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11月の七五三の参拝は10-11日と17-18日に分散していた。和弥はどっちみち毎週末姫路に来て祈祷を担当した。笛は千里、太鼓は和子が担当する場合が多かった。弓佳さんが来てくれている時は笛をお願いして千里は太鼓を叩いた。
15日(木)に来た客もわりといたが、これはまゆりが対応した。平日の昼間は越智さんは会社に行っているので不在である! 夕方からは越智さんがしてくれた。
11月8日佐賀県武雄市で入院患者が人違いで指定暴力団・道仁会系の男に射殺される事件があった。(佐賀入院患者射殺事件)。
しかし人違いで撃つというのは酷い。しっかり確認してから撃ってほしいものである。
11月上旬、千里Rの家の近くのセブンイレブンが火事になり全焼した。火事の原因は不明だったが、店頭でチキンやポテトを揚げているので、そのフライヤーの火がチラシなどに燃え移ったのかもと言われた。
11月中旬、近所の保育園が火事になり全焼した。火事のあった晩は激しい雷があっていたので、落雷かもと言われた。
下旬、千里は立花K神社に火を点けようとしていた男を捕まえ、警察に突き出した。警察は、コンビニ・保育所と原因のよく分からない火事が相次いでいたので、この男を追及したが、神社以外にはやってないと犯行を否定した。
神社に火を点けた動機は、就職できますようにとお祈りしたのに全然
仕事が見付からないのでと言った。男は警官に
「5円玉6枚もお布施したのに」
と言い、警官が
「30円じゃ小学生でもお使いしてくれないよ」
と言ったとか。
巷では
「お布施というのはお寺で、神社なら初穂料だよな」
というツッコミが入っていた。
その日男たちは唐突にやってきた。「宮司を出せ」というのでまゆりが出て行く。
「私が宮司ですが、あなたたちは何ですか」
「へー、ここは女が宮司かい」
「男女平等ですよ」
「まあいいや、宮司さん、この神社の土地を売ってくれよ。2000万くらいなら払うぜ」
「売るわけにはいきません」
「おい、優しく言っているうちに応じたほうが身のためだと思うぜ」
「あんた妊娠してるの?流産したくないよな」
千里Rは自分が出ていった。
「あなたたちどこの組の人?」
と訊いたがすぐ
「ふーん。○△組か」
と言った。
リーダー格っぽい男が
「お前何だ」
と言ったが千里と視線が合うと5秒で
「お見それしました。どちらの姐御で」
などと言う。
「帰りなさい」
と千里が言うと
「はい、失礼しました」
と言って男たちは帰って行った。
「千里ちゃん凄ーい」
と、まゆりが感心している。
「まあ千里の気合に勝てる奴はそうそう居ないね」
とちょうど来ていた花絵が言った。
「でもあいつらまた来るかな」
「いえ、もう来られませんよ」
千里が言った通り、○△組には数日後警察の捜査が入り“連続放火事件”の黒幕として組長と若頭が逮捕された。あの付近一帯を地上げしようとしていたらしい。市内のスーバーで万引きで捕まった男が○△組の幹部の指示でコンビニに放火したと自供したのである。組事務所からは近辺の地図のコピーに印が付けられたものなども見付かった。
「保育所は保険に入っていたから保険金で再建できるらしい」
「良かった良かった」
「4月再開を目指すって」
「保険は大事ですね」
「ねぇ、千里ちゃん」
とまゆりは言った。
「光貴ちゃんが女の子の声が出るようにしてあげたでしょ。ぼくも男の声が出るようにできない?」
「せっかく可愛い女の子の声持ってるのに男の声なんて出してもつまらないですよ」
「でも女だとなめられることもあるしさ。こないだのヤクザみたいに」
「あまり気が進まないけどなあ」
と言いながらも千里はまゆりの喉を調整して男女どちらの声も出るようにしてあげた。それでまゆりは祈祷の時、男声で祝詞をあげていた。
お客さんも「ああ、宮司さん男だったのか」と思ったようである。ただ千里は光貴ちゃんにも言ったのだけど、と言って人が声で男女を聴き分けるのは声のピッチより話し方だと言って、男声で女性的な話し方(フィッシュアイ話法(*6))、女声で男性的な話し方、を実演してみせた。まゆりは「すごーい」と感心していた。
(*6) アニメのセーラームーンSuperS(1995)に出て来たフィッシュアイ(声優:石田彰)は声としては男の声なのに完璧に女性が話しているように聞こえる話し方をして当時のMTFさんたちに衝撃を与えた。声のピッチより話し方や話の内容が大事というのは、男性でも女声は出せるというのを世に知らしめたメラニー・アン・フィリップスも言っている。
“男は語るように話す。女は歌うように話す”
“女は「ビッグマック3つにコーラXL」なんて注文はしない”
