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■女の子たちの性別疑惑(4)

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1日目、鞠古君たちの旭川B高校は2回戦で負けたものの、N高男子・女子、札幌B高校、そしてS高男子・女子、ともに勝って2日目のブロック決勝に駒を進めた。
 
千里は自分たちの試合が終わった後も、他の試合を見学していた。ちょっとインターバルがあったのでトイレに行く。ちなみに男女どちらのトイレを使うかについては、男子バスケ部主将の黒岩さんからも、女子バスケ部主将の祐川さんからも
 
「くれぐれも男子トイレに進入したりしないように」
としっかり言われていた。
 
私、丸刈りなのにいいのかなぁ、などとも思いながらも女子トイレに入り、女子トイレ名物の行列に並んでから用を達する。手を洗ってから外に出て、自分たちのチームの所に戻ろうとした時、
 
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千里は少し離れた通路のコーナーの所に貴司が居るのを見た。
 
わっと思う。ちょっと声掛けておこうかなあ。でも貴司にはこの丸刈り頭をあまり見られたくないなあ。でももし試合で当たれば曝すし、既に自分の試合を見られているかも知れないしなあ。。。。などと思っていた時。
 
貴司が誰かと面と向かっているのに気付く。しかも何だか楽しそう。誰と話してるのかなと思い、少し立つ位置を変えてみた。
 
貴司の向かい側に居たのは数子だった。
 
貴司と数子が話すのは別に変でもない。同じ高校のバスケ部同士だから何かの打ち合わせかな、などとも思う。ところがその時、千里はハッキリ見た。
 
数子が貴司の方に身体を寄せて、ふたりが抱き合うのを。
 
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千里はちょっとショックを受けて踵を返し、反対側から体育館をぐるっと回る形で自分のチームの所に帰った。
 
それで試合を見ているのだが、何だかうわの空になってしまう。
 
「千里、千里」
と呼ばれているような気がして、振り向くと2年女子の久井奈さんである。
「あ、はい?」
 
「どうしたの? 今5〜6回、名前を呼んだよ」
「あ、済みません。ちょっと疲れてるのかなあ」
 
「それは良くない。今日はもう帰って早めに寝た方がいい」
と男子副主将の渋谷さんが言う。
 
「うん、それがいい」
と久井奈さん。
 
「黒岩(主将)には俺が言っておくから、もう帰って休め」
と渋谷さんが言うので
 
「分かりました。じゃ済みません。帰ります」
と言って千里はホテルに帰った。
 
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ホテルの部屋はだいたいツインをベースに取られているのだが、千里だけはシングルになっていた。少なくとも男子と同室にはできないが女子と同室にしていいものか、と黒岩さんと祐川さんが悩んで、そういう部屋割にしてくれたようである。
 
自分が預かっているキーで部屋に入る。
 
あ。。。何か食べ物買ってくるべきだったかな、と思ったものの、再度外に出て買ってくるだけの気力が無かった。寝ればお腹空かないよね。と思い、千里は軽くシャワーだけ浴びて、ベッドに入った。
 

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夜中に目が覚める。時計を見たら2時だ。
 
ああ。さすがにお腹が空いたかなと思い、部屋を出てホテルの玄関を出る。少し離れた所にコンビニを見たので、行って、おにぎりと烏龍茶を買う。ホテルに戻って食べるが、何だか気分が晴れない。
 
貴司、数子と付き合っているのだろうか?
 
いや。自分は貴司とは別れたんだ。貴司が誰と付き合おうと構わないじゃないか。ただその相手がよりによって数子というのが、何だか不愉快だった。数子とは小学校でも何度か同級になったし、中学3年間一緒にバスケをした仲間である。数子は自分と貴司が付き合っていたことも知っている。だったら貴司との交際のこと言ってくれてもいいのに。貴司も、自分との交際を終了はしたものの、その後も交換日記をしている仲だ。その日記の中で数子との交際のことを一言でも書いてくれたらいいのに。
 
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いや。
 
自分はもう貴司の恋人ではないのだから、そんなことを貴司にしても数子にしても、自分に言う筋合いは無いだろう。
 
でも何だかスッキリしない!!
 
