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5月3-6日(祝祝祝日)、H大姫路の剣道部は千里の自宅で合宿を行なった。合宿の計画は前からあったものの、冬休みは千里たちが帰省していてできず、春休みは選抜・魁星旗があってできなかった。
なお、5月4日は昨年までは祝日と祝日にはさまれた日は休みという規定による“国民の休日”だったが、今年から“みどりの日”になり祝日になった。昨年までみどりの日だった4/29は“昭和の日”になった。
ドーミトリーは1階を男子、2階を女子で使う。千里と清香も2階の部屋に入った(双葉・千里・清香の3人で1部屋使った)が、公世は他の男子との同室にするわけにはいかないので、結局、本館の自分の部屋で寝た。ただ、本館1階のお風呂は女子の合宿者に割り当てているので、普段使っている浴室が使えず、公世は別館(百合や小糸が泊っている)のスタッフ用バスを借りていた。
なお、谷口春恵・福田一鉄・山崎一はこの3人で一室にした。春恵と一鉄は以前から女子下着だが、山崎君も今回の合宿から、パンツは女子用ショーツにしたらしい。福田君は
「睾丸無いのは凄く調子良いよ」
等と言って、あとの2人に羨ましがられていた。
今回の合宿中に春恵はきーちゃんに「女の子に改造してもらうことってできます?」と言い。精液採取の上で改造してもらい、めでたく女の子になることができた。山崎一も取り敢えず睾丸を除去するとともに体付きを女性らしく変更してもらった。彼も事前に精液の採取をした。福田君は2人に筋トレで筋肉が落ちないようにしようと言い、3人で一緒にジョギングや腹筋などしていたようである。
春恵は合宿中、道着を着けてない時はスカートを穿いていたが、山崎一も
「私あまり人前で女装したこと無いんです」
と言いつつも、この4日間はずっとスカートを穿いて、かなり人前女装に慣れたようであった。千里は彼に女子制服を作ってあげたが、まだそれで学校に行く勇気は無いと言っていた。でも部屋の中では結構着ていたらしい。
(こうして男の娘が増加していく。もっとも春恵は既に男の娘も卒業した)
しかし春恵の性転換により2年生の男子特待生は全員“玉無し”になった。
公世の睾丸は体付きが男っぽくならないように“取り外して”ライブ保存されている。彼が完全な男に戻りたいと言った時のために保存しているのだが、彼本人も「ちんちんがあるならたまたまはこだわらない」と言っているのでずっと戻されない可能性が高い。ただしこの睾丸を破棄することはP大神のお許しが出ない。
公世は睾丸が無くてもペニスは勃起するし射精もできると言っていた。ただそもそも本当にペニスが存在するのかは疑問がある。彼はヴァギナは存在することを認めている。卵巣もあるようだが自分の意志で機能を停めているので生理は起きない。しかし卵巣が存在することで女性ホルモンは分泌されている。一方睾丸は無いから、男性ホルモンは少なく、彼はホルモン的には完全に女性である。
(彼本人はペニスがあると言っているが、彼の女子水着姿を見る限りはお股には何の突起も見られない。またおしっこがどこから出てくるかについては口を濁す。ただ小便器は使えないことは認めている。またホルモン的に女性なのに本当に勃起して射精ができるのかはかなり疑問がある。しかし彼の言っていることが本当なら彼は女性とも男性ともセックス出来る機能的両性アンドロジナスである可能性もある)
連休明け、5月の身体測定では、春恵も一鉄も個別測定の対応となった。公世・春恵・一鉄の3人は「類は友を集めよ」?ということで
まとめて測定された。それでお互いに測定しあっていたようである。
一鉄(ひとみ)は「きみちゃんの秘密を知ってしまった」などと言っていたが、今更な気がする。
5月6日、米メジャーリーグ・ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜が日米通算2000本安打を達成した。日米通算での2000本安打はイチローに次いで2人目。
5月9日(水)
ペッパーランチ心斎橋店で女性客が、店長および従業員の男に監禁され強姦される事件が発生した。犯人2人は16日に強姦致傷の疑いで逮捕された。
