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■春行(8)

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ルーブル美術館を出たのが結局19時近くになってしまったので、軽食を取る予定だったのを中止して、そのまま空港に向かうことにする。バスがシャンゼリゼ通りを走って行く。
 
凱旋門のそばを通り抜け、セーヌ川を渡り、新凱旋門の所を通る。
 
「新凱旋門って変だ」
という声が多い。
 
「まあ500年経ったら、20世紀様式とかいわれて価値が出るかもね」
と徳代などは言っている。
 
その後バスはパリの第2環状道路A86を走って「高速北線(Autoroute du Nord)」A1に入り、シャルル・ド・ゴール空港に向かう。
 
幸いにもあまり混雑しておらず、A86に乗った後の所要時間は30分ほどであった。
 
とりあえず乗る予定の飛行機にチェックインし、税関を通って出国審査に行く。列に並んだら、少し前の方に見たことのある人物がいる。成田空港で出国する時に青葉の少し前で通ったニューハーフさんである。美由紀が「ね、ね」と言うので青葉も「うん」と言う。あの人も帰国するのだろうか。あるいはまたどこか他国へ行くのだろうか。
 
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それを見ていたら、トントンと肩を叩かれる。
 
「リンダちゃん!」
「また一緒になったね!」
 
それで4人とも列から抜けてリンダと一緒に最後尾に並び直す。
 
「あ、ごめん」
とリンダは言うが
 
「問題無い。これが日本流」
と美由紀は言う。
 
「こういう日本の文化好き〜」
とリンダは言っている。
 
それでおしゃべりしていたら、さっきのニューハーフさんがなんか揉めてる。
 
「どうしたんだろう?」
「成田じゃ、すんなり通ったのにね」
 
見ていたら、どうも別室検査になってしまったようだ。
 
「あの人、プリオペかな?ポストオペかな?」
とリンダが自問するかのように言うが
「ポストオペだと思う。そういう波動をしている」
と青葉は答える。
 
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「へー。波動?」
「この子、日本一の霊能者だから」
「すごーい」
 
「でもPost-opなら裸にしても男というのを証明できないよね」
「医師の診察コースかな」
「わあ、可哀想に」
 
「やはりフランスは昨年テロもあったし、警戒が厳しくなっているんじゃないの?」
と日香理。
 
「わあ、どうしよう。私また診察コースだったりして」
とリンダ。
「でも成田で書いてもらった診断書があるでしょ?」
と日香理。
 
「うん」
「それがあれば大丈夫だと思うよ」
 

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それで何かあった時にフォローできるように、青葉たちの前にリンダを行かせる。ところが・・・
 
リンダはパスポートと航空券を見せると、何も言われずにそのまま通ってしまった!?
 
へー!と思いながら、青葉も美由紀に続いて手続きに行き、パスポート・航空券を見せるのだが、係官はパスポートの写真と青葉の顔を見比べた上で何も言わずにそのまま通してしまった。
 
そのあと日香理も通るが
 
「どうなってんだろう?」
と言い合う。
 
「私、男に見えたのかも」
とリンダ。
「私も男に見えたのかも知れない」
と青葉。
 
日香理はしばらく考えていたが
「たぶんふたりともパスポートの写真と本人を見比べて同一人物と思われたからそのまま無言で通したんだと思う」
と言う。
 
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「なるほどー!」
「あのニューハーフさんはひょっとしたら、パスポート写真が男性時代のものだったのかも」
「あり得る、あり得る」
 

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しかし、出国審査はすんなり行ったのに、保安検査は性別と無関係に大変だった。
 
全員靴を脱がされるし、男子生徒はガクランを脱がされ、ベルトも外させられる。何でも靴の踵にプラスチック爆弾を仕込むというケースがあるのだそうだ。青葉も含めてワイヤー入りのブラをしている子はほとんど引っかかってハンディ検査機でチェックされた。荷物のチェックもかなり厳しかった。
 
リンダとはこの保安検査を通ったところで別れた。
 
そういう訳で空港に着いたのは20時すぎだったのに、全員が保安検査まで通過したのはもう21時半頃である。
 
それから出発ロビーのカフェで遅めの夕食となった。
 
「これ2時間前に入ったのでは、間に合わない可能性がありますね」
「うん。3時間前に来ないと危ない」
 
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「でも結局パリで見られたのはエッフェル塔とルーブル美術館だけか」
「それも駆け足だったけどね」
 
「次に個人で来た時は、オープンツアーバスの2日券を買って、のんびりと見て回るといいよ。緑色のバスが走ってたでしょ。あれ、乗り降り自由だから」
「そういうのもいいね」
 

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2月14日(土)の23:25のエールフランス274 (B777-200)で帰国の途に就く。12時間のフライトで翌日2月15日(日)の19:25、羽田空港に到着した。
(23:25 + 12:00 + 8:00 = +1day 19:25)
 
青葉たちは離陸直前に時計を日本時刻に戻したが、行程の前半はほとんど寝ていて、青葉たちの時計で13時頃に食事が出てきたタイミングで、みんな目を覚まし、あとは本を読んだり、おしゃべりしたりして過ごした。
 
