広告:まりあ†ほりっく 第5巻 [DVD]
[携帯Top] [文字サイズ]

■女の子たちの性別疑惑(3)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

「でもよくこんなサイト見つけたね」
「フィルターに引っかからないの?」
 
この女子寮には寮内有線LANが入っているのでネットに自由にアクセスできるが18歳未満保護のためのフィルターが入っているはずだ」
 
「この手のサイトにアクセスする時は、寮のLANは使わずに自分の洋ぽんでやる」
「ようぽん?何それ?」
「味ぽんの親戚?」
 
「うん。味ぽんの親戚」
「味ぽんでどうやってネットするの?」
「これが洋ぽんだよ」
と言って京子は机の中から、PHSを取り出して見せる。
 
「京子、携帯2つ持ってるんだ?」
 
「通話やメールにはだいたい携帯の方を使っているんだけどね。データ通信にはこちらのピッチを使うんだよ」
「へー」
 
↓ ↑ Bottom Top

「最初味ぽんと呼ばれるエッヂ端末があったんだよ。Air H゛Phoneを縮めてあぢぽん」
「ほおほお」
「その後継機で京セラから出たのが京ぽん」
「へー」
「その後継機で三洋から出たこの端末が洋ぽん」
「はぁ」
 
「データ定額制でネット通信ができる端末はこれしか無いんだよ」
「え?でも私の携帯もパケット使い放題だよ」
 
「うん。それはよく誤解して超高額の請求書見てショック受ける人がいるんだけど、普通の端末のパケット放題は、あくまでその端末自体でネットやメールやゲームした場合。でもパソコンを携帯を通してネットにつないだ場合は、パケット定額の対象外なんだよ」
 
「そうなんだ!?」
「ところが、京ぽん・洋ぽんだけは、パソコンからの接続も定額の対象になる。私、請求書で確認したら、先月はまともに払うと30万円になる所を定額の6000円で済んでいる」
 
↓ ↑ Bottom Top

「30万!?」
「そんな請求書が来たら、ショック死する」
「親がショック死するかもね」
「ああ」
 
「取り敢えず高校退学させられて田舎に連れ戻されそう」
「そちらが怖いな」
 

↓ ↑ Bottom Top

ところで千里は5月の中旬から、旭川市内のQ神社で巫女さんとしてバイトを始めた。基本的には土曜日の授業が終わった後と、日曜のお昼前からということにしている。
 
学校からいったん自宅に戻って更に神社に向かうだけの時間的余裕が無いので、学校から直行する。この時期から千里は当初のバス通学から自転車通学に切り替えたので、自転車で神社に向かうことができ、便利であった。
 
ただ、千里は学校には男子制服で通っている。でも神社にはそんな服では行けない(一応千里の性別については、神社の宮司さんと、女性職員を統括している斎藤さんは承知している)。そこで千里は校内で高校の女子制服に着替えて、ロングヘアのウィッグも付けて(じゃまにならないよう制服ブレザーの内側に入れる)、自転車に乗り、神社に向かうということをしていた。
 
↓ ↑ Bottom Top

着替えは1階の事務室・校長室の近くにある、あまり人の来ないトイレ(当然女子トイレ)を使用していたが、時々知っている人に遭遇したりする。
 
「あら、千里ちゃん、今日はそちらの制服で出て来たの?」
などと1年1組の伊勢先生から言われたりする。
 
「あ、いえ、バイト先に行くので、この服に着替えました」
「ああ。女の子としてバイトしてるのね?」
「男の子としてバイトしたくないですー」
「でも学校の外でその服を着られるのなら校内でも着ればいいのに」
「あはは、そうですね。そのうち」
 
ある時は、女子トイレを出た所でバッタリと教頭先生に遭遇する。
 
「あれ?村山君だっけ?」
「はい」
「君、そんなに髪伸びたんだっけ?」
「あ、これウィッグですよ」
 
↓ ↑ Bottom Top

「いや、僕は君に髪のこと言ったことちょっと後悔しててね。何なら髪伸ばす?制服もその女子制服持っているんだったら、そちら着てていいよ」
などと教頭先生。
 
髪を丸刈りにするのは、この教頭先生との約束だったのだ。
 
「いえ、大丈夫ですよ。丸刈りにも結構慣れたし。友人たちもインパクトのある髪型だとか言って受け入れてくれてるし」
 
「取り敢えず、君の髪の長さについては、長くしてても問題無いということで生徒指導には話しておこうか?」
 
「わあ。ありがとうございます。助かるかもです」
 

↓ ↑ Bottom Top

留萌の神社では、昇殿祈祷の客なんてお正月とか以外は日に1人いるかどうかという感じであったが、旭川では結構来る。その日も20-30分単位で、千里は参拝客の昇殿前のお祓い、祈祷中のお神楽の龍笛に舞、鈴祓いと大忙しであった。巫女は数人いるのだが、千里は龍笛が巧いので、舞やお祓いを他の巫女さんがする時でも、笛は千里が吹くというパターンが多かった。
 
