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■トワイライト・出発(5)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-03-11
 
2人の伯母さんたちは夕飯を家族に食べさせなきゃいけないから、と言って帰って行ったが、夕方くらいに東京から淳の兄、恭介がやってきて、一緒に焼肉を食べた。
 
「お客さんをこき使って悪いけど、いちばん信頼できそうだから」
などと母に言われた和実がスーパーまで車で行って、お肉や野菜を買ってきてホットプレートで焼いた。
 
「椎茸に十字が入ってるのなんて、ここの家では初めて見た」と恭介。
「和実ちゃんがやってくれたのよ。この子、手際がいいのよ。私すっかりこの子、好きになっちゃった」と母。
 
昼間の仕出しや、温泉でのおしゃべりは伯母さんたちがいたお陰でハイテンションだったが、夕飯は、ややのんびりした雰囲気の中で進んでいった。
 
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「もし向こうのご両親も良ければ、籍が入れられるようになった所で入れちゃいなさいよ。学生結婚なんて、そう珍しいものでもないしさ」と母。
「それがいいかも知れないね」と淳。
 
「まあ、和実ちゃんも学校出るまでは出産もできないだろうけど、もう1年間一緒に暮らしているんだから、籍は入れちゃったほうがいいね」と恭介。
「でも、思ったんだけど、淳のほうの女性化も進んでるみたいだから、あんたたち、子供作るつもりなら、早い方がいいかもよ。私、東京に出て行って和実ちゃんが修士課程出るまで子守してもいいからさ。でないと、淳が種無しになっちゃう」と母。
 
「あの・・・私が妊娠するってのは確定なのかしら?」と和実が言うが「和実は妊娠しそうな気がするからね」と淳まで言った。
 
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「恭介は妊娠しそうにないから、淳と和実ちゃんに孫を期待するしかないし」
などと母まで言う。
「俺はさすがに妊娠しないよ」と恭介は言った。
 

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淳はその先月の愛媛行きのことを思い出していると、つい思い出し笑いをしてしまいそうな気がしたが、自分たちの仲が双方の両親に認めてもらえたのは、物凄い幸運のような気がした。これも「神様からのご褒美」なのかな?などというのも思う。
 
そもそも母も言っていたように、和実と出会わなければ自分は恐らく一生結婚しなかったろうというのも思う。自分としては本当は30歳になるまでに性転換したいと漠然と思っていた時期もある。
 
多少の迷いなども生じてずるずると時期を延ばして来た気もするが、和実と出会って自分の生き方を再度考えた結果、35歳くらいまでには性転換したいと思うようになっていた。
 
会社のビルに入り、タイムカードを押してオフィスに入る。同僚たちと「おはよう」「おはよう」と言葉を交わして自分の席について、まずは端末を付け、急ぎのメールが入っていないかチェックした。
 
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和実は淳を送り出した後、ベッドに寝転がってユキさんの日記を開けた。今は大学は春休みなので、10時までにメイド喫茶に行き、夕方まで勤務する予定である。メイド喫茶も、この1年間は被災地支援ボランティアの事務局代わりにもなり、喫茶店スタッフ以外にも多数のボランティアスタッフの人達が出入りしていた。彼らには和実と店長が折半の自腹をしてお茶をサービスしていた。
 
そういうので和実は貯金が目減りしていったのだが、もとより自分の貯金は全部被災者のために使いたい気持ちでいたので、その問題は気にしていない。店長には申し訳ない気持ちもあったが、店長は結果的には喫茶店メニューをオーダーしてくれる人もあったりして喫茶店の売上にもつながっていると言って、自分のことは気にするなと言っていた。店長もやはり被災者のために身銭を切って、いろいろしてあげたい気持ちだったのだろう。店長の家系が相馬市の出身なのだと言っていた。もう今は向こうに親戚はいなかったらしいのだが、それでも自分の故郷みたいな思い入れがあったのだろうと和実は思った。
 
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ボランティア活動が終わって、ボランティアの人たちは当時ほど頻繁にはここを訪れなくなったものの、時々コーヒーを飲みに来てくれる人は多く、またボランティア活動を通してお店の名前がけっこう知られたこともあり食べログなどにも多くの好評価が付いていたので、新たにやってくる客も多くて、お店は繁盛していた。店長は
「これだけ流行ってるなら、後ひとつ支店を作ってもいいかな」
などと言っていた。
 

