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ラッシュを見終わってから、みんなで食事に行ったのだが、予約していた高級フレンチ店で、パーティールームに入って食事をしていたら、青葉が座っていた席に重い大理石の像が倒れて来るという事故がある。
幸いにも青葉はちょうどトイレに行っていた時で、しかも丸山アイとおしゃぺりしていたので助かった。しかし席に置いていたバッグが滅茶苦茶で、化粧品は飛散し、パソコンも壊れていた。そして9月3日に千里(千里2)が置いていった“身代わり人形”が潰れていたのを見て、青葉はゾッとした。
取り敢えずお代はタダにしてもらい、補償については後日話し合うことにして、河岸を変え、紅川さんの知っているスナック(高そうだった)に行き、水割りを一杯飲んでから話していた時、アクアのCDが発売される度に何か起きているという話が出てくる。
2016/08/11『エメラルドの太陽』7/23 アクア苗場で倒れる
2016/12/24『モエレ山の一夜』同日コスモスが人質に取られる
2017/03/22『星の向こうに/ナースのパワー』4/25鱒渕入院
2017/07/05『憧れのビキニ』7/04千里が事故で重傷
2017/10/04『真夜中のレッスン』9/10青葉危うく大理石の下敷きに
「何かの呪い?」
「いや、ただの偶然でしょ」
「でもちょっと怖い」
という話から、アクアの関係者一同で厄払いに行こうという話になる。行くのは東京の住吉神社、大阪の住吉大社、滋賀県の多賀大社、伊勢の神宮である。
日程の調整は山村がしたのだが、多忙な人が多いので山村も悩む。特に、土日が都合のいい人と、土日は逆に都合の悪い人がいるので困った。それで紅川に提案した。
「日程を3つに分けません?それにあまり多人数で行動すると目立ってしまい、まともに参拝できませんよ」
実は3人のアクアを1人ずつ参加させたいというのもあったのである。
それで日程はこのようになった。
7(土)12 アクアN、コスモス、ゆりこ、山村、鱒渕、葉月、和泉、青葉、マリ&ケイ、丸山アイ、佐良しのぶ
9(祝)9 アクアM、田代夫妻、長野支香、ヤコ、エミ、ナツ、ユイ、高村友香
11(水)9 アクアF、紅川、緑川志穂、三田原、雨宮、松浦紗雪、千里・蓮菜、矢鳴美里
別日程:琴沢幸穂、不参加:上島雷太
琴沢幸穂については山村が連絡先を知らなかったが、コスモスが
「私が連絡するよ」
と言って千里3に電話した。それで
「大学の試験期間とぶつかるから、別日程で行きたいと言っている」
ということで、旅費・玉串料だけ渡すことになった。コスモスは事務の子に言って、天野貴子の口座に2人分の旅費・玉串料を振り込んだ。
それでふたりは9月中(別の日)に他の人たちと同じコースで回ってきた。
千里3はコスモスに「私と2番が琴沢幸穂として参拝するから、醍醐春海としての参拝は1番に連絡して」と言った。それでコスモスは
「醍醐先生もちょうど別件で連絡事項があったから私が連絡するよ」
と言い、1番の家電に電話した。
コスモスが厄払い旅行という話になった経緯を説明すると
「それ怖いね!」
と千里1も言っていた。それで千里1は3日目の11日の参加となった。
なお、上島については、多忙なので行けないという連絡だった。コスモスは今上島さんにこそ神仏の加護が必要だと思うけどなあ、と内心思った。
千里3は9月16日には翌週結婚する蓮菜に会いに行き、彼女および夫になる予定の田代雅文にも自分が3つに分裂していることを教えた。
しかし蓮菜はそれを信じなかった!
