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13時に出発して30分ほどで桐生駅に到着する。ここでわたらせ渓谷鐵道のトロッコ列車(桐生14:02-15:48間藤)に乗る。
ここで初めて“班”が始動した。
彩佳・龍虎・桐絵・立石・内海・西山
という6人で3班はできている。この単位でバスを降りてから行動し、列車に乗車する。
もっとも、多くの班が男3女3で出来ているが、座席は2人掛けである。それで隣同士の班で男女交換をして、男同士・女同士で座れるように調整していた。
「涼しい列車だ」
「窓が無いからね」
「冬は窓ガラス入れるらしいよ」
「そうしてもらわないと凍死できるかも知れん」
ちなみに龍虎たちは、立石君と西山君が並び、内海君は隣の班の宏恵と交換され、宏恵と桐絵が並び、龍虎は彩佳と並んで座った。ここだけ男女が並んでいるはずなのだが、誰もこの並びに意義を唱えなかった。龍虎は男女問題は何も考えていないので、ふつうに彩佳・宏恵・桐絵とおしゃべりしながら沿線風景を楽しんだ。
終点の間藤(まとう)までは乗らず、2つ前の通洞(つうどう)で降りる。班単位で行動し、駅から歩いて7分ほどの足尾銅山の見学施設に行く。
坑道の一部が観光用に開放されており、見学用の列車に乗って中を見ることができる。内部では、鉱山の発掘作業をしている所を人形などで再現しており、精錬の過程なども見ることができるようになっている。
見学が終わった後、龍虎たちは再びバスに乗る。そしてバスは国道122, 120号を通って奥日光まで行くのだが、途中“いろは坂”を通ることになるので、バスの中で大量の悲鳴があがっていた。
旅館に到着したのは18時頃であるが
「今すぐ食事と言われてもとても食べられない」
という声が多数であった。実際、バスの中で吐いてしまった子も居た。
結局20時まで入浴タイムになり、食事はその後ということになった。
この旅館は大浴場を持っているので、QS小の全生徒104人が一度に入浴しても全く問題無い。なお荷物は貴重品と着換えだけ持ち、それ以外は食事をすることになる大広間に置いておくようにということだった。
龍虎は彩佳・桐絵・宏恵と一緒に着換えと財布・携帯だけ持っておしゃべりしながら大浴場に向かう。本館とは別になっていて、渡り廊下でそちらに向かう。男女の風呂は1日交替で入れ替わるらしいのだが、この日は、1階“華厳の湯”が女湯、2階“東照の湯”が男湯ということであった。
「お風呂は24時間使えるらしいから、朝反対側に入りにくるといいね」
「なるほどー。それでどちらも体験できるわけだ」
「そういう仕組みが無いと、夕方は男の身体で男湯に入って、朝は性転換して女湯に入らなければならない」
「お風呂に入るために性転換するのは大変そうだ」
「ちんちんが取り外し式なら便利かも」
「それ作り物なのでは?」
貴司は輸入代行業者からの荷物を受け取り、ドキドキしながらそれを開封した。
「なんか凄いリアル。触った感じも作り物とは思えん。まるで本物みたい」
と声をあげる。
ついぶらぶらとしているそれを指で弾いてみる。
「しかしハーネス無しで装着できるというのがいいなあ」
貴司は装着の仕方を書いた英文の説明を読み、同封されていたCDに入っている装着の様子を納めたビデオも熱心に視聴した。
龍虎はお風呂の前まで来ると
「じゃね」
と彩佳たちに言って2階へ階段を登ろうとした。
QS小の生徒はエレベータは使わずに階段を使いなさいと言われている。
ところが彩佳と桐絵に身柄を確保される。
「どこに行く?」
「どこって男湯に」
「龍は男湯には入れないはず」
と彩佳。
「だってボク男の子なのに」
「男の子かも知れないけど、ちんちん無いよね?」
と桐絵。
「ちんちんが無い子は女湯に入らないといけないんだよ」
「ちんちん、あるよぉ」
「いや、無いのは確認している」
と彩佳。
「どうやって確認したのよ?」
と宏恵が言っている。
「裸に剥いて目視確認した」
「あんたたちの関係が分からん」
「だから付いてたでしょ?」
「付いてるけどほとんど皮膚に埋もれているから実質無いのと同じ」
「外に出る部分が1cmくらいあるよぉ」
「あれはちょっと押せば中に引っ込んでしまう」
「彩佳触った訳〜?」
と宏恵は呆れている。
「龍は去年も宿泊体験で女湯に入ったじゃん」
「あれ増田先生に女湯に押し込まれてしまったから」
「一度女湯に入っているなら問題無い。おいで」
「まずいよぉ」
「女子トイレは普通に入るじゃん」
「女子トイレと女湯は違うよぉ」
ところが、そこで揉めている時に増田先生が通りかかる。
「どうかした?」
