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■女の子たちの宴の後(3)

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「それと神野君と湧見君の交換留学も3月中旬まで続けるから」
と宇田先生。
 
「あ、私また岐阜に行けるんですか?」
「うん。向こうで鈴木(志麻子)君が手ぐすね引いて待っているようだよ。前田(彰恵)君・大野(百合絵)君も、大学はもう決まっているからたくさん練習相手になってくれるそうだ」
 
「ええ、前田さんは大阪のG大学、大野さんは東京のというか正確には神奈川ですがS大学に推薦入学が決まっています」
と千里は言う。
 
「じゃ向こうが前田・大野が練習相手になってくれるんなら、私もお手伝いしようかな。私も行き先は決まっているし。薫も付き合えよ」
などと暢子は言っている。
 
「うん。そうしようかな」
と薫。
 
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「でも私、28日でバスケ辞めたのに」
と千里が言うと
 
「ああ、それはあり得ない」
と宇田先生は笑って言った。
 
「でも3月中旬までって、3年生は3月1日で卒業してしまうのでは?」
と薫が言うが
 
「村山君が受験するC大学の合格発表・入学手続きって確認したら3月13日(金)らしいからさ、その前日の12日までシューター教室をしてもらえばいいかなと」
 
「卒業式の後も続けるんですか〜?」
「君もトレーニングにはちょうど良いでしょ?」
「うーん・・・」
 
どうも話は千里の居ないところで勝手に進んでいるようである。
 

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「あとほかに特待生ではないけど、原口(揚羽)君の妹さんも推薦入学が内定しているから」
と宇田先生。
 
「おっ」
「強いですか?」
と絵津子が揚羽に訊いている。
 
「うーん。私とはタイプが違うから何とも」
と揚羽。
「ポイントガードなんだよ」
と宇田先生は説明する。
 
「わあ、楽しみ」
と永子が嬉しそうに言ったのに対して、愛実は
「きゃー、またポイントガードの競争が激しくなる」
 
などと言っている。この2人の反応も面白いなと千里は思った。永子は純粋にバスケが好きだから上手な人が入ってくるのは嬉しいんだ。
 
「うちも強豪校っぽくなってきましたね」
と志緒。
「ベンチ枠争いが熾烈になっていくんだろうな」
と蘭。
「まあ練習頑張ろうよ」
と来未が言っていた。この3人も今回は志緒と蘭がベンチ枠に入り来未が涙を呑んだものの、インターハイではどうなるか分からない所だ。ウィンターカップは15人出られるが、インターハイは12人なので、より厳しい競争になる。
 
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ジンギスカン屋さんで満腹し、そろそろ解散かなという雰囲気になりつつあった頃、宇田先生の携帯に着信がある。
 
「はい、はい。分かりました。それではベンチ枠の16人連れてそちらに参ります」
 
どうも電話の相手は学校にいる校長先生のようである。
 
「ウィンターカップの主宰者から、あの熱戦に感動したというので、感動賞というのがもらえるらしい」
「へー」
 
「何か賞を出したいというのは早い内に決まったらしいんだけど、どの程度のものにするかというのと、予算をどうするかで調整に時間がかかったらしい。結局、協賛のスポーツ用品会社N社と取引関係にある商社から特に協力させてくれという申し出があったらしくて、N社のセミオーダーのバスケットシューズをプレゼントすることになったらしい」
 
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「わあ、バッシュは歓迎です」
「私、今のが結構傷んでから新しいの欲しかった」
「今のちょっと小さいかなと思ってたのよね」
などという声もある。
 
「なんかその商社の社長の娘さんだかがたまたま観戦していて凄く感動したと言ってたらしくてね。予算のことで話していた時に良かったら資金を出させてくれ、名前も出さなくてもいいからという申し出があったらしい」
「へー」
 
「それで、サイズを測ったりデザインの確認をしたりするのに、もしよかったら、選手15人と付き添いの人の分の交通費を出すから今日か明日にでも北広島市まで来てもらえないかということなんだよ。都合が付かないなら年明けでもいいということなんだけど」
 
