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■女の子たちの高校入学(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-04-26
 
終わった所で鏡を見せてもらったが、どうかした短髪にするより、五分刈りなんてむしろすっきりする感じだ。
 
「お、泣かないね」
「覚悟してましたから」
 
「だけど、千里ちゃん、違和感ありあり」
と美輪子。
 
自分で風呂場に行き、洗髪してきた。あがってきた所で母が到着した。
 
「誰かと思った」
と母。
 
「お母様の感想は?」
「女の子が野球部に強引に入るのに五分刈りにしちゃったって感じの図」
 
「うんうん。この格好を見ても男の子に見えない!」
と美輪子。
 
「ああ。私も高校時代、そう言われてた」
と敏数。
 
「あのぉ・・・、あなたの性別は?」
と母が訊く。
「私、花和留実子の兄ですよ」
 
「はぁ・・・・」
と母は何を言ったらいいのか分からない状態。
 
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千里がN高校の男子制服のブレザーとズボンを身につける。普通の子は規定のサイズで済むのだが、千里は女子体形なので、結局ズボンは女子の制服のズボンと組み合わせてくれたものである。
 
千里の母、美輪子、敏数と4人で学校に出かける。美輪子も敏数もレディス・スーツを着る。現地で留実子の母娘と落ち合う。
 
「千里!?」
「うん」
「・・・・・あのさ。五分刈りでも女子にしか見えんのだが」
「あはははは」
 
「でもるみちゃん、女子制服で良かったの?」
「まあしょうがないね。千里こそ男子制服で良かったの?」
「まあ3年間我慢するよ」
 
蓮菜・恵香とも遭遇したが、その2人にも「髪が短くても女子に見える」と突っ込まれた。
 
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貼り出されているクラス分け表を見て教室に行く。千里・留実子・蓮菜は3人とも1年6組になっていた。ここは進学コース・特進コースのクラスだ。恵香は情報処理コースで1年3組であった。もっとも進学コースに上がりたいので進学コースの子向けの授業も受けると言っている。
 
「るみちゃん、進学コースなんだ?」
 
留実子は自分は成績が悪いから一般入試を受けたら合格できない、などと言っていたのである。しかし進学コースということは少なくとも新入生の中で真ん中より上の成績で合格したことになる。
 
「ボク、内申書の点数が凄く良かったみたい。それで第1希望進学コース、第2希望情報処理コースにしてたんだけど、多分ぎりぎりくらいで進学コースになったんじゃないかな。まあ2学期以降は厳しいかも知れないけど」
 
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この学校では各学期ごとに振り分けテストがあり、特進や進学コースは一定以上の成績をキープしないと、そのコースから外されてしまう。逆に成績が良ければ希望することにより、ビジネスや情報処理から進学へ、進学から特進へと移動することも可能である。但し上に上がるにはそのコースで必要な単位をオプションで取っておく必要もある。
 
「だったら勉強頑張って大学目指そうよ」
「そうだなあ。やれる範囲で頑張ってみるかな」
 
そんなことを言いながらも指定された席に座る。
 
前の席に座っていた女子が驚いたように振り返って言う。
 
「ね、ね、あなた何でそんな短い髪なの?」
「あ。えーっと・・・」
と千里が言いよどんでいると
 
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「野球部か何か? 私の中学に女子で無理矢理野球部に入るのに髪を丸刈りにしちゃった子が居たけど」
「うーんと、私はバスケット部だけど」
 
「嘘。バスケ部は普通に女子バスケ部もあるのに」
 
「あ、その子、男子バスケ部に入るんだよ」
と彼女の更にひとつ前の席に座っている留実子が言った。
 
「うそー!? なんでわざわざ女子が男子バスケット部に? だいたいこの学校、女子バスケ部は強いけど、男子バスケ部はそんなでもないのに」
 
「その子、中学時代は女子バスケット部だったんだけどね。男子バスケ部でもやれると言われて」
「えーー!? でもそれで頭を丸刈り? お母さん泣かなかった?。あ、私、前田鮎奈」
 
「私は村山千里」
「私は花和留実子」
 
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「留実子ちゃん、千里ちゃんと同じ中学?」
「そうそう。私も千里も女子バスケット部だったんだけどね。私はこの高校でも女子バスケット部に入るけど、千里は男子バスケット部に入る」
 
