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■娘たちの二十面相(2)

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アクアのマネージャーであるが、コスモスが多忙なので、紅川が中心になって人選を進めた結果、次の3人が現在の牛田典子を中心とする暫定チームから引き継ぐことになった。
 
緑川志穂:元集団アイドル所属
高村友香:元イベンター所属。国内A級ライセンス、大型免許所持。
山村勾美:花村かほり・三條みゆきの元マネージャー。
 
特に山村はパワフルでかつ交渉能力が高いと見て、彼女(彼?)をチーフ・マネージャーにすることにした。山村の性別については、紅川は性転換手術済みのMTFと思ったようであるが、大半の人はふつうのおばちゃんと思ったようである。体型も普通になで肩でバストもDカップくらいあるし、声も女の声である。完全に女性の中に埋没していて、MTFの人を見慣れていない人にはまずリードされない。
 
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なお、桜木ワルツはマネージングチームに残留、鷹木礼子も当面残留し、ハナや佐藤ゆかも状況に応じてお手伝いすることになった。また少し遅れて採用された河合友里もこのチームに投入された。
 
鷹木礼子は年内くらいアクアのマネージング・チームの仕事をしてから、現在メンバーがきちんと定まっていない白鳥リズムのバックバンドにお願いするかもという話になっている。
 
彼女もやはり日本の永住権を申請しようかなと言っていた。ずっと日本に住んでいた両親がアメリカ国籍取得のため出産の時だけハワイに行って産んだ(こうしないと彼女は無国籍になる所だった)だけで、その後ずっと日本に居るという彼女なら永住権を取るのはそんなに難しくないはずである。
 
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山村(実は《こうちゃん》)はアクアのマンションに挨拶に行った。
 
これは7月8日で、7月4日に千里1が死亡後蘇生したものの霊的な能力を喪失した4日後のことである。眷属たちは話し合いで3年間千里の回復を待つことにした。その間は千里(実は千里1)と霊的コネクションが取れないまま近くに居て守護する。もっとも作業量はこれまでより大幅に減ることが予想された。
 
この日、山村(女装)はアクアに会うと言った。
 
「私がアクアの新しいチーフ・マネージャーになったから、よろしくね」
 
アクア(実はアクアN)は呆れたような顔をし、口をとがらせて言う。
 
「こうちゃんさん、何の冗談ですか?」
 
「実は千里のお世話は2−3年休みになったんだよ。だからしばらく、お前に付いてて色々助けてやるから」
 
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アクアは腕を組んで少し考え込んだが、ふすまを開けると奥の部屋に居た2人に「出ておいでよ」と声を掛けた。
 
それで出てきたアクアF・アクアMを見て、《こうちゃん》は仰天した。
 
「お前ら誰!?」
 
結局この後、アクアは山村勾美マネージャー(こうちゃん)の助けにより2020年1月まで“3人1役”(triple cast)を続けることになる。
 

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アクアは7月15日から8月6日まで全国12ヶ所(7月29日の苗場ロックフェスティバルを含む)という初めてのホールツアー(ドームも含む)を行った。これはアクア自身が言い出したことで、観客とできるだけ近い距離でのライブもやっておきたいということから実現した。コスモスはアクアの体力を心配したのだが、アクアが大丈夫です、というので実施することにした。
 
7.15大阪(M) 7.16愛知(N) 7.22沖縄(N) 7.23博多(F) 7.25広島(F) 7.26高松(M) 7.29苗場(F/N) 7.31長岡(N) 8.01小松(M) 8.03宮城(N) 8.05札幌(M) 8.06東京(F)
 
アクアは実は3人で歌うつもりなのである(↑の括弧内が担当)。実際アクアは《わっちゃん》と一緒に移動計画を立て、このようにチケットを確保してもらった。
 
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M用
7/14 東京→大阪(泊) 7/15 Live→東京 (7/17-20映画撮影)
7/25 東京→高松(泊) 7/26 Live→金沢(泊)
8/01 小松Live→札幌 8/05 Live→東京
 
F用
(7/17-20映画撮影)
7/22 東京→福岡(泊) 7/23 Live→広島 7/25 Live→長岡
7/29 苗場Live→東京 8.06 Live
 
N用
7.15 東京→名古屋(泊) 7/16 Live →沖縄 7/22Live→長岡
7.29 苗場Live→長岡 7/31 Live →仙台 8.03 Live→東京
 