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「今すぐ行きましょう」
と暢子が言う。
 
「先生、実際お正月は実家に戻る子もいるから今日がいいと思います」
と千里も言うので、校長には今日行くと連絡してもらった。
 

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それでウィンターカップの選手15人・薫・宇田先生・南野コーチの18人で旭川駅に移動し、スーパーカムイで札幌駅まで行った。札幌駅から先はバスを用意してもらっていたので、それでN社のショップに行く。そこの応接室で揚羽が代表して「ウィンターカップ2008感動賞」と書かれた賞状をもらった。
 
「それでご連絡しましたように、副賞として選手のみなさんにはバスケットシューズ、マネージャーさんとコーチ・アシスタントコーチさんにはジャケットを贈りたいと思いますので、サイズを確認させていただけますか?」
 
「優勝したP高校さんもバッシュもらってましたよね?」
「すみません。あちらは一般には販売していないスペシャルモデルで。こちらは一般販売品になりますが」
「いや、ふつうので充分嬉しいです」
 
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「来年は私たちが優勝してスペシャル・バージョンをゲットしよう」
などとソフィアが言っている。
 

1人ずつサイズをきちんと測ってもらい実靴で確認するとともに、カラーリングについてはパソコンのモニターで部分毎に各々好きなものを指定した。文字も入れられるということで多くの子が自分の名前を指定した。千里は少し考えて1000STと指定した。
 
絵津子はVICTORYと入れていた。絵津子がVICTORYでソフィアがSOPHIAというのを見て不二子はMT.FUJIと入れた。
 
「なるほど〜、富士山か」
「日本一だよ」
「よし、来年は高校三冠を取ろう」
 
今日オーダーしたものは1個1個個別生産になるので時間がかかるものの、1月中にはお届けできると思いますということであった。
 
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しかし千里は測ってもらいながら、せっかく私バスケを辞める気になってるのに、1月から結局シューター教室再開になるし、何でみんなこんなに寄ってたかって続けさせようとするの〜?などと思っていた。しかしカラーリングの指定は塗り絵をしているみたいで楽しかった。
 
「wintercup 2008のロゴも転写できますが」
「いや、転写しなくていいです」
「記念品って感じじゃなくて、こんな快適なバッシュは普段に使いたい」
「よし、これで頑張って点を取りまくってインターハイ優勝しよう」
 

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30日大阪。
 
貴司は朝から少し浮き浮きした気分で新大阪駅まで来ていた。芦耶と名古屋まで日帰り旅行をする約束をしたのである。貴司としては実は今男性器が使えない状態になっていることから、泊まりの入るデートには付き合えない状態なのだが、貴司が自分とのセックスにはまだ躊躇していることを感じ取った芦耶が日帰り旅行を提案したのである。
 
名古屋でひつまぶしでも食べて名古屋城を見て帰って来ようという計画である。
 
ところが芦耶と落ち合って新幹線を待っていた時、貴司に電話が入る。
 
「え?今からですか? はい。はい。分かりました。そちらに参ります」
と言って電話を切る。
 
「会社から?」
「ごめーん。沖縄まで行って来ないと行けない」
「沖縄〜?」
「今日の埋め合わせはまたするから」
「うん。まあお仕事なら仕方ないかな。でも名古屋までの往復切符買っちゃったのにどうしよう?」
「ごめーん。ひとりで行ってきてくれない?それか誰か友だちでも誘っていくとか。僕の切符もあげるし、ひつまぶしの分のお昼御飯代あげるから」
 
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「仕方ないな。○子でも呼び出すか。何時の飛行機に乗るの?」
「11:55の便を予約してくれたらしい。だから2時間くらいは時間があるかな」
「じゃコンコースに戻ってお茶でも飲もう。その間に○子呼び出すから。彼女には入場券で中に入ってもらえば、チケットを交換できる」
「OKOK」
 