千里は《ドーピング》が必要だと認識した。
 
普段、1日1錠ずつだけ飲んでいるエストロゲンとプロゲステロンの錠剤を6錠ずつ(本来飲むべき量の2日分)出すと、一気に飲んで水で流し込んだ。
 
よし、このことは気にしないで寝よう。明日も試合があるんだから。
 
でも何か体調悪いなあ、葛根湯も飲もうかなと思ったものの、今女性ホルモンを飲んだばかりで「飲み合わせ」がよくないかもと思ったので飲まずにそのままベッドに入った。
 
このことは忘れて明日また頑張ろう。
 
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千里はそう自分に言い聞かせて、眠りに就いた。
 

翌日。朝1番にブロック決勝がある。
 
しかしこの試合で千里は精彩を欠いていた。
 
得意の3ポイントが全く入らない。4本続けて失敗したので、交替させられる。3年生のシューティングガード毛利さんが今日は調子良く決める。千里はそれをじっと見ていたが、何だか気持ちが集中できなかった。第3ピリオドでまた出してもらったが、やはり入らない。3本続けて失敗して退く。結局その試合ではその後、出番は無かった。一応この試合、相手があまり強くない所であったのも幸いして、試合は勝ち、N高男子は決勝リーグに進出した。実はN高男子が決勝リーグに行くのは初めてである。みんな大喜びしていたが、黒岩さんはそれより千里を心配した。
 
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「村山、やはり体調悪いのか?」
と声を掛けてくれる。
 
「大丈夫とは思うのですが。済みません。ちょっとトイレに行って来ます」
 
千里は席を立つと、トイレの方に行く。そしてボーっとしていたので、うっかり男子トイレに入ってしまった。
 
「ちょっと、ちょっと。ここ男子トイレだけど」
「女子トイレが混んでるからって、こっちに来るなよ」
 
などと言われる。
 
「あ、済みません。間違えました!」
 
と言って飛び出す。えーん。だって、私、丸刈りなんだよ。丸刈りの子を見てふつう女子と思う!?
 

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「千里、何やってんの?」
と声を掛けられたので見ると、数子だ。
 
「うん。うっかり間違って男子トイレに入った」
と答えつつも、数子と何だか普通にしゃべれない気がした。
 
「珍しいね。まあ千里は中学の時はずっと男子トイレに入ってたけど、高校では、もう女子生徒として通学しているから、女子トイレを使っているんだったよね? 既に睾丸も取って豊胸手術もしてるんでしょ? 佳美から聞いたけど」
 
へ?何で去勢とか豊胸とかしたなんて話になってんの? どこかで情報伝達にくるいが生じている気がするなあ。だいたい佳美とは春以来会う機会が無かったけど、誰経由で佳美の所まで伝わっているんだ??
 
「それよりさ。昨日、千里何か誤解したんじゃないかと思って」
と数子が言う。
 
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「え?」
「昨日、私が細川君と話している所を千里が見ていた気がしてさ」
「・・・・・」
 
「あの時、近くでパスの練習してた子たちがボールを取り損なってさ。それで私の足下に転がってきて、ふいだったんで、私、足をすくわれる形になって、倒れそうになったのよね」
 
「へ?」
「それを細川君が受け止めてくれて」
「えーー!?」
 
「それが遠目には私と細川君が抱き合ったように見えたかも知れない気がして」
「ほんとに?」
 
「千里、それで反対側向いて行っちゃったから、何か誤解させたかも知れないと思って千里探したんだけど、見つけきれなくて」
 
「じゃ・・・数子、貴司と付き合ってる訳じゃないの?」
 
「細川君は今、彼女居ないと思うよ。千里と別れた後は、バスケだけに集中してる感じ。時々、アタックしてきた女の子と校内でおしゃべり程度はしてるみたいだけど、デートとかまではしてないと思う。本格的に付き合う気は無いんだと思う」
 
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「・・・・・・」
 
「千里さ、細川君のこと、まだ好きなんじゃない?」
「ううん。私、いくらなんでもそろそろ声変わり来ちゃう気がするし。声変わりが来たらサヨナラというのは、最初から決めてたことなんだよ」
 
