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■女の子たちの国体・少女編(6)

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夕食に行くと食堂に江美子や誠美、桂華などがいる。江美子はさっき見た時と服が違うので駅からのジョギングで汗を掻いた服を着替えたのだろう。
 
「先日はどうも、どうも」
「取り敢えず今は優勝おめでとうということで」
とみんなから言われるので
 
「ありがとう。素直に嬉しい」
と千里も答える。
 
「ウィンターカップ出るよね? またやろうよ」
「まあ道予選を勝ち上がれたらね」
「北海道は予選はまだなの?」
 
「11月7-9日なんだよ」
「アジア大会とぶつかってるのか?」
「そうそう。だから私は道予選には出られない」
と千里は言う。
 
東京も愛媛も福岡も9月上旬に予選が行われて、東京ではT高校とU学院、愛媛ではQ女子高、福岡でもC学園が既に代表の座を射止めている。
 
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「でも今年のN高校なら千里が居なくても道予選を突破するでしょ?」
「行きたいけどね。国体でライバルのL女子高と一緒にスピードバスケットの練習やったから。L女子高が結構な脅威」
 
「あれにやられたなあ」
と江美子は言っている。
 
「あの戦術、決勝戦まで使わなかったんだね」
と誠美が言う。
 
「そりゃ対Q女子高の隠し球だから。それにあれが有効なのはああいう背の高い選手の多いチームなんだよ。決勝戦がJ学園だったら最後まで使わなかったかも。あれ消耗が激しいしね。だから愛媛戦でも後半しか使わなかった」
 
「確かに体力を使うだろうね」
「でも背丈のハンディは大きいから、それに対抗するには結局スピードとスリーしか無いんだよね」
 
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「私たちがアジア大会で戦う場合もそれだろうね」
「うん、思う」
 

「桂華、新しいユニフォームもらった?」
「もらった。1桁の数字の背番号はなかなか重たい」
 
桂華は怪我で離脱した星乃が付けていた9番の背番号を新たにもらっている。前回の合宿までは17番を付けていた。
 
「たかが背番号だけど、変わる度に結構いろいろ思うよね」
「チームで4番の番号をもらった時は凄く重かった」
 
と江美子が言うと、桂華・玲央美も同意している。
 
「私は4番を付けたことはないなあ。チームでもここ1年付けていた5番が最高」
と千里は言う。
 
「中学の時は4番付けてなかったの?」
「当時私は女子バスケ部の男子部員だったから、基本的に員外だったんだよ。その大会で登録できるいちばん後ろの番号を付けていたことが多い。最初に参加した大会が9番だったかな」
 
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「ほほぉ」
「最後尾が9って、もしかして6人しか居なかった?」
「5人しか居なかったのが1人休んじゃって。たまたま近くに居た私が同じ中学だよね?と言われて徴用された。でメンバー表提出したあとで『嘘。これ女子チームなんですか?』と」
 
「まあ千里が男の子に見える訳が無い」
「女子選手から勧誘されて気付かない千里もおかしい」
「千里って性別問題に関しては、何も考えてないんだか確信犯なのか分からない面がある」
 
「今年のインターハイは5番だったけど、去年のインターハイは8番だったね」
と桂華が言う。
 
「よく覚えてるね!」
と千里はマジで驚いて言う。
 
「そりゃ、印象が鮮烈だったもん」
「でも桂華が2年生の時にインターハイで15番付けてたのは覚えてる」
と千里。
 
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「桂華は15番ではあっても、実質いちばん凄かったね」
と江美子が言う。
 
「C学園は学年絶対優先っぽいから」
「うん。実際2年生の時はメンバー登録ぎりぎりまで、私も出してもらえるかどうか分からなかったんだよ」
と桂華は言っていた。
 

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夕食のあと少し休んでから何人か誘い合って体育館に行き、軽く練習した。
 
「千里、バッシュが新しくなってる」
と玲央美から指摘された。
 
「うん。国体のあとで新しくしたんだよ」
と千里は答える。
 
「やる気満々だね」
と桂華が言う。
 
「うん。でも少し足に慣らしておかないと」
「千里の練習量なら多分2日で足に馴染む」
 
「よし。私も新しいバッシュ買って来ようかな」
と言っている子がいた。
 

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今回の合宿ではやはり高さやフィジカルの強い相手に慣れるということで関東の実業団男子チームや男子大学生チームに練習相手になってもらい、スピーディーなゲーム運びを心がけるようにした。また男子チームに千里や渚紗のスリーを徹底的に妨害してもらい、その中でいかに相手の隙を見て撃つか、そもそもいかにして撃てるスペースをみんなで協同で作り出すかという練習をした。
 