それでふたりはホームから降りてコンコースに戻った。
 

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その様子を少し離れた所で見ていた男女2人の影がある。
 
『天空さんにお願いして、何とかデート阻止のための仕事を入れた』
と言って《こうちゃん》は息をつく。
 
『で、あんたたち、結局さんざん苦労したあげく、千里を怒らせて、貴司君とあの女をくっつけちゃった訳?』
と呆れたように《きーちゃん》が言う。
 
『俺たちもちょっとショックだったんだけど、大裳が言うには、それでいいんだって』
と《こうちゃん》は言い訳がましく言う。
 
『なんで?貴司君とは別れた方がいいということ?』
『いや、あの女、待つ立場だとずっと待ってて邪魔になるから、いったん自分が唯一の恋人と思わせてしまった方がいいと。それから千里を新たな恋人として登場させればいいと。大裳が言うには、人間の女って、彼女がいる男にアタックして現在の彼女を排除するのは頑張るけど、新たな恋人の登場から防御するのは苦手なもんなんだって』
 
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『それはあるかも知れないね。でも千里の機嫌は直せる?』
『逆に千里には貴司君が他の女とデートしている所を見せつければ自然と邪魔しはじめるよ』
『まあそうだろうね』
 
『幸いにも、あの女、一度も千里の顔は見てないしさ』
『アジア選手権の後で会わせた時も見てない?』
『暗かったからな』
『ふーん。でも貴司君が万が一にもあの女とキスしたり、ホテルに行ったりしないようにちゃんとしなよ』
『ああ。そういう事態が起きそうになったら徹底的に邪魔するから。でも女のキャラが必要になった時は、貴人頼むよ』
『あんたか青龍が女装したら?』
『え〜〜!?』
 

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30日の午後、バスケ部の納会が終わった後、佐藤玲央美は十勝先生からちょっと話そうと言われた。
 
「君さ、卒業後、どこに行くつもりなの?」
 
バスケ部の3年生で実は行き先が決まっていないのは玲央美だけなのである。宮野は関東の強豪校に推薦で合格しているし、河口や徳寺も札幌市内の大学、北見なども関東方面の実業団を持つ会社に就職が内定している。玲央美がU18日本代表としても忙しい日々を送っていたので学校側もよけいなことまで気を回させないようにと、その話は停めていた。
 
「まだ何にも考えてないんですよね〜」
と玲央美は言う
 
「君の親御さんやお兄さんとも話したいんだけど、君自身の気持ちが定まらないことには始まらないと僕も思っててね」
 
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「そうですね。でもうちの母はバスケのこととか何も分からないみたいだから。どこか適当な会社に2〜3年も勤めてお嫁に行ってくれればみたいなこと言っているし」
 
「いやお見合いとかしたいならいい人紹介するけどさ、せめてあと10年くらい日本代表で頑張ってからにしてよ」
 
十勝は優秀なバスケ選手の親って両極端だと思う。宮野の両親など娘がキャプテンを務めて全国優勝したというのに舞い上がってファンのための新聞を作ろうかなどと言っているらしい。佐藤の親の場合は全く逆だ。彼女を精神的にも経済的にも支えてきたのは12歳年上のお兄さんである。
 
「君を欲しい、今からでも推薦入学扱いにするから入って欲しいという連絡が8個もの大学から来ているのだけど」
「私あまり勉強してなかったし、あまりする気にもならないから、大学はパスかなあと思っているんですけどね」
「それならいっそ直接Wリーグに行くつもりはない? 実は3つの球団から、君の動向について照会があっていて。とにかくオールジャパンが終わるまでは本人も進路まで考えたくないと言っているのでと回答しているのだけど」
 
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「そうですね。私、何かもうウィンターカップのあの決勝戦で燃え尽きてしまった感じで。もうこのままバスケ辞めて母が言うようにOLでもしようかなとも思っているんですけど」
 
「それはさすがに世間が許さないよ」
「うーん・・・」
 
「だいたい君、OLするにも簿記も知らないのでは?」
「WNBAに行きたいと思ってた時期があったから英語は勉強したんですけどね。資格関係って全く取ってないですね。そんな勉強する時間あったらバスケしていたし」
「やはり行き先が決まらないなら、とりあえずどこかの大学にでも行ったら?栃木のK大学とか、神奈川のJ大学とか。どちらも君を欲しいと言っている。面接受けるだけで、ペーパーテスト無しで通してくれるから」
「そうですね〜。あ、でも東京方面には行きたい気はしています」
 
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「J大学の方がまあ東京には近いかな」
 
しかし玲央美は十勝監督が渡してくれた書類を気が進まないと言って期限までに提出しなかった。
 

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女の子たちの宴の後(3)

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