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■娘たちのマスカレード(3)

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「男になりたかったら、おっぱいはこれ以上膨らまないようにし、女になりたかったら、ちんちんはきれいに取ってしまう」
 
取っちゃうのか・・・。川南さんからは「今年こそきれいにちんちん取っちゃおう」とかよく言われるけど。。。。。
 
「今ならまだ男にも女にもなれるけどね」
 
結局それはその後8年ほどの龍虎の最も大きな悩みとなる。
 
「取り敢えず身体は女性化させておけばいいよ」
「そうなの!?」
 
「今の時期は女性化させて骨盤を女性的にしておく。そうしないと男性的な骨盤になると、20歳くらいになって女になりたいと思っても、もうなれない。男の骨盤では赤ちゃん産めない。でも女性的な骨盤は男になっても邪魔じゃ無い。18歳頃からちんちんを発達させれば、ちゃんと男にはなれる」
 
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と彩佳は言う。
 
「へー!」
 
そういうものなのかなあと龍虎は考えた。
 
「声とかもいったん声変わりしてしまうと、もう女の子の声には戻れない。でも女の子の声のまま20歳くらいまでいっても、男の声になりたいと思ったら、それから男性ホルモン飲めば声変わりが起きて男の声になれる」
 
「そうなんだ!」
 
男の声には・・・あまりなりたくない気がする、と龍虎は思った。
 
「だから今はお医者さんに頼んで女性ホルモン処方してもらって、飲んでおくといいよ」
 
と彩佳が言うと、龍虎はギクッとした。
 

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食事が終わった後は各々の部屋に入ることになる。22時就寝なので1時間ほどの余裕がある。クラス委員が部屋割り表を配って回っている。
 
龍虎は彩佳・桐絵・宏恵・麻由美と一緒になっていた。
 
部屋割りを作ったのは増田先生である。この学年はどのクラスも男子が女子より多いので、各クラスに男子4部屋・女子3部屋で割り当てられている。
 
一応書いた上でクラス委員の意見を聞いたのだが、クラス委員のふたりは一瞬顔を見合わせたものの、龍虎が女子の部屋に入っていることについて何も言わなかった。実際問題として昨年の宿泊体験でも龍虎は女子部屋で問題無かったので、今年も問題無いだろうと考えたのである。
 
実際クラス委員のふたりとしても、龍虎を男子部屋に入れた方が、色々問題が多い気がした。
 
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部屋割りを見た龍虎も、彩佳たちも一瞬腕を組んだり、他の子の顔を見たりしたものの
 
「龍は私たちと一緒で全く問題無いと思う」
と宏恵が言い
「ボクもこのメンバーと一緒なら構わないかな」
と言って、一緒に割り当てられた部屋に言った。
 
「龍ちゃん、女子部屋なんだね」
と麻由美が少し驚いていたが
 
「まあ龍は肉体的には男子より女子に近いからね」
と彩佳は言う。
 
「心は男子に近いから、龍は私たちの着替えは見ないように」
「目を瞑るか壁を向いているよ」
 
「でも龍はどう考えても男子部屋には入れられないもん」
と桐絵。
 
「あ、それはそんな気がした!」
と麻由美も言った。
 
「ライオンの小屋に羊を入れるようなものだよね」
「朝までに消滅してるね」
「ボク消滅するの!?」
 
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持参のおやつなどもあけて、5人で結構楽しくおしゃべりして就寝時刻まで過ごす。22時すぎに増田先生が回ってきて
 
「もう寝なさい」
と言われたので
「はーい」
と返事して、灯りを消した。
 
ちなみに布団は8畳の部屋に、上3列、下2列で敷いており、窓側の方から上に麻由美、下に宏恵、上に彩佳、下に桐絵、最も入口側の彩佳の隣に龍虎という配列である。桐絵と宏恵が
 
「最も問題の少ない配列」
 
と言ったが、ふたりはついでに
「彩佳は夜中に龍を襲わないように」
と付け加えた。
 
しかし彩佳も今日の行程がけっこうハードだったので、龍虎に夜這いを掛けたりせず!?熟睡していた。
 

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午前3時。
 
「龍、起きて、龍」
という小さな声で龍虎は目を覚ました。
 
「どうしたの?彩佳」
「お風呂行こうよ」
「え!?今何時?」
「午前3時。この時間なら誰も入ってないから、龍ものんびりと入れるよ。夕方のお風呂は結構緊張したでしょ?」
「うん。実は」
「私と一緒に行こうよ。そしたら何かあった時、フォローできるし」
「やはり女湯なの〜?」
「龍が男湯に入れるわけない」
 