「でも千里ちゃんのこの髪、まるで自毛みたいだよね」
とある時、斎藤さんは言った。
 
「ええ。4月に髪を切った時、その自分の髪の毛でこのウィッグ作ってもらったので」
 
「うん。それは聞いたけど、ふつうは自分の髪の毛であろうと、いったん切り離してしまえば、それはただの物質になってしまう。でも千里ちゃんの場合、これがいまだに身体とつながっているかのようなんだよね」
 
↓ ↑ Bottom Top

「そうですね。こういう長い髪と5年くらい付き合ってたからかなぁ」
「この髪の毛まで、千里ちゃんの霊的な一部になっているんだよ」
「へー」
「ちゃんとオーラがこの部分まで覆っているのね」
「あ、そうかもです」
 

↓ ↑ Bottom Top

その日は、夏の七夕祭りを間近に控え、臨時雇いの巫女さんを数人雇うというので、斎藤さんが女子高生・女子大生かなと思う女の子たちの面接をしていた。千里はその時、その面接を受けるのに待っている子のひとりに注目した。
 
斎藤さんは千里の視線に気付いたようで、ひとりの子の面接が終わった後、ちょっとお茶を飲みに席を立ってから、千里の所に来て訊いた。
 
「何か面接受ける子の中に知り合いが居た?」
「いえ。全然知らないんですけど、あのライトグリーンのカーディガン着ているメガネの子、凄いと思いません?」
と訊く。
 
斎藤さんはその子を千里の位置から観察した。
 
「気付かなかった! 言われてみると凄い!!」
「ですよね?」
「あの子は採用決定だな」
 
↓ ↑ Bottom Top

と斎藤さんは楽しそうに言った。
 
「でも千里ちゃん、霊感強いと思ったけど、霊感のある子を見分ける目も持ってるんだね」
 
「《霊感のある子》という基準は、留萌の神社でお仕事している間に気付いたんです。それまで《響きの深い子》みたいに思ってました。私、何故かそういう子と親しくなりやすいんですよ。というか、向こうから私の方に寄ってくる感覚があるんですよね」
 
「なるほど。でも、響きが深い、か。確かに霊感ってそういうものかもね」
と斎藤さんは頷くように言った。
 
「私の友人って、霊感の強い子と、霊感の全く無い子の、両極端みたいなんです」
「ああ、何となく分かる」
 
留実子とか蓮菜、京子などは霊感の強い子、佳美や美那、鮎奈などは霊感ゼロのリアリストである。恋人でも、晋治は結構な霊感があったが、貴司はお母さんが凄い占い師なのに、全く霊感がない子であった。
 
↓ ↑ Bottom Top


6月のある土曜日、千里がいつものように授業が終わってから女子制服に着替えてロングヘアのウィッグを付け、自転車で神社に向かっていた時。
 
千里は少し遅くなったかなと思い、普段なら回避している商店街を突っ切ろうと思い、自転車をそちらに向けた。
 
むろん自転車なので車道を通るのだが、路駐している車がたくさん居て、なかなかまともに進めない。うーん。失敗したかなあ。やはり遠回りでもちゃんといつもの道を通れば良かったかなと後悔しはじめた頃、宅配便の営業所の所に親友の留実子が居るのを見た。
 
留実子は男装している。
 
そして・・・どうも揉めているような気がした。
 
千里は自転車を停め、声を掛ける。
 
「るみちゃん、どうかした?」
「あ、千里!」
 
↓ ↑ Bottom Top

「お友だちですか?」
と営業所のスタッフさんが訊く。
 
「はい」
と千里は答える。
 
「いや、ボクの所に母ちゃんから宅配便を送って来たんだけど、ボクは学校に出てたし、おばちゃんも出かけていたから留守で、受け取れなかったんだよね。それで、ついでがあるし、営業所で受け取ろうと思って、電話して出て来たんだけど、生徒手帳の写真と違うと言われちゃって」
と留実子。
 
「ああ、それは確かに違うように見えるかもね」
と千里は言う。
 
それで千里は営業所の人に説明する。
 
「この子、最近よく居る《男の子になりたい女の子》なんですよ。生徒手帳は女の子の格好して撮らないといけないから、そういう写真になってますけど、この子、ふだんはいつもこうやって男の子の格好して出歩いてますから」
 