羽田での入国審査はとっても楽で、性別の件も「性転換しているので」と一言言っただけでOKであった。
 
モノレールと山手線で東京駅に出て、夕食を取った。東京駅近くの和食レストランで、お刺身と天ぷらの御膳である。
 
「おお!ご飯の食事が懐かしい!」
などと声を挙げている子たちもいる。
 
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「お刺身大好き!」
「天ぷら大好き!」
といった声に鳥越先生が
 
「お前達、日本に初めて来た外人さんみたいだ」
などと言っていた。
 
美由紀が何だか指折り数えている。
 
「どうしたの?」
「いや、飛行機に乗って少ししたところで1回軽い食事をしたでしょ?」
「うん」
「あれは夜食かなと思ってたんだけど、今日13時くらいに食事が出たのが昼食だろうから、もしかして最初のってとっても早い朝食だったのだろうか」
 
「まあ時差があるから、食事のタイミングはどうしてもおかしくなる」
「行く時はお昼を2回食べてるし」
「そうだったっけ? なんか朝食1回ごまかされたような気分で」
「じゃ、今日は夕食2回食べる?」
「あ、それもいいね」
「お弁当とかおやつとかたくさん買ってバスに持ち込もう」
「そうしよう、そうしよう」
 
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まさか東京駅では迷子にならないだろうということで自由時間とし、22時に銀の鈴に集合としたが、ジュネーブでひやりとさせられた花山さんたちには音頭先生が付いて行ったようであった。
 
アメリカ組は17時頃成田に着いて移動してきたらしい。中国組がいちばん遅くなって、羽田に20:25に到着する。本当は1便早いのに乗る予定がオーバーブッキングがあって乗られなかったらしい。更に荷物が出てくるのに時間が掛かったと言っていた。東京駅に彼らが着いたのはもう22時半すぎである。
 
彼らが疲れているので、すぐに出発するのは酷だということで帰りのバスは23時半に出ることになった。晩御飯も食べ損なったというので、先生が2人、予約した上でタクシーでお弁当屋さんまで行き、お弁当を調達してきて晩御飯としていた。
 
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一方、青葉たちであるが、美由紀たちが調達していた食料は中国組を待っている間に無くなってしまい、先生に許可をとって再調達に行ってきた。
 

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23:30頃、東京駅八重洲口近くから、また男女別2台のバスに分乗して高岡に出発した。
 
さすがにみんな疲れているので、全員ひたすら寝ていた。
 
バスはトイレ付きのをチャーターしているのだが、一応途中の甘楽PA, 妙高SA, 入善PA で休憩時間を取ったようである(妙高の休憩は濃霧でドライバーが疲れるのでその疲労回復の目的もある)。
 
バスは2月16日(月)朝6時すぎにT高校に到着した。朝早くなのに教頭先生が来てくれていて駅のホームで解散式をした。
 
このあと月曜から水曜までは代休になる。
 
「みんなお疲れ様でした」
「さあ、帰って寝よう、寝よう」
 
などと言っていたら、美由紀が
「あ!」
と言う。
 
「どうしたの?」
「忘れ物?」
「買った夜食を全然食べてない」
「ああ。寝てたもん」
「だいたい夕食を食べた後で、最初に夜食にする予定だったものバスに乗る前に銀の鈴の所で全部食べちゃったし」
 
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「今からどこかに集まってみんなで食べる?」
「いやいい」
「それは美由紀が持ち帰って全部食べるとよい」
「ほんと? じゃもらっちゃおう。これをお母ちゃんたちへのヨーロッパ土産ということにしようかな」
 
「まあ随意に」
 

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青葉は母が駅前まで迎えに来てくれていたので、母の車で自宅に戻った。
 
「お疲れ様でした」
「ありがとうね。行かせてくれて」
「行かせてくれても何もあんた自分で費用出しちゃったし」
「だって費用が高額だから悪いなと思って」
「まあほんとに高いから私は助かったけど、ほんと遠慮しないでよね」
「うん。大丈夫だよ」
 
こういうのを本当に遠慮無く話せるようになったのが、このうちに来てからの私とお母ちゃんとの関係の進化かな、などと青葉は思った。
 
家の鍵を開けて中に入る。
「ただいまぁ」
と言って中に入るが、誰かが居る訳では無い。ただの習慣である。
 
ところが青葉が「ただいま」と言うと「おかえり」という声があった。
 
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「彪志・・・・・」
 
「12日で後期の試験も終わったから、青葉より一足早く、昨夜こちらに来た」
などと彪志は言っている。
 
「えへへ。彪志、ただいま」
「うん。青葉、おかえり」
 
ふたりが見つめ合っていたら、母が
「さて。私はもう会社に行くからね。晩御飯のお買物だけしててね」
 
と言って、そのまま会社に出勤していってしまった。
 
それを見送って、青葉と彪志は微笑み合い、抱き合って熱いキスをした。

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