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■女の子たちの宴の後(6)

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翌日1月2日。
 
オールジャパンの試合は午後からなので、千里は午前中は新島さんのマンションに年始を兼ねて顔を出した。雨宮先生の所にも挨拶に行きたいとは思ったものの、先生が午前中に起きている訳がないので、新島さんに新年のメッセージだけ託しておいた。
 
「そうか。千里ちゃんも高校卒業か。大学行くよね?」
「はい、そのつもりです」
「どこ行くの?」
「まだ行き先が決まってないですよ。これからしばらくは受験生です」
「東京方面に出てくる?」
「はい。千葉のC大学を狙っています」
「千葉か・・・・。東京都内の大学を受ける気は?」
「東京の国立大学で理学部があるのは東京大学、東京工業大学、お茶の水女子大学の3つですが、私も東大や東工大に通るような頭は無いし、お茶の水はさすがに入れてくれないだろうし」
 
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「なんで?」
「私、まだ戸籍が男だから」
「あんたホントに男なんだっけ?」
「私が女に見えます?」
「女にしか見えないけどね」
「そうですよね〜。それで色々私誤解されるんだけど」
 
「でも私立は?」
「私立だと、△△△大学、□□大学、R大学、東京理科大学、日本女子大学、G大学、K大学、T大学、などなど。結構あります。でも私立は学費が高いから」
 
「あんた別に学費を気にしなければならないほどお金には困ってないでしょ?」
「えー?私貧乏ですよー」
「高額納税予定者さんが何言ってる?」
「その税金の計算が頭痛いです」
「税理士に投げちゃいなよ。税務申告の時期と受験の時期がぶつかるでしょ?」
「そうなんですよねー。そうしちゃおうかなあ。新島さん、どなたか紹介して頂けませんか?」
「OKOK。北海道方面で作曲家の税務に慣れてる人を紹介するよ」
「すみませーん」
 
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午後からまた東京体育館に行く。
 
ロビーで橘花たちと合流して客席に行き観戦した。
 
この日は午後一番の試合で福岡K女学園が登場した。昨日の1回戦は抽選により不戦勝となっていたので、今日の2回戦からである。相手は橘花の志望校・TS大学である。
 
試合は一方的であった。
 
第1ピリオドから28-14のダブルスコアである。その後もどんどん点差は拡大し、最終的に103-61という大差で決着が付いた。
 
「TS大学強いね」
と千里が言うと
「分かっている子はそう言うよね」
と橘花も笑いながら言う。
 
「今回のK女学園のチームは強い。C学園も真っ青って感じだよ」
「でもかなわなかったね」
「これが関女1部チームの実力だよ」
「凄いなあ」
 
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「こんな強い所に入ったら、全然レギュラー取れないかも知れないけど、私、頑張るよ」
と橘花が言うと
「うん、頑張れ、頑張れ」
と麻依子も笑顔で言っていた。
 

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この日はすぐ次の時間帯に昨日1回戦を勝ち上がった札幌P高校が登場した。相手はプロ、Wリーグの下位チームである(Wリーグの上位8チームは3回戦から登場し、9-12位の4チームが2回戦から登場する)。
 
この試合でも佐藤玲央美は調子が悪いようで、全く活躍できないまま早々に下がってしまった。宮野や河口、また渡辺純子や伊香秋子などが頑張ったものの、さすがにプロの壁は厚く、15点差で敗れてしまった。
 
「ああ、今年の高校生チームはここまでか」
「玲央美が調子良かったらなあ」
「いやこの相手には玲央美が本調子でも厳しかったと思う」
「うん。向こうは軽く流している雰囲気だったもん」
「さすがプロだよね。かなり余裕があった。叩きすぎては可哀想だからある程度見せ場を作らせてあげようという感じだった」
 
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千里たちは1月1-3日の通し券を買っており、3回戦まで見てから帰るつもりでいた。それで2日で高校生チームは消えてしまったものの、後は大学生チームなどを中心に観戦し、2日もホテルに入った。ホテルは格安ビジネスホテルのツイン2個で、千里と暢子、橘花と麻依子で相部屋にしている。トイレは部屋についているものの、お風呂は大浴場に行く方式である。
 
実際には1日の夜も2日の夜も一緒にお風呂に行った後、けっこう遅くまで片方の部屋で4人で勉強しながら(?)おしゃべりして夜12時すぎに各々の部屋に戻って寝ている。
 
2日の夜もそんな感じで寝て、1月3日の朝のことであった。
 
千里はいつも朝練に行く時の習慣で朝5時頃目が覚めた。それで半分寝ぼけた状態でトイレに行く。パンティを下げておしっこしようとして・・・・
 
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へ!?
 
