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■女の子たちの間違い続き(4)

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そこに留実子のお兄さん(お姉さん?)がやってきた。
 
「やっほー!」
と明るい声で挨拶して、留実子の隣に座る。でも可愛いワンピースを着ているし、髪も肩まである。少なくとも男性には見えない。そして千里はその人に見覚えがあった。
 
「あ!こないだの!」
と千里は声を上げる。
 
「うんうん。千里ちゃん、こんにちは。あれ5月くらいだったっけ? 留萌から深川に行く列車の中で一緒になったね」
と留実子のお兄さん(お姉さん?)。
 
「はい、その頃です。こんにちは」
 
千里はあの時の記憶があやふやだったので、夢でも見ていたのだろうかと思っていたのだが、あの女性が実在したということ自体に驚いていた。
 
「久しぶり、敏ちゃん」
と花江さんが声を掛ける。
 
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「お久〜、花ちゃん」
と留実子のお兄さん(お姉さん?)。
 
「あぁ、まあそういう訳で、うちの変態兄貴の、敏数です」
と留実子が紹介する。
 
「変態ってひどーい。自分も変態な癖に」
と俊和さん。
 
千里は、留実子の両親は頭が痛いだろうなと思った。田代君は呆気にとられている。
 

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「でもるみちゃんが男物の服の調達に結構苦労していた理由が分かった」
と千里。
 
「まあ、私は学校の制服以外では男物は着ないから」
と敏数。
 
「あ、そうだ。学生服の小さくなったの、頂きました。ありがとうございます」
と千里はお礼を言う。
 
「取り敢えずタンスの中の男物の領域を多めに見せようと取っておいたんだけどね。千里ちゃんに1つと、変態妹に1つあげたから、少なくなった」
 
「何なら、千里、サイズの合わない男物があったら、兄貴に渡して。そしたら領域が調整できる」
と留実子。
 
「じゃ、今度持って来ます。でも、私も女物が多すぎると妹に指摘されてて」
と千里。
 
「あらあら、どこも面倒ね〜」
と敏数は言う。
 
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「でも手術うまく行くといいわね」
と敏数。
 
「まあ、私としては失敗してもいいけどね」
などと花江。
 
「まあ失敗したら、潔く女の子になっちゃうという手も」
などと敏数。
 
「うんうん。でもそれだとるみちゃんに振られちゃう」
と花江。
 
「留実子、女の子同士の恋愛も楽しいよ」
と敏数。
 
「女の子には興味無い」
と留実子。
 
「あれ? 敏数さんは、美容師志望でしたっけ?」
「そそ。高校出たら美容師の学校に行くよ」
 
「それって・・・やはり、男の美容師じゃなくて、女の美容師になるんですね?」
と田代君が訊くが
「まあ、私は男には見えないだろうね」
などと敏数は言い
「敏数さんじゃなくて、敏さんくらいで呼んでもらうといいかな」
などと言う。
 
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「じゃ、そうします」
と田代君。
 
田代君にしても千里にしても「お兄さん」とは呼べないが「お姉さん」でいいんだろうか?と、少し呼び方で悩んでいたのである。
 
「敏さんは今、どこの高校でしたっけ?」
「ん?地元のS高校だよ」
「あれ? でもS高校でその髪型でいいんですか?」
「ああ。これウィッグ」
「へー!」
 
「高1の4月に髪を切ったっきり、6月も7月も切らずにおいて、生活指導から注意されても頑張って抵抗して、夏休みいっぱい更に髪を伸ばして、2学期になる直前に髪を切ったんだけど、その時、切った自分の髪でウィッグを作ってもらったのよ」
「へー!」
「だから、これウィッグではあるけど、自毛なんだよね」
「凄い」
 
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「千里ちゃんも、もし髪を切らなきゃいけなくなったら、その手を使って、自分の髪を保存するといいよ」
と敏数。
 
