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■娘たちの仲介(3)

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この大会の出場チームは関東8都県から各2チームの16チームである。それで初日は1回戦・2回戦が行われた。
 
午前中に行われた1回戦では神奈川県のチームとあたり、12点差で快勝した。この試合には千里と誠美は出なかった。
 
午後遅く行われた2回戦では茨城県のサンロード・スタンダーズと当たる。過去に色々な大会で当たっており、強いチームであることは分かっているのでベストメンバーで出て行く。
 
果たして激しい戦いになったものの、ここ1年ほどで大きく成長した千里や誠美を中心に何とか6点差で勝つことが出来た。
 
これでBEST4以上が確定したので、全日本クラブ選手権への出場は確定である。サンロード・スタンダーズも明日の5−8位決定戦で勝てば全日本クラブ選手権に行くことが出来る。
 
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「取り敢えず全国クラブ選手権進出を祝って乾杯」
と浩子が音頭を取ってジュースや烏龍茶で乾杯する。
 
まだ大会途中なのでアルコールは禁止である。
 
「私も含めて大量に辞めて申し訳無いと思って、後輩で入ってくれる人いないかなあ、と思って探していたら、水嶋ソフィアが入れてと言っている」
と千里が言った。
 
「ソフィア!?あの子、今どこに居るの?」
「実業団・関東2部の**化学に入ったんだけど」
「ありゃ」
「会社自体が倒産しちゃったんだよね〜。会社更生法を申請中。バスケ部とバレー部は事実上活動停止状態らしい。体育館もロックアウトされてると」
 
「廃部じゃないんだ?」
 
「新しい経営陣が送り込まれてきてから廃部になると思う。現時点では重要な決定は下すことができない。それで個人的にどこかバスケができる所がないか探していたんだって。移籍承認書は発行できるらしい」
 
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「それ新しい経営陣が来る前に全員退部しちゃうだろうね」
「とりあえず給与も出てないらしいし」
 
「ここも給料出ないけど」
「うん。だからバイトしながらバスケすると言ってる」
「頑張るなあ」
 
「うちは生活費さえ自分で稼げたらバスケの活動費については全部サポートしているから、どうかした所よりは、やりやすいと思う」
と国香が言う。
 
「体育館でカップ麺とかレトルトカレーとか食べていると晩御飯代を節約できる」
と桃子が言っている。
 
「桃ちゃん、いっそのことあそこの寮に泊まり込む?そしたらアパート代も節約できる」
「それいいな」
 
「ね。あそこの寮に泊まり込んで、事務室で食糧食べていたら、生活費ゼロでバスケ活動ができるよね?」
 
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千里が頭を抱えて苦笑している。
 
「洋服代とか、化粧品代、美容室代とかはいるでしょ?」
と浩子。
 
「私、お化粧しないし。髪は自分で切ろうかな。でも洋服は無いと困るか」
「歯磨きとか生理用品とかも自分で買ってね」
「出会い系のサクラでもしようかな」
「そういうのバレたら出場停止くらうよ」
 

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“沖縄に行かなかった”冬子は、2月4日は時間を見計らって戸山のマンションに行き、政子を誘ってAYAの音源製作をするスタジオに行った。だいたい夕方までにふたりの作業分が終わり、冬子と政子、AYA、AYAのマネージャー高崎充子の4人で一緒に串焼きのお店で夕食をとった。
 
その後4人でタクシーを拾えそうな所まで行こうと歩いていたら、偶然上島雷太と百瀬みゆきに遭遇する。
 
上島は「ちょっと人と会ってたんだよ」と言ったので、冬子や高崎は、恋人とデートしていたのだろうと解釈した。この人の浮気癖も全然治る気配が無い。それで話を聞くと、どうも上島はその恋人と別れた後、歩いていたら偶然百瀬と遭遇して、やはりタクシーが拾える所まで歩いていこうとしていたらしい。
 
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それで6人でしばし立ち止まって話していた時、向こうから走ってきた男性が冬子とAYAに連続してぶつかった。冬子は隣にいた政子に抱き留められたものの、AYAが倒れそうになって寄りかかったのが上島雷太であった。
 
