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■女の子たちの気合勝負(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-03-29
 
2004年。千里が中学2年の夏。
 
貴司は瀬越駅近くの交差点で人を待っていた。貴司が千里と待ち合わせする時は、よく留萌駅を使う。その留萌駅を避けて、わざわざ隣の瀬越駅で待っているというのは要するに浮気である。
 
やがて約束をした女の子がやってくるので貴司は手を振る。ところがその女の子がしかめ面をして、貴司の肩越しに何か見ているようなので振り返ると、反対側から何とセーラー服を着た千里が歩いて来ている。
 
「あんた何よ」
と彼女は言った。
 
「これから貴司とデートするんだけど」
と千里は言う。
 
「貴司とデートの約束をしたのは私だよ」
と彼女。
 
「貴司は私以外とはデートしないよ」
と千里。
 
貴司は、やべーという顔をしている。貴司が約束をしたのはその子の方ではあるが千里は何らかの手段で貴司が彼女と会うことを知り、ここにやってきたのであろう。
 
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「だいたい、あんた男じゃないの?セーラー服なんて着てるけどさ。貴司ホモなの?」
「私は女だけど」
「女を主張するのは勝手だけど、あんたおっぱいも無いでしょ?」
「おっぱいくらいあるけど」
「胸大きくしてるんだっけ? でもセックスできないでしょ?」
「セックスくらいするけど」
「お尻の穴にでも入れさせるの?」
「貴司は私のヴァギナに入れてるよ」
「うそ」
「何なら、裸になってみようか?」
「よし。じゃ、そこのドラッグストアのトイレに行こうよ」
「うん」
 
それで千里とその女の子は貴司も連れて交差点の近くにあるドラッグストアに行く。
 
「ちょっとちょっと、僕もここに入るの?」
「当然。証人になってもらわなきゃ」
 
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ということで3人でドラッグストアの女子トイレに入ってしまう。まさかこんな場所に入ることになるとは思っていなかったので、貴司は居心地が悪そうにしている。
 
「じゃ脱ぐね」
と言って千里は服を脱ぐ。セーラー服を脱ぎ、ブラウスを脱ぐと下にキャミを着ている。スカートを脱ぐ。下はショーツ1枚である。
 
彼女が「うーん」とうなっている。
 
「確かに女の下着姿にしか見えないよね。あんたが女物の下着を着ているというのは聞いてたけど、それを脱げるわけ?」
 
「もちろん」
と言って千里はまずキャミを脱ぐ。ブラの中に明らかに豊かなバストが納められている。貴司は「うそ」と小さな声をあげた。
 
「まあ、貴司には暗闇の中でしか触らせてないからね」
と千里は微笑んで言う。そしてブラを外してしまう。
 
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「凄い。これBカップはあるよね。本当におっぱい大きくしてたんだ!」
と彼女は目的を忘れて見とれている。
 
「下も脱ぐね」
と言って千里が脱ぐ。そこには豊かな茂みが見えるが、ぶらぶらするようなものは見当たらない。
 
「ちょっとお股広げてみてよ」
「こんな感じ?」
 
「何も付いてないね!」
「ちゃんとヴァギナもクリちゃんもあるよ」
「性転換手術してたんだ!」
「その辺は想像にまかせる」
 
「じゃ貴司としてる訳?」
「もう3回したよ」
 
貴司は心の中で嘘だー!まだしたことないぞ!と叫びながらも千里の裸体に見とれていた。下半身も反応している。
 
「分かった。貴司がホモじゃないこと確認できただけでもいいや。そんなにしてるんなら私の用は無いね。ごめんね、邪魔して。それじゃ」
 
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と言って彼女は女子トイレから出て行った。
 

「千里、いつの間に性転換しちゃったの?」
「性転換なんてしてないよ」
と言いながら千里は服を着る。
 
「だって、その身体・・・」
「私は最初から女の子だよ」
「そうなんだっけ!?」
「なんならこれからホテルにでも行って確認する? 私ホテル代くらい持ってるよ。セックスしてもいいよ」
 
「こんな狭い町で、中学生がホテル行ったら、バレるよ!」
「こんな狭い町で、浮気しようとしたら、バレるよ」
「ごめーん」
「じゃ代わりにケンタッキーおごってよ」
「うん。そのくらいなら」
 