と思う。慌ててお股を見ると、そこにとんでもないものが付いている!
 
うっそー!!!!
 
と思ったが、そういえば1月3日から男の子の身体に戻るよと言われていたことを思い出す。
 
きゃー、やだー!こんなの。
 

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取り敢えずおしっこするが、おしっこの出てくる感じがすごーく変である。ふだんは身体から直接出る感じなのが、わざわざ余計なルートを経由してから出てくるから、その過程が凄く気持ち悪い。私ってよくこんな変な物を生まれてから15年以上も身体に付けていたよなと、あらためて思った。
 
トイレから出ると暢子も起きた所である。
「おはよう」
「おはよう」
と言い合ったが、暢子が変な顔をして
 
「千里、どうかしたの?」
と訊く。
 
「あ、別に何でも無いよ」
と笑顔を作って答えたものの、これ絶対変に思われているよなと思う。
 
「あ、もしかして生理が来たとか?」
「うん。実はそうなんだ」
 
「なーんだ。ナプキン持ってる?」
「持ってるよ」
「じゃ、大丈夫か。私もトイレ行ってこよう」
 
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と言って暢子もトイレに入る。
 
『いんちゃん、暢子がしばらくトイレから出てこないようにできる?』
『まあできるけど』
 
『すーちゃん、ごめんコンビニまで行って瞬間接着剤、大急ぎで買ってきてくれない?』
『サージカルテープとカミソリ・ハサミ・シェービングフォーム、ガムテープ、レジャーシートもかな?』
『うん、お願い』
 
サージカルテープは仮留めに使用する。はさみ・カミソリとシェービング・フォームは処置をする前に毛を剃るのに使う。最初はさみでだいたい切った後、シェービングフォームをつけてカミソリで剃る。その作業はレジャーシートの上でやってベッドに毛がつかないようにする。最後に掃除するのにガムテープが必要である。
 
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それで千里は暢子がしばらくトイレに籠もっている間に《すーちゃん》が買って来てくれた道具でタックを仕上げた。しばらくやっていなかったので、ちゃんとできるかなと心配だったが、何とか仕上げることができた。小学生の頃以来何十回としているので、手が覚えている感じであった。
 
作業する間は万が一にも外から覗かれないように窓にカーテンを引いておくが、作業完了後は、接着剤を使ったので窓を開けて換気する。そこに暢子が出てきた。
 
「大丈夫?」
と千里は声を掛ける。
 
「うん。疲れが溜まったかな。なんかぐるぐるして」
と暢子は言ったが、接着剤の臭いに気づいたようだ。
 
「あれ?シンナーの臭い」
「あ、アクセサリーが壊れたのを接着したんだよ」
「なるほどー」
 
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「お腹の調子が悪いなら朝御飯パスする?」
「いや、行く」
 

6時までおしゃべりしてから1階のラウンジに降りて行き朝食を食べていたら橘花と麻依子も降りてきた。それで4人でおしゃべりしていたのだが、橘花が言い出す。
 
「今日の千里は変だ」
「そう?」
 
「うん。私も変だと思う」
と暢子も言う。
 
「なんかまるで男の子にでもなったかのようだ」
と麻依子。
 
みんな鋭い!
 
「うん。実は私、男の子なんだよ」
と千里は言ってみる。
 
「うーん」
と3人は腕を組んで考えている。
 

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「千里が万が一にも男だったなんてことになったら大騒動だな」
 
「一昨年と去年のインターハイ、こないだのウィンターカップ、オールジャパン、国体、U18アジア選手権、全ての成績が取り消される」
「当然学校からもらった名誉賞とか殊勲賞とかも全部返納。千里だけじゃなくて部員全員巻き添え、U18代表の子たちも全員巻き添え。日本は今年夏の世界選手権の出場権を失う」
 
「千里、ほんとに男なんだったら、バレないうちにさっと切り落としておけ」
「そうだね。何で切るのがいいかなあ」
 
「包丁じゃない?」
「いや工作用のカッターが結構切れると思う」
「よく研いだ裁ちばさみもいいな」
 
「ナタとかは違うよね?」
「ナタで、えいや!と切って欲しいのなら協力するが」
「間違って胴体を半分に切っちゃったりして」
「まあそれでもいいかも知れんが。今千里が死んでしまえば、闇から闇へと問題を葬ることができる」
「千里、失踪してしまうという手もあるぞ」
 
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「あははは」
 
みんな、優しいじゃん!?
 

