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■女の子たちの強化合宿(2)

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渡り廊下を渡り本館に戻ったところで別れて留実子と千里は自分たちの部屋に戻った。
 
「あれ?一緒に戻ってきたんだ?」
と美那。
 
「うん。お風呂出たところでバッタリ会ったんだよ」
と留実子が言う。
「ああ、なるほどね」
 
「千里はその髪洗うのに時間が掛かるでしょ?」
「うん。からまないように丁寧にシャンプーして、トリートメントして」
「ああ、大変そう」
 
「でもヒバの香りの浴槽が気持ち良くて、リラックスして少しぼーっとしてたかも」
と千里。
 
「ボクの方は、関西から来た女子大生2人組と話が盛り上がっちゃって。レンタカーでのんびりと北海道の旅をしているらしい」
と留実子が言った。すると千里が
 
「あの人たちと粉物の話でも盛り上がったよね。お好み焼き、たこ焼きは分かるけど、イカ焼きってのもあるのねー」
などと言う。
 
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美那が困惑している。留実子が頭を抱える。
 
その時、部屋の障子が開いて「失礼します」と言って民宿の女将さんが入ってくる。
 
「これ、あんたたちに秘密の差し入れ」
と言って、お手製っぽいパウンドケーキを皿に盛ってテーブルに置いてくれた。
 
「わあ、美味しそう!」
「ありがとうございます」
「いただきます」
 
とみんなそれに飛びつく。
 
「あんたたち、もうお風呂は入った?」
と女将。
 
「入りましたー」
と一同。
 
「うちの風呂は、一方はヒバの浴槽で、もう一方は熔岩の浴槽で、1日交替なのよね。今夜は女湯がヒバの浴槽だけど、明日は女湯が熔岩の浴槽の方になるから、明日は熔岩風呂を楽しんでね」
 
と女将が言う。
 
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女将さんが下がってから美那が言う。
 
「ね、千里、さっきヒバの浴槽が気持ち良かったと言ってたよね?」
 
「あ、うん」
「つまり、千里はヒバの浴槽のあるお風呂に入ったんだっけ?」
「あ、そうかな」
 
「うん、ヒバの風呂と熔岩の風呂があるというのはお風呂の中にも書いてあったよね」
と恵香が言うが、笑っている。
 
「ということは、千里は女湯に入って、女子大生とたこ焼きの話をしたんだ!?」
と美那。
 
しかし蓮菜は言った。
「千里が女湯に入ることは、分かってるじゃん。今更だよ」
「そうだっけ?」
 
「だいたい修学旅行でも、宿泊体験でも、みんな千里と一緒にお風呂入ったじゃん」
と玖美子も言う。
 
「あ〜?そういえば、修学旅行の時に、お風呂の中で千里と話した記憶がある」
と美那が言う。
 
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「うん。確かにおしゃべりしてた。宿泊体験の時も」
と恵香。
 
「だったら全然問題無かったのか」
「なんで今まで忘れてたんだろう?」
 
と恵香と美那は言っていたが、留実子はまだ首を傾げていた。
 

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布団は勉強が終わってから自分たちで敷きますと言っておいたので、布団が6組、押し入れに用意されていたのを夜10時になった所で敷いた。
 
「恵香が千里に夜這いを掛けたいような顔してるから、私がその間に寝るよ」
と蓮菜が言う。
 
「るみちゃんが窓側の上に寝ると良い気がする」
と美那。
 
「ということは、上に、るみちゃん・美那・くみちゃん。下に千里、私、恵香という配列でいいかな?」
と蓮菜。
 
「ああ、それが平和的という気がする」
と留実子。
 
留実子と千里が窓際というのは、みんな考えていたようだが、留実子が下に寝ると《男の子である留実子》が《女の子である千里》の足を見る形になるので、留実子を上にした方が良い、という蓮菜の判断であった。
 
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「じゃ、おやすみー」
「個人的な恋愛は構わないけど、他の子の迷惑にならないようにすること」
「避妊はしっかりしとけよ」
「でもこの場には精子持ってる子が居ない気がするよ」
「確かに、確かに」
「でも寝た方がいいぞ」
「また明日も頑張ろう」
 