「龍が2階にあがっていこうとしてたので停めた所です」
「ああ。この旅館は男湯。女湯が固定じゃなくて日替わりだからね」
「だから龍が今日入るのは1階だよ」
と彩佳に言われ、結局龍虎は女湯の脱衣場に強引に連れ込まれてしまったのである。
龍虎が女子トイレを使い、女子と一緒に着換えるのを容認している他の女子たちもさすがに女湯の脱衣場ではざわめく。龍虎自身は中に連れ込まれたのと同時に目を瞑っている。
「彩佳、また龍ちゃんを女湯に入れるの?」
と声がある。
「龍は去年よりは少しちんちん伸びたけど、まだ短いのよ。見てみて」
「どれどれ」
「龍、ズボンとパンティ脱ぎなよ」
「うん」
それで龍虎は体操服のズボンを脱ぐ。
「やはり女の子用のパンティ穿いているんだね」
「龍は男の子用のトランクスとかボクサーは持ってないよ」
と彩佳。
「買っておくんだけど無くなるんだよ。今朝も探したけど見つからなかった」
と龍虎。
「そもそも龍は立っておしっこできないから男の子のパンツが穿けないんだよ」
「へー。でもパンティに何も盛り上がりが無いね」
「ちんちん実質無いのと同じだから当然。龍、パンティも脱いで」
「うん」
それでパンティも脱いだ。
「付いてないように見える」
「あることはあるんだよ。見てみて」
「どれどれ」
それで女子たちが寄ってきて見ている。龍虎は目は瞑っているものの恥ずかしくてたまらない。
「やはり無いように見える」
「ほら、これがちんちん」
と言って彩佳は触っている!
「それがちんちんだったのか!」
「タマタマは無いんだね」
「それは去年も確認したね」
それはもう、いいや!
「おちんちん病気で切っちゃったと言ってたけど、また伸びてきたのね」
「そうそう。伸びすぎたらまた切るらしいよ」
「へー、髪の毛みたい」
何それ!?
「中学に入る前に根元から切って、もう伸びてこないようにしようとかも言っているんだよ」
「ああ、それなら安心だね」
安心なの〜?
「伸びててもこうやっておせば中に引っ込んでしまう」
と言って彩佳は実際に押し込んでしまう。
「押し込んだ跡が割れ目ちゃんみたいになっちゃう」
「そうなのよ。これ接着剤でくっつけるとそのまま数時間割れ目ちゃんのまま」
と彩佳。
「それやられると。おしっこができない」
と龍虎。
「あんたたち普段何やってんの?」
と呆れる声もある。
「でもこれなら男湯には入れないでしょ?」
「確かにこれでは女の子が男湯に入ってはダメって追い出されるね」
「だから女湯に入れてもいいでしょ?」
「龍ちゃんが女湯に入るのは構わないけど、私は龍ちゃんに裸を見られたくない」
と言っている声がある。麻耶のようである。麻耶本人は気にしないだろうが、意見を言うのに慣れてない子たちの声を代弁しているのだろう。
「そう言う人もあるかと思ってこれを用意した」
と彩佳。
「ゴーグル?」
「麻耶ちゃん、着けてみてごらんよ」
「どれどれ」
と言って麻耶が着けると
「何も見えない」
と言う。
「これ内側に黒いフィルムを接着剤で貼った。だから何も見えないし、お湯に曝しても平気」
「これを着けさせる訳か」
「それならいいかもね」
「ということで龍、これをつけて」
「うん」
それで龍虎は彩佳から渡されたゴーグルを着けた。
「目を開けていいよ」
龍虎おそるおそる目を開ける。
「何も見えない」
「それでお風呂入ればいいね」
「でも歩けないよぉ」
「それは私が手を引いてあげるから」
「ゴーグルなら、そのまま髪も洗えるね」
「むしろ私がゴーグル欲しいくらいだ」
「実は最初ベネチアン・マスクにしようと思ったんだけど、頭を洗うと落ちそうな気がしたから、ゴーグルにした」
「ベネチアンマスクをしてお風呂に入ってたら、どう見ても変態だ」
「ゴーグルもかなり危ないけどね」
それで龍虎は内貼りされて何も見えないゴーグルをつけたまま女湯に入ることになってしまったのである。
龍虎が上半身の服も脱ぐと、
「おっぱいもあるね」
と周囲の女子から言われる。
「結構膨れているよね。龍はA60のブラジャーつけてるから」
「へー。これAカップなの?」
「うん。お店の人に測ってもらったよ」
「龍ちゃん、今日はブラジャーつけてないの?」
「私が持って来たから、お風呂からあがったらつけよう」
「なぜ彩佳が龍ちゃんのブラを持っている?」
「龍が修学旅行にちゃんと持って来ないかもしれないと思ってこないだ行った時に確保しておいた」
「やはりあんたたちの関係が分からん」
龍虎も昨年に続き2度目の女湯なので、去年より少しは平常心で入浴することができた。彩佳が手を引いてくれるし、自分でもある程度の勘は働く。そしてゴーグルは髪を洗うときにも便利である!
