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■娘たちのマスカレード(7)

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「でも結婚式って招待客はやはり100人くらい?」
「それが今の所確定しているのは7人」
「は!?」
 
それで千里は、12月22日に千里と貴司がデートしている所に高倉部長が遭遇したことから“新婚旅行の休暇”を認めてもらったこと。その結果、会社には貴司が自分と結婚したと思われてしまったことを話す。理歌は大笑いしていた。
 
「私、男子日本代表の人たちの前にもしばしば貴司の婚約者とか妻と称して姿を見せているからね。だから、私は貴司と結婚してバスケを引退したと思い込んでいる人もあるみたい」
 
「あぁ・・・」
と言ってから、理歌は尋ねた。
 
「実際問題として、お姉さん、今何してるんです?」
「1日の半分は作曲活動」
「なるほど」
「あと半分はスペインで活動しているんだよ」
「スペイン!?」
「これ私の選手証。他の人には内緒ね」
「そうだったのか!」
「だから私の現在の所属はここLeoparda de Granada, educativo」
「格好いいかも」
「トップチームに入った訳ではないから、どこにも報道されていない」
「へー!」
 
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ところで千里は4月に「9月までレオパルダの育成チームで一緒に練習してて、10月からはWリーグのどこかのチームの育成選手になって欲しい」とバスケ協会の強化部長・吉信さんから言われていたのだが、その10月からの行き先についてその後、何も連絡が無い。8月に入ってさすがに不安になったので、千里は吉信さんに連絡を取ってみた。
 
「ああ、村山君、済まない。実は僕は強化部長を退任してしまって」
「そうだったんですか!?」
 
それで話を聞いてみると、今年発足して9月から第1期のリーグ戦が始まる予定のNBLに関するゴタゴタで、かなりの役員が辞任する騒動になっており、その巻き添えで吉信さんも強化部長を実質解任されてしまったらしい。
 
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「村山君の件は新しい強化部長の土山さんに引き継いだはずだったんだけど、そちらから連絡行ってない?」
「きてません」
 
「分かった。僕が再度土山さんと話してみるよ」
「すみません。よろしくお願いします」
 

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すると翌日になって土山さんから直接連絡があったが、千里は絶句することになる。
 
「村山さん、申し訳無い。あまりにも多忙で、そちらの件が処理漏れていた。それで10月以降のことなんだけど」
「はい」
 
「今Wリーグの各チームと交渉している時間がどうしても取れないんだよ。それでそちらのレオパルダの代表と話したんだけどね」
「はい?」
「取り敢えず今のまま3月までそちらの所属ということにしてもらえないだろうかと」
「え!?」
「レオパルダ側は歓迎と言っている。今の契約では育成チームの試合にしか出せないんだけど、取り敢えず3月まではトップチームの試合にも出せる契約にしたいと向こうが言うんで、日本のチームの試合にも出せるなら構わないと言ったら、それはスペイン側の契約には違反しないから、スペインチームと日本チームに二重在籍することにしようと」
 
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「えっと・・・」
 
「だから、村山君の所属はそのままレオパルダ・デ・グラナダということにして、こちらも日本で村山君を欲しいというところを探すから。あるいは村山君が自分で探してもいいけども」
「あ、はい」
「それでもし日本での所属チームが決まったら、スペイン側と兼任ということで」
「分かりました」
 
それで結局、千里は3月までスペインでの生活が続くことになってしまったのである!
 
しかも土山さんの場合、吉信さんと違って、自分の行き先探しについて、あまり積極的ではない感じだぞ、という気がした。
 

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千里が直接レオパルダのフロントと話してみた所、向こうも昨日その話があり、喜んで3月までの延長を受け入れたのでよろしくと言われた。なおスペインでの居住許可は5年間有効なので問題無いということであった。取り敢えず3月まで日本バスケット協会からレオパルダへは千里の育成費が支払われるが、新しい契約では、トップチームの試合に出ることもあるので、その場合、1試合あたり750ユーロ(10万円弱)の報酬が、千里個人に支払われるということだった。但しその内の1割の75ユーロは派遣元の日本バスケット協会に支払われて(実際には強化依頼費と相殺)千里の手取りは675ユーロ(9万円弱)ということらしい。
 

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千里の滞在が延びたことで1つ問題が発生した。
 
それは国際運転免許証が10月途中で切れてしまうことである。
 
「だったら、千里、スペインの免許証に切り替えればいいよ」
とチームメイトのシンユウが言った。それでやり方を教えてもらい、書類を揃えて交通局に申請してみた。
 
健康診断だけ受けてくれと言われて指定された病院に行くと、視力検査、聴力検査と、反射神経検査(?)をされて、合格ですと言われた。反射神経検査は昔のテレビゲームのような感じだった。
 