AYAを上島が抱き留めた瞬間、フラッシュが焚かれた。
 
「え!?」
 
高崎が急いで写真を撮ったと思われる人物を追いかけたものの、見つけることはできなかった。
 
「これはやばいことになるかも」
と高崎が悔しそうに言う。
 
「でも今のが完全な事故であることは私たちが証明します」
と冬子も百瀬も言った。
 

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果たしてAYAと上島が抱き合っているかのように見える写真がその夜の内に大量にネット上に広まっていったのだが、もっとヤバい写真もあった。
 
それは上島雷太が誰か背の高い女性と熱烈にキスしている写真だった。上島はハッキリ顔が映っているが、背の高い女性は後ろ向きなので顔が分からない。
 
写真では上島の顔と女性の顔はだいたい似たような位置にある。上島雷太は180cmの身長があり、その長身の上島と顔が並ぶ女性というのはそう多くはない。10cmヒールを履いていたとしても170cmくらいはある計算になる。
 
「モデルさんかな?」
「女性でこの身長は珍しいよな」
「男だったりして?」
「上島雷太なら、それもあり得る」
などとネットでは議論されていた。
 
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ともかくも上島の妻・春風アルトは152cmなので、この人物は絶対にアルトではあり得ない。
 
つまりこれは上島の明快な浮気証拠写真である。
 
このキス写真は翌朝の複数のスポーツ新聞に載ることを放送局が認識した。
 

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深夜に冬子と政子が呼び出された。
 
女の子向けの人気アニメ番組『エンジェル・リリー』シリーズのスポンサーとなっているおもちゃ屋さんの幹部から放送局に電話があったというのである。
 
『まさか、スキャンダル渦中の作曲家の作品を、そのスキャンダル相手の歌手の歌で、子供向けのアニメのテーマとして放映しませんよね?と』
 
「AYAは無関係なんです。それは私たちが証言します」
と冬子は言った。
 
「それを明日の朝10時までに全国に周知できる?」
「うっ・・・」
 
『エンジェル・リリー』シリーズの新しい番組『リリー・マクラーレン』は明日2月5日の朝10時に第1回の放送が行われる。
 
その主題歌は“不倫作曲家”上島雷太が書き、“その不倫相手”として明日の朝刊で報道されるAYAが歌うのである。
 
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「どうするんです?」
「新しい曲を誰かが書いて、誰かがそれを歌い、明日朝の放送までに差し替える」
「誰かって・・・」
 
「君たちしかいない。日本中の女の子たちの夢を壊さないためにも、君たちが曲を書いて、君たちが歌うしかない」
 
「いっそエンディングの『天使の休息』を先頭では流せないんですか?」
 
『天使の休息』はローズ+リリーが歌っているのである。しかし
 
「『天使の休息』も上島君の作品なんだよ」
と響原部長が言う。
 
「あぁ」
 
「だから明日朝10時までに2曲用意する必要がある。この速度で曲を書ける作曲家は、日本中探してもケイちゃんくらいしかいない」
と響原部長は言った。
 
「うーん。。。」
 
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冬子は、沖縄まで往復してこなくて良かったとマジで思った。さすがに沖縄まで往復していたら、とても深夜にこんな話に応じるだけの体力は残っていなかった。
 

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ここで上島雷太が発言して、マリ&ケイの未発表曲を使えないかと言った。上島が思いついたのは、『天使に逢えたら』と『影たちの夜』であった。
 
「どちらも名曲だし、多分うまい発表の機会を狙っていたと思うから、こういうシチュエーションの中で公開するのは、本当に申し訳無いんだけど」
と上島は言った。
 
しかし偶然にも『天使に逢えたら』の“天使”というのが《エンジェル・リリー》の《エンジェル》を連想させるし、『影たちの夜』の“影”が敵組織《シャドー》を連想させるのである。
 
