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■少女たちの初めての体験(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-09-16
 
「美輪子姉ちゃんは大学出たらどうするの?学校の先生?」
と千里は尋ねた。
 
「それ狭き門だからなあ。一応単位は全部取っているし、来年は母校で教育実習させてもらえることになっているから、それで中学と高校の教員免許は取れる予定。でも教員採用試験は物凄い高倍率。更に合格しても採用候補者の名簿に登録されるだけだから、実際にどこかの学校に登用されるかどうかは不明。私が取っている科目の場合、元々の採用枠が少ないから、ひたすら待機して結局声が掛からないということも多い」
 
「たいへんそう」
 
「それで結構コネが横行しているとは言われるけど、私コネなんて無いしね」
「うーん」
「もしかしたら塾の先生とかを目指すかも。塾なら純粋に指導力のある人は採用してくれるから」
「わあ」
「本来の担当科目以外でも教えられる科目は教えさせてくれるし。私、免許は取らないけど、英語・数学・物理・化学・日本史とかなら教えられるよ」
「すごーい」
 
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「ただし塾の先生って、ほとんどパートタイマーみたいなものだから、物凄く身分も収入も不安定だけどね」
「むむむ」
 

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「千里は将来何になりたいの?」
「お父ちゃんは漁師になれって言ってるけど、私には無理だと思う」
 
「千里、漁船に女子は乗せないよ」
と美輪子は言った。
 
「あ、そうだよね!」
と千里は虚を突かれたように言う。
 
「千里は女の子でしょ?」
「うん」
「だったら漁師になる道は無いな」
「そっかー」
「だったら何になりたい?」
 
「・・・私分かんない」
「それを考えるのが、千里のこれから数年間の課題かも知れないね」
と美輪子は優しく言った。
 
「まあ女性の場合、専業主婦という道もあるが」
「うーん・・・」
 

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父から清酒「男山」を買ってきてくれるよう頼まれたことを言うと
 
「未成年には売ってくれないよ」
と言って美輪子は自分で男山の五合瓶を買って千里に持たせてくれた。
 
「一升瓶買ってもいいけど、千里の父ちゃん飲み過ぎだから、このくらいでやめといた方がいい」
「そうそう。お父ちゃん、お酒に弱いくせに飲みたがるんだよ」
 
案の定帰宅してお酒を渡すと「なんで一升瓶じゃないんだ?」と父は言ったが「私、腕力無いから一升瓶なんて重くて持てない」と答えておいた。
 

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元日は一家4人でP神社に初詣に行く。千里は普通のセーターとジーンズのパンツにコートを着たが、昨日着た振袖で初詣できたらよかったのに、などと思っていた。
 
しかし参拝客が多い。
 
小春が忙しそうである。
「千里〜。いったん家に戻ってからでいいから手伝って〜」
などと言われる。
「分かった」
 
千里としてはあまり父に関わりたくないので好都合である。それで帰宅すると
「神社に手伝い行って来まーす」
と言って出かけていった。
 
「でも私生理中なんだけど、巫女とかしてもいいんだっけ?」
と千里が言うと
「きれいに洗っちゃえば平気。おいで」
と言って小春は社務所の中のトイレに千里を連れ込むと、ビデを使ってきれいに洗浄してくれた。
 
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「これで問題無いよ」
「へー」
「でも念のためナプキンはつけておいた方がいい」
「そうする!」
 
それで巫女の衣裳に着替えて、お祓いや物販など、また昇殿して舞などもしたが、あとでトイレで見てもナプキンは全く汚れていなかった。小春が洗ってくれたので全部洗い流してしまったようである。
 

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この年の1月、千里や蓮菜たちのグループではバレンタインのチョコ作りをしようというので盛り上がった。最初に練習しようというので、1月20日、みんなで集まり生チョコ作りの練習をした。この時点で千里は特にバレンタインを送るような男の子の心当たりはなかった。
 
その翌日21日。千里は漁協の網のメンテに駆り出された。もっとも千里の腕力で網の補修をしてもすぐ解けてしまう、ということで戦力外なので、もっぱら作業をしている人にお茶などを配る仕事をしていた。
 
この時、千里は網の補修作業のまさに戦力になっていた、逞しい身体付きの青沼晋治という6年生と知り合う。彼は野球部のエースで女子にはひじょうに人気があった。千里はその翌日、晋治からキャッチボールに誘われる。千里が投げるボールが物凄くコントロールが良いことに気付いた晋治は千里の投球能力を更に鍛えてくれたのである。
 
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それで千里はせっかく作ったチョコを晋治にあげてもいいかなと思い、渡すことにする。晋治には美那もチョコを渡した。また恵香は同じ野球部の赤坂君にチョコを渡した。また蓮菜はミニバス部の田代君に、留実子は同じくミニバス部の鞠古君にチョコを渡した。
 
2月12日、千里・美那・恵香・晋治・赤坂の5人は一緒にグループデートをした。
 
デートなるものは千里も初体験だったが、グループデートだったので心理的な負担もわりと小さかった。この時、千里の性別は友人たちの口から晋治にバレてしまい、千里はこれで彼との関係は終わったかもと思った。
 
しかし晋治は週明けにはまた千里をキャッチボールに誘った。
 
「私の性別を知っても誘ってくれるの?」
「千里は女の子だろ?」
 
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晋治が千里を見詰める。
 
千里はこくりと頷いた。
 
「じゃ、問題無し。今日も少し頑張るぞ」
 
と晋治が言って、ふたりはその日もまたキャッチボールをするのであった。
 
千里と晋治のキャッチボールは、晋治が中学進学のために旭川に行ってしまった4月上旬まで更に1ヶ月半続くことになる。
 

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千里の3度目の生理は1月27日、4度目は2月24日、5度目は3月24日に来た。普通この年代の少女の生理はけっこう周期が乱れがちなのだが、元々成人女性である母の卵巣を体内に入れているせいで、きわめて規則的に生理は来ているようであった。
 
