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■女の子たちの宴の後(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-08-30
 
この日は大晦日ということもあって《はまなす》の車内では遅くまでおしゃべりを続けている客が多く、車内はけっこう騒然としていた。酒を飲んで騒ぐ老年の男性4人組はさすがに近くにいた中年の女性に「じいさんたちうるさい」と注意されて、その後は小声に切り替えたようである。
 
千里たち4人も他の客の迷惑にならないよう小さい声でおしゃべりを続けていたが、東室蘭を出て少し経ったところで、何人かの客が小さい音量で付けていたラジオの「行く年来る年」から新年の到来を告げるサイレンが鳴ると
 
「おめでとう!」
「Happy New Year!」
といった声が客の間からあがっていた。
 
ビールを開けて乾杯する客などもいたようである。千里たちもミニ缶のコーラで乾杯して新年を祝った。
 
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その後、まだ小さい声でしばらくおしゃべりを続けていたものの、結局1:03に長万部を出た後あたりでみんな眠ってしまった。
 

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千里は夢を見ているなと思った。
 
どこかの病院でベッドに寝ている。あれ〜?私入院したのかな。何で入院したんだろうと思う。そばに誰か自分と同年代っぽい女の子がいるが、誰なのか千里には分からなかった。心配そうに千里を見ている。友だちかなあ。
 
やがて看護婦さんが来て
「そろそろ手術室に行きますよ」
と言う。あれ〜? 私、何の手術を受けるんだろう?
 
手術着に着替えるのに裸にされる。下着まで全部脱いだら、お股の所にとんでもないものがあるのが見える。うっそー!?なんでこんなものが付いてるのよ!? と思っていたら、そばにいた友人(?)の女の子が唐突にそれを口に咥えて舐め始めた。
 
ひー!?
 
なんでこんなことされる訳!? いやだー。これがよしんば付いていたとしても、それを人に触られて、更に舐められるなんて!
 
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千里は貴司のを舐めてあげたことは何度もある。しかし自分のを舐められるというのは想定外の事態だった。だいたいこれ他人に見せたのって小学生の頃に風邪引いたりして病院に行き、お尻に注射されるのに看護婦さんに見られた時くらいのものだ。
 
「あれ?女の子と思ってたのに、男の子だったのね。ごめんねー」
などと看護婦さんが言うのが凄く悲しかった。
 
でも・・・・・
 
痛いんですけど!?
 
要するに彼女の舐めかたが強すぎると千里は思った。でもこの舐め方で痛いんだったら、私が舐めた時も貴司、痛くなかったんだろうか? 痛くても我慢してくれたのかなあ、などと思うと次する時は、もっと優しく舐めてあげないといけないな、と千里は思った。
 
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「もうよろしいですか?」
と看護婦さんが声を掛ける。すると友人(?)は千里のそれから口を離す。
 
「はい。これでもう思い残すことないので、やっちゃってください」
などとその子は言っている。
 
思い残すことは無い?何それ?
 
それで千里はストレッチャーに乗せられて手術室に運び込まれる。貴司の顔をしたお医者さんが千里のそばに寄ってくる。いやだぁ。貴司にはこれ絶対見られたくなかったのにと思った。
 
「なんだ、千里ほんとにチンコ付いてたのか」
と貴司の顔をした医者は言った。
 
「こんなの付いてたら僕の恋人失格だな」
 
えーん。やっぱり私、恋人はクビ?そして東京体育館まで連れて来ていた女の子と恋人になっちゃうの? こんなことなら《こうちゃん》の言うようにその子との仲、壊してしまえば良かったかなと後悔する。
 
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「とりあえずこのチンコは邪魔だから取っちゃうか」
 
そう貴司の顔をした医者は言うと、薪割りにでも使うようなナタを取り出してくる。ちょっと待て。
 
そして彼はそのナタを大きく振り上げると、千里の股間にある物体めがけて勢いよく振り下ろした。
 
きゃっー!
 
そこで目が覚めた。
 

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千里が目を覚ました時、列車はもう青函トンネルを抜けて津軽半島を走っている最中であった。
 
まだナタを振り下ろされた時の恐怖感が意識に残っている。心臓がドキドキしている。トイレに行ってくる。おそるおそるパンティを下げる。
 
良かったぁ!
 
お股に変なものは付いてないよ。ここにあんなの付いてなければ、ナタで切られる心配も無いし、貴司に振られることもないよね?
 
だけど性転換手術でおちんちん切る時って何で切るんだろ?メス?ハサミ?レーザーカッターか何かでも使うのかなあ。まあ、ナタってことは無いよね?
 