「信じられない!」と鮎奈。
「あ、ちなみに千里は戸籍上は男子だから」と留実子。
 
「それはさすがに悪い冗談だよ。あれ、そういえば千里ちゃん、着ているのもまさか男子の制服? スカートじゃなくてズボン穿いてるし」
 
男子のブレザーと女子のブレザーはフォルムは違うのだが(男子の方が前合わせのVゾーンが深く、ボタンは右前で2個。女子はVゾーンは浅くてボタンは左前で4個である)、配色は似ているので、千里みたいな子が男子制服を着ていると、一見ちゃんと女子制服を着ているように見えなくもないのである。
 
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「いや、だからこの子、男の子だから」
「そう男、男言うのは良くないよ。男子バスケ部に入ろうというくらい元気なら男勝りなんだろうけどさ」
 
「いや、困ったな」
と留実子はどう説明していいか、本当に困っていた。
 
この会話を教室の後ろで聞いていた美輪子は忍び笑いをしていたが、千里の母はもう他人の振りをしていた。
 

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入学式では、校長から新入生全員の名前が呼ばれる。あ、そういえば私中学の入学式に出なかったから、こういうのはほとんど初体験だよな、と千里は思っていた。小学校の入学式はさすがにもう覚えていない。
 
「花和留実子」と呼ばれて留実子が「はい」と低い声で返事する。
「前田鮎奈」と呼ばれて鮎奈が「はい」と澄んだ声で返事する。
「村山千里」と呼ばれて千里が「はい」と高い声で返事する。
 
入学式は順調に進んでいった。
 

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入学式が終わった後は各教室に戻り、ホームルームである。
 
担任の先生の自己紹介の後、クラス全員がひとこと自己紹介をする。
 
「花和留実子です。留萌のS中学から来ました。バスケットをしていたので、ここでもバスケット部に入りたいと思っています。志望校は旭川医科大学の看護学科です」
 
長身の留実子がバスケットをしていたと言うと、物凄く説得力がある。
 
「前田鮎奈です。上川町のH中学から来ました。中学時代は吹奏楽部でトランペットを吹いていたのですが、今の所高校では部活はする予定はありません。志望校は東大理3です」
 
東大理3という難関志望校に「おぉ!」という歓声があがる。ちなみに東大理3と言ったのは、鮎奈と蓮菜の2人だけであった。東大を志望校と言った子は男子にも2人いたが、文1と理2であった。
 
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「村山千里です。留萌のS中学から来ました。私も花和さんと一緒にバスケットをしていました。ここでもバスケ部に入る予定です。志望校は千葉大学の理学部です」
 
ここで他の生徒から質問が出る。
「なんでそんな短髪なの〜?」
「えっと・・・私、一応男子なので」
 
「あ、千里ちゃん、男子バスケ部に入るらしいですよ」
と鮎奈が言う。
 
「うっそー!?」
という声。
 
「なんか制服も男子の制服着てるし」
 
担任の先生まで「君、男の子になりたい女の子?」などと訊く始末である!
 
「あのぉ、私まじで医学的に男なんですけど」
 
「嘘!性転換手術したの?」
「おちんちん付けちゃったの?」
「生まれた時から男の子ですよぉ。先生、学籍簿を確認してください。私、男として登録されていると思うのですが」
 
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慌てて担任が教室にあるパソコンを使って、確認する。
 
「・・・・君、女子として登録されているけど」
と担任。
 
「やはり!」
という教室の声。
 
なんで〜? 私、そもそも特待生の《女子枠》で入れてもらっているし。まさかその時、学籍簿も女にされてたりして!?
 
すると留実子が
「学籍簿上、女だってよ。千里、明日から女子制服を着て出て来なよ。この子ちゃんと女子の制服も持ってますから」
などと言う。
 
「なんだ。だったら、ちゃんと女子制服着なきゃ」
「うん。その方がいい」
「頭はベレー帽か何かかぶっていればいいよね」
「あ、そうそう。この高校の制服、ベレー帽が一応規定されてるんだよね」
「かぶってる子居ないけどね」
「女子で丸刈りよりマシだけどね」
 
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千里が教室の後ろに目をやると、母は余所向いて、美輪子は笑っていた。ほんとに女子制服着て出て来ようかな!?
 