千里は返事はできなかったが、ちょっと溜息を付いた。
 
「千里は今、神社で巫女さんのバイトしてるんだよ。それで巫女さんは髪が長くないといけないということで、許可もらって長い髪を維持してる」
と留実子が説明する。
 
「おお、凄い。でもよく男が巫女さんのバイトという話が通ったね」
「バレてないだけのような気がします」
「まあバレたらバレた時だね」
「ですね」
 
「あれ?敏さん、今日は札幌に用事とかあったんですか?」
「ああ、高校卒業前に性転換手術受けようかなと思って」
 
「え!?」
とみんな驚くが
 
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「と言える日が来るといいなあ」
などと敏数は続ける。
 
「びっくりした」
 
「敏ちゃんのは手術しますします詐欺だな。中学生の頃から、近い内に性転換手術受けると言ってたよ」
と花江さん。
 
「まあ希望は希望で。で、今日は本当は旭川に行く用事があったんだよ。それで学校早引きして出て来たんだけど、深川で電車乗り間違えちゃってさ」
 
「あらら」
「次は滝川、と言われて気付いた。でもどうせだから札幌に出ちゃおうと思って」
 
「旭川の用事は良かったんですか?」
「今日の最終便で旭川に入る」
「なるほど」
 
「じゃ、兄貴、今日は旭川で泊まり?」
「そそ。花和敏美でホテルの予約入れといた」
「まあ兄貴、女の声で話せるから、まさか男とはバレないだろうね」
「ふふふ」
 
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敏数がチラッと千里に視線をやる。ドキっとする。そうなのだ。千里はその声が女の人の声にしか聞こえないので、まさかまだ声変わりしてないのだろうかなどと思っていたのだが、留実子の発言で、敏数が「女の声も」出せるのだということを知った。凄い。見習いたい。あ、でもこないだ汽車の中で話したのが、その基本なんだ!
 

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しばらく話している内に、そろそろ手術が終わる時刻かも、ということで食堂を出て病室に戻ってみるが、まだ鞠古君も、御両親も戻ってきていない。
 
それで待っていたが、なかなか戻って来ないので留実子がしびれを切らした。
 
「ね、手術室の所に行ってみては駄目かなあ」
「うーん。家族ならいいんだろうけどね」
 
ということで、お姉さんと留実子、それに留実子が不安だから付いてきてと言った千里と3人で手術室のフロアに行ってみる。田代君と敏数さんがお留守番である。
 
エレベータを降りて、手術室のある方へ歩いて行く。その時、目の前で手術中のランプが消えた。
 
ハッとする留実子。
 
3人とも立ち止まる。ドアが開いて医師が出て来た。
 
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「ご家族の方ですか?」
と医師。
 
「はい」
とお姉さんが答える。
 
「大変お気の毒なのですが・・・・」
と医師が言うので
 
「えーーー!?」
と留実子が声を上げた。お姉さんも顔色が青くなっている。千里は留実子の手を握った。
 
その時、
 
「おーい、こっちだよ」
という声。
 
見ると、向こうの方にも手術室があり、そこのソファに鞠古君のお父さんとお母さんが座って、手を振っている。
 
「あ・・・」
「え?」
 
「あのぉ、**さんのご家族では?」
と医師。
「違います」
 
「私たち、向こうの方の家族です」
と千里が言う。
 
それで勘違いであったことが分かり、留実子と千里、鞠古君のお姉さんはそちらの手術室の方に移動した。今千里たちに声を掛けた医師は、入口の方に行き、そちらに居た年配の看護婦を捕まえて
 
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「心臓外科の****さんの家族を呼んできて」
と言っていた。
 

「ちょっとびっくりした」
と言って、お姉さんがお母さんたちの横に座るので、留実子と千里もその隣に座った。
 
「まあ、おちんちん切るくらいで死ぬ人いないんじゃない?」
などと留実子は言うが
「でも性転換手術で死ぬ人とかは、たまに居るらしいよ」
などとお姉さんは言う。
 
ふたりとも一時は顔面蒼白だったので、わざとそういう話をしている感じだ。
 
「向こうは結構な年のお婆さんだったみたいよ」
と鞠古君のお母さんが小さな声で言う。
 
「へー」
「心筋梗塞か何かかねぇ。30分くらい前に運び込まれて来たけど、お医者さんが最初から難しい顔をしていた」
「でもお医者さんって、いつも難しい顔してません?」
「そうかも!」
 