この期間はアクアの体力に考慮して、7/17-20以外は映画撮影の予定を入れていないので、アクアとしてはとても楽に移動することができて、結果的にライブでの歌唱の品質も「凄く良い」と三田原さんから褒められた。
 
7月29日の苗場は夏の野外ということもあり、本割りをFが歌い、アンコールはNに交替した。
 
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アクアが山村に3つに仕分けしたチケットの束を見せると
 
「お前よくこれ1人でちゃんと確保したな」
と褒められたが、《わっちゃん》が居なければ、さすがにこんな複雑なチケット(飛行機・新幹線・ホテル)の確保はアクアだけでは無理だった。
 
最初に体力の負荷が小さくなるよう各公演地の担当を決め、わっちゃんと4人で3枚の白地図の上に、MFN3人の軌跡を書いてみて、それを元に旅行日程を書き出す。それでちゃんとうまく行っていることをシミュレーションで確認した上で、各々をネットで確保したのである。代金は千里のカードで決済した上で使用した金額を千里の口座に振り込んでいる。
 

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各々数日間にわたる地方滞在がある。その期間龍虎はツアーの後に入ることになっている映画の台本も読んでいたが、中学時代にちゃんと勉強できていなかった学科、特に英語と数学の勉強をしていた。《わっちゃん》から紹介してもらった、ソンミさんという30代くらい?の女性がよく教えてくれた。韓国で中学の先生をしていたが、数年前に宮城県丸森町に前から住んでいた伯母さんの所に移住し、一緒に農業をしているらしい。日本語が少し怪しいが英語や数学の指導にはあまり支障は無い。今回のツアー期間中は↓のように移動しながら指導してくれた。括弧内は誰が習ったかである。
 
7/18-21 那覇(N)
7/24-26 長岡(N)
7/27-28 長岡(F)
7/29-31 金沢(M)
8/01-02 仙台(N)
8/03-04 札幌(M)
 
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習っている龍虎が3人で交替していることには彼女は気付かなかったようである!
 
ソンミさんは授業の合間に龍虎の求めに応じて韓国語を少し教えてくれたので、龍虎は取り敢えずハングルの読み方だけは覚えた(読めるだけで意味は分からない)。龍虎が「アニョンハシムニカ」などと言うと「女の子は普段はアニョンハセヨと言った方が可愛いよ」などと言っていたので、龍虎はどうも自分は女の子だと思われているようだと思ったが、いつものことなので気にしない!
 

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7月27日夜、山村マネージャー(こうちゃん)は鱒渕が入院している病院を訪れ、病室にいた人達を様々な理由を付けて外に出し(アクアは察して自主的に退去)、鱒渕に尋ねた。
 
「水帆ちゃん、生きたい?」
 
鱒渕は入院が3ヶ月にも及び、全然退院の許可が出ないし、人工透析も受け、物凄く強い薬が使われているので、自分はもしかしたら重症なのかも、ひょっとしたら死ぬのかも、などと思い始めていた。それで山村の言葉にしばらく考えた。そして言った。
 
「私は生きたい」
「だったらこの注射していい?」
「お願いします」
 
それで山村は腕の皮膚をアルコール綿で消毒してから注射したが、凄く上手だった。全然痛くなかった。そして注射されると、身体の中から燃えるような感覚が生まれて広がっていった。
 
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「この薬は本人が持つ生命への希望を強烈に支援する。自然治癒力を高める。だから、生きる希望を持つ人は劇的に症状が改善されるけど、絶望していて、もう死にたいと思っている人は望み通り即死する。水帆ちゃんは即死しなかったから、治癒に向かい始める確率が高いと思う。但し15%の確率で性別が変わる」
 
「ちんちんあるのも楽しそうだから問題ありません」
「よしよし」
 
結局山村は他の人たちが戻って来るまで10分くらい2人で話していたが、その間にも鱒渕は自分の身体が急速に“暖まっていく”ような感覚があった。
 

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「オーディションに合格したんだ!良かったね」
と秋風コスモスは、報告に来た米本愛心に笑顔で言った。
 
「Cold Fly 20って言うんですよ」
「それ、月村山斗さんの、Fire Fly 20 とか、Water Fly 20 とかの姉妹グループ?」
「姉妹というより、獅子舞グループかも」
「何それ?」
 
