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■娘たちの二十面相(3)

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青葉はこの時期、金沢市内で多発していた“タクシーただ乗り幽霊”の調査をしていたのだが、処理のための護符を高野山まで取りに行った帰り、8月3日のお昼前、大阪で阿倍子・京平の親子と遭遇する。それで一緒に御飯を食べながら話していた時、ふたりが話した内容から、青葉は“とんでもない”解決法を思いついた。
 
東京に行く予定を中止して金沢にとんぼ返り(大阪12:42-15:26金沢)した青葉は夕方からHH院で住職および〒〒テレビの神谷内と打ち合わせることにした。
 
さて、青葉がサンダーバードで大阪から金沢に戻っている最中の14時(アメリカ東部夏時間で深夜1時)頃、阿倍子が外出(実は晴安とデート)したのをいいことに千里(ちさと)2は、千里(せんり)のマンションで京平と戯れていた。そこに唐突に女性が現れる。
 
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千里は阿倍子が帰宅したかと思って仰天したのだが、よく見ると見たことのない女性である。
 
「もしかして“姫様”ですか?」
「よく妾(わらわ)が分かるな」
と《ゆう姫》は言った。いつも青葉の背後に居候している姫様である。しかしエイリアスを出しているのは初めて見た。ただしこれは“薄い”エイリアスである。
 
「雰囲気がそんな感じだったので」
「さすがだな。ところでお主、済まぬが青葉を手伝ってやってもらえぬか?」
 
「えーっと、すみません。私は霊的な能力を全て喪失していて」
「霊的な能力のない者に妾(わらわ)が見えるわけがない」
「う、しまった」
 
京平が笑っていた。むろん京平にも《姫様》は見える。
 
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エイリアスは“濃く”出せばふつうの人の目にも見えるのだが、“薄く”出すと霊感の強い人間にしか見えない。今回姫様は千里の能力を確認するため、わざと薄く出したのである。
 

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「そなたは2番だな?」
「はい、そうです」
 
「アメリカからわざわざ来ているのに申し訳無い。3番とどちらにしようか迷ったのだが、この先をずっと見通したら、こちらの処理に必要な日と3番の試合の日程がぶつかるのだよ」
「なるほどー」
「お主の方の日程は奇跡的にぶつかっていないので頼もうかと思って」
 
「分かりました。何をするんです?」
「まずは3番が持ち帰ったインドのお土産を青葉の所に届けに行って欲しい。オーリスに乗って」
「オーリスを何か作業に使うんですか?」
「いや、青葉に見せるだけ。あの娘、あまりにも派手な車を買ってしまったことを後悔している。あの車でクライアントの所に乗り入れるのが恥ずかしいらしい」
 
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「もう1台目立たない車を買えばいいじゃないですか」
「そこに考えが至らないようなので、お主から言ってやってほしい」
「姫様が直接言えばいいのに」
「妾(わらわ)はあの娘の眷属ではないから、基本的にアドバイスはしない」
「まあいいですよ」
 

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それで千里は姫様と一緒に東京に瞬間移動し、《きーちゃん》に頼んで3番に「インドのお土産は千里忙しそうだし私が千里の振りをして朋子さんに渡してくるよ」と言って受け取り、それを2番の所に持って来てもらう。
 
それで千里2はオーリスにお土産と姫様(のエイリアス)を乗せて東京から、中央道→長野道→上信越道→北陸道というコースで金沢に向かった。ただし実際に運転したのは《つーちゃん》で、千里は仮眠していた。
 
途中梓川SAで休憩し、姫様の指示で青葉に電話を入れたら、“霊の回収車”を仕立てるので、そのドライバーをしてくれないかと頼まれ、快諾した。それでその後も車を走らせて(運転したのは《ほしちゃん》で千里は寝ている)23時頃、高岡の高園家に到着した。
 
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千里は1番を装うため、オーラを小さく装って家に入る(姫様が笑っていた)。それで青葉から詳細を聞くが、これは確かに自分と青葉のペアでなきゃできないという気がした。
 
真夜中に観音様と霊木を乗せてお寺の車で市内循環する。多数の霊が飛び込んでくることが予想されるので、その霊から自分の身を守る必要がある。つまり霊鎧が使える人でないと無理だ。しかも霊の供養のため車内ではずっとお経をカーオーディオで流している。夜中に単調なお経を聞きながら、眠らずにちゃんと運転ができる人間なんて、そうそう居ない。できる人がかなり限られると思った。
 
青葉の傍では眷属も使えないし!!
 
