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■女の子たちの宴の後(7)

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それで千里は脱衣場の中にあるトイレに入り、取り敢えずタックを外した。気が進まないけど、これを見せるしかないかなあ。
 
それで脱衣場に戻る。父はもう浴室に入っているようだ。千里は脱衣籠を取ると、そこで服を脱ぎ始める。まずズボンを脱ぐと、むだ毛など無い細くてアイドルにでもなれそうな白い足が見える。この身体は本格的に身体を鍛える前のものだから、女の身体になって以降のものより華奢なんだよねーと千里は思う。
 
その足を見てこちらを見ていたスタッフさんの目がこちらにロックオンされた感じである。トレーナー・Tシャツを脱ぐとブラジャーをした胸が露出される。近くの客がギョッとしている。あはは。スタッフさんがこちらへ歩いてくる。
 
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千里はブラを外すとタオルを身体に巻き付けて胸から腰の付近を隠した上でパンティを脱いだ。
 
「お客様、お客様、やはり女性ですよね?」
「いえ男です」
「でも胸がありますよね?」
「私、女の子になりたい男の子なんです。だから胸は大きくしてますけど、おちんちんはまだあるんですよ」
 
「え?そうなんですか」
「あまり人に見せたくないから、ちょっとだけ」
と言って、スタッフさんにだけ見えるようにタオルの下端を少し揚げた。
 
「あ、付いてますね」
「すみません。胸は他のお客さんに見られないようにタオルで隠しておきますから」
「分かりました」
 
それでスタッフさんは納得したようであった。
 
嫌だなあ、こんなの。
 
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それで千里はタオルで胸から腰付近を隠したまま浴室に入り、身体の汗を流してから浴槽に入った。
 
「おお、入って来たか」
と言って父が寄ってくる。
 
「でもなんでお前タオル付けたままなの」
「ちょっと恥ずかしいから。ごめーん」
「軟弱な奴だな」
「最近はおちんちんも見られたくないって言って、水着着てお風呂入る人もけっこう居るよ」
「それ女じゃなくて?」
「女ならおちんちんは無いのでは」
「あ、そうか。しかし男はチンコ見せてこそ男だぞ」
 
そうなの!?
 
「お前もチンコくらい堂々と見せろ」
と言って、父はいきなり千里のあそこに触る。
 
ひー!
 
これって絶対セクハラだ!
 
「なんだ。お前まだ剥けてないの?」
 
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などと言って父は指で玉をごろごろさせている。助けて〜!!
 
「大きくなったら出てくるよ」
「そうか。まあ出てくるのなら子供作るのには問題無いな。ほら俺のにも触れ」
と言って父は千里の手を取って、自分のに触らせる。
 
ひぇー!
 
なんでわざわざ自分のに触らせるの? 理解できないよぉ!
 
「まあでもチンコ触りっこしたからいいかな」
などと言って父は取り敢えず満足したようである。
 

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その後、父は30分ほどにわたって、スケソウダラを追って船を出していた頃のことをあれこれ語った。それは漁業には興味のない千里にとっても、それなりに関心を持てるような話だった。凄まじい嵐の中で死を覚悟した時、病人が出て夜の時化た海を何とか航行して近くの港まで行った時、魚群を追っていてつい国境を越えてしまいロシアの監視船に追われて何とか日本領海まで逃げ帰った話など、ひとつひとつが映画のネタにもなりそうと思うほどであった。
 
父はそういう苦労話をしていても何だか楽しそうだった。今は沿岸のホタテ養殖場を回るだけの仕事ではあるものの、父は大海に乗り出した時のことがやはり忘れられないのだろう。
 

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浴室を出て脱衣場に戻った所で父は
「ちょっとションベン」
と言ってトイレに入る。千里はこれ幸いと急いで下着をつけ服を着てしまったが、千里が豊かな胸をさらして、ブラジャーをつけていたら、周囲の客がギョッとしていた。あはは、ごめんなさーい。
 
温泉センターを出て母の車に戻る。母は車の中で寝ていたようであった。
 
「このまま深川まで送るよ」
と言って母は車を高速に乗せた。
 
「しかし、こいつとゆっくり話せて良かった」
と父は満足そうである。
 
「そうかい。良かった」
と言いながらも母は何かをいぶかるかのようである。私がどうやって女体を誤魔化したのか、心配なのだろう。
 
「チンコの触りっこもしたしな」
「あはは、そうだね」
 
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などと会話を交わすと母はしかめっ面をしている。母は恐らく私が既に性転換済であると考えているんだろうなと千里は思った。
 

