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「ももちゃんのオムレツが食べたい」
などというリクエストもあり、麻衣は「はいはい」と言って気軽に応じていた。(麻衣はエヴォンの嘱託扱いなので店舗で調理をしても構わない)
「でも私、人妻なんですよ〜」
「うん。社長と結婚するんでしょ。おめでとう」
「あのオーディション、ももちゃんが審査委員長?」
「審査委員長は、はるかちゃん(和実)ですよ〜。ここのチーフだもん」
「私は古城さんだと思ってた」と和実が言うと本人は
「えー? 私はこのメンバーの中でいちばん若輩者だし。委員長はハミーちゃん(若葉のメイド名)ということで。ハミーちゃんはおうちで弦楽四重奏とかやるらしいですよ」
などと言う。古城さんは若葉とは同じ中学の出身ということで、学年は違うものの面識があったようである。
「クリスマスに何度かやっただけだよ。やはりここは最年長の逸見さんで」
と若葉。
「僕は雇われアーティストだから、やはり社長夫人のももさんで」
と逸見さん。
ということで「委員長」はお互い譲り合って定まらない雰囲気だった。
しかしそういう訳で、ここの銀座店はアマチュアのクラシック、セミクラシックのユニットにとっての「登竜門」っぽい雰囲気になってきたのであった。またアーティストが増えたので、夕方は17時から21時までの4時間、5組のユニットが連続演奏する方式になった(演奏40分+入れ替え10分)。特に週末は16時からの演奏と結果的に一体化して実質6組5時間連続になる。FM番組が取り上げてくれたりしたこともあり、この時間帯は特に金土日は満員に近い客が入った。
「ねね、増床しようか?」
「えー?でも固定費が」
などという会話を永井と和実はした。ここは元々1,2階をセットで借りているのだが、2階はこの時点では女子更衣室がある他は事実上倉庫になっていた。(元の居酒屋では1階が店舗で2階は事務室だった)そこに置かれているコーヒー豆や食器の予備などは、別にこんな家賃の高い所に置いておかなくてもよい。演奏の音はそもそもPAを通しているので2階席にも1階と同じスピーカー配置をすれば2階でも結構な臨場感のある鑑賞をすることが可能である。
また客たちの中に、このメイド喫茶が東北支援の活動をしていたことを知っていた人も多く、募金も多く寄せられた。この募金は現在は現地で支援活動や自助活動をしている団体に分割して提供している。
和実の友人たちもよく銀座店には来てくれた。
小さい頃からの友人で、同じ大学に通っている梓はしばしば大学の授業が終わった後、神田経由で有楽町まで出てきてコーヒー2〜3杯で4〜5時間粘ってゼミの準備などをしていた。彼女は西武新宿線沿線に住んでいるので帰りは高田馬場経由である。
「クロスロード」で知り合った歌手・作曲家の冬子も時々こちらに寄ってくれた。彼女の場合はどちらかというと、小学校からの友人である若葉がチーフを務めている神田店の方に来ることが多いようだが、こちらにも来て特に平日の夕方、生演奏連続4時間を鑑賞しながら作曲!や編曲をしたりしていた。
「音楽聴きながら、全然違う曲が書けるの?」
「ああ。問題無い。テレビ見ながらラジオも聴けるようなものよ」
「いや。それ普通できません」
冬子は一度、予定していたユニットが首都高の渋滞に巻き込まれて間に合わないなどという時に、ノーギャラでいいからと言ってピンチヒッターでピアノ演奏を披露してくれた。「私は代役の天才って言われてるのよ」などと彼女は言っていた。冬子の素性を知らない客が
「あの人うまいね〜。技術的には古城さんほどじゃないけど、その代わり凄くポップな雰囲気でノリがいい。プロになれるよ。バンドとか組んだら売れそう」
などと言っていて、和実は笑いをこらえるのに苦労した。
また高校の時の同級生で、梓は常連だが、奈津・由紀・照葉といった面々も時々やってきては、来たら長時間滞在した。和実は休憩時間にはメイド服を脱いで、彼女たちの席に座り自分もコーヒーやホットケーキを注文して一緒におしゃべりを楽しんでいた。
