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■少女たちの伝承(7)

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そしてスキーなのだが・・・
 
今年は暖冬であった!
 
1月の中旬くらいから寒さが弛みだし、零下にならない日がしばしばあった。それで実はスキーほ予定していたのにできない!という日が結構出たのである。
 
1月23日はその日は雪だったものの前日気温が高く雪がかなり融けていたためスキーは無理という判断になり、男子は校庭で持久走!女子は体育館でダンスとなった。男子たちからは「今日だけ女子になりたい」という声がかなり出た。千里は「すみません。今日は女子でいいですか?」と言って女子たちとタンスをした。ダンスが苦手な留実子は「ボクは走りたい」と言って、男子たちと一緒に校庭を走っていた。
 
1月30日は何とか実施できて。斜面を滑降する児童たちは歓声をあげていた。この日はみんな楽しむことができた。
 
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2月6日はここ数日雪が全く降っておらず、雪はあるものの雪の状態が小学生に滑らせるのには危険かもということになって中止。校庭で男女混合で1組対2組のサッカーの試合が行われた。千里と留実子が同じチームに入る!
 
それで千里がゴールキーパーとなり鉄壁のセーブを繰り返し、PKも全部停めたし、留実子がハットトリックの活躍で、3対0で1組の勝利。
「お前ら2人だけで試合やってる」
 
と男子たちが言っていた。千里は男子のパワーあるシュートも全部はじいたし、留実子は男子たちとの接触も全く厭わず、男子たちを蹴散らしてボールを進めた。
 

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2月13日は当日は晴れだったものの、前日まで充分雪が降っていたので最高の条件でスキー授業をすることができた(ほとんどレクリエーション感覚)。
 
2月20日も無事スキーができた。
 
2月27日はここ数日晴れの日が続き、雪崩の発生しやすい条件だったので危険と判断され、この日は体育館で男女別に卓球大会となったが、千里はこの日は男子に入れられ、まずは軽く3-0で1回戦負け。交流戦2試合もストレート負けして、「村山は卓球の才能は無いようだ」と言われた。
 
ちなみに女子で全敗した優美絵とやってもストレート負けして、優美絵が「私、卓球で勝ったの初めて」などと言っていた。どうも千里は卓球とは本当に相性が悪いようだった。
 
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千里はその日、玖美子にお願いして付き添ってもらい、スポーツ用品店を訪れた。
 
「うん。千里の竹刀(しない)は、次の大会では審査通らないと思ってたよ。かなり傷んでるもん」
と玖美子も言った。1月の大会では、注意されたものの、今回だけは認めると言われていた。
 
「千里はもちろん女子用だから、このあたりかなあ」
ということで、玖美子の見立てで中学生になっても使える女子用規格の竹刀を買う。
 
(女子用は男子用より軽い。女子が男子用を使うのは構わないが、男子が女子用を使うのは違反になる:つまりこの竹刀で千里は男子の試合には出られない。ただし実は小学生の内は男女の基準に差が無いので来年度1年間に限っては、千里がもし男子だったとしてもこの竹刀が使用できる)。
 
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「ついでにソフトボールのグローブも買おうかな」
「ああ、あれもかなり傷んでるみたいと思った」
 
千里が今使用しているピッチャー用グローブは、2年先輩の敏美さんが使っていた古いグローブを譲ってもらったものだが、もらった時点でも結構傷んでいた。
 
これは玖美子はよく分からないもののお店の人に見立ててもらい、千里の小さな手に合うものを選んでもらった。
 
「ありがとうね」
「グローブの方は私は何もしてないけどね」
 

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その後、千里のおごりで大判焼きを食べながら少しおしゃべりした。
 
「でも何か臨時収入あったの?」
「うん。お年玉ね」
「お年玉かぁ。私は今年は不作だったなあ」
「まあ大人たちの懐具合次第だからね。たまたまおばちゃんから1万円もらっちゃったから」
「おお、それは素敵だ」
と玖美子は言った。
 
「だけど千里、ソフト部の子たちに、剣道で女子の登録証もらったこと言えばいいのに。病院で診察されて女子だと判定されたんでしょ?」
 
「うん。でもどうしても後ろめたい気持ちもあって」
「その気持ちは分かるけど、間違い無く女子なんだから、遠慮することないのに」
「そうなんだけどねー」
 

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「でも病院の診察って何調べられたの?」
「血液検査とかMRIとか取られた。実は血液検査がいちばん大事らしい。ホルモンの状態が運動能力に大きく影響するらしいのよね」
 
「ああ、それは納得だなあ。ここだけの話だけど、花和さんは間違いなく、男性ホルモンが多いと思う」
 
私もきっと色々噂されている気がするなと千里は思う。
 
「まあ女性ホルモンがあまり高くならないように色々努力してるみたいではあるね。一般に言われる女性ホルモンをよく分泌させる方法の全部逆をしてる」
 
「あの子は千里とは逆の意味で苦労してるよね」
 
「うん。多少自分の身体を壊しても、できるだけ女らしくならないように努力してる」
「大変だなあ」
 
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「血液検査とMRI以外には?」
「まあ目視検査だね」
「なるほどね」
 
「裸になって女のお医者さんに観察されたよ」
「まあ男のお医者さんには見られたくないよね」
「それは絶対嫌だ」
 
「それで要するに、ちんちんは付いてなくて割れ目ちゃんがあることを確認された訳だ?」
「中まで検査されたよ」
「きゃー」
「恥ずかしかったぁ」
「恥ずかしいだろうね。ということは、やはり千里はちんちんはついてなくて、女の子の性器があるわけだ?」
 
