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■△・葉月救済大作戦(3)

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2018年の夏以降は、夢紗蒼依・松本花子と、王絵美さんが主催する望坂拓美、そして響原部長のUDPという4つの作曲プロジェクトが動き始めて、日本の音楽業界は工房制作楽曲が商業的音楽の中心的地位を占めていくことになる。1990年代にある事務所が似たようなことをしたが、あれはマニュファクチュア的であったし、あまりにもワンパターンすぎて、すぐに飽きられてしまった。今回はあの事務所の方式に最も近い望坂拓美でさえも、多様な楽曲の構成を容認しているし、むしろ多様的になるように参加メンバー個々の個性を活かしている。
 
そしてこの年メジャーから販売されたCDのうち実に8割ほどがこの4つおよび、もとより作曲家集団として活動していた“東郷誠一”のどれかから生み出されたものとなったのである。
 
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その中で、特に大きなプロジェクトである夢紗蒼依と松本花子は2018年秋以降、相手がどういう体制で楽曲制作をしているのか、お互いに相手のことを探り始めた。その中で数人、千里と冬子が双方のプロジェクトに関わっていることに気付き、当惑する人たちもあったが、丸山アイは
 
・夢紗蒼依をしているのは千里2で、松本花子は千里3。
・冬子は自分が松本花子の中核メンバーになっていることに自分で気づいていない。
 
という認識をしていた。しかしどうも松本花子の方が夢紗蒼依より生産能力が大きいようなので、いったいどれだけ凄いコンピュータを使っているのか、と訝る。眷属たちも動員して探らせるものの、千里がきれいに霊的にも防御していて、なかなかしっぽを掴ませなかった。
 
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2018年10月13日(土)。
 
この日、丸山アイ(虚空)から“松本花子”に関する情報を集めるよう言われていた《こうちゃん》の6番エイリアスは松本花子のメンバーとしてマークしていた奥村春貴が水泳部の今期の活動が終わり、打ち上げの後、ひとりで高岡方面に行くのを認めた。青葉も高岡だし、もしかして松本花子の会合でもあるのかなと思いフォローしていたら高岡駅から万葉線の電車に乗る。
 
「あ、有磯海クリニックに行くのか」
と気づく。“本体”に話しかける。
 
『奥村春貴が例の病院に行くよ』
『性転換手術でも受けに行くのかね』
『あのさ、どうせなら“完全な”性転換をさせてやろうよ』
『それいいな。俺と交替しろ』
『OKOK』
 
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それで2人はお互いの位置を交換した。実は《こうちゃん》は葉月を女の子に改造してあげようと思っていた(半分は虚空の指示だが半分はこうちゃん自身の趣味)のを千里3に阻止されたので、ムシャクシャしていた。それで誰かを性転換したくてたまらなかったのである。
 
《こうちゃん1》は高岡市内のショッピングモールに駐めてあったフェアレディZを勝手に持ち出すと(窃盗)、春貴の位置をフォローしてそちらに向けて走る。彼が有磯海クリニックの最寄り駅で降りたのを認識する。彼は車をそちらに向け、春貴の傍に停車させてクラクションを鳴らした。
 
「君、奥村さんだったっけ?」
「あ、はい・・・、先生?」
 
《こうちゃん》はクリニックの松井医師に変装している。
 
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「手術受けに来た?君なら明日にでも手術してあげるよ」
 
「いえ、今日はまだ何も準備していませんし。2月くらいにでも手術を受けられないかなと思って」
 
「ふーん。取り敢えず病院まで乗せて行ってあげるよ」
「すみませーん」
と言って、春貴は松井に変装した《こうちゃん》の車に乗り込んだ。その瞬間、《こうちゃん》は春貴を眠らせた。春貴を抱きかかえて《こうちゃん6》と位置交換する。6番に車の返却を頼む。6番はぶつぶつ言いながら、どこに返せばいいのか、車検証を見た。
 

