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■女たちの親子関係(8)

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「だから貴司を5000万円で買い取って欲しいのよ。貴司の口座残高調べたら残金70万円。株の口座も屑株しか残ってないし。あれじゃ離婚の慰謝料も取れないしさ。でも千里さん、あんた有名な作曲家なんでしょ?あんたがいつか大阪のマンションに来た時に書いてた曲、あとで遠上笑美子が歌ってたもん。5000万円くらい出せるよね?」
 
そう言って、美映は、署名捺印済の離婚届、貴司の署名・捺印があり妻の欄が空白の婚姻届けを千里の前に出した。
 
桃香が「ちょっとあんたね」と言ったが、千里はそれを制した。
 
「分かった。買い取る。5000万円出すよ。その代わり、二度と同種のお金の請求はしないし、貴司とも関わらないという念書を書いて」
と千里は言った。
 
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「うん。書くよ」
 
「千里、5000万あるの〜?」
と桃香。
「うーん。ぎりぎりくらいかな」
と千里。
 
それで千里は音楽関係でお世話になっている顧問弁護士を呼んだ。弁護士は「夫の買い取り」は《公序良俗違反》で無効な取引(民法90条)とみなされる可能性があるので、美映が貴司の家で使用していた家財道具を含む「夫婦の共有財産」の美映が権利を持つ部分(半分)を買い取るという名目ではどうか?と提案した。一般人ではその程度の家財道具で5000万円はありえないが、写真集が発売されたこともある元日本代表のスポーツ選手の家の家財道具が5000万円というのは有り得なくもない金額である。
 
「ああ、その程度あげるよ。私の服とかも自由に使って。私も身一つで大阪に戻って、取り敢えず友だちの家にでも転がり込むつもりだったし」
 
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と美映がいうので、そういう名目にすることにして、売買契約書を作成した。
 
「あ、ところで緩菜はどうする?」
と美映は訊いた。
 
桃香は目をパチクリさせる。
 
「緩菜ちゃんは美映さんと一緒に大阪に戻るんでしょ?」
と桃香。
 
「どうしようかなあと思ってさ。私、この2年間の育児で疲れちゃったのよね。この子、よく泣くしさ。つい叩いてしまって。それに再婚考える時に子供がいると面倒だしさぁ」
 
千里は何か言おうとしたが、今度は桃香が制した。
 
「だったら、緩菜ちゃんも私たちが育てようか?」
と桃香。
「あ、そうしてくれると助かるかも」
と美映。
 
桃香が弁護士さんに訊いた。
 
「この場合、離婚届の親権者の欄で、親権者を貴司さんにしておけばいいですよね?」
「ええ、そうすれば問題ありません」
 
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それで、美映は離婚届の「夫が親権を行う子」の欄に細川緩菜と記入した。
 
そして川口市役所の窓口に行き、離婚届を提出する。弁護士がいたこともあり窓口の人はそのまま受け取ってくれた。それを見て千里はその場で美映の口座に5000万円振り込んだ。
 
「すごーい。桁を数えちゃった!」
と自分のスマホを見て、はしゃいでいる美映を見て、千里も思わず微笑んでしまった。
 
その後、弁護士さんと別れ、みんなで東京駅まで行き、明るく手を振って新幹線に乗り込む美映を見送った。
 
「ママ、どこいくの?」
と緩菜が訊く。
 
「うん。お仕事なんだよ。大変なお仕事で何日もかかるんだって。だからママが帰ってくるまで《お姉ちゃん》たちと遊ぼうね」
と桃香が言ったが
 
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「うん、いいよ。《おばちゃん》」
と緩菜は答えた。千里が苦笑していた。
 

京平を幼稚園に迎えに行った後、取り敢えず緩菜ちゃんの着替えとかを取ってこなければと言って、川口市の貴司のマンションまで行くことにする。この時初めて、セレナに4個のチャイルドシートをセットした。
 