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1月5日(月)。
 
旭川N高校はまだ冬休みの最中ではあるのだが、この日は登校日となっていた。朝の全体集会で、女子バスケット部のウィンターカップ準優勝の報告が行われた。
 
薫も含めたベンチメンバー16名が銀メダルを付けて壇上に上がる。生徒会長から「第39回・全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会、女子準優勝です」と紹介されると全校生徒から大きな拍手が贈られる。部長の揚羽が代表して、みんなへの応援の感謝を含むメッセージを述べた。
 
ここで教頭先生が発言を求めて言う。
「この快挙に対して、ウィンターカップの選手には今回新設された旭川N高校優秀賞が贈られることになりました」
 
生徒の拍手が鳴り止むのを待って教頭先生は
「この賞のプレゼンターとして、本校のバスケット部には所属していなかったのですが、本校OGで、元レッドインパルス所属、昨年はアメリカの独立リーグWBCBL(Women's Blue Chip Basketball League)のSwift Streamersでプレイしました、蒔田優花さんにお願いしました」
 
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と言う。千里たちはびっくりした。
 
昨年のオールジャパンのMVPになった人である。旭川N高校の出身とは全然知らなかった。
 
蒔田さんが壇上に昇る。
 
「こんにちは。私は実はN高校ではバスケ部に入ろうとしたものの入部テストで落とされまして」
などと言うと、宇田先生が頭を掻いている。
 
「それでN高校では3年間バレー部にいたんですけど、結局そちらでも1度も大会のベンチに座ることができなくて」
 
と言うと、バレー部顧問の山石先生が頭を掻いている。
 
「それで東京のS女子大学に進学してから、やはり私はバスケやりたいなと思って、そこのバスケ部に入って。弱小だったので私でも入れたんですよね。でも運良く1年目で関東3部で優勝して2部に上がって、そこでプレイしている内に注目してもらって、卒業後レッドインパルスの2軍に入れてもらったんです。それから2年掛けて1軍に上がることができて、その後オールジャパンで優勝することができてMVPにも選ばれたんで舞い上がって、アメリカのWNBAに挑戦したんですけど、オールジャパン準優勝で敢闘賞を取って同時期に渡米したサンドベージュの羽良口さんは美事にWNBAに入れましたが、私は契約はしたもののロースターに入れずに、WNBAの試合には1度も出ないまま、すぐ解雇されちゃって、結局独立リーグのSwift Streamersでプレイしました」
 
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と彼女は少しおどけた感じで自己紹介した。人間って挫折を乗り越えて進んで行くんだな、と彼女の自己紹介を聞いていて千里は思った。
 
「WBCBLは春から夏に掛けてがシーズンなので、現在実は無職です。就活中なので、いい仕事先あったら紹介してください」
 
と蒔田さんが付け加えると体育館は爆笑に包まれていた。
 
彼女が薫を含めた16人に1人ずつメダルを掛けて、握手をしてくれる。背番号順なので千里は最後の方に掛けてもらったが、握手した時、凄く力強い握手だと思った。
 

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この優秀賞というのは、名誉賞と殊勲賞の中間のものとして今回新たに創設されたものである。
 
金メッキにダイヤが鏤められた名誉賞、銀メッキの殊勲賞、銅製の敢闘賞という序列に割り込む形で創設された優秀賞は金色の黄銅製で女神の顔が描かれている。この賞の構想自体は夏頃には既にあったものの、制作したのはウィンターカップ準優勝の報が入ってからだろうから、製造した工房さんはお正月返上だったのではなかろうか。お疲れ様である。
 
千里は2年と3年のインターハイ、そして昨年のオールジャパン3P女王で殊勲賞をもらっている。殊勲賞のメダルが3つである。また昨年のオールジャパンはチームとしては敢闘賞をもらっている。また国体で理事長特別賞をもらい、U18アジア選手権優勝・BEST5・3P女王で名誉賞を頂いた。今回優秀賞を頂いたことで、旭川N高校の表彰を5種類揃えたことになる。
 
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わざわざ5種類揃えるよりは、ウィンターカップに優勝して、2つめの名誉賞をもらいたかった気もするけどね!
 