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早矢香は帰宅すると門の前に夫のフェアレディZが駐まっているので驚いた。
「あれ?健ちゃんもう帰ってきたのかな」
などと言いながら門を開けて玄関まで行くが、玄関は鍵が掛かっている。ピンポンを鳴らすが反応が無い。
「寝ちゃったのかな?」
などと言いながら自分の鍵で玄関を開け、中に入ろうとした所で駐車違反取締員の人がやってくる。
早矢香は慌てて荷物を置くと
 
「すみません。すぐ動かします」
と言って車に乗り駐車場に回送した。
 

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健二は買物を終えた後、カートを押しながら、自分の車を探すのだが、見つからないので困ってしまった。
 
「俺どこに駐めたっけ?この付近に駐めたような気がしたんだけどなあ」
 
などと言ってかなり歩き回るものの、どうしても見つけることができない。
 
20分ほど探し回るも見つけきれず、これは夜になってもっと車の数が減るまで待つしかないかと思い、カートを押しながらいったんショッピングモールの中に戻って、取り敢えずフードコートに座った。そこに早矢香から電話が掛かってくる。
 
「健ちゃん今どこ?」
「どこって高岡だけど。俺さ、どこに自分の車駐めたか忘れちゃって。もう少し車の数が減ってから再度探すから」
「嘘?高岡なの?だってフェアレディZが玄関前に駐まってたから、てっきりもう帰ってきてたのかと思ったのに」
「嘘?なんで高岡に駐めたはずの車が名古屋にあるのさ?」
「それ私が聞きたい。じゃまだ高岡に居るの?」
「うん」
 
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健二は何がどうなってんだ?と悩んだ。
 
しかし車が名古屋なら、俺どうやって帰ればいいのさ!?こんなに荷物あるのに?
 

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《こうちゃん1》が“処置済み”の春貴を彼・・・ではなく彼女(もう“彼女”になったし、数ヶ月以内には生理も始まるはずである)のアパートの部屋に置いて、さて帰還するかと思ったら目の前に千里がいるのでギョッとする。
 
「こうちゃん、奇遇だね」
「ああ、奇遇だな、千里」
「何か焦ったような顔してるけど、何か悪いこととかしてないよね?」
「してない、してない。俺はいたって品行方正だ」
「ちょうどよかった。少し相談したいことがあったのよ。晩御飯でも食べながら話さない?」
「だったら焼肉がいいな」
「OK」
 
それで千里は通りがかりのタクシーを停め、《こうちゃん》と2人乗り込むと、金沢市内の高級焼肉店に行った。
 
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「ここなんか上品だな」
「うん。接待とかに使うこともあるよ」
「へー。なんか面倒な話なの?」
「まあ食べながら話そう」
 
千里はお店の人に6人前の料金払うから個室を使わせてと言い、2階の個室に案内してもらった。大量のお肉を持って来てくれるが、むろん《こうちゃん》ならその程度ペロリと食べてしまう。
 

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ところで彼はさっきから気になっていることがあった。それで千里に訊いてみる。
 
「あれ?今何時だっけ?」
「えっとね」
と言って千里はバッグから赤い折りたたみ式のガラケーを取り出し開いて
「18:20だね」
と言った。それで《こうちゃん》は『やはり千里2か。オーラが大きいから多分そうだとは思ったが』と納得した。
 
1番は問題外で詰まらないし、3番はまあ何か頼まれたらしてやってもいい程度には力があるけど大したことない。でも2番には逆らえないからなあ。ここはご機嫌を取って何とか「あれ」を返してもらわなくちゃ、などと考える。
 
「実は西湖のことなんだけどさ」
と千里が言うのでギクッとする。また何か叱られないかなと悩んでみるが、多分あのことや、あのこととかはバレてないと思うけどと考える。
 
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(千里は相手の思考を読んでしまうので、《こうちゃん》が色々考えることは全部千里に筒抜けになってしまうのだが、そのことを彼は意識していない。千里も西湖の幼稚園・小学校・中学校の時の在籍簿の性別が女子に改竄され、小学校や中学校の卒業アルバムの写真まで全所有者の分を女の子の格好をした写真に置換した、などと聞いてもその程度はいちいち咎めない。全所有者の分を差し替えるなんてご苦労さんなどと考えている。どっちみちあの子は社会的にはもう男の子には戻れないだろう。でもちゃんと女の子と結婚させてあげるからね、などと考えている。千里にとっても2020年1月に起きた西湖の分裂は想定外。現在は2018年秋)
 