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ちなみに千里の性別問題は、このホームルームが終わった後、千里と保護者が職員室に呼ばれ話し合った。その場で千里はあらためて自分は男子であると主張する。母も「一応この子、戸籍上は男なんですけどね」と言う。
 
「やはり性転換したんですか?」
「いえ。生まれた時から男です。でも将来性転換して女になりたいと思っています」
「ああ、そちらか! でも君、そういう頭でも女の子にしか見えない」
 
「中学では、本来男子は短髪でないといけないのに、この子3年間、胸くらいまであるような長髪で過ごして、先生もそれを容認していましたし」
と母。
 
「ああ。君、長い髪が似合いそうだね。でも声も女の子みたいな声」
 
「私、まだ声変わりが来てないんです」
「高校生になってまだ来てないって珍しいね」
「病院を受診してみる?と訊いたのですが、男性ホルモンとか絶対に投与されたくないと言うので」
「私、どちらかというと女性ホルモンを打ってもらいたいです」
 
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「ああ、なるほど」
 
そんな感じで、30分ほどの協議の結果、担任は千里を取り敢えず男子と認めてくれた(と千里は思った)。
 

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翌日。千里はふつうに男子制服を着て学校に出て行った。母は昨日留萌に帰っている。
 
しかし千里が男子制服でまた出て来たので、クラスメイトから突っ込まれる。
 
「なんでまた男子制服なの〜?」
 
「そうだ。うちの姉貴がベレー帽持ってたんだよ。千里ちゃんにプレゼント」
と言って、かぶせてくれた子が居る。
 
「おお、これなら丸刈り頭が分からないから、より自然に女の子に見える」
 
やがて担任が入って来る。全員席に就く。千里の性別問題について担任は
 
「えー、保護者とも話し合ったのですが、村山さんはこの学校では男子として通学するそうです」
などと言う。
 
うーむ。この言い方では、まるで男の子になりたい女の子みたい! ってか結局先生はそう理解してしまったのでは!??
 
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この日も1時間目はホームルームで、クラス委員ほかの委員を決めた。千里は放送委員に指名された。
 
「中学でもやっていたみたいだから」
と担任に言われる。
 
放送委員とか図書委員って専門職化しやすいから、一度やるとずっとやらされるよな、と千里は思った。図書委員に指名された京子も、やはり中学でやってたみたいだからと言われていた。
 
2時間目は学年集会で、食堂に1年生の全クラス集まり、学年主任や教務主任から授業の選択や時間割などについて説明される。特に特定の受験をするのに必ず取っておかなければ単位について注意がある。その単位を取っていないと受験できない学校があるのである。また特進コースは0時間目が事実上必修なので、来週からは朝7:10の授業に間に合うよう登校しなければならない。
 
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集会が終わった所でトイレに行く。食堂のそばにあるトイレの男子トイレの方に入って行くと、何だかぎょっとする雰囲気。
 
「君、ここは男子トイレだけど」
「はい?」
「女子トイレは隣!」
と言われて追い出されてしまった!
 
うむむむ。だって男子制服を着て、髪も丸刈りなのに、なぜ〜!?
 
そこに蓮菜が来る。
「千里、どうしたの?」
「男子トイレに入ろうとしたら追い出された」
「まあ当然だね。私は昨日も今日の1時間目も可笑しくて笑いっぱなしだったよ」
 
「でもトイレどうしよう?」
「女子トイレ使えばいい」
「えーー!?」
「どうせ千里、これまでも学校の外では女子トイレしか使ってないでしょ?」
「うん、まあ」
 
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「小学校や中学校で千里が男子トイレの使用を容認されていたのは、みんなが小さい頃から千里のこと知っていたからだよ。もっとも、千里は女子トイレを使ってもいいのにね、って女子たちは言ってたけどさ」
「うーん・・・」
 
「千里を知らない子が見たら、千里ってそんな頭にしても女子にしか見えないもん」
「うーん・・・・・・」
 
「さ、行こう行こう」
と言って蓮菜は千里の手を引いて女子トイレに入ってしまった。列ができていたので並んだが、誰も千里に対して悲鳴をあげたりすることは無かった!
 
私、これからどういう学園生活になるの〜〜!?
 

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女の子たちの高校入学(5)

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