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千里はもらったメダルを裏返してみたが、裏にはちゃんとMS CHISATO MURAYAMA 2008 という名前と年度数も入っている。
 
それを見ていたら、最後にメダルをもらった薫が
「あ、私のMS KAORU KASHIになっている」
と言っている。
 
「ん?何か間違ってるの?」
「いや、ちゃんとMSになってるなと思って」
「ああ。でも薫、女子でしょ?」
「うん」
と言って薫は嬉しそうである。
 
「僕はMRでも良かったけどな」
と留実子が言っているが
「男子だと女子チームに入れないからな」
と暢子が言う。
「そこが悩む所なんだよね〜」
 

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全体集会が終わり、そのあと各教室に戻ってホームルームをした後解散になるが、バスケ部のウィンターカップ・メンバーはいったん職員室前に集合してから理事長室に行って、名誉賞を頂いた御礼をした。理事長さんにはウィンターカップ直後にも一度準優勝の報告をしていたのだが、あらためていろいろお話をした。
 
そのあと、他の女子バスケ部員(引退していた3年生を含む)も入れて、理事長・校長・教頭と一緒に、市内の割烹料理店に行き、あらためてお食事会をした。蒔田さんも一緒である。
 
「昨年度のインターハイの後が海鮮料理店、今年度のインターハイの後が洋食屋さんだったから、今回は和食にしてみた」
と理事長さんは言っていた。
 
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「いや、また美味い御飯が食べられるのも、暢子たちや雪子たちのおかげ」
などと寿絵が言っている。夏恋や睦子たちも笑顔である。
 
「蒔田さんは今年もWNBAに挑戦するんですか?」
と暢子が尋ねる。
 
「うん。頑張ってみる。一応去年は契約まではたどり着けた分、今年は評価してくれるチームも増えないかなあとは思っているんだけどね」
「向こうではポイントガードなさったんですか?」
「そうそう。私、172cmしかないからね。この背丈ではポイントガードにしかしてもらえないんだよ。花和さんくらいの背丈があればフォワードでも行けると思うけど」
 
「私たちの学年の北海道は背の高い子が多かったんですよね。札幌P高校に180cm越えの子が3人いたし、うちの花和、M高校の中嶋」
 
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「なんかそういう特異年ってのがあるよね」
 

北海道は冬休みが長いので、授業の再開は1月15日なのだが、冬休み中でも補習は行われている。千里は受験生なので、当然ながらこの補習に毎日参加していた。朝から女子制服を着て出かけて行く千里に、美輪子が首をひねりながら言った。
 
「ね、千里もしかして、あんた男?」
「叔母ちゃんにはバレちゃってるね」
「あんたの身体、どうなってんの?」
「うーんとね。一週間くらいでまた女に戻ると思うよ」
「ふーん。まあそれならいいか。でもバレないようにね。バレたらとんでもない騒ぎになるよ」
「世界中に報道されるだろうね」
「ああ」
 

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1月10日、夜中の0時。
 
千里は貴司に設定していた着信拒否を解除した。解除して1分もしないうちに電話が掛かってくる。
 
「良かった。つながった」
「どちら様でしょうか?」
「そんなこと言わないでよー。あの子連れて行ったのは謝るからさ」
「もうあの子とセックスした?」
「してない」
「キスくらいしたんでしょ?」
「してない」
 
「ふーん。でもセックスするつもりなんでしょ?」
「そのつもりは無いよ。僕の恋人は千里だけだよ」
「あの子にも、僕の恋人は君だけだよ、と言っているんでしょ」
「そんなことないけどなあ」
 
千里は唐突に元旦に《はまなす》車内で見た夢を思い出した。
 
「でも貴司って、私が女の子だから付き合ってくれてるんだよね」
「千里は女の子だよ」
「私が男っぽくなったり、声変わりしたらサヨナラする約束だったよね」
「まあね。でも千里は男っぽくなったりはしないし、声変わりもしないから、ずっと僕の恋人だよ」
 
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「私さ」
「ん?」
「声変わりしちゃうかも」
「なんで?だって睾丸なんかとっくの昔に取っちゃってるでしょ?」
 
「今私に睾丸があるなんて言っても信じないよね」
「千里に睾丸があったりしたら世界中が大騒ぎになるよ」
「ほんとだよねー!」
 
それでその日は貴司がたくさん謝るので千里はまあいいかなと思い少し優しくしてあげる気持ちになる。そしてややHな会話なども含めて1時間ほど話してから
「じゃ、明日の入替戦に向けて練習頑張ってね」
と言って電話を切った。
 

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女の子たちの宴の後(7)

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