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■△・男はやめて女になります(2)

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「取り敢えず1番の暴走のアフターフォローについては手分けしてやっていくということで」
 
「じゃ、きーちゃん・たいちゃんが共有しているGoogle Keepを私たちも共有できたらいいけど。あれ他の人も共有できるんだっけ?」
 
と千里2が尋ねる。
 
「共同編集者に指定すればできるよ」
と《きーちゃん》。
 
「じゃ設定よろしく」
 
「後で共有に使うスマホを私に貸して。今はお互い見せたくないだろうし」
 
「了解。じゃ後で」
 
「フォローに行く時も『今から行くよ』って予めKeepに書こうよ」
「それがいいね。何度か無駄足した」
 
「うっかり2人とも性転換しちゃって、1番が女に変えたのに、いったん男に戻ってからまた女になっちゃった人は、結局やはりこの方がいいと言ったね」
 
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「あれどうしても男に戻りたいと言ったら、悔しいけど羽衣さんか虚空に頼むしかないと思ったけど、他人に頼まずに済んでよかった」
 
「羽衣さんはどこに居るか天津子ちゃんとかにも分からないみたいだし、虚空はきまぐれだし」
 
「その場合は1年待ってもらうしかない」
 
(2人はこの段階では1番なら1年経たなくても再度性転換できることを知らない)
 
「でも結局、元の性別に戻してって人は居ないね」
「みんな喜んでいるよね」
「もう戸籍上の性別を訂正した人も何人か」
「今年は裁判官、忙しくなるね」
 
ともかくもそれで2番と3番は2017年4月以来の「キツネとタヌキの化かし合い」を終えたのである(建前的には?)。
 

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5月13日に1番が、かほく市で性転換させてしまった依田怜については2番がフォローすることにし、5月29日に金沢市で千里2が依田夫婦をキャッチ。依田を男に戻すとともに、奥さんは女に変えてあげた。
 
依田から彼の生徒に霊障が出ている子がいると聞き、東京に戻るとその子の除霊もしてあげた。千里2がこの作業をしている間は3番が合宿に出ており、玲央美が顔をじろじろ見て
 
「やはり交替で合宿してる」
と指摘された。
 
「レオちゃんもたまにアキを代役にしてるじゃん。あの子もその内代表候補合宿に呼ばれたりしない?」
 
「男子では女子合宿には参加できない」
「そのくらい女の子に変えてあげてもいいけど」
「女の子にしてあげるなら、まずハルちゃんの方を」
 
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(そのハルは9月に千里1と接触し、性転換されてしまうのだが、千里たちは話し合いの末、放置することにした!ハルは、ちんちんが無くなっていたのでびっくりしたものの「無くなって嬉しい」と言って、放置していた。彼女は半陰陽のケースでは20歳になる以前にも性別の訂正ができることを知らない)
 

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きーちゃんは、康子の友人を唆して康子に坂東三十三ヵ所の巡礼を勧め、5月下旬千里もこれに同行した。それで千里の霊的能力はあがったように見えたが、暴走は止まらなかった。
 
そこで西国三十三ヵ所にも行かせ、千里1は音楽能力も霊的能力も更に高まる。ここまで能力があがれば充分自分の能力をコントロールできるはず、と《くうちゃん》も言ったが、やはり暴走は止まらなかった。
 

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5月31日と6月2日のベルギーとの試合には結局千里2が出場した。
 
ベルギー代表には、フランスリーグで知っている選手もいるので、千里2も玲央見も手を振っておいた。試合は日本が2戦とも勝ったが、千里が普通ならスリーを狙いそうな所で、敵陣にペネトレイトしてレイアップで確実に叩き込むというプレイを見せるし、大型のベルギー選手と身体のぶつけ合いも厭わないので
 
「今日はプレイスタイル変えてきたね」
 
と監督から言われていた。ベルギー側はフランスリーグでのそういう千里のプレイを知っているので、むしろスリーを撃たれた時に「あっ」と声を出したりしていた。
 

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6月上旬、美映は唐突に緩菜の(性別に関する)精密検査を受けてと言われて紹介状も(昨年8月に)もらっていたことを思い出し、緩菜を病院に連れていった。
 
