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■女の子たちの間違い続き(2)

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みんなでホテルに行き、鞠古君のお母さんが「予約していたのですが」と言って名前を告げる。
 
「はい。ツイン2部屋で承っております」
とフロントの人。
 
「え?シングル4つじゃなかったですか?」
とお母さんが訊くが
 
「いえ。ツイン2つになっておりますが」
とフロントの人。
 
思わず、千里たちと顔を見合わせる。
「あのぉ、シングル4つに変更できませんか?」
 
「少々お待ち下さい」
 
フロントの人は奥の方に入って予約の状況を確認していたが
「申し訳ありません。本日は満員で他に部屋の空きがないのですが。今日明日、学会が行われていて、系列の他のビジネスホテルも満杯のようでして」
と答えた。
 
「どうする?」
とお母さんが言うが、決断力のある留実子が
 
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「そのツイン2つでいいです」
と言ったので、お母さんも宿帳にサインして鍵を受け取った。
 

荷物をとりあえず全員片方の部屋に放り込み、ホテル近くのファミレスに夕食に出る(宿代・夕食代は鞠古君のお母さんのおごり)。
 
「でも病気の方は新薬がほんとに良く効いたみたいで良かったですね」
と千里は言った。
 
「ほんとほんと、一時はどうなることかと思ったよ」
とお母さんは言う。親としてもここ数ヶ月はほんとに大変だったろう。
「あの薬は腫瘍も縮むけど、おちんちんも縮む可能性があるということだったんだけど、腫瘍だけ縮んでおちんちんはあまり縮まなかったみたい」
とお母さん。
 
「まあ8cmあればセックスには使えるらしいですから、余裕の長さですね」
と留実子が言う。
 
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「いや、鞠古にはチンコ縮んで無くなったら女になればいいとか冗談言ってたけど、今回のはまるで自分のチンコが切られる話みたいで、むずかゆかったですよ」
と田代君が言う。親友として彼もかなり心を痛めていたのだろう。
 
「ところでさ。さっきから考えてたんだけど、俺たちどういう組合せでホテルの部屋に入ればいいと思う?」
と田代君が訊いた。
 
「男が2人、女が2人だから、どうにかなるとボクは瞬間的に思ったんだけどね」
と留実子が言う。
 
「それさぁ、男は誰と誰で、女は誰と誰なんだっけ?」
と田代君が訊く。
 
「うーん」
と言って千里も、鞠古君のお母さんも悩む。
 
「田代君は男、お母さんは女でいいですよね」
と千里。
 
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「まあ、俺は女ではないな」
と田代君。
「でも村山は男なのか女なのか、花和は男なのか女なのか」
 
「見た目の性別で分類すると、田代君とるみちゃん、私とお母さん」
と千里。
 
「戸籍上の性別で分類すると、田代君と千里ちゃん、私とるみちゃん」
とお母さん。
 
「俺もそれ両方考えてみたけど問題がある。多分、いちばん問題が無さそうなのは、俺とお母さん、村山と花和」
と田代君。
 
「あぁ」
と千里も留実子も納得の声を上げる。
 
「田代君の案がいちばん無難な気がする」
ということで、それが採用された。
 
「見た目でも戸籍上でも男女の組合せではあるけど、ほとんど問題が無い」
 
「田代君とるみちゃんの組合せも、田代君と千里ちゃんの組合せも、着替える時に困るよね?」
とお母さん。
 
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「俺と、鞠古のお母さんなら親子みたいなもんだから問題無い」
と田代君も言う。
 
千里と留実子はお互い性別問題を抱えている同士でもあり、小さい頃からの親友でお互いの下着姿もしょっちゅう見ている。留実子が男物のシャツにブリーフを穿いているのも、千里がブラジャーにショーツを穿いているのも、お互い見て全く気にならない。お互いに、ある意味では女同士であり、ある意味では男同士なのである。
 
ひとつ違うことと言えば、留実子は小学4年生で生理が来て、現在バストはBカップサイズもあって確実に女として身体が発達してきているのに対して、千里はいまだに精通も声変わりも来ておらず、男の身体にはなっていないことであろう。
 