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「あっかるいお医者さんってのも何だか怖いです」
「確かに」
 
10分もしない内に、こちらの手術室のランプも消え、少し経って医師が出てきた。
 
「先生、どうでしたか?」
とお母さん。
「手術は成功ですよ」
と医師。
 
「良かった」
 
思わず留実子と千里は手を取り合う。
 
「成功と言うと、弟は無事、女の子になれました?」
などとお姉さんが言う。
 
「あ、いや、お気の毒ですが、ペニスは付いたままです。途中結局慎重を期して長さ3cmほど切りましたが、その前後をくっつけましたので。神経などもちゃんとつないであります。ただ、どうしても傷が治るまでは物凄く痛いはずです」
と医師。
 
「まあ、敏感な場所ですからね」
と留実子は言う。
 
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まだ全身麻酔が掛かったままの鞠古君がストレッチャーに乗せられて手術室から出てくる。みんなで付き添って病室に戻った。
 
田代君が
「どうだった?」
と訊くので
 
「ああ。無事おちんちんは全部無くなって、女の子になったよ」
などとお姉さんが言う。
 
「嘘!」
と田代君が驚いているが
 
「嘘、嘘、おちんちんは3cm短くなっただけ」
と留実子が笑って答えた。
 
「びっくりしたー」
と田代君。
 
「私たちもびっくりしたね」
と留実子が千里を見て言う。
 
「ほんとほんと」
「何びっくりしたの?」
「おちんちんが麻酔に酔ってダンスしてたからね」
「はぁ!?」
 

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鞠古君は1時間もしない内に意識を回復した。
 
「手術は無事終わったから大丈夫だよ」
とお母さんが言う。
 
「俺のチンコは無事?」
「うん。無事きれいに切り取って、ホルマリンに漬けて保存してあるから」
「切り取ったって?」
「あれどこに飾ろうかねぇ。切った後はちゃんと割れ目ちゃん作って女の子の形にしたからね」
「えーーー!?」
「性別変更の申請書も書いといたから。明日にも市役所に提出するね」
「うっそー。俺女になっちゃったの?」
 
「嘘嘘。3cm短くなっただけ」
「良かったぁ」
 
と鞠古君はほんとにホッとしたような顔をした。
 
「でもホントに性別変更できるようになったんだろ?」
と田代君が言う。
「ああ。こないだ何か法律が成立したよね」
とお姉さん。
「あれ、施行は来年なんだよ」
と千里が言う。
「でも、病気とかで性別を変更することになった場合は、あの法律とは関係無く法的な性別は変更できるはず」
と留実子が言う。
 
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「でも3cm短くなったんじゃなくて、3cmに短くなったんだったら、立っておしっこできなくなる所だったね」
「まあ、その時は座ってすればいいんだよ」
 
「座ってした方が便器を汚さなくて良い」
「お婿さんには行けないかも知れないけどね」
「その時はやはりお股の形を整えて、お嫁さんになる道を」
 
「あのさぁ、母ちゃんも姉ちゃんも、手術受けたばかりの患者をいたわる気持ち、ねぇの?」
「あ、そうそう。麻酔が完全に切れたら、もういいから切り落としてくれと思うくらいの痛みが来るらしいから」
「やだなあ。でもチンコ無事なら、痛みは我慢するよ」
 
チンコ痛がっている所を恋人にはあまり見られたくないよ、と田代君が言い、実際問題として本人は元気そうなので、引き上げることにした。
 
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「どのくらい入院するんですか?」
「傷の回復次第らしいけど、来週の半ばくらいまでじゃないかな」
 
「じゃ、また土日にお見舞いに来るよ」と留実子。
「お大事にね。ちゃんと節制してね」と千里。
「女の子になれなくて残念だったね」とお姉さん。
「まあオナニーすんなよ」と田代君。
「田代、お前も一回チンコ切ってみる?」と鞠古君。
 
 
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