広告:女声男子-1-ガンガンコミックスONLINE-険持-ちよ
[携帯Top] [文字サイズ]

■娘たちの二十面相(7)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

13時少し前に和泉が寄ってきて
「醍醐先生、ずっと伴奏しててお食事もできなかったでしょう?後は私が代わりますよ」
と言うので
 
「じゃ、よろしく」
と言って、エレクトーン伴奏を交替する。和泉ならレパートリーも多そうだし大丈夫だろう思い、いったんテーブルに戻って少し食事をする。
 
それで15分くらい食べていたら、ホテルのスタッフの格好をした《きーちゃん》が来る。
「ごめーん。バスケ協会から13:30に集合してという話だから、向こうに行ってくれる?」
「あ、向こうに誰か置いて来た?」
「うん。私の友だちを置いて来た」
「OKOK。このテリーヌを食べてからでいい?」
「もちろん」
 
それで食べ終わった所で新宿に転送される。ホテルの入口の所のようである。ちょうど湧見絵津子が入ってくる。色留袖を着ている千里を見てギョッとしている。
 
↓ ↑ Bottom Top

「サンさん、凄い服着てますね」
「ちょっと別のパーティーに出てきたからね。着換えなきゃ」
 
それで2人で案内の所に行って控室を教えてもらい、そちらに行って日本代表のユニフォームを受け取り、それに着換えた。
 

↓ ↑ Bottom Top

さて、千里3と入れ替わりで福生市のホテルに移動してきたのは、実は千里2だった!
 
ライトブルーのドレスを着ている。何食わぬ顔で千里3が座っていた席に座る。この後、2次会まで付き合うつもりである。
 
「あれ?お召し替えした?」
と隣の席にいる花野子が訊く。
 
「うん。帯を強く締めすぎてたんでお腹が苦しくなったから、洋装に変えた」
「ああ、バスケットとかまでしてたもんね」
と花野子は言っていた。
 
それで千里3が残しておいてくれたっぽい、口を付けてないステーキを食べ始めた。千里3は、口を付けた料理は全て食べているが、ほぼ半分の料理に口を付けていない。つまりこの後、自分がこれを食べることを予測して残してくれている訳だ。
 
↓ ↑ Bottom Top

要するに、千里3は、自分が「千里3は全てを知っている」ということに気付いたということを知っている。
 
などと考えて、今一瞬訳が分からなくなったぞと思った。
 

↓ ↑ Bottom Top

でも《きーちゃん》はまだそのことに気付いていないっぽい。
 
恐らく3番は自分と同様に全ての眷属の動きを把握しているのではないかという気がする。だから、やはり眷属を利用すると、それが全て向こうに筒抜けになると考えていいだろう。向こうが眷属を使った場合もだけど。
 
要するにゲームをしようということね?と思って、千里2は楽しい気分になった。
 
ただし筒抜けになってしまうのは“美鳳さんが付けてくれた”眷属に限られるだろう。
 
千里はタロットカードを取り出した。5枚並べる。左から、きーちゃん、えっちゃん、つーちゃん、わっちゃん、ほしちゃんである。この5人は美鳳さんが付けてくれた眷属ではないので、多分動きがお互い相手に伝わらず、手駒として使える。
 
↓ ↑ Bottom Top

もっともこの時点で千里2は《わっちゃん》の生死を知らなかった。でも千里3があれだけうまく立ち回っているのを見れば、きっと《わっちゃん》を使っている気がした。
 
カードを開く。
 
きーちゃん 愚者
えっちゃん 聖杯8
つーちゃん 金貨3
わっちゃん 聖杯10
ほしちゃん 金貨4
 
『うっそー!?』
 
千里2が驚いたのは《えっちゃん》の帰属である。
 
ここで聖杯は千里3、金貨は自分である。どちらも女性エレメントで女性を表すが、より行動的な3番が聖杯、より受動的な自分が金貨でよいだろう。
 
まず《きーちゃん》は中立であることが分かる。《つーちゃん》と《ほしちゃん》は自分に従っている。しかし《えっちゃん》と《わっちゃん》は千里3に従っているということになる。《わっちゃん》が生きていることも確定だ。《えっちゃん》は自分の眷属にしたつもりだったが、何かの原因で失敗していたのだろう。
 
↓ ↑ Bottom Top

『分かった』
と千里2は少し考えてから結論を出した。
 
《えっちゃん》は元々、千里3の動向を把握するためにあちらの傍に付けておいたのである。それがうまく3番に取り込まれてしまい、自分でも気付かずに、向こうにとって都合のいい情報だけを流すように仕組まれている。
 