12月22日には、永井と麻衣の結婚式が都内の神社で、披露宴が都内のホテルで行われた。その日はエヴォン全店を臨時休業にして、ベテランのメイドや、既に退職していても過去に麻衣と仲の良かったメイドなどが披露宴に出席した。特に和実・若葉・悠子の3人は結婚式にも参列した。
三三九度では、麻衣があまりアルコールを飲めないので、その分永井が沢山飲んでいたようだが、結構な量のお酒なので、最後の大杯の酒を飲み干した後一瞬足がもつれて麻衣に支えられたりしていた。和実はそもそも永井がお酒を飲んでいる所を見たことが無かったが、麻衣の話でも自分でお酒を買って飲むことはないみたいということだったので、元々飲まない人なのだろう。
披露宴には盛岡ショコラの店長・神田、京都マベルの店長・高畑も来ていて、神田が友人代表で祝辞を述べ、高畑が乾杯の音頭を取っていた。ケーキ入刀の代わりに、花嫁がその場でIHヒーターとフライパンを使ってオムレツを作りそのオムレツに入刀するなどということをした。
二次会まで出席して少し高揚した気分で帰宅すると、珍しくもう淳が帰っていた。
「お疲れ様〜。何か最近会えないね」と和実。
「そうなんだよね! 同じ家に暮らしているのに!」と淳。
淳は今システムの作り込みで超多忙状態なので、家には時々着替えを取りに帰ってくるくらいで、ずっと会社に詰めているのに等しい状態である。
「今夜もこれからまた仕事?」
「うん。22時くらいまでには戻らなくちゃ。少し仮眠してから戻ろうかと思ってた。あ、社長さんの結婚式どうだった?」
「うん。素敵だったよ。お金掛けずに手間掛けたって感じで。花嫁さんも衣替えは1度だけにして、みんなのスピーチや余興をちゃんと聴いておけるようにしてたし」
「そうそう。主役の花嫁さんがずっと不在って披露宴は多いよね」と淳。
「せっかく遠くから来てくれた友だちとかもいるのに、あれは残念だよね」
と和実。
「新婚旅行はどうするの?」
「国内を車で回るらしいよ」
「へー。ハワイとかじゃないんだ?」
「うん。日本国内にたくさんいい所あるからって。北関東から南東北方面を回るみたいだけど。実際のコースは出たとこ勝負だって」
「ああ、いいね、そういうの」
「取り敢えず、今夜は都内のホテルで過ごして、明日の朝出発らしい」
「今夜は初夜か・・・」
「そそ。初夜が車中泊というのも何だし」
「それは花嫁さんが不満だと思うよ」と淳。
「私たちも今夜、初夜する?」と和実は言ってみた。
「え?・・・・・」
「今日**病院で検査してもらってね。もうセックスしても大丈夫だって。ただし当面は1日1回だけ」
「えっと・・・セックスって・・・・」
「淳のを私のヴァギナに入れていいよ。初使用」
淳がごくりと唾を飲み込む音がした。
「私たちだいたいいつもレスビアンだけど、最初会った頃に、淳のを私の疑似Vに入れて男女型セックスしたよね。私もうタックできないから疑似Vも無くなっちゃったけど、本物Vができたから」
「えっと。。。私の立つかなあ」
と淳はしばらくやってなかったので不安なようである。
「私が立たせてあげる」
と言って和実は淳のスカートの中に手を入れショーツを下げる。そして淳のバッグの中から勝手に接着剤の剥がし液を取り、タックを留めている接着剤を剥がした。
飛び出してきた淳の男の印を和実は口に咥えた。
「待って。お布団に行こう」
「少しくらい遅刻してもいいよね?」
「あ、うん・・・」
ふたりはキスして寝室に移動した。
淳の男性能力がかなり落ちている上に、ここのところずっと仕事ばかりで疲れも溜まっていたこともあり、和実がフェラしても淳のは、なかなか立たなかった。
「全然立たないね。立たないならもう切っちゃおうよ」
「凄く切りたい!」
「何なら私が包丁で切ってあげようか? ヴァギナ作れなくなるけど」
「う・・・切られたい気分」
淳はどうもおちんちんを切られる所を想像すると少し興奮するようであった。そこで和実は「早く女の子になろうよ」とか「手術の予約しよう」とかさんざん淳をそそるような言葉を掛ける。更にはハサミを持って来て根元に当てて「切っちゃうぞ」などと言った。それで次第に淳も興奮度が増していった。更にはハサミに力を入れて根元の部分の皮膚を少し切るとそれでやっと、淳のは硬くなった。
和実がハサミを離し「入れて」と言うと、淳は和実の上になって、そっと入れてきた。