「ところで青葉去年買ったYZF-R25は使ってる?」
「最近忙しくて、なかなか乗る時間がなくて」
「だったらしばらく借りてていい?」
「いいけど」
「ちょっと借りて出てくるね」
「今から出かけるの〜?」
 
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それで千里2は深夜青葉の250ccバイクを借りて出かけた。気分転換をかねて氷見まで走ると、そこからバイクは東京へ、千里は高岡に転送してもらった。実はきーちゃんが(ローズ+リリーの制作に参加するのに)足として250ccか400cc程度のバイクを使う用事があったので、確か青葉はリッターバイクを買ったので250ccは使ってないはずと思って借りることにしたのである。
 
(それで借りたまま返すのを忘れてしまった!でも青葉も貸したことを忘れてしまった!)
 

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千里が氷見から戻ってきたのは夜中の2時半頃である。今回のタクシーただ乗り幽霊の事件は、昨年処理した幽霊バイクの事件に似ているねという話をさっきはしたのだが、その時に青葉が使用した巻物を見せてもらった。英彦山の長老から千里が預かったメッセージに基づき、青葉が立山まで行って頂いてきたものである。千里は棚に置かれているその巻物を取ると開いてみた。さっきはわざと何も見えないふりをしていた。
 
「なるほどー、これは面白い」
 
としばらく巻物を見ていた千里は呟いた。
 
これは要するに解決すべき事件の種類に応じて、それに必要な祝詞が表示されるようになっているようだ。
 
「これは巻物というよりデータベースの検索端末だ」
 
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但し、この巻物を見る者のレベルにより、検索できる範囲が違うし、自分のレベルを越える祝詞はそもそも見えない。
 
「これは仏教系の青葉にはきつい」
 
今回の事件の解決にはレベル7の祝詞が必要だと思った。幽霊バイクの事件で使用したものはレベル2であった。青葉は神道にはあまり強くないので、たぶんせいぜいレベル4−5くらいだろう。
 
「仕方ない。書き写してやるか」
と千里は独り言を言い、お風呂場でシャワーを浴びて潔斎すると、心を静かにして墨を擦り、巻物に表示された祝詞を普通の和紙に書き写し始めた。書いている最中に青葉が2階から降りてくる。千里は顔の表情を消して、夢遊病者か何かを装い、書き続けた。
 
そして青葉が驚いたように見ている中で、祝詞を全部書き写し終わり、青葉には全然気付かないふりをして、無表情で遠くを見ているような目のまま2階に上がり桃香の部屋に入って眠った。
 
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翌8月4日は昼間によくよく寝て夜中の作業に備えた。そして4日24:00-28:00 (5日0:00-4:00)にドライバーを務めたが、意識をずっと覚醒させておくのに、本当に苦労した。缶コーヒー8本、クールミントガム2本半(23枚)、顔を拭くための化粧水シート12枚を消費した。4時間ノンストップなので、千里も青葉も念のため大人用オムツを着けていたのだが、かろうじてそれは使わずに済んだ!
 
「次回は途中どこかのPAででも休憩を入れようよ」
と千里は提案した。
 
次は8.12 0:30-4:30にも同じ事をするのである。
 
「うん。検討する。私も何度か眠りそうになった」
「ああ、合掌動作がアバウトになっているので分かった」
「神谷内さんは何度か眠ってしまったみたい」
「うん。ピクッとして起きてたね」
 
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「時間的にちょうど中間になる観法寺PAか道の駅・内灘サンセットパークでトイレ休憩しない?夜間は人が少ないし」
 
「内灘サンセットパークに寄ってしまうと、内灘ICからは里山海道に乗れないから、結果的に内灘海岸付近を拾い漏れしてしまう」
「だったら観法寺PA」
「あそこは逆方向だよぉ」
 
内灘ICはハーフICなので、能登方面にしか進行できない。観法寺PAは西向き方面(外回り)からしかアクセスできず、東向き方面(内回り)からは進入できない。
 
「森本IC(津幡方面)→8号線→今町IC→山環→観法寺PA→森本IC(白山方面)→8号線→津幡バイパス」
 
「まあ確かにあそこは永久ループできる。でも今町ICが凄く間違いやすい。森本ICから8号線に出るのも慣れてないと特に夜間は難しい」
「そのあたりは任せて。神谷内ICよりは易しいと思うし」
「あそこも初心者殺しだよね。絶対途中で道を間違ったと不安になる」
 
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「難しい合流のしかたをするからね。カーナビを信じればいいんだけど。森本ICから8号線に出るのは3回くらい間違うと次からは何とかなる」
 
「私は5回目くらいで成功したかも。2番目の難所はカーナビが指示してくれないから。『あっ』と思った時はもう遅い」
 
千里は朝の新幹線で東京に戻り、ぐっすり眠ってからセントルイスに転送してもらい、今年のWBCBLプレイオフに参加した。
 
金沢8/5 9:21-12:40東京/大手町12:59-13:17葛西-13:30自宅23:00=セントルイス8/5 9:00(チームメイトは9:30にセントルイス空港(STL)に到着する便で来る)セントルイスはCDT(UT-5).
 
