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■△・男はやめて女になります(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2020-04-26

 
タイトルは高橋留美子『うる星やつら』の中の『デートとイルカと海辺の浮気』に出てくるイルカ♂のセリフ。イルカは海辺で楽しそうに遊ぶ人間たちを見ていいなあと思い、ラムに人間に変えてもらったものの、人間の男があまりにも大変な生き物であることを痛感して、↑のセリフで女の子に変身してしまう。
 
『うる星やつら』には竜之介みたいなキャラもいるし、性転換銃が出てくるし、更には『らんま1/2』は丸ごと性転換キャラの話だし、高橋留美子さんって、こういうのお好きですよね。
 
「いわゆるMTFと呼ばれる人たちは、男だったのが女に変わるのではないと思う。元々女だったのが、生まれる時に間違って男みたいな身体で生まれてきてしまっただけ。それを本来の女に戻すだけだと思う」(山吹若葉・談)
 
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1952年にデンマークで性転換手術を受けて女性に生まれ変わり、その後の性転換ブームを引き起こしたクリスティーヌ・ヨルゲンセン(1926-1989)は「神様がうっかり間違ったのを訂正するだけ」と自分の手術について手術前夜に書いた母への手紙で語ったという。
 

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2019年5月1日、12人の眷属と8人の“乙女”たちに会う旅を終えて東京に戻った千里1は長い髪をバッサリ切ってしまった(ヘア・ドネートした)。
 
そして都内の不動産屋さんに行くと、板橋区で25坪の台形状の土地(角地)を衝動買いし、そこから紹介された工務店に行って、建坪10坪程度のバスケット練習用の家(用途は住居)を建てて欲しいと言った。
 
ここは土地が台形状で11.2m x (7.2m・8.4m)なので、広さは
(7.2+8.4)×11.2÷2=87m2になる。建蔽率40% 容積率60% なので、建て面積34m2, 延べ面積52m2の建物を建てられるので、
 
1階9.8m×3.3m(=32.34m2)
2階4.9m×3.3m(=16.17m2)
 
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の家を建てて欲しいと言ったのである(建物は敷地境界から50cm以上
空けて建てなければならないので9.8mの家を建てるには最低10.8m以上
のスパンがある土地が必要で、千里はそういう土地を探したのである。それはいいのだが、千里が
 
「1階の天井の高さを14mにして欲しい」
 
と言ったら、
 
「ここは住宅地なので、そんな背の高い家は建てられないんですよ」
 
と橋池という名札を付けた27-28歳くらいの、不動産屋さんのお姉さんは言った。女性のスタッフにはスカートを穿いている人が多いが、彼女はズボンだ。どちらも許容されている会社って、いいよねと千里は思った。ついでなら男性のスカートも許容したらいいのにと思うが、そういう会社はさすがに少ないだろう。
 
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橋池さんは説明した。
 
法的な高さ規制があり、
 
(1)道路の向こう側の端から勾配125%で引いた斜線より下までしか建てられない。
 
(2)北側に隣接する土地との境界線から、5m立ち上がった線から始めて、勾配125%で引いた斜線より下までしか建てられない。
 
この土地は北側に道路があるので(2)の北側斜線規定は考えなくてよい。(1)についてだが、北側の道路の幅が6mなので、道路から例えば0.5m下がった場所に家を建てる場合で、6.5m×1.25= 8.125m, 1m下げて建てると
7m×1.25=8.75mで、屋根がこれ以下になければならず、天井と屋根の間を50cmとして、境界から1m下げた場合でも8.25mが限界だという説明であった。
 
それで彼女と色々話していて、地下室を作ることにした。屋根までの高さは8m程度として、地下室を作る場合、延べ床面積の1/3までは容積率に算入しないので、結果的に1階9.8m×3.3m, 地階9.8m×4.5mの家を建てられることになる。
 