と言って消灯して寝た。
 

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翌日は数学と理科をやる。ここの学力は、玖美子>蓮菜>美那>千里>恵香>留実子なのだが、数学に関しては千里が特に図形問題や文章問題をスイスイ解くので、玖美子も「あ、そうか。そちらの考え方の方が正しい」などと言ったりしていた。
 
「千里、わりと理系女子かもね」
「でも演繹的に解くんじゃなくてむしろ直観的に解いてる」
「そうそういきなり本質を見抜く」
「千里は勘が良いよ」
「犬の糞とか落ちてても無意識に回避してる感じだよね」
「そして千里が回避した糞を美那が踏んでいる」
「うん。私、霊感ゼロだと思う」
 
「蓮菜は帰納的に解いてる感じだよね」
「そう。だから答えは分かっても計算式が分からないことがよくある」
「それもやはり勘が鋭いんだと思う」
「私はその手の新しいものを見つけ出すのが苦手なんだよなあ」
と玖美子が言う。
 
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「勘といえばるみちゃんも勘が強いよね」
「分からない所を山勘で答え書くと、だいたい合ってる」
「それは物凄く羨ましい」
「佳美とか山勘は全部外れると言っていた」
「全部外すのも、ある意味凄い」
 

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2日目のお風呂は、千里も女湯に入るようだというので、ちゃんとひとりずつ交替で行ってきた。
 
「熔岩のお風呂ってもっとワイルドなもの想像してたけど、わりと普通だった」
と千里が言ってたので、念のため玖美子が訊く。
 
「他に人いた?」
「うん。50代くらいのおばちゃんが4人。四国から来たって言ってた」
「へー」
 
「おじちゃんじゃなくて、おばちゃんなのね?」
「おっぱいあって、アルトボイスだから女の人だったと思うなあ」
 
「千里はおっぱいあるんだっけ?」
「えへへ。どうかな?」
 

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3日目は前半英語をやる。蓮菜が美しい発音をするので、みんな聴き惚れる。
 
「どうやったら、そんなきれいに発音できるの?」
「たくさん英語を聞けばいいんだよ。私は洋画のDVDを英語モードにして聞いてる。あと、NHKの基礎英語を聞いてるよ」
「何それ?」
「毎朝6時からやってるんだよ。ラジオ第2放送」
「ああ、ラジオなんだ」
「ラジオならタダだし聞こうかな」
「朝ちゃんと起きるのにもいいしね」
「なるほど、なるほど」
 
「千里の発音も悪くない気がする」
「むしろアメリカ人っぽい」
「近所に外人さんが住んでたからかなあ。結構英語教えてもらった」
 

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最終日の後半は、過去の模試の問題をみんなで解いた。
 
「でも、みんな、高校はどこ考えてるの?」
 
「私は札幌南高校」と玖美子。
「私は旭川の公立ならA高校、私立ならE女子高」と蓮菜。
「私は公立しかダメと言われてる。旭川J高校に行きたいけど、無理ならM高校」
と美那。
「私も旭川行きたいけど、下宿できそうな所がないのよね。女子寮のある所でN高校かE女子高に行きたいけど、頑張らないと厳しい」
と恵香。
「ボクは旭川とかまで行く頭無いし、素直に地元のS高校」
と留実子。
 
「いや、るみちゃん、この3日間やってて思ったけど、理解力はある」
「そうそう。単に今まで勉強してなかっただけだよ」
「勉強すればかなり成績良くなると思うよ」
「うんうん。頑張ってごらんよ」
 
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「私も旭川に出たいなあ。E女子高にも憧れるんだけどね」
と千里が言うと、美那が悩んでる。蓮菜は笑っている。
 
「入れてくれないかも知れないから、N高校か。でもうちの家計が厳しいかもしれないのよねー。ここの所、水揚げが落ちてるみたいだし。私立はダメと言われたら、旭川の公立でM高校かW高校あたりかな」
 