それで汗を流し髪を洗い、身体を洗ってから彩佳たちと一緒に浴槽につかる。ここは多数の浴槽があり、色々なところに浸かった。
「龍はこの浴室内部が見られないのが残念だね」
ほんとだ!
彩佳たちによれば全体的に岩風呂っぽい作りらしい。華厳滝(けごんのたき)になぞらえた“華厳湯”という打たせ湯もあって、龍虎も体験したが面白かった。ほかにジェット湯・バブル湯なども楽しめたが、薬草湯は匂いが凄くてすぐあがった。
「でもこの薬草湯は美人になれると書いてある」
「私たち既に美人だから必要無いね」
「君たちのその自信はどこから来るのか?」
結局1時間ほど掛けて楽しく入浴した。みんないろは坂の疲れも癒えて元気いっぱいになる。
それであがるが、龍虎は彩佳からブラジャーを渡され、苦笑しながらつけた。
「確かにこれはAカップでいい気がする」
「あまりお肉があまってない」
「一説によると、龍は身体自体が細いから、腕を動かすために必要な筋肉の分、バストがあるということらしい」
「なるほどー!それなら納得できる」
「でも一説によると生理が始まったから、胸も発達してきたという説も」
「龍ちゃん、生理あるの!?」
「無いよぉ」
「いやきっとある」
「それどこから出てくるのさ?」
「きっと何とか出てくる」
お風呂からあがった後は、荷物を置いている大広間に行き、そこで夕食を取った。
長いテーブルに座布団が並べられていて、そこに既におかずは配膳されている。仲居さんたちが、小型コンロに青い固形燃料を置いては、点火棒の長いガスライターで火を点け、その上に一人用鍋を置いてまわっている。御飯は適当な間隔におひつが置かれていくので近くに居る人が盛ってあげてねということだった。龍虎は隣が彩佳、向かい側が宏恵と桐絵で、その龍虎と彩佳の間におひつが置かれたので、龍虎がその4人、その向こう側の優梨と菜美の分まで御飯を盛ってあげた。
「龍ちゃんって、こういう時、自然にお給仕とかしちゃうよね」
と菜美。
「私も、あっ盛らなきゃと思った時には既に龍が始めていた」
と彩佳。
「おうちでもこういうのお手伝いする?」
「うちはお父ちゃんもお母ちゃんも忙しいから、ボクが御飯とかも作ること多いし、その延長で御飯や料理も盛ってる」
と龍虎。
「料理とか作るんだ!」
「すごーい!」
「龍は料理うまいよ。天麩羅とか唐揚げも揚げちゃうし」
と彩佳は言っている。
「揚げ物ができるのはポイントが高い」
「龍ちゃん、きっといいお嫁さんになれるね」
「あまりお嫁さんになりたくはないなあ」
「でも龍ちゃん、お婿さんにはならないでしょ?」
「うーん。。。ボク実はそのあたりがよく分からない」
「龍は恋愛も分からないって言うもんね」
「うん。王子様とお姫様の話とか聞いて、その王子さまになりたいか、お姫様になりたいかと言われると、ボク分からない気がするんだよね」
「まあ要するに龍は性的に未分化なんだな」
「ああ、いわゆる男の娘とは違う気がしていた」
「そうそう。男の娘は基本的に男の子で、女の子になりたい。でも龍虎の場合はそもそも男の子ではないし、女の子になりたいという意識もない」
「ほほお」
「龍は現在まだ中性なんだと思う」
「なるほどー!」
「この後、ちんちんが生えてくるか、おっぱいが膨らんで来るか」
「ちんちんは生えかかってたね」
「おっぱいも少し膨らんでいた」
「でも龍はどちらかを選ばなきゃいけない」
と彩佳は言う。
「うーん・・・」
と本人はマジで悩んでいる。