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「そんな広い地下室作ってもいいんですか?」
 
と千里は驚いて尋ねる。
 
「建築費は割高になりますが」
 
と橋池さん。
 
「それは全然構いません」
 
と千里は答えた。1500万円の土地をポンと現金で買ったことはこの工務店にも伝えられているようで、向こうもこちらをお金持ちの奥様と思っている感じだ。
 
実際には、地下室との階段1.0m×3.0m、および工務店さんが絶対つけた方がいいというので(長期ローンで買おうという人には多分勧めない)付けることにしたエレベータ1.2m×1.2mを含めて次のような構成にすることにした。
 
階段(1F) 1.0m×3.0m = 3.0m2
階段始端 1.0m×1.0m = 1.0m2
階段終端 1.0m×1.0m = 1.0m2
Elevator 1.2m×1.2m = 1.44m2
階移動部分 6.44m2
 
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1階居室 9.8m×2.9m = 28.42m2
1階合計 28.42+6.44= 34.86 (39.9%)
 
地階居室 9.8m×4.3m = 42.14m2
 
延べ面積 = 34.86+42.14=77.00
 
容積率計算用延面積 = 77.00 ×2/3 = 51.33 (58.8%)
 
それで↓のような家を建ててもらうことにしたのである。
 

 
結構微妙な計算が必要なので、橋池さんはExcelを使って何度も数値をいじりながら、千里が満足するレイアウトを作ってくれた。結局3時間くらい店頭で話していた。
 
千里は長時間対応してくれた橋池さんによくよく御礼を言い、握手をして別れた。
 

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橋池真澄は、その日、お金持ちそうな若奥さんが建てたいという一風変わった家(?)の商談をまとめた後、急にお腹の調子が悪くなったので、店長に言って定時で帰らせてもらった。
 
何か変な物でも食べたかなあ、などと思いながら、夕食も取らずに正露丸を飲んで寝る。
 
最近残業が多かったせいか、真澄は朝まで一度も起きずに眠っていた。
 
翌日、なんだか爽快に目が覚めた。エネルギーが満ちあふれてくる感じだ。「よし、治った。やはり正露丸効くなぁ」と思い、かなり強い尿意があるのでトイレに行き、便器に座る。
 
おしっこの出る感じが変だ。
 
へ?
 
と思って、自分のお股を見た真澄は
 
「うっそー!?」
 
と叫んだ。
 

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その日真澄は病院に行ってきたいので、午前中休むと会社に連絡をしてから、午後になって、スカート姿で会社に出社した。
 
「もう大丈夫?」
 
と店長が心配して尋ねる。
 
「はい、もう問題ないです」
 
「良かった。何だったの?」
 
と尋ねてから、真澄がスカートを穿いてることに気づく。
 
店長は顔をしかめて言った。
 
「君、お化粧とかまでは許してるけど、スカートはやめてって言ってたじゃん。一応君、男性なんだからさ」
 
「それが私、医学的に女性なんだそうです。これ病院で頂いてきた診断書です」
 
と言って真澄は午前中に病院でもらってきた診断書と、自宅のPCで勝手に作ってきた「性別変更届け」を店長に渡すと、驚愕している店長を放置して、自分の席に行き、書類入れに入れてある書類の処理を始めた。
 
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隣の机の眉香ちゃんが
 
「これからはスカートで勤務するの?応援するよ」
 
と言ってくれたので
 
「ありがとう。午前中、私宛ての電話とか無かった?」
 
と尋ねた。
 

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千里1の“暴走”がいつ始まったのかについて、後で千里2・3および、きーちゃん、こうちゃん、くうちゃん、たいちゃん、いんちゃん、すーちゃん、などで話し合ってみたのだが、どうもはっきりしない。
 
(2018年)12月に千里1が和実のお見舞いに来た時、強そうな妖怪を一目見ただけで粉砕したのを《すーちゃん》が見ていたのが、おそらく最初の霊力行使ではないかというのが有力な説である。千里1が正気を取り戻したのは、2018年8月23日に緩菜が生まれた時からなのだが、その時点では、まだかなり弱々しい感じだったと、きーちゃんは言う。
 