そういう場合は・・・
 
放置!して、向こうの“公式発表”をモニターするに限る。だから《えっちゃん》が自分に報告しない所に、千里3の真実があるわけだ。
 

↓ ↑ Bottom Top

『きーちゃん?』
『はい』
『3番はご祝儀渡した?』
『はい、会費とは別に500万円の小切手を100円ショップの祝儀袋に入れて』
『じゃ、私は渡さなくていいね?』
『500万円を2度もらったら、さすがに蓮菜さんが仰天します』
『じゃタダ飯食べて行こう。お土産は、きーちゃんがあの子に渡しといて』
『了解』
 
それで《きーちゃん》は寄ってきてお土産の紙袋(バウムクーヘン)を持って行った。
 

↓ ↑ Bottom Top

千里(千里2)が目の前にあった食事を全部食べ終わると、ボーイが寄ってきて料理のからを片付けてしまう。宴会中に片付けるって珍しいなと思っていたら、そのあと新たに料理を1セット持って来て目の前に置いた。土産物の紙袋まで脇に置く。
 
「あの、これ何ですか?」
と尋ねると
「村山様の所には料理を2人前配膳するように言われましたので」
とボーイは言った。蓮菜からのメモまで渡される。
 
《千里は実際には10人くらい居るけど、その内の2人が代表して来るという話だったから、料理は2人前出すように手配しておくね》
 
そのメモを横から見て花野子が言った。
「やはり千里って10人居たのね?なんか怪しい気がしてたよ」
 
↓ ↑ Bottom Top


10月3日(火).
 
千里1はいつものように午前中横浜の体育館に行き、レッドインパルス2軍のメンバーと一緒に練習をしていた。この時点で2軍のメンバーで千里とまともに対戦できる相手はいない。コーチは“こちらの千里”も随分復活してきたなと思い、“2つの人格”が統合される日も近いかもと思っていた。たぶん“村山十里”がある程度強くなったら、“村山千里”と統合されるのではとコーチは予測していたのだが、それはかなり正解である。
 
練習が終わった後、千里1は用賀のアパートに帰ろうと思い長津田駅で電車に乗った。用賀駅と長津田駅は東急田園都市線で40分くらいである。とても微妙な時間なので、練習疲れもあって眠ってしまうことも多いが、たいていは降りる駅の直前で目が覚める。ところがこの日千里1は完全に熟睡してしまった。実は《たいちゃん》が起こそうとしたのだが、あまりにも深く眠っていて彼女にも起こせなかった。
 
↓ ↑ Bottom Top

それで千里1が目覚めたのは終点の久喜駅である。終点なのに眠っていたので、駅員さんに起こされた。慌てて降りてホームの駅名標を確認する。
 
久喜〜〜!? 何で私こんな所まで来ちゃったの〜?
 
などと思うが、眠っていたのが悪い。
 
えっとどうやってアパートまで帰ればいいんだっけ?と思った時、ふとここは館林の近くじゃんと思う。館林といえば昔、**寺で身代わり人形なんて買ったなあと思い出す。それを手術前夜の小1の龍虎に渡したら、手術中に龍虎は死にかけたもののギリギリ死の淵から這い上がり、身代わり人形は消えていた。
 
「そうだ!また龍虎に身代わり人形をあげよう」
 
と唐突に思いついた千里1は館林行きに乗り継いだ。
 
↓ ↑ Bottom Top

長津田12:16-14:17(寝過)久喜14:38-15:07館林(タクシー)15:15**寺
 

それでお参りしてから、身代わり人形を買い求める。
 
「何色がいいですか?」
「そうだなあ。グリーンで」
 
それでグリーンの身代わり人形(実は小1の時に龍虎に渡したものと同色)を買い求めてから、またタクシーで館林駅に戻る。それで久喜行きの電車に乗り、久喜からJRに乗って赤羽に向かう。
 
ところが千里1はこの電車でまた眠ってしまった!
 
目が覚めたのは終点の沼津である。
 
館林16:07-16:36久喜16:46-19:58(寝過)沼津
 
千里は沼津駅のホームでしばらく考えていたが
「帰ろ」
と言って、この日はそのまま用賀のアパートに戻った。
 
沼津20:38-21:59大船22:08-22:53渋谷23:03-23:19用賀
 
↓ ↑ Bottom Top


それで翌日千里は練習を休んで龍虎の所に行くことにした。練習に行った後だと、また自分が眠ってしまう気がしたのである。それに千里はこの日、アクアの新しいCDが発売されることを昨日郵便受けに“謹呈”のシールが貼られたアクアの直筆サイン入りCDが入っていたので気付き、発売記者会見で何かあるかもと胸騒ぎしたのである。こないだコスモスも電話で発売の度に何か起きていると言っていたではないか。
 
それで千里は通勤ラッシュが終わってから、赤羽に向かった。
 
用賀10:00-10:16渋谷10:26(埼京線)10:47赤羽
 
それで龍虎のマンションまで行く。インターホンで1023号室を呼び出そうとしてから、ハッとした。
 
今日は平日だから、アクアは学校に行っているのでは?
 