それで2人で行こうとしていたら桐絵が起きだして
「私も行く」
と言った。それで3人で大浴場に出かけた。
 

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夕方は1階の“華厳湯”に入ったのだが、今は
《↑2階女湯→1階男湯》
という看板が立っている。それで階段を登って2階にあがる。
 
時間が時間だけあって誰も居ないようである。
 
「目隠ししなくていいの?」
と龍虎が訊くが
 
「私も桐絵も何度も龍と裸を見せ合っているしね」
と彩佳が言う。
「そそ。2〜3年生の頃はよく一緒にお風呂入ったよね」
と桐絵。
 
「でも、ボクたちもう6年生だよ」
「龍はまだ男の子になってないからね」
 
そう言われてやはり“男の子”になっちゃったら、今みたいに彩佳たちとは付き合えないのかなあと少し寂しくなった。
 
3人とも裸になってしまうが、龍虎は彩佳や桐絵の裸を見ても何も感じないし、龍虎が何も感じていないようだというのを彩佳も桐絵も感じる。
 
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それで3人で一緒にお風呂に入った。
 

1階の華厳の湯は岩風呂的だったが、2階の東照の湯は木の香りがする。最初に入ったのは木彫りの三猿が飾られている三猿の湯である。
 
「今夜私たちが一緒に入ったことは“言わざる”で」
「まあ、その方がいいかなあ」
 
それで3人は湯船に入ったまま、昨日の旅程のことや、学校での普段のことなどで楽しくおしゃべりをした。途中で木彫りの龍が飾られている鳴き龍の湯に移動する。
 
「龍にふさわしいお湯だ」
と言われて、龍虎は1年生の時に、龍のおじいさんに乗って空を飛んだ時のことを思い出していた。
 
「龍さ、ベルリラ担当でスカート穿くの嫌だったら、クラス委員の佐苗に言って調整してもらうよ。昨年から転校で3人減っているから、多少の人数調整が可能なんだよね」
と彩佳が言った。
 
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「ボク別にスカート穿くの嫌ではないし、ベルリラでいいよ」
「そ?じゃ、そのままで」
 
「それと龍さぁ」
「うん?」
「最近少し女性ホルモンの飲み過ぎだと思う」
「・・・バレてる?」
 
「こんなにおっぱい大きくしちゃうと、さすがにヤバいと思うよ」
「ボクも少し育て過ぎたかなという気はした」
「しばらく控えてなよ。そしたらバスト小さくなって行くよ」
「そうしようかな」
と言ってから龍虎は言った。
 

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「たださ」
と龍虎は言った。
 
「偶然かも知れないけど、“お薬”飲み始めてから身長が伸びたんだよ」
「え?」
 
「ボク1年生の頃から4年生の終わり頃までほとんど身長が伸びてなかったし、体重もあまり増えてないんだよ。それが去年3月にお医者さんから間違って女性ホルモン剤を渡されて3ヶ月間飲んでいたんだけど、その間におちんちんは縮んだけど身長は伸びたんだよ」
 
「へー!」
 
「その後、誤投薬が分かって、飲むのやめたらその後、おちんちんは大きくなったけど、背丈は全然伸びなくなった」
 
「うむむ」
 
「それで年末頃から、ボク彩佳が言うように女性ホルモン剤を結構飲んでる。そしたら、おちんちんは縮んでいるけど、背丈は10cm以上も伸びたんだよ」
 
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「最近の龍の急成長はそのせいか。ということは、龍の選択は男だけど身長が小学2年生のままで留まるか、身長は年齢相当まで伸びるけど、おちんちんがほとんど無くなって女の子みたいになってしまうか、どちらかということか?」
 
「そうかも」
 
「既にこれはちんちんではなくクリちゃんになってる気がする。割れ目ちゃんが無いだけ」
と桐絵は龍虎のお股に触りながら!言う。
 
それで彩佳はしばらく考えてから言った。
 
「だったら、もう潔く手術して割れ目ちゃん作って女の子の形に変えてもらったら?名前も龍子に変えて」
 
「それは嫌だ」
 

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脱衣場の方で何か音がするので“危ない話”は中断する。
 
眠り猫の湯に移動し、当たり障りの無い話に切り替えておしゃべりしていたら、入って来たのは増田先生であった。
 
「おはようございまーす」
「あら、あなたたち早いわね。それともずっと起きてたんだっけ?」
「寝てましたよ。0時を境にお風呂が男女入れ替わったらしいから行ってみようよと言って出てきたんですよ」
「だったらいいけど」
「少しお風呂に浸かってから、また寝ます」
「それがいいかもね」
 