千里の性別問題は取り敢えず曖昧なままにしておいて、4人はその日の午前中は自由行動ということにし、お昼頃東京体育館に集まる。一緒にお昼を食べてから、その日の試合を観戦。そして夕方の新幹線に乗り、再び《はまなす》で北海道に帰還した。
 
千里は1月4日朝《はまなす》が札幌に着くと、みんなと別れて留萌行きのバスに乗り、実家に戻る。
 
「ただいまあ」
と言って千里が旅支度の、スカートに女物のコートという格好で自宅に戻ると母がギョッとする。
 
「千里あのさ」
「ん?」
と言って千里は自分の格好を見て、あはは、これやばかったかな?と思った。
 
「今父ちゃん、福居さんと飲みに行ってるからすぐ着替えて」
「はーい」
 
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千里は気のない返事をして、スカートを脱ぎ、ジャージのズボンを穿いた。
 
「その胸が目立つんだけど」
「いいじゃん」
「良くない!」
 
それで渋々、母が用意してくれただぶだぶのトレーナーに着替える。結局髪もショートヘアのウィッグをつけた。
 
なお、千里は現在男の身体に戻っているので、母に見せたロングヘアは実はカツラである。千里の実髪は実は丸刈りである。それでこの時、ロングヘアのウィッグを外してショートヘアのウィッグを付けた。
 
その格好で出て行くと、母がため息をつく。
 
「あんたさ、春になって東京に行ったら女の格好で暮らしてもいいから、取り敢えず3月までは、父ちゃんの前では男の振りをしててよ」
 
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「面倒くさいなあ」
 

「今日は玲羅は?」
「友だちのところで新年会するとか言って出て行ったよ」
「あの子、勉強してる?」
「全然。成績は毎回赤点ギリギリだし」
「困ったなあ」
 
やがて、父がほろ酔い加減で戻って来る。
 
「おお、千里戻ったか」
「お父ちゃん、ただいま。これお土産。年末が日本酒だったから、今回は地ビールにしてみた」
と言ってビール缶6本セットを見せる。
 
「おお、ビールもいいなあ。よし飲むか」
と父は言ったが
「お父ちゃん、既に酔ってるでしょ?明日にしなさいよ」
と母が言うので
「そうだな。そうするか」
と父もその日はそれ以上のアルコール追加は思いとどまったようである。
 
「お前いつ帰るの?」
「明日登校日なんだよ。だから悪いけど最終の旭川行きで帰るから」
 
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「そうか。お前とまた一晩じっくりと酒でも飲みながら色々話したいんだけどなあ」
「それは20歳すぎるまで待って」
 
「仕方ないな。そうだ。温泉に行こう」
「へ?」
 
「11月に町外れに温泉センターが出来たんだよ。一緒に温泉に入って男同士、裸で少し話さんか?」
 
え〜〜〜!? 男湯に入れっての?まさか!と思ったが、千里は今、自分が男の身体になっていることを思い出す。ただし下半身だけね! おっぱいはこれ結構あるよぉ。やはり男湯に入るのは困難だと思うけどなあ。
 
温泉と聞いて、母も心配そうにしている。
 

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しかし父が強引なので、結局母が車を運転して、千里と父を温泉センターまで連れて行った。
 
えーん。私、どうしよう?
 
母は中に入らずに外で待っているという話であった。それで父とふたりで中に入る。父が
 
「大人1人・高校生1人」
と言うと、係の人はこちらを見て、青いタグの鍵と、赤いタグの鍵を渡す。取り敢えず受け取って脱衣場の方に行こうとするが、男湯の脱衣場に千里が入ろうとしたのを係の人が飛んできて停める。
 
「お客様、そちらは男湯の脱衣場です。女湯は向こうになりますので」
 
「俺男だけど」
と父が言う。父が女に見えたら、ちょっと変だ。
 
「いえ、お客様は男性でしょうけど、お嬢さんは女性ですよね?」
「ん?こいつは俺の息子だけど」
「ご冗談を」
「いや、こいつ小さい頃からよく間違われていたけど、男なんだよ」
 
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「お嬢さんじゃないんですか?」
「すみませーん。とりあえず私、男みたいです」
 
それで中に入ることができたものの、そのスタッフさんは結局一緒に脱衣場の中に入ってきて、掃除などしながらチラッチラッとこちらを見ているようだ。あははは。どうしよう?
 
「あ、お父ちゃんごめん。ちょっとトイレ行ってくるから先に入ってて」
「うん」
 

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女の子たちの宴の後(6)

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