↓ ↑ Bottom Top

もっと早く気が付くべき問題である。
 
どうしようと思っていた所で《きーちゃん》が姿を表す。
 
「あれ?天野さん、アクアの所に来たんですか?」
「そうそう。今日はアクアは学校を実はずる休みしているんだよ。それで部屋に居ることが分かるとやばいから、その人形を渡すなら、目を瞑って渡してあげてくれない?」
「いいよ」
 
それで天野貴子と一緒にエントランスを通り(きーちゃんは工作のため、ここの鍵を持っている。他にわっちゃんも持っている)、10階まで行く。天野はエレベータの所で待っているというので、千里(千里1)がひとりで1023号室の前まで行った。インターホンを鳴らす。
 
「龍ちゃん。千里だけど、渡したい物があるのよ。私、目を瞑っておくから、私の手から取っていって」
 
↓ ↑ Bottom Top

それで千里は目を瞑った。ドアが開く。中に入ってと言われるので玄関の中に入る。龍虎はいったんドアを閉める。
 
「今日発売記者会見があるでしょ?その時、パンツでもスカートでも、その時穿いてるもののポケットに入れておいて」
 
「今見ていい?」
「もちろん」
 
龍虎が封筒の中から身代わり人形を取り出す。千里は「へー。今日はスカートを穿いているのか」と思って見ていた。
 
実は千里は目を瞑っていても、普通に物が見える!
 
この能力を1番は7月4日に1度死んだ時は喪失していたのだが、もう復活してきている。
 
「あ、これあの時のと同じ身代わり人形だ」
「そうそう」
「ちんちんも付いてる!」
「まあ龍ちゃんは男の子だし、たぶん」
 
↓ ↑ Bottom Top

「まだ早まったことはしてないよ。でも聞いたかも知れないけど、こないだ『キャッツアイ』の打合せでレストランで食事していたら、青葉さんの席に大理石の像が倒れて来て、青葉さんは偶然トイレに立っていて無事だったけど、身代わり人形が潰れていたんだよ」
 
とアクア(アクアF)が言う。
 
「聞いた聞いた。怖いね。それで突然胸騒ぎがして」
「ありがとう。ズボンに入れておくね」
 
「うん。じゃぁね」
と言って、千里1は目を瞑ったままドアを開けて外に出ると、エレベータの方に歩いて行った。
 
「1番さん結構元気になってる気がする」
とFは独り言のように言った。
 
見た目のオーラも実際かなり強くなっていたし、そもそも自分がここに居ても驚かなかったことから、きっと1番さんは能力が回復してきて、アクアの分裂を知ったのだろうと思ったのだが、実はまだ気付いていない!
 
↓ ↑ Bottom Top


アクアの10枚目のシングル『真夜中のレッスン/恋を賭けようか』はこの日、10月4日(水)に発売され、アクアは学校が終わってから、記者会見に出る(という建前)。記者会見に同席したのは、アクアの他、コスモス社長、青葉、和泉、三田原課長、映画『キャッツアイ』の中村監督である。
 
この日学校に出て行ったのはN、部屋で留守番していたのがFとMで人形を受け取ったのはFだが、記者会見に出たのはMである。それでMは身代わり人形をこの日の衣装、カジノっぽいブラックスーツのズボンのポケットに入れておいた。
 
するとアクアは無事だったのだが、中村監督が質問に答えてイスに座ろうとした時、椅子が崩壊して監督が尻餅を突くハプニングがあった。怪我は無かったものの、僕じゃなかったのは身代わり人形のおかげかなとアクアは思った。
 
↓ ↑ Bottom Top

監督は厄払い旅行の話を聞き、映画関係者でも同じコースで行ってくるよと言っていた。
 

10月7日(土).
 
アクア関係者の厄払い旅行、第1日程が行われた。参加者は下記である。
 
アクアN、秋風コスモス、川崎ゆりこ、山村勾美、鱒渕水帆、今井葉月、絹川和泉、川上青葉、マリ&ケイ、丸山アイ、佐良しのぶ
 
アクアNは集合時間の30分前に東京佃島の月島駅前に行ったのだが、既にコスモス社長、マリ・ケイが来ていた。それで話していてアクアが日程の3回とも参加することを話していたらマリが「大変ね!」というのでアクアは
 
「ボクはもうバスガイドさんの気分です」
と言う。するとマリは
 
「だったらバスガイドさんの衣装、届けてあげるね!」
と言った。
 
↓ ↑ Bottom Top


↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8 
娘たちの二十面相(7)

広告:素晴らしき、この人生 (はるな愛)