「そのあたりは内密に」
「別に隠すことないのに」
 

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2月中旬にはバレンタインがある。
 
千里は名古屋に行った時に買っておいたチョコレートを旭川に住むボーイ・フレンド青沼晋治にメッセージも添えて送ったが、彼はありがとうと言って電話してきて、2時間くらい電話で話していた。さすがに長すぎると思った津気子が「電話代が大変だよ」と注意したので、そこで電話を終えた。
 
今年のバレンタインでは、鞠古君と留実子はわりと素直にチョコの受け渡しをしたようである。田代君と蓮菜はまたまたいつものように「余ったけど捨てるのもったいないからやる」「チョコは足りてるけど、余ったのならもらう」などと全く素直じゃないやりとりをしていた。美那はまた多数の女の子に人気の6年生男子にあげたようである。彼女の恋愛はバーチャルな状態から先に進まない。
 
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なお留実子は“女子たち”にも人気なので、自身が鞠古君にチョコをあげただけではなく、多数の女子からもチョコをもらった。毎年のことなので、くれた子たちには「ありがとね」と言って笑顔で受けとっている。そのチョコをくれた女の子たちの中に4年生の森田雪子がいたことに、留実子は全く気付かなかった。留実子は人の顔をあまり覚えきれないので、先日の体育館でのやりとりをした女子の顔も覚えていなかった!
 
もっとも雪子は自分以外にも多数の女子が“彼”にチョコを贈っているのを見て「ああ、やはり花和先輩は人気なんだな」と思った。
 

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2002年2月28日(木)卒業生を送る会が開かれた。この会は千里たちの学年の鼓笛隊初演奏でもある。
 
給食を食べた後、普段は吹奏楽部の練習場所になっている理科室に集まる。ここに太鼓や金管楽器なども置いてある。全体的な説明があった後で「それでは鼓笛隊のユニフォームを配ります」ということになる。千里は同じファイフ担当の恵香とおしゃべりしていたのだが、今日だけサポートで入っている馬原先生が
 
「恵香ちゃんはMだったね」
と言ってMのユニフォームを渡す。
 
「映子ちゃんはS?M?」
「Mです」
「じゃこれね」
と言ってMと書かれている衣装を渡す。
 
「千里ちゃんはSだよね」
「はい」
「じゃこれね」
と言って渡された衣装を受けとる。
 
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それで馬原先生はファイフ担当の6人に衣装を配り、続いて隣の机の所に集まっているベルリラ担当の子たちに衣装を配っていた。
 

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それで千里たちはおしやべりしながら服を着替える。フリース、上着を脱ぎ、鼓笛隊のユニフォームの上着を着る。今日渡されたのは裏フリースになっている冬用である。夏はこの裏地が無いタイプが使用されるはずである。恵香たちも着替えている。そしてズボンを脱ぎボトムを穿こうとした所で、千里は手が止まった。
 
「あれ?これスカートだ」
と千里。
「ファイフ組は全員スカートだよ」
と恵香。
「そうなんだっけ?」
「だってファイフ担当は全員女子だもん」
「え!?」
千里はこれまでそのことに全く気付いていなかったのである。
 
「でも私がスカート穿いていいのかなあ」
「合唱サークルでいつもスカートのユニフォーム穿いてて今更何を言ってる?」
「でもお父ちゃんに見られたら」
「卒業生を送る会にも卒業式にも千里のお父ちゃんは来ないと思うぞ」
「そういえばそうか」
 
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「それに千里はスカート穿きたくないの?」
「穿きたい」
「だったら何も問題無い。スカート穿きたいんだから穿けばよい」
「そうだね。穿いちゃおう」
と言って、千里はそのスカートのユニフォームを穿いた。これも冬用で裏地付きだし、膝下まであるので、穿いてみて「暖かーい」と千里は思った。
 
「あれ?そういえば今ここの教室にいるの女子ばかり?」
と千里が言うと
「それも何を今更だけど。さっき男子は図工室で着替えて下さいと言われたじゃん」
「聞いてなかった!」
と言ってから千里は急に不安になった。
 
「私ここに居ていいんだっけ?」
「体育の時も部活の時も、いつも女子の方で着替えてるくせに」
「そうか。だったらいいのか」
「千里はどうも色々覚悟が足りない」
「蓮菜からもよく言われる」
 
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そういう訳で千里は他のファイフ女子と一緒に理科室で着替え、恵香たちと一緒に自分のファイフを持って廊下に出て、体育館に通じる渡り廊下にいったん整列した。ちなみに留実子は男子のユニフォームを着ていた!!(留実子がどちらの更衣室で着替えたのかは千里も分からなかった)
 
合図があったところで体育館に行進しながら入っていく。所定の位置についた所で5年生は足踏みしながら『ヤングマン』を演奏する。6年生がそれに合わせて入場してきて卒業生席に座った。教頭先生の開会の辞がある。
 
それで卒業生を送る会は始まり、1年生から5年生までの出し物がある。今年は全学年が合唱で、1年生は『さんぽ』、2年生は『てのひらをたいように』、3年生は『パフ・ザ・マジックドラゴン』、4年生は『ソーラン節』!、そして5年生は『ビリーブ』(杉本竜一作曲)を歌った。
 
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実を言うと5年生はずっと鼓笛の練習ばかりしていたので、合唱の方は2回しか練習していなかったのだが、みんな知っている曲なので、何とか破綻無く歌えたというのが内情である。ちなみに千里は高音部で歌っている。
 
先生たちの合唱があった後、5年生代表の挨拶、6年生代表の挨拶があり、6年生がお返しに『この地球のどこかで』を歌う(これはわりと難しい曲だが、6年生はしっかり練習していた)。
 
そして閉会の辞の後、5年生の鼓笛の演奏『情熱』にあわせて6年生が退場して、卒業生を送る会は終了した。
 

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