「なんかこれ・・・・女の子に入れたのと同じ感触」
「だって私、女の子になっちゃったんだもん。こういう身体は嫌?」
「ううん。羨ましい。こういうこと、私がおちんちん取っちゃうまでしかしてあげられないけど」
「いいよ。でも今夜は淳が男の子役をして」
「うん」
淳が身体を動かしてピストン運動をする。和実は目を瞑ってそれを受け入れながら、淳の背中を撫でていた。
射精能力も弱くなっているようで、なかなか逝けないようだった。それで和実はまた「これ本当は淳が入れられてるんだよ」とか「年明けに松井先生の所に行って手術しちゃわない?」とか「おちんちんきれいに取って私みたいにスッキリしたお股になろうね」とか「タマだけでも年内に取っちゃおうか」とか「このセックス終わったら、おちんちん切ってあげようか」とか淳を刺激する言葉をささやく。更には「淳、本当はもうおちんちん無いんだよ」とか「淳も割れ目ちゃんが可愛いね」とか「あとでクリちゃん揉み揉みしてあげるね」などと淳が性転換済みであるかのような言葉を掛けたりしていたら、やっと淳は逝くことができた。
淳が逝った瞬間、和実は「ああ、これで私たちやっとひとつになれた」という気持ちになった。
淳はそのまま眠ってしまった。和実はそっと身体を外すと、あの付近をティッシュで拭いてあげて、それから根元の皮膚を切った所はアルコールで消毒してあげた。その上できれいにタックして女の子の股間の形にして接着剤で留めてしまう。そして自分も少し寝た。
21時頃目を覚ます。
「淳、起きて」
と言って起こそうとするがなかな起きない。やはりかなり疲れが溜まっているのだろう。しかし淳は22時までに戻らなければと言っていた。
「あ・な・た、お・き・て」
と言って普通の女性のように発達した淳の乳房を揉みながら、指にコンちゃんを付けてあそこに入れてGスポットを刺激する。
「あ・・・」
それで淳はやっと目を覚ました。
「今逝かせてあげるから待ってて」
と言って、和実は淳の乳房とGスポットを刺激し続ける。
「待って。。。逝っちゃったらまた寝てしまう」
とかろうじて回復した意識の中で淳が言うので、和実は刺激を中断した。
「着替えてて。車持ってくるから」
「うん」
和実が駐車場から淳のプリウスを出してマンションの入口の所まで持ってくると、もう淳はスカートスーツを着て着替えなどの入ったバッグを持ち、降りてきていた。そのまま淳が助手席に乗り込み、和実は車をスタートさせる。
「寝てて。疲れてるでしょ」
「そうする」
と言って淳はまた寝てしまう。和実は信号で止まった時にそっと淳にキスした。
淳を会社まで送り届けてから和実は帰り際、ふと高速のランプを見て思った。
去年の今頃はまだこのくらいの時刻から東北へ支援物資を運ぶ行程に出てたな。あれは体力的にはきつかったけど、何か充実したものがあった・・・・
そう思うと、何だか高速に乗りたくなってしまい、次のランプで和実は右ウィンカーを出してランプを上った。
ETCレーンを通過し、合流車線で加速して本線に合流する。どこに行くというあても無かったのだが、気がつくと川口JCTから東北道に乗っていた。
あれ〜。私東北道なんかに乗って、どこに行くつもり? などと思うものの、何十回と走ったルートを身体が覚えている。
夜間にひとりで運転しているので途中1時間おきにトイレ休憩しながら運転して、午前2時頃、石巻河南ICを降りた。私、こんな時刻にここに来て何するつもり??
こんな夜中、コンビニなど以外には開いている店なども無い。和実は仕方無いので、車を姉のアパートの所まで持っていった。姉の携帯を鳴らす。
「和実?こんな夜中にどうしたの?」
「今、アパートの玄関の前にいるから開けて」
「へ?」
姉がドアを開けてくれると
「ごめーん。ちょっと寝せて」
と言って和実はそのまま畳の上で眠ってしまった。
姉が毛布と布団を掛けてくれていたようだった。和実は5時頃目を覚ますと
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
と胡桃に呼び掛ける。
「あ、お早う。どうしたの?」
「うーんと。帰るね」
「あ、じゃ気をつけて」
こんな時、別に無理に何かを聞こうとしない姉の性格は好きだ。