広告:ボクの初体験 2 (集英社文庫―コミック版)
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■体験取材(8)

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戸籍の性別変更が認可された通知は1ヶ月ほどで届いた。裁判所からの手紙を見て僕は、ああ、とうとう本当に僕、女になっちゃったんだなあ、と改めて思った。
 
その戸籍の変更が終わった旨も会社に報告したのだが(源泉徴収の書類上の名前も新しい戸籍名に合わせられた)、その時
 
「取材で車を運転することもあるから運転免許取らない?」
と言われた。
 
それで2ヶ月ほど自動車学校に通って免許を取得したが、新しい緑の帯の運転免許証にお化粧をした自分の顔の写真が入り「円山ゆき」の名前が記載されているのを見て、僕はまたふっと息をついた。
 
僕はそのあと、銀行口座、クレジットカードの名義、電気やガスの契約、オンラインで登録している様々なサイトの登録、などの変更作業もしたが、これがなかなか大変であった。
 
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銀行で
「改名したので名義を変更したいのですが」
と言うと
「新しい姓と旧姓の両方が確認できる書類を見せて下さい」
と言われる。
 
こちらが女に見えることもあり、どうも結婚したと思われた雰囲気だ。
 
「あ、いや苗字ではなくて下の名前が変わったので」
「改名なさったんですか?」
「そうです」
「では裁判所からの審判の結果通知の書類がありますか?」
と訊かれたので見せる。
 
すると性別の変更と改名が同時に許可されているというのに向こうは驚いたようであった。その窓口の子では分からなかったようで奥の方で相談して、結局副店長さんが出てきて対応してくれた。一応時々ある事例らしくてどこかに何度か電話して確認したりしながら対応してくれた。
 
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しかしさすが裁判所の書類の効果は強力である。氏名・性別ともに問題無く変更してもらえた。
 
オンラインサイトの中にはオンライン上で名前や性別を変更できる所もあり、そういうところはすぐ変更したが、名前は変更できても性別は変更できないところもあり、そういうところは最終的には電話して対応してもらった。
 
このあたりの改名の手続きについて僕は11枚目のレポートを書いた。
 

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新聞社の仕事だが、女になったということで、本来の担当の芸能関係以外に、家庭的なネタの取材や、中高生などの話題の取材に行くことも増えた。
 
僕はそういう「女子社員生活」とプライベートをまとめた「女の子ライフ」も13,14枚目のレポートとして書いた。僕のレポートは、紙上では衝撃の「愚息が昇天してお星様になってしまいました」というところで終了していたものの(多くの読者はフィクションと思ったようである。まあ、普通は取材のために性器を放棄する人なんてまず居ないだろうね。僕も知ってたらさすがに嫌だと思っただろうし)、その後のレポートも適当な機会にまとめて一気に掲載しようということになったようである。
 
給料については、実はこの会社、男女に微妙な?給料の差があるのだが、僕は女子並みの給料でいいですと言ったら、ほんとに下げられた!
 
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「女子の給料、こんなに低いんですか?」
と(竹越)民子さんに言うと
「男女差別酷いよねー」
と彼女も言っていた。
「だってお化粧品代とかかかるのに」
「ほんと。化粧手当を出して欲しいくらいだよ」
 
僕は女子になってしまったことで「出世競争」からも外れた感じであった。僕はもとより、そんなものする気は全く無かったのだが、1年目は似たような立場の畑山君や佐藤君から敵対的な視線を感じることもあった。しかし彼らは僕が女になってしまって以来、一様に親切になった。
 
取材に行く時も一緒に行く男の子が荷物を持ってくれたりするし、高い所にある書類や機材を取ろうとしていたら、近くの男子が寄ってきて取ってくれたりする。僕は結構女の子ってのもいいもんだと思ったりしていた。
 
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やがて年末年始が来るものの、僕は田島さんから言われた。
 
「おい、円山、今度の忘年会ではもう女装しなくてもいいからな」
「えーっと。男装するのでしょうか?」
「いや、お前もう女になっちゃったから、女の服を着ているのが普通でそれ全然女装じゃないから」
「まあ確かにそうですね」
 
などと言っていたのに、結局またまた女子高生の制服を着せられた!!初めて女装させられた時はセーラー服だったが、今回のはブレザーにチェックのスカートである。
 
「何か変なコレクションが増えて行きます」
「コスプレができるな」
 
「でもゆきちゃん、可愛いからまだ充分女子高生で通るよ」
などと民子さんも純奈も言っていた。
 
更に新年会では振袖を着せられたが、純奈や、1つ下の女子社員の裕香も一緒に振袖を着た。着付けは美容師さんにしてもらった。振袖はそのままもらえるのではなく、さすがにレンタルである。
 