「先生こそお疲れ様です。事故とかあったらいけないし、神経使うでしょう?」
「そうなのよねぇ。ここの学校ではその手の事故は起きてないけど、やはり修学旅行中に生徒が大怪我したり、死んだりという事故は毎年どこかで起きているから」
「そういう時は先生も大変でしょうね」
「うん。責任を問われるしね」
 
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「でも昨日のエポックはトロッコ列車だったけど、今日はきっと華厳滝ですよね」
「うん。あそこは私も以前1度行ったけど、凄いよ。あの巨大な滝をすぐそばで見られるのがね」
 

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しばらくおしゃべりしている内にふと増田先生は言った。
「そういえば、田代さんは男の子ですよ、と言っていた人がいたけど」
 
龍虎はギクっとする。彩佳と桐絵は素早く視線を交わす。
 
「こうしてみると、間違い無く女の子よね」
「そ、そうですね」
と桐絵。
 
「だって、おちんちんなんて付いてないし、おっぱいあるし」
と増田先生。
 
「龍はA60のブラ着けてますよ。Aカップ着けてる子はうちのクラスの女子でも少ないです。まだみんなジュニアブラかせいぜいAAカップだもん」
と彩佳。
 
「じゃやっぱり田代さん、女の子だよね?」
と増田先生。
 
「こんな可愛い男の子がいる訳ないです」
 
と彩佳は内心焦りながら言った。龍虎は少し悩んだが、男の子だということになると女湯に入っていることで逮捕されるのでは?という気がしたので、そのままにしておいた。
 
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龍虎たちは増田先生より先にあがり、服を着て部屋に戻って少し寝た。
 
朝は食事の後、旅館のそばにある湯ノ湖を歩いて見学。それからバスに乗って湯ノ湖南端から水が落ちる湯滝を見る。そして戦場ヶ原をバスで通過しながら見て、やがて竜頭の滝もバスを降りて見学する。
 
その後、更にバスで移動して中禅寺湖に到達。華厳滝をエレベータに乗って見学するのがお風呂の中で彩佳も言った通り、午前中のエポックとなった。
 
ここで早めのお昼を食べて1時間ほど休憩する。お土産などを買っている子もいた。
 
そして12時頃またバスに乗り東照宮に移動するが、いろは坂を通過する!
 
ちなみに昨日通ったのは第2いろは坂(登り専用)で、今日通るのは第1いろは坂(下り専用)である。またまた悲鳴があがっていたし、吐く子もいる。
 
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「そうか。昼食の後、1時間休憩したのはこのためか」
という声があがっていた。
 

東照宮ではバスガイドさんの案内で観覧していくが、三猿(見ザル・言わザル・聞かザル)、陽明門、眠り猫とみていくと、その度にざわめきのようなものが起きていた。しかしみんながいちばん感心したのが鳴き龍で、交替で体験したが、みんな「すごーい」と言っていた。
 
龍虎は「龍の鳴き声」というので、また《こうちゃん》さんのことを思い出した。呼んだら返事してくれたりして?と思ったら『へーい』という声がした気がして、周囲を見回した。
 

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東照宮を見た後は、お土産屋さんを見て、まだお土産を買っていなかった子が買い、その後バスに乗る。バスは日光宇都宮道路→東北自動車道と走り、羽生ICで降りて、熊谷市のQS小学校まで戻った。到着したのは4時半頃である。
 
帰りのバスの中でもマイクを回してひたすら歌っていた。
 
龍虎は1回目は色っぽい歌を歌えと言われて『ベサメ・ムーチョ』を歌ったが「英語はわからん」と言われ「これスペイン語」というと「更に分からん」と言われた。2回目はとうとう曲を指定されて『ヘビーローテーション』を歌ったものの「なぜこんなに色気が感じられない!?」と言われ、3回目はもう開き直って『夜の女王のアリア』(但し3度下げて最高音はD6)を歌ったら「なぜそんなに高い声が出る!!?」と呆れられた。
 
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「ひょっとしていわゆるカストラートだったりして」
「やはり睾丸が無いという噂は本当か?」
「龍ちゃんに睾丸がある訳無い」
「実際見たけど、睾丸なんて無かったよ」
「ちんちんも無かったよ」
 
などといった声があがっていた。
 
「ところで今のもスペイン語?」
「ドイツ語〜」
「龍ちゃん、スペイン語とかドイツ語とかできるの?」
「音で覚えただけだから、歌詞の内容は知らない」
「ふむふむ」
 

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娘たちのマスカレード(3)

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