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「だけど、あんたたち、修学旅行とかどうしたんだっけ?」
 
「学籍簿通りですよ」
「るみちゃんは女子部屋だったし、私は男子部屋だったね」
 
「村山が着替える時は同室の男子は全員後ろを向いていたらしい」
「違うよ。ベランダと部屋との間の襖を閉じて、ベランダで着替えたよ」
「ふむふむ」
 
「まあ、そもそも千里は消灯時間の直前まで女子部屋でおしゃべりしてたね」
「なるほど」
「本来、男子は女子の泊まっているフロアへは立入禁止だったんだけど、村山は黙認されてたな」
 
「お風呂は?」
「るみちゃんは女湯に入ってるよね?」
「うん」
「私は男湯に入ったし」
 
「花和が女湯に居たのは蓮菜(田代君の彼女)から聞いてるけど、村山が本当に男湯に入ったのかは疑問だな。後から聞いたのでは、男子では誰も村山を男湯の中で見てない」
と田代君。
 
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「すぐバレる嘘はよくないなあ」
と留実子からまで言われる。
 
「そのあたりはみんな追求したそうにしてた」
「ごめん。実はお風呂入らなかった」
「それも嘘っぽいけどなあ」
 
「だって中1にもなって、おっぱい全然無いから、女湯にはもう入れないよ」
などと千里は言ったが
 
「《もう入れない》ということは、かなりの年齢までは女湯に入ってたんだな?」
と突っ込まれる。
 
「えっと・・・」
 
「4年生のキャンプ体験でも女子と一緒に入った可能性が高い。5年生の宿泊体験の時は、明確に女子たちに女湯に強制連行されていた」
と田代君が言う。
 
お母さんは笑っている。まあ、その連行した主犯が蓮菜だからなぁ。
 
千里はこの7月にも女湯に入ったのを蓮菜に知られているのだが、そのことは田代君に言ってないのだろう。
 
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「ところで占い師さん、知佐の手術が無事終わるかどうか占ってもらえません?」
とお母さんは言った。
 
千里はこの春から町の神社で巫女さんのバイトをしており、占い師の見習いにもなっている。失せ物とかを結構当てるので、その関係を担当している。
 
「そういうのは占ってはいけないと言われてるんですけど」
と千里は言う。
 
古くから占い師は《盗病死》を占ってはいけないとされている。しかし《盗》は問題外としても病気に関する占い依頼はひじょうに多いのも事実である。千里は貴司のお母さんからも言われているのでかなり渋ったのだが、鞠古君のお母さんが、特別にお願い、ここだけの内緒、などと言うので、占ってみることにした。
 
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十円玉を3枚、手の中で振る。それを取り出して表と裏の出た数を見て記録する。千里はこの動作を6回繰り返した。表が出た枚数は順に、133222であった。
 
「地天泰(ちてん・たい)の二三爻変(にさんこうへん)。手術は成功しますよ」
と千里は言った。
 
「十円玉で分かるんだ?」
「これは筮竹(ぜいちく)で言うと十八変筮と呼ばれる、易の教科書によく載っている方法をコインで実行したもの。3枚のコインを6回使っているから18変なんだよね。普通は、もっと簡易な十円玉5枚と百円玉1枚で一発で出す略筮というのをするんだけど、ここは慎重にやってみた」
 
「なるほど」
 
「地天泰という卦は上に女、下に男があるんです。女性上位が安定するんですね」
 
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と言って千里は地天泰の図形(:::|||)を描いてみせた。そして下から2番目と3番目の陽爻(|)の横に小さな○を書く。
 
「ほほぉ」
「大吉の卦だから、昔の易者さんはこの易卦を看板にしてたんですよ」
 
「ああ、そういえばそんなの看板に出てたような」
 
「男は天に昇りたがる。女は地に足を着けたがる。だからこの配置はお互いに近づこうとして安定するんです」
「なるほど」
 
「今回の治療は男をやめていったん女にならないといけないから、それにふさわしい卦だと思います。実際2つも陽爻が陰爻に転じている。ホルモン的に女になることと、おちんちんを切ることに相当するんでしょうね。そして之卦(しか)が地雷復(ちらい・ふく)で復活。ちゃんと回復します」
 
