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和実はしばらく女の子モードと男の子モードを切り替えながら生活していたが、だんだん、女の子でいる時の方が快適だし、また自分の元々の性格に合っているような気がしてきた。それに、自分の心が女か男か不安定なまま、お店の同僚の女の子達や、最近付き合いの濃度が増している学校での女友達たちとの交流を続けるのは詐欺のような気がした。そこで和実は自分の心の主軸は女の子のほうにしようと考え、いくつか女の子にシフトすることを自分で決めた。
ひとつは、下着の問題。「女の子大作戦」をしていた時は別として、これまでは基本的にメイド喫茶に行く時など女の子の服を着る時だけ女の子の下着を着けて、学校に行く時など男の子の服を着る時は男の子の下着を着けていたのだが、常時女の子の下着しか付けないことにした。また胸にはいつもパッドやヌーブラなどをいれておくようにした。和実はそのため可愛い下着をたくさん買った。収納場所は姉のタンスだ!
和実は少しだけでいいからおっぱいが欲しいなと思った。それで少し体重を増やしてみることにした。肥満体の人は男の人でもけっこうおっぱいがある。ああいう感じで胸だけ太ることができればと考えた。60kgまで増やそうかな。思い切って70kgまで行こうか・・・ただメイド服が着られなくなると困るからウェストは66cmくらいより大きくならないように腹筋などしてボディースーツを付けておこうと思った。(当時和実は体重52kgでウェスト62cmだった)
それから和実はオナニーするのをやめることにした。「女の子作戦」を始めて以来、ずっと女の子の気分だったので約2ヶ月オナニーはしていなかったが、それ以前は普通の男子高校生のように毎日オナニーをしていた。でも今後はもうしないようにしようと決めた。あんなのしたら、全然女の子気分ではなくなる。和実はおちんちんは「存在しない」と思うことにした。意識の外に出してしまうことで、本当に無いのと同じことになる。やむを得ず触るのはお風呂で洗う時と、股間の処理をする時だけにした。
お風呂場で洗うときは揉むような感じになるのでちょっとだけ気持ちいい。それでも意識の持ち方をコントロールしているので硬くなったりはしなかった。結局そのあと和実は一度も勃起を経験していない。
7月頃、もう最後のオナニーから半年ほどたっていたが、和実はあれが立てようと思ったら立つかどうか試してみたくなって、夜遅く自分の部屋の布団の中で色々といじってみた。しかしどうやっても立たなかった。触りながらHなことを想像してみたらかえって小さくなっていく!開き直って私は女の子、これはクリトリス、と言い聞かせながら、女の子みたいにその自分の「クリちゃん」を指で押さえてぐるぐると円を描くようにしていたら「逝った」感覚に到達した。でもあそこからはごく少量の液体が漏れただけで、ゼリー状の物質は出てこなかった。飛び散ったりはせず包皮の中に溜まっているだけなのでティッシュ1枚で簡単に拭き取れた。
逝った時、「クリちゃん」は1〜2cmくらいのサイズになっていて、和実はほんとのクリちゃんみたいと思った。手早くあの付近の皮膚を折りたたんで細いテープで留めてみたら「開くことのできる女の子の股間」ができあがり、クリちゃんはその中に埋もれてしまった。わーい!ほんとに女の子になっちゃった、と思って和実は喜んで開け閉めして遊んでいたが、興奮が次第に冷めてくると4cmくらいに戻ってしまい折り畳んだだけの皮膚からは飛び出してしまった。うーん。残念。
しかし男性機能は停止しちゃったかな?という気もした。少なくとも少量出てきた液体に精子が入っているとは思えなかった。そういえばヒゲや足の毛も最近薄くなってきている。たぶん男性ホルモンもあまり出てない。そもそも、最初男の子の心では逝けなかったのに、女の子の心に戻したら逝けたので、私ってほんとに女の子になっちゃってるなと和実は思った。長期間男の子の心にしていれば男性機能も回復しそうな気はしたが、そんなことはしたくない気分だった。
もう本気で女として生きて行こうか。。。。でも姉ちゃんから釘刺されてるしな。取りあえず高校を卒業するまでゆっくりと考えよう、と和実は思った。
時を少し戻して4月3日、ショコラは店休日だったが、和実は同僚の女の子たちに誘われて、ファミレスに食事に行った。こういう集まりは実は10月頃から、女の子達の有志で時々やっていたのだが「女の子だけ」で話したいということで、和実は誘われていなかった。それを和実も特に気にしてなかったのだが、今回は数人のメンバーから和実を誘おうよという声が出てお呼びが掛かったのであった。特にその日は月遅れの雛祭りだったので、雛祭りパーティーのノリだった。
和実は姉から和服(ウールの着物)を借り着付けもしてもらい出席した。髪もいつものウィッグではなく、地毛にちょっとエクステンションを足してセットしてもらった(実はエクステンションの練習台らしかった)。「可愛い!」という声が上がった。同様に和服を着てきていた恵里香から「和服、私ひとりだったらどうしようと思ってたからホッとした」などと言われ、感激のあまり、おっぱいの触りっこをした。びっくりした悠子に止められたが恵里香は「でも和実、おっぱいあるんだ!」と言った。「だって女の子だもん」と和実は笑って答えた。たちまち他の女の子数人からもおっぱいを触られたので和実は各々触り返した。悠子はもう呆れて見ていた。
