広告:俺、オンナのコになっちゃった!?-1)-KATTS-DISTANCE-ebook
[携帯Top] [文字サイズ]

■女の子たちの二次試験(3)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

岡山公演の後はKARIONのライブはアルバム制作のためしばしお休みとなる。その間に千里はいよいよ受験となる。
 
2月20日(金)。千里は朝美輪子の車で送ってもらって旭川空港に行った。明日はいよいよ□□大学医学部の入試(一次試験)があるのである。会社に行く途中で送ってもらっているので、出発の時刻(9:05)にはまだ余裕がある。千里はチェックインして荷物を預けた後、早朝でまだ少ししか開いてないお店をながめていた。
 
8時になるのでそろそろかなと思い、セキュリティの方に行きかけた時、携帯に着信がある。
 
電話番号を見ると、札幌P高校の高田コーチである(U18日本代表のスタッフなのでアドレス帳に登録されている)。
 
「おはようございます」
「おはようございます。村山、ちょっと聞くけど、佐藤と連絡取れてない?」
「玲央美ですか?玲央美とは3日前くらいにメールを交換しましたが」
「何か言ってた?」
「なんかぱーっとすることないかな、と訊くので、花火でもする?なんて言ってたんですけどね」
「うーん。花火の季節って感じじゃないけどね」
 
↓ ↑ Bottom Top

「玲央美、どうかしたんですか?」
「実は、昨日、寮に帰ってないんだよ」
「どこかに大学受験とか就職試験を受けに行った訳では?」
 
「寮の子はみんなそう思っていたみたいなんだけど、佐藤がどこかを受験する予定は無かった」
「実家は?」
「お母さんやお兄さんも彼女とは連絡が取れてない。3日前に村山とメール交換したのなら、それが最後のメール交換かも知れん」
 
千里は何か困ったことが起きているのを感じた。
 
「玲央美は昨日は学校に居たんですか?」
 
「来てない。昨日の朝は寮で朝御飯を食べているのを他の寮生に目撃されている。佐藤はいつも御飯は自分で作ったものを食べていた。あいつ物凄いシビアな栄養管理しているから、他人には任せられないんだよ。それが珍しく食堂で寮母さんに声かけて、寝坊しちゃったから朝御飯もらえません?なんて言って、出してもらっていたんだよ。それでよけいみんな記憶に留めていたんだ」
 
↓ ↑ Bottom Top

「それはなんか変ですね」
「宮野も徳寺も、いちばん馬が合う北見も佐藤と連絡が取れていないという」
 
「警察に捜索願いは?」
「それを出すべきかどうか、今佐藤のお兄さんと話していた所なんだ」
 
「私も心当たりを探してみます」
「うん、頼む」
 

↓ ↑ Bottom Top

千里はこれは緊急事態だと思った。それで《きーちゃん》に頼む。
 
『ごめーん。私の代わりに飛行機に乗って東京に行ってて』
『移動するだけでいいんだよね?試験まで受けろとは言わないよね?』
『さすがに試験は自分で受けるよ。その時刻までには何とかするから』
『わかった。じゃ東京に行ってホテルにチェックインしておく』
『ごめーん』
 
千里は《きーちゃん》と分離し、手荷物検査場に行く《きーちゃん》を見送ると、《りくちゃん》に頼んで旭川駅まで運んでもらった。
 
9:00のスーパーカムイ14号に乗り札幌に向かう。
 
玲央美、燃え尽きたのはいいけど、命まで燃え尽きさせないよね?
 