夏までは京平・早月・由美3人ともチャイルドシートを使用していたのだが、身体の大きな京平はこの秋からジュニアシートに変更した。それでちょうどチャイルドシートが1個余っていたので、それに緩菜を乗せた。
 
2列目に京平・早月、3列目に緩菜・由美と乗せ、助手席に桃香が乗り、千里はセレナを運転して貴司のマンションに行く。美映から預かった鍵で部屋を開け、タンスの中から緩菜の着替えを出す。
 
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「千里、今迷わず、緩菜の服が入っているタンスを開けた気がしたが?」
と桃香。
「気のせい、気のせい」
と千里。
「千里、その前に駐車場のドアを難なく開けたよな?千里って機械に弱いのに」
「気のせい、気のせい」
「よく考えたら、このマンションに来るのに全く迷わなかった」
「カーナビがあるし」
「なぜカーナビに登録されている?」
「しまった!」
「あとでおしおきだな」
「勘弁して〜」
 

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「でも美映さん、ブランドものが好きだったみたいね」
と桃香が言う。
 
実際女の子向けのブランドの洋服がかなりある。下着もサンリオとかディズニーだ。大手スーパーや衣料品店の自主ブランドの類は入っていない。
 
「これ生活費、かなり掛かっていたのでは?」
と桃香。
 
「それでお金かかりすぎて、阿倍子さんへの仕送りが困難になっていたんだったりしてね」
と千里は取り敢えず言っておいたが、実際には緩菜が宝くじを当ててくれるので、そのご褒美に可愛い服を買ってあげていたのである。高卒1年目レベルの貴司の給料だけでは、とても一家の家計はまかなえなかった。本来はそれにスポーツ手当が加わってまともな給料になるのだが、コロナの影響でチーム活動が停まっていたことから、スポーツ手当は支給されていなかった。
 
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服をあり合わせの段ボールに詰めていたら、貴司が帰宅した。
 
「お帰り。今日は残業無かったの?」
と千里は笑顔で貴司に言う。
 
「水曜日は残業は無いよ。ってか、千里、何してんの?」
と戸惑ったように言う。
 
「ああ、貴司さん、大変だったね。でも緩菜ちゃん、私たちがちゃんと面倒見るから安心してね」
と桃香が言う。
 
「美映に、まさか、何かあったの?」
と貴司が言うので、千里と桃香は顔を見合わせる。
 
「貴司、美映さんと離婚したんだよね?」
と千里が訊くと
「はぁ〜〜〜!?」
と言って絶句する。
 

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取り敢えずLDKのソファに座って話をすることにする。子供たちは何だか鬼ごっこをしている。緩菜もすっかり由美たちと仲良くなっている。
 
「ちょっと話を整理してみようか?」
と桃香が言う。
 
「千里の所に今日美映さんが来て、貴司さんを5000万円で買い取ってくれと言ったんだよね。それで千里は同意して、5000万円と交換に、貴司さんと美映さんの離婚届、妻の欄が空欄で貴司さんの署名捺印だけがされた婚姻届を受け取った」
 
「嘘!?僕って売られちゃったの?」
「金銭トレードだな」
 
「交換トレードってのもあるんだっけ?」
と千里が言うと
「それはママレード・ボーイという名作が」
と桃香。
 
「あ、確かに」
 
「この話、貴司は全然知らなかった訳?」
「そんなの聞いてない。美映はどこ?」
「もう大阪に帰ったけど」
「えーーー!?」
 
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「で緩菜ちゃんは私たちで育てることにしたし」
「なぜ、そういう話を僕が知らない!?」
「それは私たちが聞きたいことだ」
 
「離婚届って・・・提出したの?」
「提出済み」
「僕と千里の婚姻届は?」
「私の分の記入はしたけど、桃香との協議が必要だから提出については保留」
と千里。
「個人的には破棄したいが、私には5000万円は出せんから協議だな」
と桃香。
 

