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■女の子たちの高校選択(7)

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留実子は親友の前では「ボク」の自称を使うのだが、こうやって教室の中にいるような時は「私」の自称を使っている。
 
「じゃ一般入試で目指すの?」
「推薦入試にしようという話。そしたら入試を受けなくていいから。私、N高の入試を受けたら確実に落ちる」
「うむむ」
 
「でも私立の学費大丈夫?」
「N高校はバイトが許可もらえばできるから、バイトして学資の足しにしてもいいかなと思ってる」
「るみちゃん、何のバイトするの?」
と佳美が訊く。
 
「運送屋さんかなあ」
「るみちゃんなら出来るかも!」
 

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それで結局、千里と留実子、それに蓮菜もN高校の推薦入試を受けるという話が進行して行った。蓮菜は学年でも成績トップ争いをしているので、中1の頃から札幌か旭川に出ると言っていたが、やはり下宿先確保の問題で旭川にしたようであった。
 
「E女子高の方を考えていたんだけどね。男の子が言い寄ってくるの面倒いし」
「公立は考えなかった?」
「A高校考えていた時期もあったけど、特待生になりたいから」
「そうか。蓮菜は純粋に成績で特待生を狙えるんだ!」
 
「うん。私、東大の理3狙ってる」
「りさんって何?」
「医学部だよ」
「おぉ!!」
 
「しかしさ、蓮菜・留実子・千里が旭川に出るとして、細川君はS高だし、田代君は札幌だっけ? 鞠古君もS高に行くんでしょ? あんたたち、交際はどうすんの?」
と佳美が訊く。
 
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「ああ、ボクはさすがにそろそろ声変わりが来るだろうから、声変わりが来たら貴司の恋人は卒業することになっている」
と千里。
 
「卒業なんだ!?」
 
「私は別に雅文とは何でもないよ」
と蓮菜。。
 
思わず他の女子は顔を見合わせる。田代君も知らん顔をしている。しかし蓮菜はそもそも隣のクラスなのに休み時間にこちらに来てちゃっかり田代君の隣に座っているのである。ふたりはいつも名前で呼び合っている。何でもないは無い。
 
「私とトモの関係は、お互いに無理はしない。続く範囲で続けるということにしているから、遠距離になって切れたらその時」
と留実子は言う。
 
その言葉を聞いて、田代君が何か考えている風であった。
 
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10月の下旬の日曜日、N高校に、千里と両親が行き、千里がN高校の特待生含みで、推薦入試で受験するという件について話し合いが持たれた。
 
千里の父は授業料が無しで済むならありがたい。たまたま3月末で仕事を失うことになっていて、この子の高校の学費が出してやれないと思っていたと言い、この話に同意する旨を表明した。
 
この場では千里が「女子枠」で入るということは説明されていない。その話を出すと父が怒るのは確実なので、バッくれておこうというので、宇田先生と千里の間で話が付いている。
 
「でもこいつ、こんな髪でいいんですかね?」
と父が言った。
 
「だいたい、中学でもこんな長い髪は違反のはずなのに」
「それは特例で許可されていたんただよねー」
 
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「N高校の男子の頭髪規則はどうなってましたっけ?」
と父が訊く。
 
「ええっと。一応、横は耳に付かない程度、後ろは襟に付かない程度ですね。でも運動部に入っている子はたいてい五分刈りとかにしてます」
とN高の教頭先生が言う。
 
「だったら、こいつ今すぐバリカンで切っちゃいましょうか」
 
「お父さん、心配しなくても、私、ちゃんと入学までに髪は切るよ」
と千里は言った。
 
母が戸惑うように千里を見詰めていたが、千里は自分にはN高校に行く以外の道が無いから、それさえ確保できるのであれば後はどんなことでも我慢しようと心に決めていた。
 

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「千里、ほんとに髪を切るの?」
 
千里がN高校に行く以上、頭髪規則は守るという話をしたのに対して留実子も心配そうに言った。
 
「だって特待生は他の生徒の模範にならなくちゃいけないんでしょ? 髪も五分刈りにするよ」
 
「いいの?」
「中学を卒業するまでは女の子。高校は男の子かなあ」
「もう男の子になっちゃうの?」
「多分高校だけ」
「だよね。それ聞いて安心した」
 
「るみちゃん、髪のことで何か言われなかった?」
「短すぎるから、もう少し伸ばせって」
「あはは」
 
留実子はほとんど男子に見えるような短い髪にしている。それで背も高いし、女子トイレ・女子更衣室・女湯で悲鳴をあげられたことは何度もあるようだ。
 
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「でも良かったじゃん。全日制の高校に行けることになったんだから」
と貴司が言ってくれた。
 