ということでその日は貴司と千里はケンタッキーでおしゃべりした後、町を散歩して、最後は黄金岬で海を見ながら恋を語らいあったのであった。
 
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「だけど今日は千里の気合い勝ちって気もした」
と貴司は言った。
 
「そう?」
「彼女、千里に気合い負けしてたよ。バスケの1on1でもしばしば千里は相手を気合いで圧倒してるよね。佐々木なんかよく千里に抜かれてる」
 
以前は男子バスケ部の練習の合間にちょこっとコートを使わせてもらうだけだった女子バスケ部だが、最近は千里や留実子の活躍に加え、1年下に入ってきた雪子・雅代なども実力を付けてきて、まだ道大会までは進出できないものの、6月の練習試合では地区大会常勝校に、僅差のゲームを演じた。秋の大会ではベスト4くらい行けるのではないかという期待が膨らんでいる。特にこの年は、3年の友子、2年の千里、1年の雅代という3人のシューターを擁して、物凄く得点能力の高いチームになっていた。それで以前より長時間コートを使わせてもらえるようになったし、しばしば男子と女子の試合をやっているのである。
 
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「佐々木君は特に気が弱いんだよ」
と千里。
 
「うん。あれがあいつの最大の欠点ではある。でも佐々木以外でも千里にマッチアップで勝てないという奴は男子バスケ部にも多いよ。まあ、僕は負けないけどね」
と貴司。
 
「貴司が私に負けたら、貴司が性転換して私のお嫁さんになってよ」
「僕が性転換するの!?」
 
「だって雌雄を決するって言うでしょ?」
「それなら佐々木はもうタイ行きの航空券を持たせて強制性転換だな」
「ふふふ」
 

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「だけど、ほんとに戸籍上の性別を変更できるようになったね」
と貴司は言った。
 
「うん。去年あの法律が成立した時はちょっと信じられない思いだった。とうとう施行されたけど、私みたいな子にとっては凄く大きな希望だよ」
と千里。
 
性同一性障害特例法は昨年7月に国会で成立し、今月、ほんの数日前に施行された。早速数人の人が性別変更を申請している。
 
「千里、すぐ性別変更するの?」
「あれは20歳すぎないと申請できないんだよ」
「未成年は親の承認を得てもだめ?」
「うん。ダメ」
「不便だね」
「あと、性転換手術も終えてないといけない」
「でもそれはもう終わってるんだよね?」
 
「さあ、どうかな」
「だって今見た身体はどう見ても・・・」
「だから、ホテルで確かめてみる?」
「うーん・・・・・」
 
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半月ほど前。
 
千里は札幌に住んでいる伯父(母の兄)に呼ばれて1人で札幌に出た。伯父は祖父母(母の父母)と一緒に暮らしており、その日は祖父の69歳の誕生日なので数え年で70歳・古希のお祝いをするということで、母の代理で千里が行くことになったのである。
 
町から出るのであれば本当は女の子の服を着たい所だが、祖父母や伯父・伯母などの前に出なければならないので自粛して中性的な、ポロシャツにセーター、ジーンズという格好である。もっとも札幌までの汽車の中では実はスカートを穿いていたのだが、札幌駅でズボンに穿き換えて、叔母の美輪子との待ち合せ場所に行った。
 
「千里、なんでスカートじゃないのよ?」
などと美輪子から言われる。
 
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「だって、伯父さんたちに会わないといけないし」
「性転換して女の子になりましたと言えばいいのよ」
「言いたいです!」
 
美輪子の車で伯父の家に行くと、伯母夫婦(母の姉・優芽子とその夫)と娘の吉子・愛子姉妹も来ていた。吉子・愛子が着た服のおさがりを千里たちはよくもらっていたのである。母は4人兄妹であった。伯父(母の兄・清彦)の所は男の子が3人である。長男が千里より2つ上、次男は同い年(遅生れなので千里より学年は1つ下)、三男は2つ下で、こちらは千里より下の年齢の弟の所まで服が回っていたので、千里たちがお下がりをもらうことはなかった。そもそも男の子が3人も着た服はほぼ再利用不能になっている。
 
