真穂は尋ねる。
「うん。怖いなら閉じておくといいよ、真穂お姉ちゃん」
と青葉は笑顔で答えた。
「閉じるって?」
「あ。じゃ閉じてあげるよ」
と言って青葉は、真穂の「開いたまま」になっている心の目をそっと閉じさせてあげた。
 
ふだんは普通に「女の子」している青葉であったが、霊能者さんたちの目に掛かると、性別を見破られてしまう。
 
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「坊や、可愛いね。スカート好きなの?でも坊やみたいに可愛いとスカートも似合うね」
などと言われてしまう。賀壽子と一緒に居た時
「可愛いお坊ちゃんですね。お孫さんですか?」
とも言われたし
「最近は男の子でもスカート穿くんですね」
とも言われた。
 
「あれ、君男の子なのに、なんで女の子の格好してるの?余興?」
などと、小学4〜5年生くらいの女の子にまで声を掛けられた。向こうも霊能者の付き添いで来ているっぽい。
 
「私女の子だから」と青葉は答える。
「ふーん」と相手の女の子は言った。
「君、もしかして、女の子になりたい男の子?」
「うーん。そういう見解もあるかもね」
 
「私は女に生まれたけど、男に生まれたかったよ」
「へー」
「私は力が欲しい。君、凄いパワー持ってるね。それだけ力を持っていて、むしろ女の子になりたいってよく分からないなあ。私、もっともっと強くなりたい」
「そういう女の子も多いかもね」
と言って青葉は微笑んだ。ただ、彼女が連れている「眷属」には少し緊張した。しかもどうも彼女はこの眷属を充分コントロールできていない雰囲気があった。それは体長5mはあるだろうかという感じの巨大な虎だった。その虎は青葉が見ている前で、そのあたりをふらふら飛んでいた小さな龍を食べちゃった!
 
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虎を連れてるから、力を持ちたいと思うのだろうか、あるいは力を持ちたいと願ったから、虎が眷属に付いたのだろうか、などと青葉は少し考えたが、その虎とは目を合わせないように気をつけた。
 
「私、あの子とは合わない」
と彼女が虎を連れて向こうの方に行ってから、真穂が言った。
「ふふ、あの子と合う子は少ないかもね」
と青葉も微笑んで言った。
 
「でも礼讃者の男の子をたくさん作るかも」と未雨。
「ああ、そうかも」と真穂も同意する。
確かに「女王様」になるタイプの女の子かもね、と青葉も思った。
 

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もうひとり、別の女の子にも似たことを言われた。その子は小学2〜3年生くらいだった。虎少女はとげとげしい雰囲気ではあるものの、一応青葉が女の子の服を着ていることを是認してくれたのだが、その子は
 
「なあに?男の癖に女の服着て、変な感じ」
と敵対的な言い方をした。
「いいじゃん。どんな服着たって」
と青葉が言うと
「こういう変態がその内犯罪者になるんだよなあ。早い内にこういう悪い芽は摘んでおかないと」などと言う。
青葉はもうその子のことは黙殺することにして、後は何も返事をしなかった。しかし青葉が黙っているのをいいことに、かなり悪態をついてから向こうに行った。
 
「感じ悪い子がいるね。気にすることないよ」
と真穂がフォローして言った。
「うん。大丈夫。気にしないよ」
と青葉は笑顔で言った。
 
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「でもさあ」と未雨。
「青葉が自分の身内だから言うわけじゃないけど、あの子の方がよほど男っぽくない?」
「あ、私も思った。実は最初男の子かと思ったのよね」
と言って真穂は笑った。
 

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千壽子も賀壽子も記念行事の儀式に来賓として出ていて、祭壇の近くの来賓席に座っているのだが、「付き添い」の青葉たちは後ろの方で適当にしていた。
 
やがて儀式は前半の教組様の祈祷が終わり、後半、信者さんたちに灌頂をすることになるが、その前にいったん休憩が入った。トイレなどに行くのに信者さんたちがぞろぞろと移動する。来賓席の千壽子と賀壽子は何やら話し込んでいたが来賓の中にも何人か中座する人がいた。
 
彼女とは目が合った瞬間、衝撃があった。
 
そして向こうもそんな感じであった。来賓席を立ってこちらに来た白いブラウスにチェックのスカート、リボンタイという、高校?の夏制服を着た16〜17歳くらいという雰囲気の女子は初め青葉を見てびっくりした様子だったが、やがてこちらにまっすぐにやってきた。
 