「まあふつう人間が分裂するとか信じられないとは思うけど」
と千里3は言ったのだが、蓮菜はこう言った。
「千里が3人くらいの筈は無い。千里は15人くらい居ると、私は思ってた」
と蓮菜は言った。
「俺の感じでは13人だと思う」
と田代君は言う。
「ラグビーの人数かな?」
「ラグビーユニオンは15人、ラグビーリーグは13人」
「私、ラグビーとかしないけど!?」
9月18日は敬老の日なので、千里3は京平を連れて留萠の淑子の所に行った。京平が「ひいおばあちゃんの絵」を描いてプレゼントしたので、淑子は物凄く喜んでいた。
淑子も京平が来ることを予測していて、スロープおもちゃ(ボールやミニカーがジェットコースターのように転がっていくもの。部品を組み立てて色々な形のコースを作ることができる)を用意していてくれたので、それでたくさん遊んだ。
「ところで千里ちゃん、貴司じゃない人と結婚するんだっけ?」
と淑子が少し困惑するように言った。
実は千里1が9月16日に川島信次と婚約してしまい、その報せが留萠の細川家にも貴司経由で伝わっていたのである。
「ああ、あれは別の千里です。私は貴司さんの妻ですから、他の人と結婚したりはしません」
と言って、淑子からもらった結婚指輪と大学1年の時に貴司からもらったアクアマリンの指輪をつけた左手薬指を見せる。
「別の千里?」
「私って3人いるみたいなんですよ」
「うっそー!?」
千里3はコスモス、蓮菜と田代君、淑子に自分の分裂を教えたのだが、千里2の方も自分が分裂していることを9/17に青葉、9/24に保志絵、9/25に妹連合(玲羅・理歌・美姫)に教えている。
鱒渕水帆は7月下旬まで、内臓が衰弱しきっていて危険な状態が続いていたのだが、山村に特効薬を打ってもらったのを契機に急速に回復。人工透析も不要になって、9月22日(金)に退院した。
退院の時は、お兄さんも実家から出てきてくれたが、コスモスと山村マネージャーも来てくれて、コスモスが支払いも済ませ、ふたりで荷物も持ってくれた。山村が運転するBMW X4 xDrive35iで新百合ヶ丘の自宅アパートまで行き、4人で快気祝いをした。
山村が言った。
「水帆ちゃんが退院できたのは神様のおかけだと思う。今だから言うけど、死んでいてもおかしくなかった。神様のくれた命だから大事にしよう」
水帆も素直に
「はい。頑張って大事にします」
と答えたが
「いや、頑張りすぎるのが問題なのだけど」
とコスモスから言われ、お兄さんも苦笑していた。
2017年9月23日(土).
琴尾蓮菜が長年の恋人(別れていた時期もある)田代雅文と結婚した。ふたりとも関東に出てきて長いので、都内で結婚式・祝賀会をしたのだが、翌24日には旭川でも親戚や古い友人たちにお披露目をすることにしているらい。
ふたりが結婚を決めたのは実は先月で、それから空いている式場を探し、結局福生(ふっさ)市内のホテルで行うことにした。
急に決めたので、急いで出欠確認のメールを友人などに送る。親戚や北海道の友人には、一応東京での結婚式・祝賀会の日程も記載した上で旭川でもお披露目することを書いた。多くはそちらに出席してくれるようだった。鞠古君と留実子の夫婦はこちらに出てきて、式自体にも参列することになった。
千里に関しては、どのメールアドレスに連絡すればいいんだっけ?と蓮菜が考えていた時に、千里からの作詞依頼メールが2通、ほぼ同時に別のアドレスから!来た。それで蓮菜はその2つのアドレスに適当な詩を見繕って返信したが、その際、雅文と結婚することにしたことを書き添え、祝賀会に出られるかどうか打診した。
すると2つのアドレスからほぼ同時に「おめでとう!」と言って出席の連絡があった!
それが8月下旬のことだったのだが、結局結婚式の1週間前に蓮菜のマンションに千里(千里3)が来訪して、自分で分裂していることを告げたのであった。
「まあ、祝賀会には私も出るし、向こうも出るだろうけど、私が2人会場に居ても気にしないでね」
「うん、気にしない」
ところでこの9月23日、実は女子日本代表チーム、アジアカップ優勝祝賀会が都内のホテルで行われることになっていた。
これに出るのは千里3なのだが、千里3は、結婚式の祝賀会は12:00-14:00, 優勝祝賀会は15:00-17:00だから問題無いと思っていた。ところが千里3は前日になって気付いたのである。
福生市のホテルから新宿のホテルに移動するのに2時間掛かる!