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「これ着るの大変だったけど、何かいいですねー。1着欲しい感じ」
「安いのは7−8万円であるから買うといいかもね」
「そんなに安くあるんですか?」
「それでゆきちゃん、成人式の写真を撮り直すとか」
「うーん・・・」
 
確かに今ちょうど成人式のシーズンだ。
 
「実際の成人式はどんな格好で出たの?」
「行きませんでした」
「ああ、やはり男物の服では出たくなかったから?」
 
自分って元々小さい頃から女の子になりたかったんだろうと、みんなは思っているみたいだなあ、と僕は考えた。
 

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その年の年賀状に僕は「性が変わりました」と書いて、「旧名行雄・新名ゆき」と記した。年賀状でよく、結婚して「姓が変わりました」と書くところを間違って「性が変わりました」と誤記する例が結構あるなあと思うと、心の中から可笑しさがこみあげてくる。
 
僕の場合は本当に性が変わっちゃったし、などと感慨深く思った。この年賀状に対しては「びっくりしたー!」という反応が結構あった。
 
僕は実家にも帰省したが、女になった僕を見て両親は腰を抜かした。
 
「お前、女の子になりたかったの?」
「うーん。別になりたかった訳じゃないけど、なりゆき」
「それでお前いいの?」
「まあ、何とかなるんじゃない?」
 
でも姉は
「妹が欲しい気はしていたから、ちょうどいいかも」
と言ってくれた。
 
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僕は「新しい娘」として多少は親孝行できたかなと思う。母と姉と一緒に近くの温泉にも行ったが
「ほんとに女の子になっちゃったんだねー」
と言って母から随分あちこち触られた。
 
「おちんちんも無いんだね」
「付いてたら女湯に入れないよ!」
 

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そして1月下旬のある日のこと。また田島さんと民子さんが何か話していて、こちらをチラっと見たので、嫌〜な予感がする。
 
まあ性転換されちゃった以上、これ以上性転換されることもあるまいが。それとも男に性転換してこいと言われたりして!?
 
民子さんが僕を手招きするので仕方なく寄って行く。
 
「ゆきちゃん、ちょっと体験取材してきてくれない?」
「何の取材ですか?」
「新しい女性向け風俗なのよ」
「なるほどー」
「他の女子社員にはさすがに風俗行って来いとは言えないし、私もそんな所に行ったら婚約解消されそうだし」
 
「まあいいですよ。行きますよ」
「あなた、性交は可能なんだっけ?」
「女の子とは性交できない身体になっちゃいましたが、男とならできるはずです」
 
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まあリンダとはしたしね〜。あの子小さかったから、普通の男のが入るかどうかは未知数だけど。
 
「あなた妊娠はしないんだよね?」
「生で入れるんですか?」
「まさか。ちゃんと付けるよ」
「だったらいいか。一応卵巣や子宮は無いはずです」
「だったら万一の時も妊娠しないから安心ね」
「そうですね」
 
「うちの女性向け風俗レポートしてくれていたCさん、こないだ妊娠しちゃってさ」
「何歳でしたっけ?」
「公称47歳だけど実は52歳だったのよね」
「妊娠できるんですか〜?」
「本人もびっくりしたらしい。生理も最近は途切れ途切れになっていたのにって。でももうこれ逃したら絶対に子供産めないだろうから頑張って産むと言ってる」
 
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「取材で妊娠したんですか?」
 
「プライベートに付き合ってる男は居なかったらしい。取材では入れる時も毎回ちゃんと避妊はしていたらしいんだけどね。どこで誰とした時に妊娠したのか自分でも分からないけど、ひとりで頑張ると」
「すげー」
 
「でも新たに女性の風俗レポーターとか募集しないんですか?」
「今、適当な人材を探している。何人か面接したんだけど、文章書かせたら酷くってさ」
「そうか。文章が書ける人でないとダメなんだ!」
「当然、当然」
 

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そういう訳で1〜2ヶ月以内には絶対新しい人採用するから、それまでしばらく頼むなどと言われ、僕は初体験となる、女性向け風俗店を訪れた。
 
僕はこの頃にはボイストレーニングの結果、ふつうに女の声に聞こえる声で話せるようになっていたので笑顔で「体験取材に来ました〜」と言うと、そのお店でナンバーワンの稼ぎ手の男性ホストを紹介してもらえた。
 
最初はそのホストと一緒に外出してお茶を飲んでおしゃべりをしたが正直会話がつまらんと思った。これを考えると、リンダは会話が上手かったんだなあと思う。まあ200万の店と3万の店では違うか??
 