しかし12月に妖怪粉砕とかしていたのなら、その頃既に暴走が始まっていたことになり、2019年4月に千里1が**の法を使って人を性転換するのを千里2と3が相次いで見て、たいちゃんに警戒させるようにするのより前に、既に“犠牲者”が出ていた可能性もあるものの、調査不能なので放置することにした。
 
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「羽衣さんが千里1の霊的エンジン(羽広が言う所の“天女の羽衣”)を修復して戻したのはいつだったっけ?」
 
「あれも12月だったはず」
 
「だったら、その天女の羽衣が帰ってきてから霊的な力が回復するのと同時に暴走し始めたのかも」
 
「パワーだけ戻って来て、まだ制御能力が回復してなかったからかな」
 
「要するに羽衣のせいか?」
 
「まあ制御でききないのが悪い」
 
「じゃ制御できるほど霊力が回復したら停まる?」
 
「それって神仏の助けが必要な気がする」
 
「巡礼でもさせるか?」
 
「その手はあるよね。信次君の菩提を弔うのにとか言って」
 
「どっちみち、これ2番・3番の各々に、毎回説明するの大変だよ。あの2人手打ちさせない?」
 
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「もうそろそろ手を組んでもらっていいよな。お互い勝手に相手のふりして周囲を混乱させているし」
 
「タヌキとムジナの化かし合いだよな」
「それ普通、キツネとタヌキの化かし合いって言うんだけど」
「そうだっけ?」
 
「結局いつ会ったのがどちらの千里なのか、考えてみるとさっぱり分からん」
 
と、みんな言っている。あの2人にはほぼ全員欺されている。
 
「じゃ、私がセッティングするよ。2人ともそろそろ頃合いだと思っていると思う」
 

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それで《きーちゃん》が千里2、《すーちゃん》が千里3に、この話をし、双方ともこれからは協力することに同意した。
 
「まあ和実の妊娠維持では実質協力してたけどね」
 
と千里。
 
「確かにそうだった」
 
と《すーちゃん》
 
「でも1番にいい所持っていかれた」
「暴走してる霊能者は凄いね」
「私は霊的な力とか無いから、そのあたりよく分からないけど」
 
「あのさぁ。話が面倒になるから、今更そういう嘘は言わないでよ」
と《すーちゃん》は文句を言った。
 

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ふたりは5月17日の深夜、釈迦堂PAにアテンザとオーリスで乗り付け、会うとハグして握手した。むろん性転換はしない・・・・・と思ったら
 
「あ、3番、女の子になってる」
 
と抱き合った時の感触で気づいて2番が言った。
 
「ふふふ。1番と接触したから」
「よく気づかれずにやったね」
「取り敢えず私たちが接触しても対消滅はしないことが確認できた」
「それはいいことだ」
 
「ところでミューズ1・2ってどこにあるの?」
「知ってるくせに・・・それより松本花子の本体はどこにあるのさ?」
「知ってるくせに・・・」
 
お互い意味ありげな笑顔で相手を見る。
 

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「でもこれからは協力してやっていこうよ」
「それは同意だ」
 
「お互い生理中に、相手のリーグの試合に出たりとか」
「いいんだっけ?そんなの」
「私たち同一人物だし」
「私たちの生理周期ってずれてる?」
 
と《いんちゃん》に尋ねる。
 
「最初は同じだったんだけど、今は、ずれてる」
「じゃそれできるね」
「取り敢えず20日からの合宿、たまには2番が出てみない?」
「それもいいかな。2年ほど代表には参加していなかったし。代わりにマルセイユのチーム練習に顔出してよ」
「いいよ」
 
千里3は5月6-12日にNTCで今年の第3次合宿をしていた。次は5月20日から6月3日まで第四次合宿に入り、5月31日と6月2日には、茨城県の“アダストリアみとアリーナ”でベルギーとの友好試合をすることになってる。それで2番は久しぶりに日本代表の試合に出場することになった。
 
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