焦ったのが《こうちゃん》である。緩菜は実は生まれた直後に去勢しており、本物の睾丸の代わりにダミーが入れてある。更に少々“悪戯”して、陰裂も形成しており、尿道は陰茎(既に陰核程度のサイズに縮小)から分離して、陰裂内に普通の女子のような尿道口として開くようになっている。つまり、ほとんど女子にしか見えない股間形状になっている。
 
「こんなの医者に診せたら面倒なことになる」
 
と言っていた時、市川ドラゴンズの青池が
 
「こんな子がいるよ」
 
と言って、停留睾丸の男の子を見つけてくれた。名前も環和(かんな)と言って、読みが緩菜と同じである。
 
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「よくそんな子見つけたね」
 
「これ、母親は女の子として育てようとしている」
「好都合じゃん!」
 
それで《こうちゃん》はドラゴンズの前橋も巻き込み、緩菜身代わり作戦をすることにしたのであった。
 

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千里1は6月上旬、中古車屋さんに行くと、ヴィッツの2013年型を40万円で買った。
 
建設中の板橋の練習場に行く時、ミラだとチャイルドシートを2個つけることができないという問題があった。これまでしばしば早月を置いて由美だけ連れてあちこち出かけていたのだが、早月は千里がいないと、桃香からも放置されて御飯を食べられずにお腹を空かせて泣いていたりすることがよくあった。
 
それで早月も連れていかなければと千里は考えたのである。駐車場も今ミラを置いている月極駐車場にもう1枠借りることができたので、そこに普段は置いておくことにする。
 
最初はアテンザを使うつもりだったのだが、きーちゃんに尋ねると
 
「ごめん。今使用中」
 
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と言われることが多いので、眷属の誰かが使っているのだろうと考え、適当な車を1台買うことにした。
 
この車は1週間ほどの後に受け取ることができたが、その時期千里1はムラーノを使って西国三十三ヵ所をやっていたので、きーちゃんから連絡を受けた千里2が代わりに受けとって、確保している駐車場に入れた。
 
なお、ムラーノはふだん康子の家近くの駐車場に置いていたし、この時点では6月いっぱいで廃車にするつもりだった。それを譲り受ける手も考えたのだが、貴司との再婚を考えた時、前夫の車を使い続けるのはまずいというのもあった。
 

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1番は西国三十三ヵ所の道中の6月22日、パソコンのバッテリーが全部切れてしまったので、貴司に電話して、そちらの家で充電させてと言った。貴司がおいでというので千里(せんり)のマンションに寄る。美映が敵対的な視線を送ってきたものの、千里(ちさと)が赤ちゃん連れだったので警戒を緩めた。
 
「作曲家さんなんですか。どんな曲を書いておられるんです?」
 
などと訊くので、制作中の遠上笑美子に渡す予定の曲を聴かせると
 
「いい曲書きますね〜」
 
などと言っていた。
 
千里が赤ちゃん連れで車中泊で西国三十三ヵ所を巡礼していると言うと
 
「赤ちゃんが辛いですよ」
 
と言って、今夜ひとばん泊まっていくように美映は勧めた。千里も疲れが出ていたのでぐっすり眠ってしまったが、千里が熟睡している間、美映は由美にミルクをあげたりしてくれていたようである。
 
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翌朝、朝御飯まで頂いて千里たちが出発する時、美映は荷物を車まで運ぶのも手伝ってくれた。そして、その時、美映は千里の手に接触した。
 

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たいちゃんからの連絡で、千里2と千里3は直接電話で話し合った。
 
「どうする?」
 
「放置してもいいんじゃない?美映が男になっちゃったら、貴司も離婚するでしょ?」
 
「いや、むしろ男の娘は貴司のストライクゾーン」
「そういえばそうだ」
「理想の相手と思われて、本当に好きになられたら困る」
 
「仕方ない。女に戻すか」
 

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美映は夜中に起きてトイレに行くと、ちんちんがあるのでびっくりする。でも元々男らしい性格である。
 
「きっとこれ夢だろうし、立ち小便やってみよう」
 
などと言って、便座に座っていたのをわざわざ立ち上がり、便座を上にあげて立ち小便をしてみた。
 
「これ楽でいいなあ。男だけこんな簡単におしっこできるってずるい」
 
などと思う。
 
さらにちんちんがあるのをいいことに、ベッドに戻ると、貴司を誘惑した。貴司は焦ったものの、ちんちんがある美映は積極的である。貴司を押し倒して、やっちゃった!
 