↓ ↑ Bottom Top

「はい、今そちら様からもそう説明されたのですが、ちょっとこちらでは本人確認ができないと判断致しまして」
と係の人。
 
「私が証言してもダメですか?」
「同級生か何かですか?生徒手帳、お持ちですか?」
「はい」
 
というので千里は自分の生徒手帳を見せる。写真と実物を見比べている。
 
「はい、確かにご本人ですね。それで同じ1年5組なんですね」
「ええ。席も隣の隣なんです」
 
「念のため生年月日を言ってもらえますか?」
「平成3年3月3日生まれ」
「十二支では何年生まれですか?」
「ひつじ年です」
 
「はい、結構です。では、ご本人様署名に加えて、村山様も欄外に署名して頂けますか?」
「いいですよ」
 
↓ ↑ Bottom Top

ということで、留実子が受取人の所に署名し、千里がその欄外に署名して、やっと荷物を受け取ることができた。
 

↓ ↑ Bottom Top

営業所を出て歩きながら(千里は自転車を押しながら)少し話す。
 
「るみちゃん、男の子の服を着たい気持ちは分かるけど、本人確認の必要な場面では、やばいよ」
 
「うん。身分証明書提示しないといけないこと知らなくて。不在通知だけ持ってくればいいかと思ったんだよねー」
 
「生徒手帳と極端に違う服装・髪型だと、確かに本人かどうか見ても悩むだろうしね」
 
留実子は入学手続きをした頃はまだ《女の子としては短い髪》だったのが最近は《女の子に見えないくらい短い髪》になっている。
 
「千里も、生徒手帳と実態が極端に違うよね」
「あはは」
 
「だって生徒手帳はロングヘアに女子制服。普段学校にいる時は、丸刈りに男子制服。写真と見比べると、絶対同じ人に見えない」
 
↓ ↑ Bottom Top

「うん。割と困ってるんだけどね、それ」
 
「でも千里は今しているような格好で学校にも出て行くようにすれば問題がなくなる気がするよ」
 
「るみちゃんは、むしろ生徒手帳の写真を貼り替えてもらった方がいいかもね」
 
そんなことを言って、千里は留実子と顔を見合わせ、笑った。
 
「ところで千里、何かで急いでいたんじゃないの?」
「あ、しまった! 神社のバイトに遅刻しゃう。じゃ、また」
 
と言って慌てて千里は自転車に乗る。
 
「うん。気をつけてね!」
と言って留実子は見送ってくれた。
 

↓ ↑ Bottom Top

 
6月16日(金)、バスケットの全道大会(インターハイ予選)が函館市で開かれた。千里はこの大会にN高校男子バスケ部のメンバーとして参加する。N高校女子も参加するし、鞠古君のいる旭川B高校男子、田代君のいる札幌B高校男子、そして貴司のいるS高校男子、久子や数子のいるS高校女子も参加する。
 
S高校にはこの春まで女子バスケ部は無かったのだが、数子と久子が中心になり、中学でバスケットをやっていた経験者や、背の高い女子などを集めてバスケット同好会を結成。そして最初の地区大会で美事に優勝して、道大会に進出してきたのである。その経緯は千里も貴司との交換日記でずっと聞いていた。生徒会側もこの健闘を評価して来年度からは部に昇格できることが内定している。もっとも現在S高の女子バスケット同好会は部員が7名らしい。数子は「私がS中に入った年と似たようなもんだ」と言っていた。
 
↓ ↑ Bottom Top

道大会は市内3つの会場8つのコートを使い、金土日3日間掛けて行われる。開会式のためメイン会場のアリーナに入って行くと、近くに数子が居たので声を交わす。
 
「組合せ表見たよ。当たるとしたら決勝リーグだね」
「うん。思ったけど、とてもそこまで残れないよ」
「でも今日・明日の宿は確保してるんでしょ?」
「確保した。一応明後日まで勝ち残れる皮算用」
 
みんな今日は1回戦と2回戦の2試合が行われる。今日勝ち残ると明日の午前中にブロック決勝があり、それに勝てば決勝リーグに進出して土曜の午後と日曜で3試合おこない、上位2チームがインターハイに進出できる。決勝リーグに残ることができたら、明日の宿も必要である。むろん1回戦で負けたら今日の宿もキャンセルする羽目になる。宿のキャンセル料は結構高いので弱小校の場合、そもそも今日の宿さえも確保していない所もある。
 
↓ ↑ Bottom Top

「お互い頑張ろう」
 
などと言ってから
 
「ん?」
と数子が悩んでいる。
 
「千里、女子チームに出るんだっけ?」
「あ・・・しまった。私、男子チームだった」
「だったら当たらないじゃん」
「そっかー! でもうちの女子チームには留実子がいるから」
 
「うんうん。でもやはり千里は早々に性転換して女子チームに移籍しよう」
「うーん。手術代があればすぐにも手術したいけどなあ」
「あはは、まあうちもそちらも取り敢えず明日までは残れたらいいね」
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8 
女の子たちの性別疑惑(3)

広告:僕がナースになった理由