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「名前は?」と彼女は訊いた。
「川上青葉です」
「私は山園菊枝。高校1年生」
「高校1年生!?2〜3年生かと思った。私は小学1年生です」
「1年生〜!? うっそー。4〜5年生かと思ったよ。既に風格がある」
「山園さんには遠く及びません」
「及んでたら私、今すぐ死ぬよ。でも大人になったら分からないな」
と菊枝は笑顔で言った。
 
「私、こんな凄い人がこの世にいるとは思わなかった」と青葉は言う。
「それはこちらの台詞だわ。あなた、末恐ろしい。。。。あら? 何だか私たちの後ろのお姉さんたち、知り合いみたいね」
「あ、そんな感じですね」
「ね、お姉さんたちが知り合いなら、苗字で呼び合うのも他人行儀だわ。名前で呼び合おうよ」
「はい、菊枝さん」
「うん。青葉ちゃん」
 
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ふたりは硬く握手をした。
 
未雨と真穂が何事が起きているのかよく分からないまま、ふたりのやりとりを眺めていた。
 

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「ところで君、女の子の服を着てるのは何か宗教的な理由?」と菊枝は訊いた。「いえ。私が女の子だからです」と青葉は笑顔で答える。今日はこんな感じのやりとりを既に5回くらいしている。
 
「ああ・・・確かに、君、魂が女の子だもんね」と菊枝は納得したように言った。これも既に3回くらい言われている。
 
「魂の性別って見えるもんなんですか?」と真穂が訊いた。
「見える人には見えるよ。青葉ちゃんの魂はね。ちょっと古風でさ。江戸時代くらいかなって感じの巫女の衣装を着てるよ」
「へー」
「後ろのお姉さんがどうのって言ってましたが、それって私たちのことじゃないですよね?」
「うん。私や青葉ちゃんを護ってくれてる人。ふつうの人には見えない」
「それって、私にもいるんですか?」
と真穂が訊くと菊枝は微笑んで
 
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「いるけど、居眠りしてるね」
と言った。
「居眠り〜?」
と真穂は顔をしかめる。
 
「起こす?」
「いえ、いいです。私、お化けとか見たら怖いから」
「ふふふ。でも見えるんでしょ?」
「ええ。時々。疲れてる時とか」と真穂は真顔で答える。
 
「あのぉ、私にもその後ろのお姉さんっています?」と未雨が訊くと、菊枝は一瞬考えるようにしたが、。
「付いてるけど、今日はお休みみたい」
と言った。
 
「お休み!?」と未雨は言うが、青葉も笑って
「守護霊って別にいつも付いてる訳じゃ無いよ。寝てる時もあればお休みの日もあるよ」
と言った。ただ、未雨の守護霊はお休みの日が多いんだよな、とは思ったものの、その事は言わなかった。
 
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その日は当初の予定では、札幌に移動して泊まると言っていたのだが、賀壽子と千壽子が、教団の旭川支部長の人と意気投合してしまい、うちに来ませんかという話になったため、今夜は旭川に行き支部長さん所に泊まって、それから明日のお昼の札幌の食事会に行くという変則日程に変更された。
 
その旭川支部長さんの孫というのが例の虎を連れた少女だった。
 
旭川へはその支部長さんのワゴン車で移動した。運転席に支部長さんの娘さん、助手席に虎の少女(天津子)が座り、2列目に賀壽子と千壽子、そして3列目に真穂・未雨と青葉が乗った。虎は荷室に無理矢理その巨体を押し込んだ。青葉はできるだけそちらを見ないようにしていたが、未雨は何か気配を感じたのかそちらに目をやり「なんか荷室が怖い気がする」と言う。青葉は「後ろ見ない方がいいよ」と言ったが、助手席の天津子が一瞬こちらを睨むようにした。
 
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旭川についたのは夕方17時前だったので、まだ晩御飯には少し早いかなといい市内でお茶でも飲むことになる。ショッピングモールの駐車場で車から降りて甘味処に入るが、虎は車から降りると勝手にモールの裏手にある林に走り込んで行った。
 
「あれ、いいの?」と青葉が天津子に訊くと
「何が?」と言う。
 
この子、虎を飼っていることを自覚してないのかしら?と青葉は疑問を感じた。
 
賀壽子、千壽子に旭川支部長さんは何だか話が盛り上がっている。天津子は無言だったが、支部長の娘さん(天津子の母)が、真穂や未雨に北海道の話題を色々提供してくれて、青葉もその話に聞き入っていた。
 
話が長くなっているので、青葉はちょっと中座してトイレに行く。。。。。が迷ってしまった! こんな広いショッピングモールは不慣れである。
 
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