それで取り敢えず仮免許証を発行してもらったが、正式の免許証(EU統一免許)は後日郵送してくるということであった。
 
千里のEU統一免許にはA(自動二輪)とB(普通自動車)が設定されていた。
 
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EU統一免許なので、この免許証でヨーロッパのほぼ全域(EU諸国・アイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェイ)で運転が可能である。永世中立国のスイスはこのエリアに含まれないが、スイスでは入国して1年以内はEU免許での運転が可能である。つまりスイスに住むのでない限り問題無い。実は日本の運転免許証でもEU免許同様にそのまま運転できる!(但し日本の国際運転免許証はスイスでは無効)が、スイスの警官の大半は日本語が読めないので、免許証の翻訳文を携行するのがお勧めらしい。
 

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この免許切替えの際、日本の免許証を提示すればいいのだろうと思っていたら、交通局の人に回収されてしまった。それでは日本で運転できないので困ると言うと、出身国の大使館で受け取れるということであった。
 
そこで大使館に問い合わせると9月2日(月)以降なら受け取れるということだったので、その日にマドリッドの日本大使館まで取りに行くことにした。
 
なお、なぜこんな面倒なことになっているかというと、本来は「免許証は1人に1つ」という考え方からEU免許証を持っている間は日本の免許証は当局で預かっておくという趣旨のようである。ただしスペインのお役所は、とっても“適当”なので、この預かった免許証は高確率で!?紛失される!
 
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(スペインはそもそも全てが“適当”な国である。日本やドイツのような感覚では生きていけない)
 
大使館で日本の免許証を受け取れるのは本来は日本に一時帰国する場合の便のためである。しかし、この制度を利用して双方の免許証を所持している人は割といる。ただ、本来は免許証は1つだけという建前なので、ヨーロッパ域内で運転する場合は、日本の運転免許証は自宅などに置いておき、携行しないのが良いという。
 
(実際には千里のように日本とスペインを毎日往復するような人は普通居ない)
 
スペインの交通局で紛失されてしまったりして日本の免許が返却してもらえなかった場合は、スペインで国際運転免許証!を発行してもらってそれで日本では運転するか、あるいは日本の運転免許センターで、海外で紛失したとして日本の免許証を再発行してもらうしかない。
 
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貴司たち男子日本代表は7月24-25日にNTCで合宿した後、26日にマニラに渡った。そして28日からのアジア選手権に出場する。
 
この大会で日本は予選リーグでは初戦カタールに1点差負けを喫したものの、香港には勝って1勝1敗の2位で予選リーグを通過。2次リーグに進出した。しかしここでフィリピンに大敗、台湾にも僅差で敗れて決勝トーナメントには進出できなかった。
 
やはり龍良の怪我からの回復がまだ万全ではなかったのが大きかった。
 
結局9-12位決定戦に廻り、ここでインドと香港に勝って、日本は9位でアジア選手権を終えた。
 
当然来年のワールドカップには出場できない。
 

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貴司たちは8月7日の決勝戦を観戦したあと、8月8日に帰国した。貴司は都内で1泊してから9日朝に大阪に戻った。千里(せんり)のマンションに戻ると保子も来ていて
 
「いらっしゃらないかと思いましたよ」
と言ったが、
「済みませんね。忙しいもので。昨日帰国したんですよ」
と結構な反感を顕わにしながら言った。
 
そしてお昼過ぎに結婚式をあげるRホテルに一緒に行った。結婚式は14時(スペイン時刻朝7時)からである。
 

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千里は8月9日(金)の朝、起きてから、かなり悶々とした気分であった。
 
結局9時近くになってから
 
『きーちゃん、私やはり行ってみようかと思って』
と日本に居る《きーちゃん》に問い掛けると
 
『大陰が大阪に行ってるから彼女と位置交換するね』
 
と言って、千里を大阪のRホテルに飛ばしてくれた。それでどこかな?と思いながら歩いていると、2階ロビーにモーニング姿の貴司を見つける。そしてその近くには老齢の女性と並んだウェディングドレス姿の阿倍子を見た。あれ?お母さんだっけ?去年見た時よりかなり老けてない?と思う。
 