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*月*日。
 
今日の体育は水泳。競泳用の水着になって、プールで泳ぐ。私の水着姿を見てこれまでちょっとわだかまりのあった☆子が
「あんた、完璧に女の子体型だね」
などと言った。
 
「いろいろ誤魔化してるけどね」
「ああ、出てない所が出てるように見せたり、あるものが無いように見せたり?」
「そうそう」
「でも肩の線とか、ウェストのくびれは誤魔化しようがないよ」
「うん。そのあたりは完全自前」
「へー。色々努力してるんだね」
 
彼女ともこの後、もう少し仲良くしていけるといいな。私、誰とでも仲良くしたい。派閥みたいなの作るの嫌い。こういうのは贅沢なのかなあ。
 
オナ禁25日目。あと少しで1ヶ月。これってもっと前からやるべきだった。中学生の頃からやってれば、私の身体もっと女の子らしい身体になってたかも。最初の数日はもう触りたくて触りたくてたまらなかったけど、我慢してればできるもんなんだなあ。男の子みたいなこと、私、しちゃいけなかったんだ。
 
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*月*日。
 
バイト先で失敗。お客様の名前を読めなくて、お預かりしていた服が無いなんて答えちゃった。
 
「やまなしですけど、頼んでたサイズ調整の出来てます?」
「やまなし様ですか・・・・」
と言って、服の掛かってる所探すけど、見つけきれない。「ありませんね」と言って、お客様も「遅れてるのかしら?」ということでいったんお帰りになる。
 
お昼に行ってた店長が戻ってきてから報告したら
「やまなし様のは戻って来てるよ」と。
店長が探してくれる。「ほら、これ」と言われて見せられたのは「月見里」と書かれている。
 
「これで『やまなし』って読むんですか?」
「山が無いとその陰にならずに月が見えるでしょ。だから月が見える里には山が無い」
「きゃー、ごめんなさい」
 
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すぐ先方に電話して、御自宅まで持参した。
「大変申し訳ありませんでした。私が見落としてました」
と謝ったら
「うん、いいよいいよ。わざわざ持ってきてくれてありがとうね」
と笑顔で言ってくれた。お客様は神様です。
 
でも「月見里」で「やまなし」って読めねーよ! クイズかよ? 店長が言うには「小鳥遊」で「たかなし」というのもあるそうだ。鷹がいないから小鳥が遊べるんだって! 日本語難しすぎる。「春夏冬」は「あきなし」らしいし。「なし」系苗字って多いのだろうか?
 
どうせなら「女子」と書いて「たまなし」とかダメ?
 
でも「あなた可愛いわねー。女子高生?」とまで月見里さんには言ってもらったし、感謝、感謝。
 
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*月*日。
 
兄貴が帰省してきて、今日市内で会った。いきなり「お前、いつまでそんな女みたいな格好してるんだ?」と言いやがる。以前の私なら、水ぶっかけて席を立つところだけど。ぐっと我慢したよ。少し大人になったね。
 
まあ、でも兄貴とふつうの話はできる。兄貴の意見には全然同意できないけど。なんか凄い男尊女卑なんだよな、昔から兄貴って。
 
兄貴と別れた後、ストレス解消したかったら、カラオケ行きたくて、何人か電話で誘って、□代が付き合ってくれた。飲み食いしながら3時間歌いまくる。
 
カラオケ屋さんは久しぶりだったけど、高音が結構出るようになっているのに驚く。自宅で携帯カラオケしているのとは声の出方が違う。□代からも凄いねって言われたけど、自分でもびっくり。ずっと女声で話しているので、喉が鍛えられてるのもあるよね、たぶん。
 
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しばらく男声は出してない。出るのかな?あまり試したくないからパスだけど。
 

