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■クリスマス事件(3)

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手術からもう1時間経っているということで、傷の様子を見ましょうと言って医師はボクのお股の所に巻かれている包帯を外した。
 
ボクは息を呑んだ。
 
これが女の子のお股なの!??
 
おちんちんとタマタマが無くなっていて、代わりに縦の筋ができている。写真で見たのと同じだ。医師はその筋を2本の指で押し広げた。
 
「ここにちょっとコリコリしたものがあるでしょ?」
「はい」
「これがクリトリス。傷の痛みが引いたら、これ触ると気持ち良くなるようになっているから」
「へー」
「女の子のオナニーはこのクリトリスをいじるんだよ」
「じゃおちんちんみたいなものですか?」
「そうそう。女の子のおちんちんだよ」
と医師は説明する。
 
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「ここにおしっこが出てくる穴があるから」
「おしっこする時はそこから出てくるんですか?でもおしっこの飛ぶ方向とかどうすれば調整できるんですか?」
「まあ調整は無理だね。単に出てくるだけだから」
「うーん・・・」
 
「それからここがヴァギナ。赤ちゃんが出てくる穴だよ」
「わぁ・・・」
 
「取り敢えず手術が終わってから半年もしたら、ここから月の物が出てくるようになるから」
「何ですか?それ」
「女の子は毎月1回、赤ちゃんを産む準備が出来る。でも赤ちゃんができなかった時は、代わりに月の物が出てくる」
「小さな赤ちゃんですか?」
「赤ちゃんになりそこないの、血の塊だね」
「血が出るんですか!?」
「女の子はこれを50歳くらいになるまで毎月出さないといけないんだよ」
「なんか大変そう」
「男の子のオナニーとどちらが大変かは議論になるね」
 
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「あ、ボクもうオナニーはできないんですかね」
「おちんちん無くなっちゃったから。でも代わりにクリトリスでオナニーできるんだよ」
「へー」
「でもクリトリスのオナニーは男の子みたいに毎日のようにしなくてもいいんだよ。月に1〜2度で済むと思う」
「そんなものですか」
 
「そしてクリトリスのオナニーはおちんちんのオナニーの100倍気持ちいいから」
 
「ほんとですか?」
「だから女の子になったことを後悔する子なんていないよ」
「ちょっと楽しみかも」
 

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女の子になったから、女の子の服を着なければと言われる。
 
最初にクリスマスブーツに入っていた、猫のキャラクターの何だか可愛い女の子パンティを穿いた。
 
「左右で持ってみて、細い方が前だから」
「前の穴が無い」
「女の子はおちんちんが無いから、そこから出すものが無いから」
「あ、そうか」
 
それからブラジャーを渡される。
 
「でもボクおっぱい無いよ」
「おっぱいはすぐ膨らんで来るから。ブラジャーに慣れておこう」
「へー」
 
でも付け方が分からない! お姉ちゃんが教えてくれて、まずは両手を通し、それから後ろに手を回してホックを留めた。
 
「見えないから難しい」
「慣れたら簡単にできるようになるよ」
 
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それから女の子シャツを着せられるが、これは男の子シャツとあまり変わらない。衿口の所にレースが付いているくらいだ。
 
それからクリスマスブーツに入っていたスカートを穿く。これはどちらが前かよく分からない。
 
「スカートの前後は女の子でもよく分からないものが多いんだよね。このスカートの場合はファスナーのある所が左側だと思う」
 
それでスカートの中に足を入れ腰まで引き上げる。ホックを留めてから左側のファスナーを上に揚げた。
 
「これズボンの代わりなの?」
「そうだよ。女の子はズボンは穿かないから」
「なんか凄く頼りない感じ」
「慣れれば平気」
「これパンティが見えちゃわない?」
「見られるのは平気だよ」
「そういうものなのか」
 
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それからブラウスを渡されたが、ボタンが男の子のワイシャツと逆に付いているので、ボタンを留めるのに物凄く苦労した。
 
「これ留めにくい〜」
「それも慣れたら平気」
 

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そこまで着たところでトイレの練習をしようと言われる。それでお姉ちゃんと看護婦さんと一緒にトイレに行く。でも足がスカートに引っかかってしまい、最初はいきなり転んでしまった。
 
何かスカートって歩きにくいよぉ!
 
「膝より下だけを動かして歩くような感じで歩いてごらん」
と看護婦さんに教えてもらった。男の子から女の子に変わって最初はみんなそれで転ぶんですよ、と看護婦さんは言っていた。
 
トイレの所まで来て、ボクがうっかり男子用の方に入ろうとしたら
「そちらは違う」
とお姉ちゃんに言われる。
 
「あんた女の子になったんだから、こっち」
と言って女子用に連れ込まれる。きゃー。
 
女子用トイレは、ずらっとドアが並んでいるだけである。何か変な感じ。凄く狭く感じる。そのドアのひとつを開けて中に入る。
 
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「取り敢えず座って」
「うん」
 
ボクは大をする時のように便器に腰掛けた。ドアは開けたままでお姉ちゃんと看護婦さんが見ている。
 
「おしっこを出す時の感じは男の子も女の子も同じなんですよ」
と看護婦さんに言われる。
 
「うーん・・・」
 
でもおちんちんがあれば、小便器の前に立っておちんちんをズボンのファスナーから出したら自然におしっこは出ていたのだが、これどうすればいいんだろう?
 