「村山君も中折君もチームでは単独で撃つ場所を確保しているかも知れない。しかしこのチームなら彼女たちをみんなでサポートして撃たせてあげることができるはず。それがチームの得点になるから、みんな For the team で頑張ろう。All for one, One for all だよ」
と片平コーチが言っていた。
 
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練習は朝8時から夜9時まで、お昼とおやつの時間の休憩をはさんで実質11時間であるが、実際には千里・江美子・玲央美・桂華の4人は「朝練」と称して、朝6時から朝食前までも汗を流していた。宿泊施設とトレーニング施設が一体となっている場所ならではである。
 

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夜、お部屋で同室の玲央美から声を掛けられる。
 
「千里、お勉強してるの?」
 
「うん。教頭先生から□□大学の医学部を受けろって言われたから」
と千里は答える。千里は取り敢えず進研ゼミの2年生の復習をしている。これを10月いっぱいまでやるつもりだ。
 
「千里、そういう大学ならスポーツ推薦枠で入れるのでは?」
「推薦で合格したら辞退できないじゃん」
「ああ、入学するつもりはないんだ?」
「要するに3年生の12月まで部活をしていても、ちゃんと大学に合格しますという実績を残して欲しいということで」
 
「たいへんだね。実際にはどこ狙ってるの?」
「C大学の理学部」
「理学部?そこ出て何になるの?」
「なーんにも考えてない」
「バスケの選手になったら?」
「私、そんな才能無いよぉ」
「日本一のシューターが何を言ってる?」
 
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「玲央美は進路は?」
「うん。実は何も考えてない」
「玲央美こそスポーツ推薦で好きな大学に入れるでしょ?」
「うーん。大学生を4年間やるのもかったるい気がしてね」
「じゃどこかWリーグとか?」
「まだプロになる実力は無いよ」
「日本一のフォワードが何を言ってる?」
 

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千里たちが合宿をしていた10月4日の午前中、東京のあるCDショップを20代の男性が訪れていた。
 
「なんか名前忘れちゃったんだけど、先月デビューした高校生の女の子2人組のアイドルがポスター見たらなんか良さそうと知人から言われたんだけど何て子たちかな。確か何とか×何とかって名前だった気がするんだけど」
 
とスタッフに尋ねる。
 
「先月デビューした女子高生2人組ですか? うーん・・・」
と悩んでいたスタッフは、ふと壁に貼られたキャンペーンライブのお知らせに気付く。
 
「あ、それローズ+リリーじゃないですかね。×じゃなくて+だけど。デビュー当日にここでやったライブはかなり盛り上がってましたよ」
 
「ああ、じゃ、それかもねー」
「CDはこちらになりますね。今日13時からミニライブがありますが、もしお時間がありましたら、見られませんか?」
「13時からか」
「多少時間が前後するかも知れません」
 
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「んー。じゃCD聴いてみて良さそうだったら来てみるわ」
と言って彼は『その時/遙かな夢』というCDを1枚買っていった。
 
彼は実はFM局の構成作家で、実際にそのCDを聴いてみて「これはいい!」と思い、この日のキャンペーンライブも見て、これは絶対若い世代に支持されると思った。そこで自分が担当している番組で取り上げた。それがまたローズ+リリーの急激な人気上昇を後押しすることになる。
 
むろん彼に「先月デビューした女子高生デュオ」を勧めたのは、ドッグス×キャッツのポスターをコンビニで見かけた知人である。
 
同じ女子高生デュオであることと名前の構成が似ていることから、この時期、ドッグス×キャッツとローズ+リリーのCD買い間違いはお互いに結構発生していた。その多くが、コンビニや駅などに一時期随分ポスターが貼られていたドッグス×キャッツのCDを買いに来て、間違ってローズ+リリーの方を買っていき、結局そちらのファンになってしまうというパターンだったのである。
 
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同じ10月4日。都内の別のCDショップ。
 
様々な紆余曲折のあった XANFUS がやっとデビューの時を迎えていた。
 
前面に光帆・音羽の2人がマイクを前に立ち、後ろに三毛・騎士・黒羽・白雪の4人が並んでデビュー曲の『さよなら、あなた』『アロン、リセエンヌ』を演奏した。
 
この日MCをした光帆は『アロン、リセエンヌ』をうっかり『アロン・アルファ』と言い間違ってしまったのだが、その言い間違いに笑う観客も居なかった。
 
このデビューイベントに来ていた客は4人。席に座ってゲーム機をいじっていた大学生の男の子、おにぎりを食べていた高校生くらいの女の子、そして田舎から出てきた感じの中学生の男の子とそのお母さんという雰囲気であった。
 
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ステージに並んでいる人数より少ない!
 