留萌の桜鱒プロジエクトでは4月から海上養殖で育て始めた桜鱒の成長が良いので水揚げして出荷することにした。仮契約していた富山の鱒寿司屋さんに連絡すると買ってくれると言うことだったので、取り敢えず体長の大きな個体1000匹を水揚げし、北北海運の船で富山に送った。1匹8000円、合計800万円で買ってもらった。来月も同程度の数買ってもらえることになった。
「今年はヒグマの売上を超えたな」
「シグマ・プロジェクトと改名しなくても済みそうだ」
ちなみにここまでヒグマは10頭出荷?して100万円の売上になっていた。結構これが日常の運用経費をまかなっていた。
「これでみんなに給料を払える」
と柳里君が言っていた。ここまではほとんどのメンバーが無給であった。
11月21日、京都大学の山中伸弥教授が、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作成に成功したと発表した。
万能細胞としてはES細胞が以前から知られていたが、受精卵からしか作れなかったので倫理的な問題から実用化は遠いとみられていた。iPS細胞は成人の身体から作れるので万能細胞の技術を大きく進歩させるものとなった。
山中はこの功績で2012年にはノーベル生理学医学賞を受賞する。
これに絡む詐欺事件
(1) 2012年、東大の特任研究員・森口尚史(事件後懲戒解雇)はiPS細胞から作った心筋の移植に成功したと発表したが、そのような事実は存在しなかった。そもそも森口は医師免許さえ持っていなかった。彼は学位も医療統計で取得した学術博士であった。
(なぜこんなすぐバレるような嘘つくんだろうね。頭のいい人の心理は分からん)
(2)2014年、理化学研究所の小保方晴子(事件後退職)はiPS細胞よりもっと簡単に作れて癌化の恐れも無い“STAP細胞”を作成したと発表したが、誰も追試に成功しなかった。小保方の論文にはデータの改竄・捏造なども発見され、この発表は虚偽とみなされるに至る。小保方は「STAP細胞はあります!」という有名なことばを残した。(「○○はあります!」と叫ぶ多数のパロディを生んだ)
11月23日、十勝岳連峰の上ホロカメットク山で雪崩が発生し、登山客4人が死亡した。
11月25日(日)、美幌町のイベントにゲスト審査員としてきていた歌手のしまうららがイベントに出演していたチェリーツインのユニークな演奏形態(ボーカルが歌わない!)に驚き、ボーカルの2人は歌が好きだけど障害で声が出せないので桜川と桜木が代理歌唱しているという話に感動。このユニットをスカウトした。ここからチェリーツインはメジャーデビューすることになる。
11月28日、横浜市の崎陽軒が、シューマイなどの原材料不正表示を指摘され、当面製造・販売を中止した。
11月下旬。造船所からクルーザーができたという連絡があったので、留萌のクルーで受け取りに行った。造船所で進水式をしたあと、いったん敦賀に回航する。ここで大阪のゲーム機の会社から多数のゲーム機を受け取り設置した。クレーンゲーム、エアホッケー、シューティングゲームなどの類いである。
またラウンジに置くエレクトーン、調理器具とか船室の寝具なども多数買ったものを積み込んだ。コンドームの自販機も積んだ!(ジュース類の自販機も積んだ:このメンテは北海道の自販機会社にしてもらうことになっている)
敦賀で一週間ほど掛けて整備した上でまた留萌のクルーで留萌に回航した。留萌には12月3日に到着し12月8日(土・たつ)から運航開始した。
初日は報道関係・旅行代理店関係も含めて多数招待券も配ったので50人くらいお客さんが乗ってくれて
「ごはん美味しい」
と喜んでもらえた。このこけら落としで演奏してくれたのは留萌を拠点に活動しているヘリング・ボーンというおじさんバンドである。平均年齢48と言っていたが、年齢が高いだけあってとても上手かった。曲もオールディーズが多く、30-40代が多かったこの日の観客には知っている曲が多くてちょうどよかったようである。田崎さんがスカウトしたバンドの中では最高齢である!月1回くらい出てくれることになっている。
ヘリング・ボーンのリーダーの吉田さんが
「オーナーさんは楽器ができる顔をしている」
などというので、千里はエレクトーンで『猫踏んじゃった』を弾いた後で、クラリネットで『クラリネットをこわしちゃった』を吹いてから、フルートで『踊るポンポコリン』『走れマキバオー』『サザエさん』『目覚め(ネスカフェのCM)』、『“動物の謝肉祭”より亀』(『天国と地獄』の超スロー演奏)と吹いて余興とさせてもらった。しかしアンコール!などと言われるので
『琵琶湖周航の歌』のメロディーで『われは海の子』を歌ってみせたら受けていた!