『ねぇ、きーちゃん』
と千里3は《きーちゃん》に相談した。
『新宿のホテルに行っててさ、結婚式の祝賀会が終わる14時のタイミングで入れ替わってくれない?』
『まあいいよ』
『きーちゃんが来てくれるなら、2次会にそのまま出てもらってもいいかな』
『じゃ出ちゃうね』
そういう訳で当日千里3は東京友禅の色留袖を着て福生に10時すぎに着くよう葛西のマンションを出た。
葛西8:39(東西線)9:17中野9:24(中央線快速.青梅行)10:14福生
受付で会費を払い、一緒にご祝儀袋(中身は500万円の小切手!)も渡す。薄いし、使用したのが百円ショップで1枚100円の祝儀袋なので、中身は2-3万だろうと受付の人(勤めている病院の事務の人らしい)は思ったかも知れない。
鞠古君と留実子は2人とも男性用の礼服を着ていた。
「鞠古君、今日は女性用礼服じゃなかったんだ?」
「けっこうそれで出てるけどね。今日は自粛した」
留実子が男物しか着ないので、それに合わせて鞠古君が女性の服を着ていることがよくある。但し鞠古君には女装趣味は無い(と本人は言っている)。彼は会社の女子バスケット部に所属しているが、監督である!(選手にはなれないはず)今日の2人はゲイの夫婦に見えるが、本人たちは何を陰で言われても気にしない。
今回の旅行は子供連れだが、蓮菜がベビーシッターを手配して今日は結婚式・披露宴の間は預けているという。昨日は藤子・F・不二雄ミュージアムに連れて行き喜んでいたらしいが、2歳児にどこまで分かったかは微妙だ。
11:00から結婚式があり、これに千里も参列した。友人で参加したのは蓮菜の側では千里・留実子と鮎奈、病院の同僚の女医さん、田代君の方では鞠古君と高校時代のバスケ部の友人、現在の会社の同僚などである。
式の後、ロビーで友人たちと話す。中にはかなり久しぶりの人もいた。受付の時にもらった席次表では苗字が変わっている人も半分くらい居る。みんな結婚したんだなあと思いながら、それを見ていた。
「千里も色留袖だね。結婚したんだっけ?」
「個人的には結婚したつもりだけど、相手はそう思っていないかも知れない」
「複雑な話だ」
「そんなんで、国勢調査では、“結婚している男性”より“結婚している女性”のほうが多いんだろうな」
「あれ、結婚してから男から女に変わった人がいるからかと思ってた」
「私はレスビアン婚の人がいるからかと思った」
「男性同士で結婚している人もいるよ?」
「ひょっとするとビアン婚の方がゲイ婚より多いのかも」
「ルームシェアを装っていて実はというのはあるよね」
「そのあたりは調査困難だろうな」
やがて祝賀会が始まり、千里は友人代表としてスピーチも頼まれていたので、蓮菜と田代君との古いエピソードも混ぜながら(「こら、その話はやめろ!」と雛壇から声があった)3分ほどのスピーチをした。
披露宴ではなく北海道流の祝賀会方式なので、出席者の多くは会費のみである。別途祝儀袋を渡したのは、蓮菜の病院の院長先生、田代君の会社の部長さん、蓮菜のお父さん、田代君のお父さん、そして何人かの音楽関係者くらい。後で蓮菜に聞いたら、“恐ろしい金額”を包んだのは、千里、コスモス、雨宮先生、ローズ+リリー名義、KARION名義、ゴールデンシックス名義、そしてアクアで、千里とアクアが最高額だったらしい。
そのアクアは青い振袖を着ていた!
花野子や小風などから
「可愛いよ」
などと言われて照れているようである。
ここに政子が来ていたら大喜びしてそうだ。
「(鹿島)信子さんの結婚式の時は制服で出たら、振袖着ればいいのにと言われたから」
などと本人は下手な言い訳をしている。実際には、きっと川崎ゆりこあたりに唆されて振袖にしたのだろう。
もっとも出席者の多くは、彼が田代龍虎の名前で出ているので、新郎(田代雅文)の従妹か何かと思ったのではないかという気がした。凄く女の子っぽいオーラが出ているので振袖が自然だ。実際今日来ているのはFである。
余興の時間になった。
千里は冒頭で色留袖のまま、持参していたボールを使い、鞠古君と留実子の夫妻と3人で華麗なバスケット・パフォーマンスをして最後は新郎にパスし、新郎がしっかりキャッチ。鞠古君の「マサ、新婦の心もしっかりキャッチしろよ」という声に「もちろん」と新郎が答えて、拍手をもらった。
その後はエレクトーンの所に座り、歌うを歌う人たちの伴奏を務めた。
アクアはローズ+リリーの『祝愛宴』を歌った。千里が龍笛で伴奏したが、雅楽の音階を使用した難しい歌なのにきれいに歌うのはさすがだと思った。彼の正体を知っている人は少なかったのだが、物凄い拍手をもらっていた。「あんた歌手になれるよ」とか言われていた! 実際、今日来ている中では、たぶん KARION の4人(冬子はアルバム制作でダウンして欠席なので、蘭子パートはゴールデンシックスの水野麻里愛が代行した)の次くらいに上手いかもという気がした。
ちなみに今日のゴールデンシックスは、Pf.花野子 G.梨乃 Vn.麻里愛 Fl.千里 B.美空 Tp.鮎奈 Dr.京子と7人入ったスペシャル・バージョンだった。留実子も誘われていたが「今日は僕男の子だから」と言って遠慮していた。
(美空と麻里愛はゴールデンシックスとKARIONの2つのユニットに出たことになる)