千里は友人の安否を心配した。
 

↓ ↑ Bottom Top

こういう精神状態では無理とは思いつつも車内でタロットを引いてみる。
 
審判。
 
むむむ。これは物凄くまずいぞ、と千里は思う。
 
ギリシャ十字に展開する。
 
過去・金貨8(達成)、潜在・剣2(均衡)、顕在・悪魔。
 
これを見ると、玲央美は高校バスケットの頂点に到達して、そこで次の目標を見失ったのではないかという気がした。彼女はインターハイとウィンターカップ、そしてU18アジア選手権のMVPを獲得して、まさに高校バスケの頂点を極めた。そんな彼女がまた挑戦心を燃やせる場所がどこかにあるのだろうか。
 
未来・太陽、現在・聖杯10(救済)。
 
彼女には明るい未来がある。しかし、そこに自力で行くことができない。誰かが導いてあげなければいけないのだ。
 
↓ ↑ Bottom Top

千里は今、自分が彼女を見付けなければいけないと確信した。私って巫女だし。人を導くのが仕事じゃん。
 

↓ ↑ Bottom Top

玲央美がどこにいるのかを占ってみる。大中小の占いをする。
 
大のカード・皇帝。
 
千里はそれは「帝の国」ということだと思った。取り敢えず日本国内とみていい感じだ。
 
中のカード・剣4。
 
千里は4つの海に取り囲まれた地域というのを想像した。それは最初北海道だと思った。日本海・オホーツク海・太平洋・津軽海峡。しかし津軽海峡をカウントするなら宗谷海峡もカウントすべきという気がする。
 
どこか4つの海に取り囲まれた島ってあったっけ?
 
本州は太平洋と日本海に挟まれている。四国は太平洋だけに面している。いや、瀬戸内海もカウントすべきか。それなら本州も瀬戸内海に面していることになる。
 
九州か・・・・。
 
↓ ↑ Bottom Top

日本海(玄界灘)・東シナ海・太平洋(日向灘)・瀬戸内海(周防灘)に囲まれている。
 
小のカード・聖杯8。
 
千里は「杯」から黒田節(黒田武士)を想像した。福岡県か?そして8に関わる場所。千里は携帯で福岡県の地図を表示させた。
 
八女(やめ)だ!
 
女の子の玲央美が行くんだから八で女なんだ。
 
でも八で女というと八乙女だよなあ、と思い、美鳳さんの方を向いたら、向こうは慌てて目をそらす。もう! でも見守ってくれているようだなというのを感じると安心する。千里は飛行機の時刻を調べる。新千歳1145-1420福岡という連絡があるので、それを即予約する。今千里が乗っているスーパーカムイ14号は11:01に新千歳空港に到着するので、ちょうど乗れるはずだ。
 
↓ ↑ Bottom Top


千里は一度デッキに行き、念のため玲央美の携帯に電話を掛けてみたものの、「電源を切っているか電波の届かない所に」というメッセージが返ってくる。そこで千里は《夕方までにそちらに行くから一緒に花火しようよ》というメールを送った。
 
『すーちゃん?』
『何?千里』
『先に九州に行ってることできる?』
『行ってもいいけど、私は千里みたいに人捜しはできないよ』
『博多あたりで花火を売っている所を見付けて買っておいてくれない?』
『東京の方が見付からない?』
『花火は飛行機に持ち込めないんだよ』
『なるほどー。じゃ何とか探してみるよ』
『よろしくー』
 
それで《すーちゃん》は千里から分離して大空に舞い上がっていった。その真紅の姿を見て千里は美しいなと思った。
 
↓ ↑ Bottom Top

そうか。私が3年間バスケをやっていた場所《朱雀》はあの子の名前を冠しているんだよなあ。
 

10:55くらいに《きーちゃん》から羽田に着いた旨、連絡があるので、念のため試験会場を下見して、何か連絡事項などが掲示されていないか確認した上で15時すぎにホテルにチェックインしてくれるよう頼む。
 
11:01、千里が乗るスーパーカムイ14号(正確には札幌から先はエアポート102号と名前を変える)は新千歳空港の地下ホームに到着する。2Fに上がってJALのカウンターで航空券を買い、搭乗手続きもする。
 
ふと書店に気づく。見ていたら九州の地図と福岡県の地図が置いてあったので買い求めた。ついでに九州の旅行ガイドも買った。
 
この時、千里は現金が足りないというのを意識した。
 
↓ ↑ Bottom Top

そもそも東京までの往復をするつもりで現金は少し余裕を見て10万円しか用意してなかった。しかし九州まで往復するのが確実になったし、場合によっては玲央美の帰りの旅費を立て替える必要が出てくる可能性もある。千里は少し考えて、新島さんに電話した。
 