千里も2度目くらいまでは結構ドキドキだったのだが、3回目くらいからは慣れてきて、日常の一部になってきた。そして生理中、千里は学校でも女子トイレを使用していた。
 

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2001年4月、千里は5年生になった。
 
5年生からは必修クラブの時間が週1回授業に組み込まれる。ただしN小ではスポーツ少年団に入っている子は、その時間には入っているスポーツ少年団の活動をすれば、それでこの授業を読み替えるということになっていた。
 
ただしこのクラブ活動の時間は、自分が所属しているスポーツ少年団と別の競技のクラブに参加してもいいことになっていた。
 
千里は4年生の時から籍だけ剣道部に置いていたので(練習はサボりがち)、それでいいかと思ったのだが、もう卒業して中学生になった晋治が
 
「この子、凄いピッチャーだから使ってやってよ」
と言って、千里を自分が3月まで所属していたN小野球部に連れて行った。
 
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もしこの時千里が野球部に入っていたら、後の日本代表バスケット選手の村山千里は生まれていなかったかも知れない。
 
しかし野球部の顧問の先生は言った。
 
「野球部は男子だけなので、女子は入れられないんだよ」
「でも村山は戸籍上男子なんですよ」
と晋治は言うものの
「戸籍は戸籍として実態は女の子だよね?ソフトボール部に行ってくれる?」
 
それで晋治は千里をソフトボール部に連れて行った。
 
「私も男の子に混じって野球するより、女の子と一緒にソフトする方がいい」
と千里は晋治に言った。
「そうか。そうだよね。ごめんね、野球部に連れて行って」
 

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それでソフトボール部に行ったのだが、ソフトボール部の顧問は言った。
 
「村山さん、確かにほとんど女の子だけど、戸籍上は男子だよね。悪いけど、男子は女子の試合に出られないんだよ」
 
これには千里も困惑した。晋治が千里に代わってソフト部の顧問に言う。
 
「この子、野球部に連れて行ったら、実質女子だから野球部には入れられないからソフトボール部に行ってくれて言われたんですけど」
 
「うっ」
 
と顧問は声をあげた上で、急遽野球部の顧問と話し合ってくれた。それで千里は言われた。
 
「向こうの先生と話し合ったんだけどさ。村山君、そしたら確かに君はほぼ女子みたいだから、やはり男子たちと一緒に野球をやらせるのは危険ではないかということになった。それで女子のソフトボール部に入っていいけど、戸籍上男子だから、公式戦には出さないというので勘弁してくれない? 練習だけ女子部員たちと一緒にやる」
 
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「はい、それでいいです」
と千里は答えた。
 
「公式戦ではなく練習試合でなら、もしかしたら村山君が参加できるような試合を設定できるかも知れない」
 
「それはそういう機会があったらラッキー、というくらいに考えた方がいいですよね?」
と晋治が言う。
 
「うん。そんな感じで」
 

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それで千里は女子ソフトボール部に加入したのだが、男子なのでスポーツ少年団に正式登録できない。
 
「これ万一試合中に怪我とかした場合にまずいな」
と顧問は悩んでいたのだが、晋治が言った。
 
「この子、剣道部にも入っているんですが、そちらのスポーツ保険が流用できませんかね?」
「おお!それはいけるかも」
 
それでソフト部の顧問と剣道部の顧問が話し合った結果、千里がソフトボール部の活動をする場合は、剣道部から助っ人として派遣しているという建前を取ることにした。それで“たぶん”怪我した時の保険はきくのではないかと顧問の先生は言った。
 
でも何か怪しい気はした。
 

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それでやっと千里はソフトボール部の練習に参加したのだが、晋治が
 
「この子ピッチャーとして優秀ですよ」
と売り込んでいたので、紅白戦のBチームの先発ピッチャーに指名された。
 
まずは投球練習ということで、千里はピッチャーズサークルに立ち、ゆっくりとしたモーションからウィンドミルで投げる。
 
「おお、ちゃんとウィンドミルができるんだ」
と顧問が感心したように言う。
 
ボールは推定50km/hくらいの遅い速度でキャッチャーのミットに収まった。
 
「なるほどぉ、これは男子の速度ではないな」
などと顧問の先生が言う。
 
「実際この速度なら男子の野球部では使い物になりませんよ」
とキャプテンの6年生紀子さんが言った。
 
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しかしBチームのキャッチャーを務める5年生・麦美は
 
「ナイスピー」
と言って千里にボールを返す。また千里が投げる。ボールはゆっくりとした速度でミットに収まる。
 
この時、麦美は何か考えるようにした。更に3球投球練習してから紅白戦が始まる。
 

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千里が投げる。
 
ボールは内角低めに来る。バッターはバットを振らずに見送る。
 
「ストライク」
と審判を務める6年生の副部長・友恵さん。
 
「え〜?今の入ってた?」
とバッターが言うものの
「入ってた」
と友恵さんは言う。
 
次の投球。今度は外角高めに来る。バッターがバットを振るが空振りである。これでツーストライクだ。
 
3球目。ボールは外角低めである。バッターは振るかどうか一瞬悩んだものの見送った。
 
「ストライク、バッターアウト」
と審判。
 
「え〜〜?今の外れてなかった?」
「入ってた。ちゃんとベースのギリギリ内側を通過したよ」
「うっそー!」
と言いながらも、素直に下がる。
 

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