「Coldというのは、温度が冷めてしまったという意味なんです。だからメンバーは全員何らかの芸能活動をしたことのある人限定」
 
「面白いコンセプトかもね。でもいつオーディションあったの?」
「5月中旬に募集のお知らせがあったんで履歴書・活動経歴書と歌唱ビデオを送ったんですよ。ビデオはハナちゃんに撮ってもらって」
「へー」
 
「それで先週合格通知が来ました」
「書類選考の?」
「いえ。正式合格・採用通知です。制服とIDカードも送られて来ました」
「本選オーディションはいつあったの?」
「ありません。書類選考のみで合否判定だそうです」
「面談とかは?」
「それもないです」
 
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「直接会わずに合格出しちゃうの〜〜〜?」
「そうなんですよ。何か適当っぽくないですか?」
「大丈夫なの?それ」
「まあダメだったら辞めてまた別のオーディションに応募すればいいかと」
「そうかもね」
 

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愛心はオーディション合格者の初顔合わせの席で、Cold Fly20のリーダーに指名され、デビューシングルのセンターも任せられた。3年間§§プロに居てもデビューできなかったので“両親は”喜んだ。
 
しかし愛心自身は、他のメンバーの歌唱力もダンスセンスもあまりにも酷すぎて、ここに加入したことを後悔することになる。
 
音源製作の時など、技術者さんから
「助かった!ちゃんと音程取れる子が1人居た」
 
と言われる始末である。他の子たちにコーラスをやらせてみたら、全くハモらず雑音にしかならなかったので、結局女子大生のスタジオミュージシャン6人にコーラスを歌わせて音源を確定させている。PVも実際に踊らせると全員がバラバラの動きで統一性が取れないので、全員直立不動で愛心の後ろに並べた!
 
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「私、逃げ出したい・・・」
と愛心は思った。
 
実際問題として、どうも面談無しで合格になったのは愛心だけだったようである。多分面談などしてレベルの低さに驚いて逃げられたら困ると思われて、面談無しでの合格になったのでは?という気がした。
 

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7月6日、千里2は顧問弁護士の白金から、春に調査依頼していた上島雷太の経済状況について報告を受けた。その結果、上島の破綻は時間の問題だと認識した。上島はトリプルダウン(トリクルダウンではない)の状態に近づきつつあったのである。
 
・経済情勢の悪化→破産?
・度重なる浮気→離婚?
・T都議との黒い交際→逮捕?
 
もし上島がこの中のどれか1つにでもなったら、長期間の音楽活動停止は避けられない。その場合、年間数百曲を書いている上島に依存している音楽業界に激震が来る。
 
それで千里2は楽曲の作り溜め(主として千里1に依頼)、全国のアマチュア作曲家の支援(TKRに基金の形で資金提供)、などの対策を取り始めるのだが、これは翌年丸山アイと若葉が進めていたミューズ・プロジェクトと合体することになる。この時、冬子も巻き込んだ。
 
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一方8月1日、千里3は貴司とデート中に偶然MM化学の田中社長・S代議士と遭遇。結果的にS代議士の接待役を務めることになるのだが、この時、Sの口からP代議士があと数ヶ月の命であることを聞く。
 
千里3はP代議士が亡くなれば、検察は絶対その人脈に手を入れると思った。その中にはS代議士、結果的には田中社長、そして東京のT都議、結果的にはT都議と度々会っている上島雷太も巻き込まれると考える。
 
そこで芸能界が大騒動になるのは避けられないとして楽曲の作り溜め(こちらも千里1に依頼が行く)、元々詩が書ける友人数人に作詞講座などを学んでもらって商業的な作詞ができる体制を整える。特に優秀な詩を書く若生暢子には鴨乃清見の名前で紹介して室蘭氷渡海さんの講座で学んでもらった。授業料が1回3万円で月3回、半年限定、生徒は最大6名という少数精鋭の講座で、かつて、KARIONの和泉もこの講座で学んだことがある。
 
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そして千里3は一方で自動作曲システムの検討なども始め、使えそうな知り合いの確保・訓練に乗り出す。
 
これが翌年、青葉・鮎川ゆま・峰川イリヤを巻き込んで松本花子プロジェクトへと進展する。
 

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娘たちの二十面相(2)

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