男の子と同じと言われても、おちんちんが無いから感覚が分からない。
 
「えっとね。大をする時の感覚は分かるよね?」
「はい」
「それと似たような感じで、でも後ろの方は引き締めたまま、前の方だけ緩めてみて」
と看護婦さんが言う。
 
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それでそういう感じにしてみる。
 
「あ、出た」
「良かった、良かった」
 
おしっこは何だか身体から直接、下に落ちていくような感じ。これおしっこをしているというより、単に外に流れていってる感じ。積極的に「出す」んじゃなくて「出てる」というのに近い。でも、もうおちんちん無くなっちゃったから、これで慣れるしか無いのかなあ、とボクは思った。
 
それで終わってから立とうとしたら
「拭いて」
と言われる。
 
「女の子はおしっこした後は紙で拭くんだよ」
「へー!」
 
それでトイレットペーパーを少し取って、拭くと結構濡れる。ほあ、こんなに濡れていたのか。何か女の子は大変だなと思った。男の子ならおちんちんを振れば済むのに。そうか。振ることができないから、拭かないといけないのか。
 
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女の子になる手術なんて、無茶苦茶痛いんじゃないかと思っていたのだけど、痛みはほとんど無かった。本来は物凄く痛いのを神経の一部をブロックする小さなニードルが刺されているのと、体内に鎮静剤のカプセルが埋め込まれていて、向こう半年間はずっと痛みを抑えてくれるらしい。傷口はナノマシンで細かい縫合がされているので、よほど気をつけて見ないと分からない。ただ、触った時に感触が無いので、ああここも神経がブロックされているんだろうなとボクは思った。これらのマイクロニードルや鎮痛剤カプセルは半年後に再手術して取り出すことになるらしい(一部のマイクロニードルは溶けて身体に吸収されてしまうと言っていた)。
 
手術が終わってから3時間ほどで退院許可が出たので夕方5時頃、病院を出た。病院に来たのが昼前で、手術は1時から2時頃まで1時間ほど掛かったようであった。ボクはそのまま市役所に連れられて行って、性転換届けを出した。届けの用紙の左半分はお医者さんが書いた性転換手術証明書で、右側に両親の名前、ボクのこれまでの名前「ハルト」、新しい名前「ハルア」というのが記載されている。
 
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「あら、あなた女の子になったの?」
と戸籍係の人がボクに訊く。
 
「はい」
と答えると
 
「良かったねー。おめでとう」
などと言われる。
 
女の子になることが「おめでとう」なのか。そういえば病院の先生にもやはり「おめでとう」と言われた気がするなと思う。
 
「ありがとうございます」
「あなたなら、きっとりっぱな女になれるだろうから頑張ってね」
「はい」
 
市役所の人は証明書を見ている。
「陰茎・睾丸除去、陰嚢除去。大陰唇・小陰唇・陰核形成、膣・子宮・卵巣の自己移植、尿道口は女性様に変更」
と読み上げた上で
「豊胸はしていないんですね?」
と訊かれる。
 
「まだ中学生なので、胸が無くてもそう不自然ではないだろうということで。すぐ大きくなりますし」
と母が言う。
 
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「分かりました。それではこれで受け付けます」
と係の人は言った。
 
それで戸籍係の人は戸籍を修正し、すぐに戸籍記載事項変更証明書を発行してくれた。これを学校に提出して登録を直してもらってと言われた。
 
旧氏名 ハルト・カラバン、新氏名 ハルア・カラバン
旧性別 男 新性別 女
 
と書かれている。ボクはそれを見てあらためて「そうか。ボク女の子になっちゃったのか」と思った。
 

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市役所の後、みんなで空港に出張に出かけるお父さんを見送った。それから母は
 
「じゃ、ちょっと温泉に入ってから帰ろう」
と言う。
 
それで市の郊外にある温泉に行く。入口が男湯と女湯に別れている。ボクは母に 
「じゃボクはこちらから入るから料金ちょうだい」
と言ったのだが
「何言ってんの。あんた、女の子になったんだから、私たちと一緒だよ」
と言われる。
 
あ、そうか!
 
それで母や姉・妹と一緒に女湯の方に入るがドキドキする。
 
きゃー。女湯なんて幼稚園の時以来だよ!
 
見ると裸の女の人がたくさん居る。おっぱいを出したまま歩いている人がいる。ボクは真正面に見た女性のおっぱいの形が円形に盛り上がっていて「わあ、きれいだなあ」と思った。
 
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