*月*日。
 
プレマリンが先週で切れちゃったのに、頼んでいたの、まだ届かない。何かトラブルとか起きているのかなあ。早く届いてよう。身体が女性ホルモンに慣れているから飲まないでいるのは辛い。ちょっと鬱になりやすくなってる。今日も何でもないことで泣いちゃって、◇香から心配された。取り敢えずエステミックス買ってきて飲んでるけど、これでは足りない。
 
でも女性ホルモンのお陰かなあ。前ほど、去勢したいって気持ちが暴走しなくなった。でも年末くらいまでにはタマは取りたい気分だけどね、ただ、去勢より先に脱毛したい気分でもあるしなあ。宝くじでも当たらないかしら。ロト6とか当たりやすいって言ってる人もいるし、1枚くらい買ってみようかな。
 
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*月*日。
 
やっとプレマリンが届いて、飲んだら凄く気持ちが落ち着いた。もう私これ無しでは生きていけなくなってる。切れると結局、更年期障害と同じ状態になっちゃうんだろうな。
 
バイト順調。よくやってるねって褒められる。嬉しいな。幼稚園の先生になれなかったら、洋服屋さんの仕事ずっとしてもいいかな、って気分になっちゃう。
 
※※君からまたメール来てた。どのくらい本気なのかなあ。適当に遊ばれて捨てられたら、私きっと凄く辛いから、あまり恋には積極的になれない。男の子とのデートって、ちょっとしてみたい気分ではあるけど。
 

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*月*日。
 
ぎょえーと思った。何かあのあたりが変な感じだったのでトイレに飛び込んだら鮮血。げー。ナプキン持ってたから当てたけど、ショーツが血だらけ。ずっとあの付近押さえつけてるから、炎症が起きたみたい。
 
でもナプキン持ってて良かったぁ! 買う時は「持ってても使わないし」とは思いつつも、女の子の気分になりたくて買ったけど、これやはり1〜2個は常時携帯しておくべきものなのね!
 
出血はすぐ止まった。アパートに帰ってからお風呂できれいに洗ったら痛みも減った気がする。血だらけになったショーツは捨てた。今夜はコットンの下着。
 

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*月*日。
 
振られたっていいじゃん。恋愛って経験しときなよって友だちから言われたから※※君にデートOKの返事しちゃった。
 
えへへ。何着て行こうかな。デートってしたことないや。どんなことするんだろう。食事して散歩してホテルだよ、なんて友だちに言われたけど、私の場合、ホテルは無いよね? 妊娠しないように避妊具持っていきなよって言われたけど私、妊娠しないと思うなあ・・・・
 
TOEIC申し込んだ。性別は「女」で申し込んじゃった。名前は男名前だけど咎められないよね? 性別変える前に改名だけでもしちゃおうかな。男名前で暮らすのが大変。しばしば「え?」って顔されるし。こないだも定期券買う時に窓口で一悶着あったしなあ。それだけ女としてパスしてるってことなのかも知れないけど。
 
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胸、ほのかに膨らんでる。私、女性ホルモンの利きがいい方かも知れない。
 
調子に乗って、プロペラ(黄体ホルモン)のジェネリック、注文しちゃったい。プレマリン+プロベラって、黄金の組み合わせだよね?
 
オナ禁40日目。もう全然辛くない。我慢しているって感じがない。女性ホルモンのお陰かも知れないけど。あるいはもう立たなくなってるかも知れないな。
 

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*月*日。
 
※※君とのデート。まさかまさかの、レッツ・ゴー・ホテル!
 
「あれ?おちんちん、もう無いの?」なんて言われたけど「隠してる」って答えて、私、ヴァギナ無いから、お口でしてあげた。
「こんなの初めて!気持ちいい!」
って彼、叫んでた。気持ちよくなってくれたなら嬉しい。
 
「おっぱい少し膨らんでるね」なんて言われて乳首舐められたし「男の子に揉まれると大きくなるんだよ」とか言われて、けっこう揉まれた。
 
また来週会う約束しちったよ。えー、まさかこれ交際になってる??
 
ボーナスもらった。バイトなのに。そんなのもらえると思ってなかったから嬉しい。全部貯金にした。最初から無かったと思えば問題ないしね。
 
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毎月してた貯金もあわせると30万! こんな大きな数字が通帳に印字されてるの、何だか凄い。何に使おうかな。
 

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