彼女たちとの会話は弾んだ。3月中旬から春休みに突入するまでの間、和実はクラスの女子達とたくさん会話を交わしていたが、その経験が役立った気もした。彼女たちの会話に和実は付いていけたし、和実が振るネタにも彼女達は自然に食いついてきた。男の子の品評などでも和実がふつうに話しているのを見て悠子は、この子恋愛対象は男の子なんだろうかと思ったりした。そろそろお開きということになった時、和実に次回からも来てね、という声が掛かった。和実自身もこの集まりを本当に楽しんでいた。男の子達との付き合いでこんなに楽しい経験をした覚えが無かった。このパーティーの中で、和実はみんなを名前で呼んでいい?と尋ねた。それまで何人か個別に「お許し」をもらって苗字呼びから名前呼びに変えていたのだがここで残りのメンバーとも名前の呼び捨てで呼び合っていいことになった。
メイド喫茶は繁盛していて、店舗面積を広げることになった。今まで雑居ビルの2階にあったのだが、隣のビルの1階にあったコンビニが無くなったことから、そこに移転することにした。そもそも店長は2階ではなく1階で営業したいと思っていたのだった。最初2階でスタートしたのは何といっても予算の問題だった。
今までの倍の面積になったので、女子更衣室もぐっと広くなった。その女子更衣室に和実のロッカーを置こうかという話がチーフの悠子からなされた。
「え?女子更衣室を使っていいの?」
「うん。しばしば更衣室にいるみんなに連絡したつもりでいたことが、更衣室にいない和実にだけ伝達漏れしていたこととか、これまでも時々あったのよね」
「あああ。確かに」
「それからこないだ和実が店長室で着替えていた時、たまたま市の人がきててさ。女の子を衝立のかげで着替えさせるのは大いに問題があると言われたって」
「ええ?男の子ですと言えばいいのに」
「そんなの信じてもらえるわけないじゃん」
「うーん」
「それと、和ちゃん、最近ヌーブラ付けてるね」
「ハマっちゃった。今5個持ってる。自分で触ってもおっぱいあるみたいだし」
和実は実は体重増加大作戦で、わずかながら胸に本物の脂肪も付き始めていることは黙っていた。
「それにこないだ、うちのアパートで着替えてる時に見ちゃったけど、ショーツが膨らんでないよね。まるで女の子の股間みたいな感じだった。まさか手術しちゃってないよね?」
「してないよ。姉ちゃんから20歳までは手術禁止っていわれてるし。
あれはやり方があるの。パンティ脱いでも大丈夫だよ」
「ふーん。それでさ、私はあれなら女の子達と一緒に着替えても問題無いかなという気がしたのよね。でもまあ、この辺までは技術的な問題で」
「うん」
「他の子たちが、和実だけここにロッカー無いの可哀想と言うのよ」
「えっと」
「最近特に和ちゃん、女っぽくなったでしょ?こないだのパーティーでも普通にガールズトークしてたし。それで普段でも一緒にわいわい着替えたいと」
「いいのかな?」
「彼女たちがいいと言ってるから。私は全然構わないし。和ちゃん、女の子の裸見ても平気だっけ?」
「平気。こないだ市民プールに行って女子更衣室使って、裸で歩いている女の人たちがいたの目に入ったけど、何も感じなかったよ」
「ちょっ・・・・・そんな所行って捕まっても知らないよ」
「え?私女の子だから、大丈夫だよ」
と和実はにこやかに答える。
「でも女子更衣室への移転は問題無しね」
「はい」
ふと和実は2ヶ月ほど前の渚さんのことばを思い出した。
女の子になるのはいいけど、引き返せなくなるよと。
もう引き返せない道に入っちゃってるな、という気がした。
店長が出勤してきた。
「あ、店長、ちょっとお話があるんですが」
「あ、女子更衣室の件は聞いた?」
「はい。女子更衣室使わせてもらいます」
「うん、君さえよければ、他の子はみんないいと言ってるから」
「はい。それで、もうひとつ、私、メイド名変えていいですか?」
「ああ。いいよ。ミケは適当すぎるとは思ってた。何にするの?」
男の子にして女の子というので「雄の三毛猫」→「ミケ」という
命名だったのだある。
「はるか、です」
「字は?」
「ひらがなではるかです」
店長はメモを取った。
「苗字とかはある?」
「いえ、ただのはるか。苗字があったら、なんだかその人だけの物になっちゃう。私は誰の物でもない。自由に生きる、はるかです」
「ね、君、雰囲気変わったよね、1〜2ヶ月前とは」
「そうですか?」
「君と話していて、以前はこの子は男の子だから、と自分に言い聞かせながら話していたんだけど、今どうやっても女の子と話している気分にしかならない。いや・・・体臭まで女の子の体臭になってる気がしてならないんだけど」
「だって、私女の子ですから」
といって、和実はニコッと笑った。
店長はその笑顔にドキっとして禁煙タバコを落としてしまった。
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萌えいづるホワイトデー(7)