5月10日、熊本市の慈恵病院が、赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」の運用を開始した。同日、3〜4歳とみられる男児が預けられた。
その日、まゆりは開運厄除の御祈祷依頼のあった谷崎さん(仮名)という40代のご夫婦を昇殿させ、祈祷をしていたのだが、壁に阻まれるような感覚があった。
まゆりは言った。
「たいへん失礼ながら、御自宅に何かあるような気がするのですが」
すると奧さんの方が言った。
「実は自宅に色々怪異があるんですよ。誰も居ない筈が足音とか話し声が聞こえたり、ラップ音も酷いですし」
夫の方が言った。
「巫女さんのおっしゃる通り、うちの自宅には問題があると思います、今度宮司さんのおられる時でいいですから、うちまで来て、家のお祓いとかしてもらえません?」
私が宮司なんだけど・・・とは思うものの、まあ来週和弥が来るし、行ってもらおうかなと思った。それで伊勢に居る和弥に連絡し、和弥から直接谷崎さんに連絡を入れてもらい、今度の日曜に和弥が家のお祓いに行くことになったのである。
(こういう時和弥は「立花K神社の神職で翻田と申します」と名乗る。禰宜(ねぎ)という単語は神社に詳しくない人にはあまり通じない)
和弥は千里(R)の携帯に電話を入れた。
「今度の日曜日に姫路市内で家祓いをするんだよ。千里ちゃん付き合ってくれない?」
「いいですけど、そこのご住所と家族構成、名前と生年月日を教えてもらえません?」
「確認する」
それで和弥は谷崎さんに連絡を取り、家族の名前と生年月日を教えてもらい、千里に伝えた。
和弥から連絡を受けたR(ロビン)はY2(夜梨子)に電話して「ちょっと調べてみてもらえない?」と言った。夜梨子は夜中にその住所に行ってみた。
「ああ。これは酷い」
しかしこれは1人では無理だと思う。それで深川に居るヴィクトリアに電話した。
「††観音の究極秘伝を使いたいのよ。こちらに来て立ち会ってくれない?」
「分かった」
それでヴィクトリアはジェーンに転送してもらって姫路に来た。姫路への移動はV自身の力で移動すると疲れてその後の作業に差し支える。Gにも転送できるが、Gは千里たちの最終守護者だからGの力は非常時以外にはできるだけ使いたくない。それでJに頼んだのである。
それで夜梨子は真夜中に、V自身が運転する黒い車体のミラで谷崎家に向かった。
「ああ。これは酷い」
とVも言っている。Vが結界を作ってくれたので、夜梨子はその結界の中で谷崎家の家族ひとりひとりに念のため霊鎧をまとわせた(ここで名前と生年月日を使う:見れば分かるが、教えてもらっておけば手間が省ける)上で、††観音の究極秘伝を起動した。霊鎧は飼い犬のアデリーヌちゃんにも掛けた。この術の場合、飼い犬ちゃんの霊鎧が最も重要だ。これが無いとこの子まで祓われてしまう危険がある(一応生きている子には効かないはず)。
屋敷の敷地全体に多数の緑色の炎が出現する。その炎がとんどん強くなる。そして轟音のような激しい動物の鳴き声が多数聞こえる。やがて、斜め下、45度くらいの方向に緑色の光のトンネルのようなものが現れる。そこに多数の動物の霊が吸い込まれていった。
そして緑色の炎はいつしか白い炎に変わり、少しずつ薄くなって消えて行った。
念のためアデリーヌが生きていることを確認した。原理的には大丈夫の筈なのだが、彼女はきっと生きた心地がしなかったろう。ごめんねー、怖がらせて。
「終わったかな」
とヴィクトリアは言った。
「大丈夫?」
と夜梨子に声を掛ける。
「お腹空いた」
と夜梨子は言った。
「帰ろ」
とヴィクトリアは声を掛けて、夜梨子を車に連れて行く。そして車に載せて姫路司令室に連れ帰った。
「何か食べる物ある?」
「買ってくる。何食べたい?」
「お肉。でも鶏肉・豚肉・たぬき肉・犬肉以外」
「ああ、鶏さんや豚さんの霊をたくさん送ったからね」
「牛肉買ってくるよ」
と言って、ジェーンは買物に行ってきてくれた。
ホットプレートを出してお肉を焼き、もりもり食べた。
「豚さんや鶏さんが多かったの?]」
とジェーンが訊く。
「中核は豚だった」
「なんか猪八戒みたいな親玉がいたね」