「龍虎は去年の春以来3人に分裂したお陰で何とか多忙な仕事を、高校生活をしながらこなしているけどさ(現在龍虎は高2で西湖は高1)、西湖が限界に達している気がするんだよ」
 
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「確かにこないだも3日くらいダウンしてて、その間、門脇真悠に代役をさせたんだよ。あいつは少し演技力に難があるんだけど機転は利くから」
 
「まああの子は役者は無理かもね。『3×3大作戦』に起用してもらったし、これを足がかりにタレントへの道を歩いて行けるといいね。ニューハーフタレントの需要はそんなに多くもないけど、あの子は行ける気がする」
 
「そうそう。業界に多分10人程度もいれば足りる気がする。だから宏美(コスモス)もあの子をどう売り出すか悩んでいたんだよ。桜野みちるの後任は最初白鳥リズムを考えていたんだけど、あの子は純粋に歌手でいけるからバラエティまでさせることは無いって、エルミ(ゆりこ)が言ってね」
 
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「なるほど。ゆりこちゃんの提案だったのか。あの子もセンスいいね」
「うん。宏美といいコンビだと思う」
 

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「まあそれで単刀直入に。あんたの友だちのアナグマの男の子・・・えっと、カブラスケちゃんだっけ?」
 
「よく名前知ってるな!」
 
むろん“アナグマの男の子”と千里が言ったのに対して《こうちゃん》が頭の中に浮かべた名前を瞬間的に読み取って発音している。千里得意のハッタリ技であるが、これが通じない相手は虚空とか羽衣・子牙クラスである。紫微やゼピュロスにシュナもこの千里の技には気がつかなかった。
 
「あの子、貸してくんない?以前何度か龍虎の代役に使ったじゃん。龍虎の代わりに身体検査受けさせて、ちんちんが無いことバレないようにしたりとか」
 
「あれもバレてたか」
 
千里はその時《こうちゃん》がその子を代役に使ったので、この子の存在に気づいていた。
 
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「でも何に使うの?」
「その子に西湖の仕事を一部引き受けさせられないかなと思ってさ」
 
《こうちゃん》は考えていた。
 
「あいつよく食うけど大丈夫?」
「人間を食わなきゃ大丈夫」
「ああ、それは禁止しているから、もう100年くらい食ってないはず」
 
本当に食うのか?
 
「あの子200歳くらい?」
「170歳くらいかな。確か明治天皇と同い年だったはず。それでまだ声変わりが来てないから龍虎の代理で使っていたんだよ」
「170歳なら、まだしばらく声変わりしないよね?」
「何なら声変わりしないように玉取っちゃおうか?」
「本人がいいというならその方が助かるけど」
「じゃ聞いてみよう」
 
聞かずに強引に取ったりしないよね?私としてはそれでもいいけど、などと千里は考えている。
 
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「ちなみにカブラスケちゃんの歌唱力や演技力は?」
「龍虎や西湖ほどではないけど、歌はまあまあ上手いよ。実は昔、城みちるの代理をさせたこともある」
「だったら男の娘の代理は全然問題無いね」
「うん。あいつも女装させたくなる感じの男の子だよ」
「それなら最適かな。演技力とか機転は?」
 
「旅芸人の一座にしばらく置いてたこともある。弁天小僧菊之助とか、玉虫の前とか静御前とか、一本刀土俵入りのお蔦とかは人気だったな」
 
「女形(おやま)だったんだ!?じゃ演技上手い?」
「最低限の演技力が無ければ、アクアの替え玉は務まらない」
「それは言えるね。やはりこの役割に最適みたい」
「機転はあまり期待するな」
「この際、その程度はいいよ」
 
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