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貴司がこの件を知らなかったということは、離婚届・婚姻届の貴司の分の署名は美映が貴司の筆跡を真似て書いたのだろう。貴司の本当の筆跡と違うことに千里が気づかなかった訳が無いが、おそらく自分に都合の良い進行をしていたので気づかないふりをしたのだろうな、と桃香は想像した。
 
貴司は美映に電話をしたが、かなり激しいやりとりをしていた。やがて向こうが勝手に切ってしまったようで、貴司は疲れたようにスマホを脱いだ背広の上に放り投げた。スマホが「痛い!」と声に出して文句を言う。
 
「何て勝手な女なんだ。結婚する時も結婚してくれなかったらマスコミにたれこむし1億円の慰謝料と月額100万円の養育費を要求するとか言われて・・・・それで突然こんな形で離婚して」
 
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「貴司が馬鹿なだけだと思うけど。結婚しているのに他の女とホテルなんかに行くのが悪い」
と千里は言いながら、若干後ろめたい。それ私のことじゃん。
 
しかしあの時期、千里としては信次との結婚を決めて長年の貴司への思いも断ち切ることができていた。それで、それまで貴司に寄ってくる女をことごとく排除していた(結果的に貴司と阿倍子の結婚を維持していた)のも、しなくなった。そのタイミングで美映は貴司に急接近したのだ。
 
「ほんとに僕は馬鹿だ。阿倍子にも本当に申し訳ないことをした」
 
「でもこれで貴司さんも美映さんと離婚する気になったのでは?」
と桃香。
 
「うん、いいよ、もう離婚で」
と貴司は疲れたように言う。
 
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「おかあちゃん、おなかすいたー」
と京平も早月も言うので、千里があり合わせの材料でカレーを作ったら、子供たちは
「おいしい、おいしい」
と言ってたべてくれた。牛乳を加えて超甘口にしているので、由美や緩菜も美味しそうに食べている。貴司も疲れたような感じながら何杯もお代わりしている。
 
「これママのカレーよりおいしい。また食べたいな」
と緩菜がいう。
 
「カレーくらいいつでも作ってあげるよ」
と千里も微笑んで緩菜に言った。
 

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「だけど緩菜ちゃん、今日1日で早月や由美と随分仲良くなった。やはり女の子同士はすぐ仲良くなるんだね」
と桃香が言う。
 
「本当の兄妹であるはずの京平の方が緩菜にはちょっと遠慮がちだったね。やはり男の子と女の子だと少し壁があるのかな」
と千里も言う。
 
(緩菜は京平の同母妹。また由美の同父姉。早月の“ツイスト妹”になる。つまり緩菜はこの3人全員の姉妹である)
 
「だけど、美映さんが美人だから、緩菜ちゃんも美人に育ちそうな感じ」
と桃香が言った所で
 
「ちょっと待って」
と貴司が言う。
 
「千里も桃香さんも勘違いしてる」
「ん?」
 
「緩菜は男の子なんだけど」
と貴司。
 
「何ですと〜〜〜〜!?」
 
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「だって、男の子だったら、どうしてロングウェーブの髪で、スカート穿いてるのよ?」
と千里。
 
「下着も全部女の子のだったけど」
と桃香。
 
「いや、本人がこういうの好きだから」
と言って貴司は頭を掻いている。
 
「でも千里も僕と初めてあった時はロングの髪で、女の子の和服着てたし」
と貴司が言うと
「なるほどー。こういうのが貴司さんの理想なのか」
と桃香は勝手に納得している。
 
「あれ?かんなちゃん、おとこのこだったの? でもスカートくらいぼくだってはくし、いいよね?」
と京平。
 
「あれ、かんなちゃん、おとこのこなの?でも、おちんちん、とっちゃえば、おんなのこになれるんだってよ」
と早月。
 
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千里は頭が痛くなってきた。
 
 
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