光帆はこの人数を見て「え〜?」と思ったものの、アマチュアバンドをやっていて客の少ないイベントも充分経験している音羽が
 
「人間のお客さんがいるだけマシだよ。私、お客さんは猫1匹なんて状態で演奏したこともあるよ」
と言うと光帆も
 
「そうだね。今日来てくださってる4人に満足してもらえるライブができたら、そこから口コミが広がって1年後には400人くらいのライブができるようになっているかもね」
と言う。
 
それで2人は元気よく
「XANFUS参上!」
 
と挨拶すると
「ベイビー、行っちゃうよ!」
ととにかく半ば自己陶酔したノリで伴奏に合わせて躍りながら歌い始めた。
 

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千里たちの合宿は10月6日(月)の夕方に終了し、千里はその日の最終便で旭川に戻った。翌7日学校に出て行き、きちんと宿題を提出すると「おお、頑張ってるな。感心感心」と担任から褒めてもらった。
 
10月9日には振分試験があったが、千里は充分手応えのある解答を書くことができた。試験の結果、千里は9位であった。
 
翌10月10日(金)。この日は1学期の終業式であったが、先日言われていたN高校理事長特別賞の記念の楯ができたということで、千里・暢子・留実子・雪子・薫の5人と宇田先生が理事長室に呼ばれて理事長さんからひとりひとり手渡された。ついでにポチ袋ももらった。
 
「格好いいですね!」
と暢子が楯を見て素直に喜びを表す。
 
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「きれーい」
と雪子が嬉しそうな声をあげる。
 
「これ金メッキですか?」
と薫が尋ねる。
 
「そうそう。真鍮(黄銅)に金メッキをしたもの」
「すごーい」
 
「インターハイの直後におっしゃっていた優秀賞というのとはまた違ったんですね」
と千里は尋ねる。
 
「うん。実は国体優勝という実績をどう評価するか悩んでね。何人かに相談したんだけど、インターハイ・ウィンターカップと並ぶ三大大会ですよという意見もあったけど、インターハイ・ウィンターカップからは少し落ちるのではないかという意見も多くてね。それで名誉賞−殊勲賞と序列が付かないようにしたかったのと、学校のチームで優勝した訳ではないからということで、こういうのを創設してみた」
 
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と理事長は説明した。
 

終業式が終わってから翌日・翌々日の10月11-12日(土日)にはバスケットの上川・留萌地区の秋季大会が行われた。この大会は1−2年生で出ており、3年生は参加しない。
 
一方、この週末、千里はまたまた東京に出て行った。
 
12日に行われる作曲家の上島雷太さんと、何度か占いをした春風アルト(本名・吹風茉莉花:ふきかぜまりか)さんの結婚式披露宴にアルトさんから招かれているのである。
 
11日の夕方の飛行機で羽田まで飛び、品川の某ホテルに行く。フロントで送ってもらっていたクーポンを見せるとボーイさんが案内してくれたが、部屋はツインの部屋である。それをシングルユーズするようである。なんか高そうな部屋!と思いながら机の引き出しに入っている英語で書かれた日本の観光案内などを何気なく読む。
 
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そのあと進研ゼミのテキストを出して勉強しながら、途中で買ったマクドナルドのフィレオフィッシュ・サラダセットを食べていたら、雨宮先生から電話が掛かってきた。
 
「おはようございます。それではおやすみなさい」
と言って電話を切ろうとしたら
「こらぁ〜、ここで切ったら罰金1000万円」
などと雨宮先生が言うので話を聞く。
 
「私受験生なんですよ。時間が無いから毛利さんにでも回してください」
 
「毛利じゃ、ドレス着せてピアノの前には座らせられないから」
「ピアニストのお仕事ですか?」
 
「明日の雷ちゃんの披露宴に出るんだって?」
「はい。アルトさんからお招き頂いたんで」
「それで好都合と思ってさ。披露宴のピアニストに都内の某女子高生を徴用しようと思っていたら、明日は朝から新潟に行って、富山・金沢と回ってこないといけないというのよ。こんな日に」
 
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「私もバスケの試合か何かに出ていたかったな」
 
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女の子たちの国体・少女編(6)

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