QF 8/5 11:00-12:30 (win)
SF 8/5 19:00-20:30 (lose)
 
惜しくも敗れてしまったので、8月5日はセントルイス泊で翌日の決勝戦を観戦する。
 
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Final 8/6 14:00-15:00
 

千里2はWBCBLの日程が終了後、千里3の代りにマルセイユに行くことにした。日本には帰国せず、アメリカから直接フランスに移動する。
 
STL 8/7(Mon) 10:45 (UA4896 ERJ-135) 13:48 IAD (2'03)
IAD 17:25 (UA915 787-8) 8/8 6:55 CDG (7'30)
CDG 9:55 (AF7662 A321) 11:15 MRS (1'20)
 
最終戦のあったセントルイスから、ワシントンDC→シャルルドゴール→マルセイユと飛行機を3つ乗り継いでいる。そしてあたかも7月12日に離脱した千里(千里3)が戻ってきたかのように装って
 
「Bonjour, Je suis revenue」(こんにちは。戻ってきました)
 
と言ってチームに合流した。
 
「アジアカップ優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
「金メダル持って来た?」
「はい」
と言って、出して見せると
「オー、オー (O! or! おぉ金だ!)」
と言って、たくさん触っていた(金(きん)はフランス語で or オー)。
 
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ちょうどフランスでの就労ビザも取れた所だったので、これで千里は今期からロースターに入れてもらえることになった。
 
「ちなみに君、女性だったよね?」
「女ですよー」
と言ってパスポートを提示する。
「うん。確かに Sex:F と書いてある」
「今更男だったら大変です」
 
「いや、キューはしばしば『私男だったんですよね』とか言ってた」
「過去は詮索しないということで」
「生理が重いのでとか言って休んでいるから、元男というのはあり得ん」
「何か毎週生理のある人もいる気がしますが」
 
洋服などは《きーちゃん》に頼んで、葛西のワンルームマンションに置いていたものの多くをこちらに持ってきてもらった。
 
またパスポートは《きーちゃん》と《えっちゃん》により交換され、以降千里3は(M3), 千里2が(F)を使うことにした。今回提示したパスポートも(F)で、春には千里3のほうがこの(F)のパスポートをチームに提示している。
 
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なお千里2はアメリカでは現地仕様のLenovoのスマホを買って使っていたのだが、フランスではスペイン時代に使っていた BQ Aquaris 5 を使おうと思った。Aquaris は千里3が持っていたので《きーちゃん》に頼んで千里3から回収してもらった。しかし千里3は Aquaris のクローンを作って《きーちゃん》に渡したので、結果的に千里2のフランスでの通話は全部千里3に筒抜けになってしまった。
 
なおグラナダでの翻訳の仕事はこのAquarisで受けているので、以降、千里2が仕事をもらってきて、日本に転送し、千里1が翻訳してからまた千里2が納品に行く方式とした。2番が忙しい時は《つーちゃん》に取りに行かせる。
 

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2017年秋から2020年1月まで3人の千里はこのような活動をすることになる。
 
1番:レッドインパルスの2軍でリハビリ
2番:春はアメリカのWBCBL、秋−冬はフランスのLFB
3番:レッドインパルスの1軍+日本代表
 
作曲活動は1番が醍醐春海の名前を使っていて「調子を落としている」ことにしているので、2番と3番は共同で琴沢幸穂という名前を使用することにした。鴨乃清見名義の曲も琴沢幸穂で書く。この辺りの調整は、琴沢幸穂のマネージャーを名乗る天野貴子(きーちゃん)が行う。
 
1番は基本的に他の2人より暇なので、グラナダでの翻訳の仕事も多くは1番にやらせた。
 
天野貴子のオフィスも必要だと考えられたので、北千住にシャトルの置き場所も兼ねてマンションをひとつ契約した。そういう訳で千里の“住所”はどんどん増殖しつつあった。
 
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娘たちの二十面相(3)

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