「美那も千里も旭川の公立高校ならA高校を目標にしようよ」
と蓮菜が言う。
 
「うん。できるだけ高い目標持って頑張った方が、最終的にランク落としたとしても、そこそこの所に行けるんだよ」
と玖美子も言う。
 
「まあ千里は、精密検査を受けて医学的に女子であるという証明書を取って、E女子高に入れてください、と言う手もあると思うよ」
と恵香。
 
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「ああ、精密検査受けさせたいねー」
「ほんとほんと」
 
「多分千里は女の子としてふつうに一般生活を送れるもん」
「女子高生できる気がする」
「というか、今でも女子中生できる気がする」
「というか、実際に女子中生している気がする」
 
「なんか法律上の性別、変更できるようになるんでしょう?千里、変更を申請してみたら?」
 
などという声も出ていたが、蓮菜はおかしそうにしていた。
 

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ところで千里は、この春に、ボーイフレンドの貴司のお母さんに見初められて、お母さん(以下細川さん)が勤めている神社の巫女としてバイトを始めていた。細川さんは占いの名手でもあるので、千里に巫女さんの基本的な仕事の他に占いも教えてくれた。
 
占いは、大雑把に言って、その人の名前や生年月日などで占う「命(めい)」
と呼ばれるもの(四柱推命・九星気学・占星術など)と、何かの道具を使用して占う「卜(ぼく)」と呼ばれるもの(易・タロット・亀卜など)、そして顔や手、また家などの形から占う「相(そう)」と呼ばれるもの(人相・手相・家相など)に分類できる。
 
千里が習ったのは「卜」系統のもので、千里は結構な霊感を持っているので、こういう占いが相性が良いと言われた。それで最初に習ったのが易(えき)である。易にも周易・漢易(断易)・梅花心易などがあるが、まずは基本の周易を習った。それで筮竹(ぜいちく)やコインなどを使用して易の卦(か)を立てる方法を教えてもらった。
 
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千里は特に失せ物(うせもの)の占いに才能を見せた。
 
練習を兼ねて貴司のお母さんが
「こないだから指輪が見つからなくて困っているんだけど探せる?」
 
と訊いたので千里が筮竹で卦を立てると雷風恒の上爻というのが出た。
 
「爻辞が《振くこと恒なり》。何かいつも動いているものの所にありますね。時計とか?振り子時計みたいな大きなもの」
 
と千里が言う。それでその日細川さんが帰宅してから居間の掛け時計の近くを探すと、本当にそこに落ちていたのである。
 
「千里ちゃん、ありがとう! 嬉しい! 個人的に御礼したい」
 
などと言うのでバスケットシューズを買ってもらった。千里は家が貧乏でバスケットシューズなんて買えないので、これまで体育の時間に履くシューズでバスケの練習をしていたのである。
 
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「霊感のある人にも、色々なタイプがあってね。いわゆる霊能者型は霊的なものをコントロールする力を持っている。これは元々の才能に加えて、小さい頃から特殊な修行をしていた人だけがなれる。才能があっても普通そんな修行とかまでしてないから、こういう人はレア」
 
「多いのがいわゆる霊感人間で、こういう人は霊的なものを見たり感じたりできるけど、見えるだけでどうにもすることができない。でも見えるから色々霊的な相談事を頼まれたりする。結果的に悪い霊的な影響を受けて自分も病んでいく人が多い。概して病弱だったり短命だったりする」
 
「そして実態が見えないのが、千里ちゃんみたいな霊的に守られているタイプ。本当は霊感があるんだけど、自分ではあまり認識してない。千里ちゃん、幽霊見たことある?」
 
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「ありません」
 
「霊感人間だと悪霊とかが居た場合に、いちいちそれに気付いてしまうけど、千里ちゃんみたいなタイプは気付かない。代わりに千里ちゃんの守護霊がその悪霊の影響を受けないように、危険な場所に近寄らないようにしたり、簡単な霊的攻撃程度は自動的に跳ね返してしまう。実は占い師にはこの自動防御型が多いんだよ」
 
「へー」
「宗教家になる人には霊感人間が多い」
「ああ、そうかも」
 

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女の子たちの強化合宿(2)

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