その後、ドライブデートするが、この車の運転が下手くそである。自分が運転したいぞと思った。
 
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その後、ホテルに入って、やっとここから本格的なプレイの開始となったようであるが、さすがにこれは上手いと思った。
 
裸になって(自主的に脱いだ)、ホストが全身のあちこちにタッチしてくるが丁寧である。そしてこちらの反応を見て触る場所や触り方を変えていく。乳首はかなり敏感になっているのを感じた。すごーい。僕って女の身体の感覚になってるんだなあ、と思う。
 
胸のタッチをかなりやってから、栗ちゃんにタッチされる。これも凄くソフトにされるので、気持ち良かった。
 
「男性とのセックスの体験はあります?」
と尋ねられたので
「1度だけ」
と答えると
「ああ。あるなら安心ですね。処女の方にはできないこともあるので」
と彼は言っていた。
 
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最初に見せられたメニューには「本番行為は致しません」と書かれてはいたのだが、実際にはあるのかなあ、などと考えながら、栗ちゃんをいじられていた。
 

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ホストさんとのホテルでのプレイは2時間近くに及んだが、僕は男性時代には感じたことのなかったほどの絶頂を何度も経験した(でも潮吹きはしなかった。やはりあれは前立腺を刺激されないと起きないのかも)。
 
栗ちゃんだけで何度も行ったのだが、僕が勢いで
「もう入れて〜」
などと言うと、
「本当は禁止されているんですけどね」
などと言いつつ、避妊具を装着して入れてきた。
 
避妊具が用意されている時点で、やはり本番行為は想定されているのだろう。
 
本当にあんな大きいのが入るのかなと少し不安だったが、入れられても特に痛くはなかった。でも思ったほど気持ちよくもない。やはり入れられるより栗ちゃんをいじられる方が気持ちいい気もするなと思ったが、女としての性交体験が少ないせいかも知れないという気もした。
 
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もっとも風俗で性交体験は重ねたくないけどね!
 
最後はこちらは逝った振りをしてプレイを終えた。ホストさんは結局射精はしなかった。その点を訊くと
 
「出してしまうと小さくなってプレイを続けられませんから」
と笑って答えていた。
 
なるほどー! でも射精を我慢しないといけないというのも大変だね!!
 
僕は最後の20分ほど、彼が作ってくれたインスタントコーヒーを飲みながらレポートを作成。メールで送信して、この日の体験取材を終えた。
 
でもこの後もこの手の風俗の体験取材たくさんやらされそう! 誰か早く女性の契約記者さんをスカウトしてよね!
 

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新しい女性レポーターさん(元ソープ嬢らしい)は3月の中旬には決まり、僕はこの手の仕事から解放されたものの、それまでに3度も女性向け風俗店のレポートをした。2つは男性ホストにしてもらったのだが、1つは女性のコンパニオンが出てくるのでびっくりした。
 
しかしこの女性に栗ちゃんをいじられた時がいちばん気持ち良かった。そのことを言うと
「だって男に女の快感が分かるわけ無いじゃないですか」
と言われて
「なるほどー!」
と納得した。
 
「でも男性ホストとのプレイは疑似恋愛なんですよ。その雰囲気を楽しむのがそういう系統のお店の売りですね」
と彼女。
 
「確かにね。でもここだけの話、今まで取材で会ったホストさん、人気No.1とか言って紹介してもらったのに会話があまりうまくなかったです」
と私は言う。
 
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「うんうん。私も勉強のために時々そういうお店行くけど、会話の上手な人には当たったことない」
 
と彼女は言っていた。その彼女はトークもとても上手かった。
 

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4月。この会社にまた新入社員が入って来た。僕と純奈は新入女子社員の教育係に任命されて、仕事の仕方とか、取材する時の心得、守秘義務や個人情報の保護など、そして接客の仕方なども指導した。
 
そんな中でひとりの女子社員が質問する。
 
「スポーツ新聞ってよく体験取材とかやってますけど、あれって私たちもするんですか?」
「大半は契約レポーターの人が取材して書いているんだよ」
「ああ、そうですよね」
「まあ男子社員の中には体験取材を時々やらされている人もあるみたいだけどさすがに女子社員にはまずやらせないから」
と言うと
「安心しました〜」
などと言っている。
 
「よく愚息も昇天なんて書いてあるけど、私愚息持ってないし」
と彼女。
 
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「手術して付けちゃう?」
「1本欲しいなと思う時もありますけどね。おしっこする時便利そうだし」
「でもあれ付いていると、ハイレグのショーツ付けた時にこぼれちゃうよ」
と私が言うと
「ああ、こぼれるかも。オカマさんとか大変ですね」
と彼女が答える。
 
純奈が何だか苦しそうにしていた。
 
 
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■体験取材(8)

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