「目を合わせないようにしてた」
「あれは普通に戦うとこちらがやばいと思った」
††観音の究極秘伝というのは多数の動物霊が居る時にまとめてあの世(多分畜生道)に送る術である(人間の霊なら**明王の究極秘伝いう別の術を使う)。ダイナミックな術だが、術者のエネルギーを物凄く使う。そのまま本人が気を失う可能性もあるので、倒れた時に助けてくれる人が必ず必要である。RやJでは30mルールによってそばに居られないので(Yが消えてしまう)、お互いに消し合わないVにヘルプを頼んだのである。
夜梨子は家祓いにも自分で行くつもりだったのだが、本人が疲れて寝ているので、Jからの連絡でRが和弥と一緒に谷崎家に家祓いに行くことにした。
まゆりの車(キューブ)に和弥と千里が乗り、谷崎家に向かう。現地に着いてまゆりは「え?」という顔をした。色々怪異が起きていると聞いていたのでもっと酷い状態を想像していたのに、ここはまるで普通の家である。
玄関でピンポンを押し中に入れてもらう。神棚のある部屋に行き、例によって長期間交換されてない水と塩を交換してもらう。お米、それと榊は持参のものを使ってもらった。また新しい御神酒(おみき)も供えた。
そしてまゆりが太鼓を叩き、千里が龍笛(赫夜:かぐや)を吹き、和弥は大祓の祝詞を奏上した。この祝詞は様々な罪・汚れを洗い清め、それが海の底に流れ着き、そこからまたどこかに持って行かれるという日本人の宗教感覚をよく表した祝詞である。しかしこの祝詞奏上で谷崎家の人々の表情がとても明るいものとなった。そのあと、各部屋を回り、千里は各々の部屋で大幣(おおぬさ)を振った上でに素焼きの小皿に乗せた盛り塩をして家祓いを終えた。
「この盛り塩は自然に崩れたり湿気を吸ってべとべとになったら、家の周囲に撒いて捨てていいですから」
「この皿は」
「捨ててもいいですし、水で洗ってからおやつとか載せるのに使ってもいいですし」
「おやつ乗せるのに使おうかな」
再利用するのは「捨てるのはもったいない」と思う関西人気質かなと思う。
「うっかりこぼしたり蹴ったりした場合は?」
「皿を同じ場所に置いて普通の塩でいいですから、盛っておいてください」
「場所が分からなくなったら」
「私(わたくし)に問い合わせて頂ければお答えできますし、ビニールテープとかで目印付けておくのもいいかも」
と言って千里は一応名刺(立花K神社巫女・村山千里という名刺)を渡したが、
「ビニールテープ貼っておきます!」
と言っていた。
その後居間で少しお話ししたが、何でも今朝起きた時からかなり良くなっていたという。でもさっきの祝詞で益々いい感じになったということであった。
「家祓いの時は前日に神前に事前のご祈祷をしますから、それが効いたんでしょうね」
「ああ前日にも色々してくださってたんですね」
それで向こうは納得していたようである。過去にお坊さんに護摩を焚いてもらったこととかもあるが何も変わらなかったのに、今回は効いたみたいなどとも御主人は言っていた。
和弥は何気なく訊いた。
「御主人はお務めの方ですか」
「いえ。福崎町の方で小さな養鶏場をしているんですよ。以前、親父の代は養豚場だったのですが、7-8年前に私の代になってから鶏に変更しました」
なるほどねー。だから豚さんの霊がたくさん居たわけか、と千里は思った。タヌキヤ犬とかまでいたのは近くで死んだ動物が霊団に取り込まれたのだろう。鶏も多分ついでに取り込まれた類いだ。
御主人は言った。
「やはり飼っていた鶏や豚の霊が供養できてなかったんでしょうか」
千里が答えた。
「でも毎年供養なさってたでしょう?」
「ええ、はい」
「今回供養した霊は豚が多かったようですよ。古い時代の特殊な霊が残っていたのかも」
「なるほどー」
「これからも毎年普通の供養をしていれば大丈夫ですよ」
まゆりは神社に戻ってから言った。
「千里ちゃん事前に何かしたんでしょ?」
「昨夜のうちにやっておきました。あまり人には見せられないものなので」
「なるほどねー」
今回のご祈祷料は出張費込みで10万円と伝えていたのだが、谷崎さんは100万円も払ってくれた。まゆりはそのうち80万円を千里にくれた。和弥にも10万渡したようである。