貴司の中で射精したら物凄く気持ちいい。
 
「男っていいなあ。こんな気持ちいいことできるなんて」
 
とは思ったものの、腰を動かすのは結構しんどいと思った。スポーツウーマンの美映だからできたが、普通の女子はこんなに腰を動かせないかもという気もした。
 
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「レスビアンの子とか、よくこんなのやるよ」
 
とも思った。
 
実を言うと、これは貴司と美映が結婚していた期間の唯一の性交である。
 

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千里3は美映がいる時に貴司宅に無断侵入するのは気が引けたものの、緊急事態なので、きーちゃんに転送してもらい、美映と貴司が一緒に眠っている寝室に入り美映にタッチして再度性転換させた。
 
2人がくっついて寝ている所は、さすがに物凄く不愉快だったので、貴司のヴァギナにキュウリ!を突っ込み、更に1発殴ってから姿を消した。
 
貴司は殴られて思わず「痛いっ」と声をあげて目を覚ます。お股を触ったらキュウリが刺さってるのでびっくりして抜く。そして“偽おちんちん”が外れていることに気づいたので、慌ててトイレに行って消毒の上再接着した。シンナーやアルコールの臭いがするので、トイレの換気扇を掛け、トイレのドアは開けたままにしておいた。
 
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一方、美映は朝起きたら、ちんちんが無くなっていたので「やはりあれは夢だったかと思う。まあでもちんちん無くなったよかったかも。気持ちよかったけど、あんなのあると面倒そう」などと呟く。ついでに貴司の股間に触って、貴司が男であることを確認した。
 
「どうしたの?」
「ううん。何でも無い」
 
貴司も美映にやられたのは夢だと思っている、美映にちんちんがある訳無いし!
 

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この件では眷属たちがこそこそと話し合っていた。
 
「貴司君ってヴァギナあったの?」
「よく分からない。でもあれは後ろではなく確かに前に入れた」
「千里も間違いなくキュウリを前に突っ込んだ」
「じゃ、やはりあるのか?」
「そんなの付けた覚え無いのに。私はちんちんとタマタマを取っただけだよ」
 
「それ冷凍保存とかしてるの?」
「それだと組織が壊れかねないから培養液に漬けてるよ」
「培養中に2本に増殖したりして」
「その時は2本とも戻せばいいね」
 
「しかしそもそも貴司君は千里以外とはセックスできないんじゃなかった?」
 
「それはあくまで男としてだから、女としてするのは制限に掛からない。女はそもそも立つようなもの無いし」
 
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「貴司君妊娠しちゃったらどうする?」
「産めばいいと思うよ」
「まあそれでもいいか」
 
ということで放置したものの、貴司は妊娠しなかったので、《きーちゃん》はホッと胸をなでおろした。《こうちゃん》はつまらなそうな顔をしていた。もし子供ができていたら、貴司と美映の間の唯一の子供になるところであった。
 
ただしその場合、貴司の性別は強制的に女に変更され(子供を産む以上女だと推定される)、千里は貴司と結婚できなくなった可能性もある。
 
「でも卵巣も子宮も無い(と思う)のに妊娠することはないのでは?」
「そもそも膣が無いはずなんだけど」
 
「いや、和実みたいな例もあるし」
「あの子は非常識だね」
 
「千里も非常識だけどね」
 
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《くうちゃん》が可笑しそうにしていたが、その意味は《きーちゃん》や《こうちゃん》には分からなかった。
 

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