我は海の子白波の騒ぐ磯辺の松原に
煙たなびくとまやこそ我が懐かしき住家なれ
吉田さんが
「本当に音感のいい人にしかできないワザだ」
などと言っていた。
「水戸黄門のメロディーで『どんぐりころころ』とかも好きですが」
「ああ、それは僕もやったことある。そっちがまだ簡単」
拍手があるので吉田さんが本当に歌ってみせたが客は笑い転げていた。(今日の客は水戸黄門を見ている世代)
『どんぐりころころ』は他にも『荒城の月』や『花』のメロディーなどでもよく歌われている。(つまり『荒城の月』のメロディーで『花』が歌える)こういうお遊びは90年代に一部で流行った。セブンスヘブンの伴奏でポリリズムを歌うなどというのの先輩?である(ポリヘブンはPerfumeのファン以外には面白みが通じないのが残念)
招待券を渡して初日来くれていた札幌の旅行代理店はこんなツアーを組んでくれた。
神居古潭観光→留萌市内観光(海のふるさと館など)→桜観光のクルーズ
ただ幾つかの対応をした。
・翌朝、稚内で客を降ろすよう要求され、急遽国土交通省に旅客路線の申請をした。これは漁協が母体の事業であることと、旅行会社の上申書のお陰で短期間で認可された。
・それに合わせて朝食の提供をするよう言われた。それで留萌→稚内5000円(2食付き)というチケットを設定した。(2人部屋券9000円)
・音楽はラウンジでは無く個室でも聞けるようにする。この場合、食事は個室にデリバーする。これは対応することにした。レイプ予防で配膳は男性スタッフに担当させるとした。しかし旅行会社は女性客が安心できるよう女性スタッフを要求し、結局男の娘で妥結した!世の中には男の娘の使い道はあるものである。
・料金を半額(2500円)にディスカウントするよう要求されたが、なんとか70%(3500円)で妥結した。但し客が10人以上居ることを条件とした。10人未満なら90%とする。
・客のある時は平日でも運行するよう要求されたがこれは一週間前までに告知してもらえば応じることにした。急遽国土交通省の許可を取った。
・ガイドの分を無料にするよう要求されたが何とか45%(2250円)もらうことで妥結した。客が10人未満なら70%.
しかしお陰で毎回10-20人の参加があり、クルーズは賑わったのである。3月には神奈川の私立中学の修学旅行で200人という利用もあった。一応アムリタの定員は220人である(ラウンジの収用能力:船室は2人寝れる部屋が120室ある)。ホテルに泊めるより安上がりなので利用したようである。「来年も頼む」と言われた。
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この時はゲームルームの売上が凄かった。最近の中学生はお金を持っているようだ。サロンの売店でもサンドイッチ類がよく売れた。
この時は“ノンノ”という30代のガールズバンドが演奏してくれたが、ブラックビスケッツ、宇多田ヒカル、モーニング娘などの曲を演奏してくれて客の中学生たちに受けていた。“ノンノ”というのは結構知られているがアイヌ語で“花”という意味である。
留萌でのクルーズ船の運航が始まったので伊藤君も4ヶ月ほどにわたる敦賀出張を終え北海道に戻ってきた(アムリタに乗って移動してきた)、彼はW工業高校に編入したので、週末と祝日には留萌に来てクルーズ船に乗り、平日は旭川で学校に行く。旭川と留萌の間の移動はハイジに頼んだ。ハイジは車の運転についてはプロである。ハイジが対応できない日は、きーちゃん(旭川の2番)がやってくれた。この時期、旭川の2番は姫路の1番に比べるとかなり時間の余裕があった。きーちゃんの2番が忙しくなるのは千葉時代の2012年頃からである。高校時代の“東の千里”はあまり眷属を使ってない。だから当時の十二天将は暇だった。
使用車はいんちゃんが8万円!で買ってきた中古(大古?)のキャミである。事故車っぽかったが、千里が除霊した。それで霊的な問題“は”クリアされた。
「この車何か変な音しますけど大丈夫ですよね」
「車検は通ってるよ」
なお助手席のドアが外からは開かないのは気にしないことにする!助手席使わなければいいだけのことだし!?(内側からは開く)
その日千里Rが立花K神社で羊羹を包丁で切っていたら突然ダーンという音とカーンという音が続けざまにした。
「何の音かな」
と近くに居た高校生の浩美ちゃんが言う。
「ああ。誰かが私を銃撃したみたい」
と言って、千里は弾丸をお手玉している。むろん飛んできた弾丸を包丁で叩き落としたのである。
「私を銃撃するなんて命知らずの奴だなあ」
と言うと、千里はその弾丸を右手で空中にトスすると左手の包丁で軽く?打った。
一方千里を撃った男の車。
「どうだ?」
「あの女平気そうですよ」
「外した?」
「おかしいな。当てたつもりだったのに」
などと言っていたら車に何かが当たる音がして思わず伏せる。
千里を狙撃した男が肩を手で押さえている。車を貫通して男に当たったようだ。
「女が反撃した?」
「おかしいな。銃とか持ってないみたいなのに」
「いや、この女には底知れない怖さを感じる。もう関わらない方がいい。退散しよう」
それで男たちは引き上げた。
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女子高校生・秋のリスタート(7)