「おはようございます。村山です」
と千里は言ったのだが
「あんた誰?」
と新島さん。
 
「村山本人です。声変わりしたんですよ」
「へー。あんたの年齢で声変わりって珍しいね。しかも声質が以前とかなり変わっている」
 
「それで新島さんを見込んでちょっとお願いがあるのですが」
「何だろう?」
「ちょっとお金貸してもらえません?」
 
新島さんはしばらく沈黙していた。
 
↓ ↑ Bottom Top

「あんた、本当に千里?」
「本物ですよー。ニセモノの私とかいるんですか?」
「だって、これオレオレ詐欺のパターンじゃん」
「へ?」
 
と言ってから千里は少し考えた。
 
「本当だ!!」
「やはりあんた詐欺?」
 
「違いますよー。実は親友が失踪して、自殺のおそれもあるので今追いかけている所なんですよ。でも私、そもそも旅行中だったので、あまり現金の手持ちがなくて。常用のスルガ銀行の口座にも今15-16万円しか残高を置いてないんですよね。###銀行の方にはたくさんあるんですが、私うっかり###銀行のキャッシュカードの入っているバッグは荷物に入れて宿泊予定地に送ってしまったんですよ。それでもし良かったら30万円ほど私のスルガ銀行の口座に振り込んでもらえないかと思って。月曜日にはお返ししますから」
 
↓ ↑ Bottom Top

「ふーん。オレオレ詐欺だとツボを割っちゃってとか、彼女を妊娠させて慰謝料に500万必要とか言うみたいだけど、30万か」
 
「詐欺じゃないですよー。困ったな。どうやって証明しよう?」
「まあいいや。あんたのスルガ銀行の口座に放り込む分には他の人が引き出す恐れもないだろうし」
「すみませーん」
「じゃすぐ念のため50万振り込むから。10分後くらいには引き出せると思う」
「恩に着ます!」
「返却は月末に振り込む印税からの天引きでもいいよ」
「わあ、助かります」
 

↓ ↑ Bottom Top

資金の心配が無くなったので、セキュリティを通って出発口まで行く。やがて搭乗案内があるので福岡行きJAL MD-90に乗り込む。最近飛行機の機体がボーイングとエアバスばかりになりつつある中で数少ないマクダネル・ダグラスの機体だ。元はJALに統合されたJAS(日本エアシステム:旧東亜国内航空)が使用していたものである。
 
千里は機内で地図を見ていて、福岡県の「八女」には「八女市」と「八女郡」があることに気づいた。八女郡には黒木町・立花町・広川町・矢部村・星野村という5町村がある(2009年現在)。これはかなり広い面積である。千里は列車内で占いをした時には大きな地図で見ていたので八女といえば八女市と思っていた。それで「JR八女駅」まで行ったら、極めて個性の強い波動を持つ玲央美のことだから、その波動をキャッチできるだろうなどと甘く考えていたのである。
 
↓ ↑ Bottom Top

ところが、そもそも八女駅なんてものが存在しないことに気づいてガーンと思う。だいたい八女市内を通る鉄道自体が存在しない!
 
これは参った。
 

↓ ↑ Bottom Top

と思った時、千里は今乗っている機体、MD-90というのがヒントになる気がした。《MD90》の数理は13+4+9+0=26=8 である。
 
各市町村の数理を確認する。
やめし(4) くろぎまち(5) たちばなまち(5) ひろかわまち(8) やべむら(8) ほしのむら(5)
 
これを見ると、広川町か矢部村ではないかという気がする。
 
地図を再度確認する。
 
広川町というのは久留米市の南・八女市の北にある。ふたつの大きな町に挟まれけっこう開けているのではないかという気がした。すると、ふらついた気分になった女の子が「流れ着いて」しまうのは、むしろ矢部村ではなかろうか。
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8 
女の子たちの二次試験(3)

広告:Back-Street-Girls-10-ヤンマガKCスペシャル