「うん。それで入学する時、髪切ることにした」
「男子の頭髪規則に合わせる訳か」
「運動部の子は五分刈りが多いというから、私も五分刈りにする」
 
「千里が五分刈りにしたら、尼さんにでもなった感じかも」
「でもスキンヘッドは禁止らしいよ」
「なるほどねぇ」
 
「ああ。でも五分刈りにしたら、やはり私、貴司の恋人はクビ?」
「まあクビだな。さすがに女の子には見えないだろうし、僕はホモじゃないしね」
 
このあたりが晋治とはやはり性格違うよなあと千里は思う。晋治は私がどんな姿になろうとも私は女の子だなんて言ってくれたのに。
 
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「じゃ、高校入学までのお付き合いだね」
「うん。でもその後も友だちってことでいいよ」
「うん。そうしよう」
 
そう言って、ふたりはそっとキスをした。
 
貴司とはそういう訳で高校入学の時点で恋人関係を解消することになったのである。
 

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千里が旭川に出る場合に下宿先としてあてにしていたのが叔母の美輪子であるが、美輪子は連絡すると、千里を下宿させることを快諾した。
 
「下宿代は食費込みで5万くらい払えばいい?」
と母は訊いたが
「水くさい。部屋代は要らないし、千里は少食だし食費で1万もあればいいよ」
と言う。
「じゃ3万くらいで」
「いいよ」
 
ということで下宿代を毎月3万払うことにした。
 

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千里の友人たちで恵香は旭川で公立のA高校と千里たちが行く私立のN高校を併願するということだった。恵香の現在の成績ではN高校はB判定、A高校はC判定であるが、追い込み頑張ると言っていた。
 
彼女は旭川に出る場合、下宿先が問題だと言っていたのだが、偶然にも母の従姉夫婦が、これまで宮城県の石巻市に住んでいたのが転勤で旭川に引っ越してきたので、下宿してもいいよということになったらしい。向こうは女の子が1人いるのだが、山形の大学に通っており、山形市内のアパートに住んでいる。
 
佳美は旭川のW高校と地元のS高校にターゲットを絞り、願書を出す直前にどちらにするか決めると言っていた。
 
「私内申書というシステムを知らなくてさ。私の内申書あまり良くないみたいなのよね。だからW高校は厳しいかも知れない」
「この時期になるまで内申書を知らなかったというのは結構厳しいね」
「しかも旭川は学区外だから合格水準が高くなる」
「高校入試は中学に入った時点から始まる長丁場なんだよね」
「ある意味、シビアなシステムだよ」
 
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尚子は札幌の公立(東西南北のどれか)を受けるらしいが、滑り止めの私立は受けないと言った。
 
「もし落ちたらどうするの?」
「S高校の二次募集に行く」
「それ落差があまりにも激しすぎるのでは?」
「やはり私立は経済的に厳しいのよ」
「不況だからなあ」
 
尚子のお父さんは自動車のセールスだったはずだが、長引く不況で車は売れてないようである。
 
玖美子は1年生の頃から札幌の東西南北のどれかに行くと言っていたが、当初の予定通り南高を受け、滑り止めに札幌市内の私立を受けると言うが、玖美子の今の成績なら風邪でも引かない限り公立で楽勝のはずである。
 
「じゃ、札幌に行くのは、今の所、玖美子・尚子に、男子で**君、**君あたり?」
「田代君も札幌だよ」
「あ、忘れてた」
「成績上位の方しか考えないよね」
 
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「旭川組が増えたね。蓮菜・恵香・佳美・千里・留実子に、男子も6−7人行くみたい」
 
「なんか留萌残留組が少なくて寂しいなあ」
と地元のS高に進学予定の佐奈恵が言う。
 

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11月上旬、千里はN高校側から健康診断書を取ってくれという連絡があった。
 
それで学校を早引きし、市内の総合病院に行って健康診断の申し込みをした。千里は健康診断というので、先月宇田先生と出会う前夜に見た夢を思い出していた。まあ、お股に付いてる変な物を親切に切ってくれるお医者さんなんていないよなあ。性転換手術を受ける夢はもう12-13回目かなとも思う。
 
最初に尿を取ってくださいと言われ紙コップを持って近くのトイレに入る。個室でおしっこを出して、それを棚の所に置いていたら、トイレの入口のドアが開き、セーラー服の子が入ってくる。
 
「あ、蓮菜」
「千里。もしかして千里も健康診断?」
「うん。蓮菜も?」
「特待生は健康診断書を出さないといけないみたいね」
「じゃ、今日は結構あちこちで一緒になるかな」
 
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その後、血圧測定、採血、身体計測(身長・体重・胸囲・座高)、視力・聴力検査と進むが、しばしば蓮菜と一緒になったので、いろいろおしゃべりしながら順番待ちしていた。身体計測は服を着たままであった。
 
やがて心電図になる。先に千里が
「村山千里さん、1番に入って下さい」
と呼ばれた。男性の技士が
「服を上半身脱いでそこに寝てください」
と言ったのだが
 
「あれ?女性の方でしたね。ごめんなさい。書類の性別が間違ってる。申し訳ない。女性の方の部屋に案内しますから、いったん廊下に戻って待っていてください」
と言われた。
 
それで素直に廊下に戻る。
 
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