「でも睾丸取ったんでしょ?声変わりは来なくて済むじゃん」
「いや、それは話がどこかでおかしくなってる。私、まだ睾丸は取ってないよ。その内取りたいけど」
 
「まあいいや。でも彼のこと好きなんじゃないの?」
「・・・・・」
 
「それもゆっくり考えなよ。でも誤解だけは解いておきたくてさ」
 
千里は涙が出てきた。でも自分は何て詰まらないことで心を乱してしまったんだろう。自分って馬鹿だなあと思うと共に数子の友情に感動する。そして数子に嫉妬してしまった自分が情けなかった。そして自分はまさか、数子に指摘されたように、まだ貴司のことが好きなのだろうかということまで考えてしまう。
 
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「ありがとう、数子。ごめんね」
「ううん。頑張りなよ」
「うん」
 

千里がチームの所に戻って来たのを見て、女子2年の久井奈が言った。
「千里、どうしたの?」
 
3年男子の渋谷さんも言う。
「復活したな?」
 
「気合いが全然違う」
と北岡君も言う。
 
「いつもの千里だね」
と暢子も言った。
 
「部長。次の試合、30点取りますから出してください」
と千里は黒岩さんに言った。
 
「よし。全ピリオドに出すぞ」
と黒岩さん。
「はい」
 

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午後の試合は決勝リーグの第1試合である。相手は札幌Y高校。ブロック決勝で田代君のいる札幌B高校を倒して勝ち上がってきた。昨年夏の道大会で優勝したチームでもある。
 
こちらのスターティングメンバーは、PG.渋谷 SG.毛利に千里 PF.北岡 C.黒岩 である。毛利さんと千里の2人のSGが入るダブルシューター方式で行く。
 
ティップオフは長身の北岡君がうまくこちら側に弾き、渋谷さんが取ってすぐ攻めていく。千里と毛利さんがスペースに居るが、相手は背が低く、朝の試合で失敗を続けていた千里を無視して、朝の試合で調子の良かった長身の毛利さんの方をマークしている。そこで渋谷さんは千里にパスする。
 
受け取ったら即撃ってゴール!
 
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3点先取。
 
相手は恐らく千里が活躍した昨日の試合は見ていないのであろう。基本的に毛利さんの方を警戒しているので、渋谷さんから千里にパスされるパターンが多かった。それで第1ピリオドだけで千里は7本のシュートを撃ち全部入れて21点取った。
 
さすがに第2ピリオドになると千里の方にもマークが付くが、千里は少々のマークは気にせず撃つ。一度は相手ディフェンスがかなり厳しいチェックをして、千里の腕に触れたものの、きれいにゴールを決め、フリースローまでもらって一気に4点取った。結局第2ピリオドでその分まで含めて5本の3ポイントシュートを撃って全部成功させ、ここまでで千里の得点は37点である。
 

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「凄いな。午前中の試合とは別人だ」
と2年生の真駒さんがハーフタイムに言う。
 
「いや、3ポイントってさ、入る時はどんどん入るし、外し出すとどんどん外れるもんなんだよ」
と3年生SGの毛利さんは言う。
 
「ああ、僕の中学生の時のチームメイトのシューターもそんな感じでした」
と北岡君が言う。
 
「入らない時というのは、ちょっとしたフォームのくるいなんだよね。だからくるったまま撃っても、確実に外れる。シューターって精密機械なんだ。時々3ポイントが入る確率がどうのこうの言う人いるけど、確率では語れないのがスリーだよ。スリーが入る確率ってポアソン分布じゃないから」
と毛利さん。
 
ポアソン分布って何だろう?と千里は思ったが質問すると話の腰を折りそうなので尋ねなかった。
 
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「でも精神的なものも大きいんでしょう?」
と今日はあまり出番の無い白滝君。
 
「うん。ちょっとした気分の違いで変わる。だからシューターのお仕事は試合前から始まっている。精神的に安定した状態でプレイできるように努力するんだよ。村山は、その辺りを今後鍛えて行かなきゃな」
と毛利さん。
 
「はい」
と千里は素直に返事した。
 
 
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