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と言って千里は隣に復の図形(:::::|)を描く。
 
「地雷復という卦は冬至を表す卦で、今は太陽は低い位置にあるけど、これからどんどん高くなっていくということ。今は陰爻が5つもあってほとんど女だけどこれからどんどん男に戻っていくということですよ」
 
と言いつつその復は自分の今の状態を表すような気もした。今は女の子しているけど、これからやはり男になってしまうんだろうなと思う。それは一種の諦めの境地でもある。
 
「うん。女になれと言われても、後で男に戻れるというのがミソだよな」
と田代君が言う。
 
「まあ、ふつうは性転換は1回だけだから」
と留実子。
 
「ふつうは野球の選手交代みたいなもんだよね。いったん下がったらもう出場できない。鞠古の場合はバスケの選手交代みたいなもんだな。いったん下がるけど、また出場できる」
と田代君。
 
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野球と聞いて千里は元彼の晋治のことを思い起こす。野球が得意な晋治は中学では敢えて野球部には入らずに身体の基礎的な力を上げるために陸上をすると言っていた。そして高校から野球部に入ると言っていた。T高校の野球部は甲子園にも出たことがある強豪だ。しかし中学2年になった昨年、彼は助っ人を頼まれたことから結果的に野球部に入ってしまった。現在は陸上部と野球部の兼部状態である。
 
そして鞠古君が新しい治療法を受けられることになったのも医学部を目指していて元々医学医療関係の知識が豊富な晋治がセカンドオピニオンを取った方がいいと言ってくれたことがきっかけである。
 
「俺も1日だけ女になれるなら、なってみたいけどな」
と田代君が言う。
 
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「1日だけ女になって、田代何するのさ?」
と留実子が訊く。
 
「そりゃ、女子トイレや女子更衣室に入ったり、女性専用電車に乗ったり、女湯に入ったりするに決まってるじゃん。女湯に入ったら女の裸見放題」
 
などと田代君。蓮菜が居たら殴られてるなと千里は思った。
 
「女の子として男性とセックスしてみたいとかは?」
と留実子が大胆なことを訊く。
 
「セックスは女はあまり楽しくなさそうだからいいや。やはり男の方が楽しいんじゃないかな」
 
と田代君は言う。
 
「どうなんでしょうね?」
と留実子は言って鞠古君のお母さんを見る。
 
「うーん。両方経験できる人は少ないから、分からないよね」
とお母さんは言った。
 
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「だけど、知佐、精子の保存が早くできたから、治療も早く始められて良かった」
とお母さんは言った。
 
この病気治療のために使った薬は生殖能力を消してしまうのでその前に精液の採取をして冷凍保存することになったのだが、医者が懸念したのが、鞠古君が、前の病院の治療方針で、5月から月2回、エストロゲンとプロゲステロンの混合製剤を注射していたことである。
 
鞠古君が札幌の病院を訪れた6月上旬の時点で、その注射は既に4回もしていた。普通ここまで注射すると、男性機能はかなり低下し、ほぼ死んでしまう場合もある。ところが、鞠古君は最初から精液の採取ができたし顕微鏡でチェックしてみると精子も元気だったので、精子の保存は6月中に終わりすぐ新薬の投与を始めて、約2ヶ月の投与で腫瘍は劇的に小さくなった。それで9月上旬に手術することができるようになったのである。
 
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「多分、知佐君の身体が女性ホルモンをあまり受容しない体質なんだろう、と先生は言ってましたね」
と留実子。
 
「うん。それで手術後に投与する女性ホルモンの量をもしかしたら調整する必要があるかも知れないって先生、言ってた」
とお母さん。
 
その件について、今日の誤注射騒動の後で、千里と留実子に鞠古君は一緒に
「叱られるので母には言わないで欲しいが、実は女みたいな身体になりたくないから女性ホルモンの注射はサボっていた」と主治医には告白している。
 
でないと、今お母さんが言ったように、女性ホルモンの効きが悪いからと、手術後の治療で増量して女性ホルモンを投与されてしまう危険があると留実子が指摘して、ちゃんと話したのである。主治医は笑っていた。
 
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「もしかして、その時も、君が代わりに打たれていたりしない?」
と医師は千里を見て言った。
 
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