そんなことを考えながら普段通り、割れ目ちゃんの中にある排出口からおしっこをし、紙で拭いてパンティをあげる。手を洗ってからトイレを出る通路を歩いていたら、ちょうど中沢駅を通過する所であった。あと20分くらいで青森駅に到着するはずだ。席に戻ると麻依子も起きていた。
 
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「おはよう」
「おはよう」
と言い合う。
 
やがて橘花も起きるが、鏡を見て「私の顔は不自由だ!」などと叫んでいる。
 
「顔洗っておいでよ」
 
それで橘花はトイレに行き顔を洗ってきたが、まだ不満なようである。
 
「美容液パック1箱持って来ているから、つがるに乗ったら使うといいよ」
「ありがとう。助かる」
 

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5:39に《はまなす》は青森駅に到着する。5:52の《つがる2号》に乗り換えて八戸まで行く。5枚入りの箱だったので結局4人とも美容液パックを使ったが、この様子を通りがかりの人が見たら、ギョッとしたかも知れない。
 
6:48に八戸に着き、6:55の新幹線《はやて2号》に乗り継いだ。
 
新幹線の中で駅弁を10個買って、4人で1人2個半ほど食べてから結局みんな新幹線の快適な座席に眠りを誘われて宇都宮付近まで爆睡していた感じであった。橘花は起きた後「私の顔がまた不自由になってる!」と騒いでいたので残っていた美容液パックを渡した。
 
早めにトイレに行っておいて9:51に東京駅で降りる。この列車は上野駅には停車しない。八戸→東京間の停車駅は盛岡と仙台のみである。東京駅構内でのんびりとおしゃべりなどして過ごしたあと、お昼を食べてから中央線で千駄ヶ谷まで行く。
 
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千里たちが入って行くと、今年のオールジャパンの初戦、愛知J学園と東北の実業団チームとの試合が始まるところであった。
 
「なんか実力差が明白だなあ」
と試合が始まってすぐに橘花が言う。
 
「いや、去年2勝もしたのが異常だよ。ふつう高校生チームはそう簡単にはオールジャパンでは勝てない」
 
「特にこのチームは実業団には所属しているけど実質プロレベルだもんなあ」
 
J学園は第1ピリオドで15点差を付けられてしまったものの、第2ピリオドでは三尾/大戸/川口/加藤(絵理)/夢原(円)という1年生5人からなるオーダーを出すと、この1年生たちが物凄く頑張った。社会人相手にどんどんスティールを決めるはブロックを決めるはで、一気に試合をひっくり返してしまった。特に加藤はこのピリオドだけで1人で22点取るという凄まじい破壊力を見せた。
 
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しかし後半になると社会人チームは総力戦の様相となり、もう明日のことは考えずに最初温存していた風の選手まで動員して、最終的に8点差で逃げ切った。
 
実業団チームは勝ったものの、最後の挨拶の時、かなり顔が引きつっていた。
 

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「凄いね。J学園の1年生」
「この試合を見た全国の女子高生バスケット選手は、J学園の1年生恐るべしと思ったと思う」
「この子たちが3年生になる再来年、いや来年でさえJ学園は絶対的な強者になりそう」
 
「でも結果的には1回戦で負けたから、普通の人は今年のJ学園はやはりとか言いそう」
「まあ去年のオールジャパンが高校生ちょっと勝ちすぎたね。ふつうは初戦で全滅だもん」
「そもそも昨年は7チームも出てきたこと自体異常」
 
今年女子でオールジャパンに出てきている高校チームは地区大会を勝ち抜いた福岡K女学園、愛知J学園と、インターハイ優勝の札幌P高校という3チームのみである。
 
次の試合まで時間があるのでカフェでおしゃべりしていたら、F女子高の前田彰恵・大野百合絵と遭遇する。
 
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「おお、奇遇、奇遇」
と言って声を掛け合って一緒のテーブルに座る。
 
「F女子高は2人だけ?」
「全部で10人くらい来ているはずだけど、みんな別行動だから」
「ああ、チームで見に来た訳じゃ無いのね」
「そうそう。個人的な旅行だよ」
 
「中嶋さん、お久しぶり」
と彰恵が橘花を見て言う。
「わあ、覚えていて下さいましたか。光栄です。お久しぶりです、前田さん」
と橘花。
「いや、一昨年のインターハイでは苦しめられたもん」
 
「やはり苦労した相手のことは忘れないよね」
と千里も言っている。
 
「そちらは初顔かな。新人さん?」
「すみませーん。私も高3です。私は3年間に1度もインターハイ・ウィンターカップ出てこられなかったので」
と麻依子が言う。
 
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「旭川L女子高の元キャプテンで溝口麻依子さん」
と千里が紹介する。
 
「L女子高か!」
「過去に何度もインターハイ出ているのに」
「1年生の時は道予選ブロック決勝で釧路Z高校の新人だった松前さんにやられて1点差で負けて出場できず、2年生の時は中嶋さんたちのM高校にまたブロック決勝で1点差負けして出場できず、3年生の時はやっと決勝リーグまで行ったけど決勝リーグで1勝2敗・3位で出場できず」
と麻依子は説明する。
 