しかしモーニング姿の貴司とウェディングドレスの阿倍子がいるということは2人は結婚式を挙げてしまったんだというのを千里に認識させる。
 
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激しい悲しみが込み上げてきた。
 
やはり私、ここに来なければ良かったかな・・・・と後悔する。それで帰ろうかと思ったら
「千里姉さん」
と声を掛けられる。
 
ライトグリーンのドレスを着た理歌であった。
 
「姉さん、来てたんですか?」
 
それでふたりで1階に降りてカフェに入った。理歌がフルーツパフェを2つ注文し一緒に食べながら話した。
 
「理歌ちゃん、ありがとうね。出席してくれて」
「出たくなかったけど、千里姉さんが出て欲しいと言うから私とお父ちゃんだけ出席しましたよ」
「お母さん何か言ってた?」
「引き出物はどぶに捨てて帰ってきてと言ってました」
 
千里は吹き出す。
 
「まあ5年はもたないだろうけど、早々に離婚するといいね」
と千里が言うと理歌も笑った。
 
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「そうそう。うちのお父ちゃんったら、新婦の名前を言い間違って」
「へ?」
 
「お父ちゃん、兄貴が千里姉さんじゃない人と結婚すると聞いて、長年兄貴に干渉していた緋那さんが相手と思い込んでいたらしいんですよ」
「え〜〜!?」
 
「それで『貴司、緋那さん、幸せになってください』って」
「あははは」
 
「まあ式には出ましたけど、私も美姫もお母ちゃんも、兄貴の本当のお嫁さんは千里姉さんだと思っていますから」
 
「ありがとう」
と言って、千里は涙が出てきた。
 

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ところで貴司と阿倍子の婚姻届は結婚式・披露宴が終わったらすぐに豊中市役所に提出する予定だったのが、それは翌朝になってしまった。それはこのような経緯であった。
 
9日の昼前“石原”は“船越”と“高倉”に
「おい、行くぞ」
と声を掛けた。それで3人は強烈な“愛情不成就”の呪いを掛けたワイシャツの上に倒産整理品の礼服を着て、Rホテルへと出かけた。
 
貴司を見かけて
「やぁ、今日はおめでとう」
と声を掛け、祝儀を渡すが、中身は1万円である。そして実は3人の1万円札は先日、阿倍子の父の一周忌で“お坊さん”にお布施として渡された紙幣であった。更にお寺の線香の煙にたっぷり曝して臭いがつくほどにしている。
 
貴司・阿倍子・保子がやってくる。
 
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『おい、あの母ちゃん、やばくないか?』
『酷い糖尿病だ。臓器もあちこちやばい』
『余命1年無いよな』
 
『しかし母ちゃんが死んで、阿倍子が天涯孤独になったら、阿倍子は貴司と絶対別れないぞ』
『それはまずいな。仕方ない。あの糖尿病を治療しちまえ』
 
『どうやって治療するのさ?』
『この薬を飲ませればいい』
と言って“石原”はガラスの小瓶を取り出す。
 
『それは?』
『ある場所からくすねてきた薬。糖尿病くらいなら半年程度で治る』
『へー』
 
『但し50%の確率で即死する』
『それ死ぬ確率が高すぎないか?』
『生き延びた場合も10%の確率で性転換する』
『性転換くらいは些細な事という気がする』
 
この薬は実は“ある人物”が開発中だった薬品の試作品である。むろん“石原”がその薬をくすねていくのをその人物が気付かない訳が無い。自分の手を汚さずに人体実験ができると思っている。この薬は数年後には即死確率がかなり下がる。しかし性転換確率は上がる!?
 
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『そのあたりも含めて運次第だな』
『あと、本人が食習慣を変えなければまた再発する』
『そこまでは面倒見切れないな』
 
それで“石原”は取り敢えず保子の心臓を一瞬だけ停めた。
 
保子が胸を押さえて倒れる。
 
「お母さん?」
と言って阿倍子が保子を介抱する。
 
そこに白衣を着た男性が通りかかる。
「どうしました?」
「今急に胸が苦しくなって」
「私は医者です。診てあげましょう」
「すみません!お願いします」
 
“医師”は保子の服をめくると聴診器を当てた。
 
「軽い心筋梗塞ですね。発作の薬をさしあげます」
「お願いします」
「この薬を飲んで下さい」
「はい」
 
それで保子は薬を飲んだ。保子は“少し”楽になったようであった。
 
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どうも“永久に”楽になったのではないようである。“医師”は内心惜しいなと思った。治療しようとした結果の“事故”だったら、こいつが死んでも俺は千里から叱られないのに、などと考えている(彼は実は千里が怖い)。
 
「もし何かありましたら、うちの病院にでもいいですし、お近くの病院にでも駆け込んで下さい」
「はい。ありがとうございます」
 
それで“医師”は名刺を置いて立ち去った。
 

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娘たちのマスカレード(7)

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