千里が母から託されたお土産を渡し、
 
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「おじいちゃん、お誕生日おめでとう」
と言う。
 
「千里ちゃん、髪長いんだね」
と伯母の優芽子が言う。
 
「中学生だよね? そんなに長くしてていいの?」
と伯父の清彦。
 
「学校から許可もらってますよ」
と千里は答える。
 
「へー。許可されるもんなんだね」
「声変わりもまだなんだね」
「ええ。私、生理もまだ来てないし、発達が遅いみたい」
などと言うと
 
「男の子に生理は来ないよ!」
と言われる。美輪子が苦笑している。
 
「でも千里ちゃんって、結構女の子に見えるよね」
と従姉の愛子。
 
「うん。セーラー服着て来ようかと思ったんだけどね」
と千里が言うと、みんな冗談と思って爆笑していたが、愛子は頷くような仕草を見せていた。
 
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「でも津気子は風邪だって?大丈夫?」
と千里は伯父から訊かれる。
 
「ええ。ちょっと熱が出てたみたいですが、寝てれば治ると本人は言ってました」
 
本当は大人の母が来るより中学生の千里が来た方が、よけいなお付き合いなどでお金を掛けなくて済むからというのが真実である。洋服代や美容院代も助かる。また津気子は実際問題として、兄であるこの清彦と相性が良くないのもあったようだ。
 

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結構豪華な仕出しを食べて(千里は食べきれない!と言って、半分美輪子に食べてもらっていた)、その後、お茶を飲んでいた時、千里の携帯(母が自分のを持たせてくれた)に着信がある。居間を出て廊下で取る。
 
「はろー」
という声は親友・留実子の兄(姉)の敏美である。
 
「こんにちは」
「千里ちゃん、札幌に出て来てるんだって?」
「はい」
「よかったら2−3時間ほど、時間取れない?」
「聞いてみます」
 
それで千里が札幌在住の友人に呼ばれていると言うと、美輪子が
 
「晩御飯の準備は5時頃から始めるから、それまでに帰ってくればいいよ」
と言う。
 
「準備を千里ちゃんにも手伝ってもらうの?」
と優芽子。
 
「この子、料理得意だから戦力としてカウントしてる」
と美輪子。
 
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「へー。それは頼もしい」
 

ということで伯父の家を抜け出して、待ち合わせ場所の、すすきの駅改札口(ロビ地下)まで行った。
 
敏美はこちらが恥ずかしくなるくらい真っ赤な、真紅のワンピースを着ている。そしていきなり言う。
 
「なんでスカートじゃないのよ?」
 
「スカートの方がいいですか?」
「持ってるなら着替えなさい」
と言われるので、トイレで着替えてくる。
 
「よしよし。千里はもっと女の子としての自覚を持とう」
 
取り敢えず近くのファミレスに入って話す。
 
「私まだお昼食べてないのよ」
と言って、敏美さんはチキンステーキを注文する。千里は野菜サラダを注文する。
 
「でもよくこの携帯の電話番号が分かりましたね」
「千里にちょっとプレゼントあげようかと思ってさ。でも住所知らないことに気付いて、電話して聞こうと思ったら札幌に出ているというから。お母さんに番号を教えてもらったよ」
 
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「へー。でも母にはるみちゃんの兄とか言ったんですか?」
「もちろん留実子の姉と言ったよ」
「まあ、そうですよね」
 

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やがて注文の品が来て食べ始める。敏美さんがチキンステーキをナイフで切りながら、ふと言う。
 
「私さあ、子供の頃、こういう鋭利な刃物を見る度に、それでおちんちんを切ることを連想していた」
 
「私もそうですね」
と千里も言う。
 
「こうして実際にお肉とか切る時は、お肉を切りつつ、自分のおちんちんを切るような気持ちで切ってるのよね」
「分かります、分かります」
 
「25-26歳くらいまでには手術したいんだけどね〜」
「敏美さん、去年列車の中で話した時に3年後に私が性転換手術するだろうと言いましたよね。どうしてですか?」
「そんなこと話したっけ? 記憶無いけど」
「そうですか。。。私の記憶の変容かな」
 
「でも千里、霊感が強いみたいだから、その時3年後と聞いた記憶があるのなら、それは本当なんだよ、きっと」
 
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「あぁ、そうかも」
「まあ中高生のバイトはたかが知れてるけど、大学に入ったら頑張って本格的にバイトしてお金貯めなよ」
「はい」
 

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