冬子はその2曲を使うことを了承した。実際問題として朝までに曲を書いたとしても、更に音源製作までするにはとても時間が足りない。既存曲ならすぐに制作に取りかかれる。
 
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それで朝までに音源を作るということになる。この時期、ローズ+リリーの伴奏は主としてローズクォーツがおこなっていた。ところがローズクォーツはツアーのため、沖縄から福岡に移動して、福岡市内のホテルに泊まっている。
 
彼らを今夜中に東京に移動させる手段は存在しない。
 
そこで、UTPの契約アーティストの中でこの夜、偶然にもメンバーを召集することができたスターキッズが、この2曲の伴奏をすることになったのである。
 
それで取り敢えずマリは仮眠させて、深夜ケイが指揮してスターキッズが伴奏音源を作った。ケイも途中で少し仮眠した。そして6時頃ふたりを起こして歌を吹き込み、放送の1時間半前に何とか音源を完成させたのであった。
 
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マリやスターキッズは10時に無事テレビでその曲が流れるのを聞いた上で、いったん解散した。それでマリは戸山のマンションに戻って寝る。ケイは福岡のライブがあるので、それより先に離脱して羽田に向かった・・・ことにして実際には、楠本京華が用意してくれている大田区のマンションに行って眠った。
 
「自分が2人居るっていいなあ」
などと思いながら冬子はベッドですやすや眠っていた。
 

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2月5日、宇都宮では関東クラブ選手権の準決勝と決勝が行われる。
BEST4に残ったのは下記のチームであった。
 
江戸娘(東京1)・ローキューツ(千葉1)・ビッグベース(埼玉1)・須賀イライン(神奈川2)
 
ビッグベースとは昨年の関東クラブ選手権の準決勝で当たっている。江戸娘はここしばらくのローキューツの好敵手である。
 
今回の準決勝で当たったのは、須賀イラインである。あとから聞いたらメンバーの大半が横須賀市内にある日産・追浜(おっぱま)工場の従業員やOGであるらしく、高校時代にインターハイやウィンターカップを経験している人もあるという。数人、WリーグのフリューゲルローストのOGも入っているらしいが、どの人かは分からなかった。
 
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チーム名は横須賀のチームであることと、日産の人気車種スカイラインに掛けているが、追浜工場ではスカイラインは生産されていない。スカイラインは栃木工場(栃木県上三川町−今回の会場のある宇都宮市の隣)で作られている。追浜工場で作られているのは、シルフィやリーフ・キューブなどである。
 
ともかくもかなり強いチームである。実際昨日のビデオを見たが、特に180cmの稲川さんの存在感が大きい。薫によると横浜市の金沢T高校の出身らしい。
 

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むろん最初からベストメンバーで行く。
 
向こうはある程度こちらを研究している雰囲気があった。最初から千里に専任マーカーが付く。
 
が簡単に振り切ってしまう。千里のスピードや切り返しに付いてこられない感じである。
 
また誠美に対抗した稲川さんも誠美の研究をして対策を考えてきたような感じはあったが、誠美はそれをパワーで粉砕する。
 
ということで、相手の研究はこちらのスピードとパワーで簡単に粉砕されてしまった。特に稲川さんが誠美に歯が立たなかったことで、向こうは精神的に動揺した感もあった。
 
第1ピリオドから大きな点差が付いてしまったので、第2ピリオド以降は千里と誠美は温存し、またあまり耐久力の無い凪子・瀬奈なども適宜休ませる。それでも第2ピリオドで点差が開いたので、後半は麻依子・岬・翠花といったあたりも休ませる。
 
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それで後半は向こうの攻勢が凄くて、第3ピリオドで少し点差を詰められたが、向こうはこの点差は挽回できないだろうとみて、主力を休ませたまま最後まで行った。
 
最終的には10点差まで追い詰めてきたが、夏美や夢香に司紗などが頑張ってくれたので、こちらの主力の再投入はせずに勝利をおさめることができた。
 
最初に大きな点差が付いてしまったことで、向こうが精神的に削られてしまい、その後挽回できなかった感じであった。
 

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