「惜しいね!」
「松前さんは覚えてる。凄い子だった」
と百合絵が言っている。
 
「N高校も毎年、そんな感じで水面直下くらいの所を漂っていたんだけどね」
と暢子は言う。
「まあ、千里が加入したことで水面の上まで上がれたよね。一昨年・昨年は」
と橘花も言う。
 
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「宇田先生も今年は先生自身にとって勝負の年だと思っていると思う」
と千里も言った。
 
「しかし千里が1年生の時から女子チームにいたらN高校は3年連続インターハイに出てたんじゃないかって話もしてたんですけどね」
と橘花は言う。
 
「自分でいうのも何だけど、それには異説もあってね」
と千里は言う。
 
「私がN高校にやむを得ず男子生徒として入学した時、1年間男子チームで鍛えられてから、性転換して女子選手になってもらったら、物凄く進化できるんじゃないかって、半ば冗談みたいに言われたんだよ」
 
「ああ、それは良い強化の方法かも知れん」
「ある程度強い男子チーム持っている所なら、そういう強化の方法もありだよね」
 
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「実際昭子は、女子チームで練習してなかったら、あそこまで伸びてないでしょ?」
と橘花がいう。
 
「誰それ?」
と彰恵から質問があるので千里は説明する。
 
「うちの湧見絵津子の従兄で湧見昭一という子がいるんだけど、今2年男子、今年の春には3年になるんだけど、シューターの素質があるというので、ずっと1年生の時から女子チームで私につけて勉強させていたんだよ」
 
「それで凄く鍛えられた訳か」
「でもあの子、そもそも女の子になりたい気持ちがあったみたいで、女子チームにすっかり溶け込んでいるんだよね」
「ほほお」
「だからウィンターカップでも昭子の名前で女子部員のひとりとして遠征に連れてきたんだよ」
 
「でも男子がひとり混じっていると、着替えとかお風呂とかも大変でしょ?」
「いや、ふつうに女子と一緒に着替えているし、女子と一緒にお風呂入っているし」
「普段から下着は女の子のしかつけてないみたいだしね」
 
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「うーむ。。。」
 
「あの子、けっこうおっぱいあるよね」
「本人は否定しているけど、絶対あれ女性ホルモン飲んでると思う」
「なるほどー」
 
「なんかN高校さん、そういう性別の曖昧な部員が多くない?」
「あははは」
 

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夕方16:20から、札幌P高校と岡山県の大学チームとの試合が行われた。
 
この試合で佐藤玲央美は精彩を欠いた。普段はとても精度の良いシュートをする人が、この日は2ポイントも3ポイントもことごとく外すのである。とうとう途中で下がってしまった。
 
「レオちゃん、どうしたのかね?」
と一緒に観戦している百合絵も心配そうに言う。
 
「ウィンターカップで燃え尽きてしまったのでは」
と暢子が言うが、千里は決勝戦の前日に玲央美とふたりで話した時のことを思い出し、ほんとにあの子、もうバスケ辞めるなんて言わないよな?と心配した。
 
「ところであの丸刈りの子は?」
「男子じゃないよね?」
「ああ、試合開始の時に若干揉めてたみたいね。あれ渡辺純子だよ」
「おお!」
 
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「どうもウィンターカップの決勝で負けた方が丸刈りにするって、うちの湧見絵津子と約束していたらしいんですよ」
「P高校が勝ったじゃん」
「ええ。それで湧見は試合に負けたからと丸刈りにして、渡辺のほうは得点数で湧見に負けたからと言って丸刈りにしたみたいで」
 
「ふたりともよくやるなあ」
と言いながら百合絵は少し呆れているふうである。
 
「でも女子の丸刈りって校則違反にならないの?」
「授業中はウィッグつけてますからと各々校長先生には弁明したみたい」
「ふむふむ」
「ふたりとも駅のトイレで通報されたらしい」
「ああ。丸刈り頭で女子制服着ていたら、変態男かと思われそうだ」
「純子ちゃんは背が高いし、絵津子は元々男らしい雰囲気持ってるし」
「たいへんねー」
 
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試合は前半大学生が押し気味であったものの、後半はその頭を丸刈りにした渡辺純子が物凄く頑張り、伊香秋子も調子良くスリーを入れて、最後は6点差で逆転勝ちを決めた。
 
「おお、今年も高校生全敗は回避したか」
「今夜の宿泊を取っておいて良かった」
 
などと千里たちは言い合った。しかしこの試合をたぶんテレビで観戦していたであろう絵津子は純子の活躍を見て物凄く燃えているだろうなと千里は想像した。
 

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女の子たちの宴の後(5)

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