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■女の子たちの国体・少女編(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-04-26
 
翌日(10月2日木曜日)、千里は9月24日以来、8日ぶりに学校に出て行った。この日の朝のホームルームが全体集会に切り替えられ、国体に出た選手の報告と表彰が行われた。
 
暢子・千里・留実子・雪子、そして道大会までの参加であった薫に宇田先生まで壇上に登り、教頭先生から国体優勝の報告がなされた。
 
「この快挙に対し、N高校理事長特別賞が贈られることが決まりました」
と教頭先生は言った。
 
何か賞がもらえるというのは聞いていなかったので千里たちは驚く。この日は理事長さんから宇田先生を含む6人に賞状が渡された。後日、記念の楯を制作して渡しますということであった。
 

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朝礼の後、この6人は旭川市役所に移動する。L女子高・M高校からの参加者、L女子高の瑞穂先生、この3校以外から唯一の参加になったR高校の容子が集まる。それで、旭川市長に面会して選手と先生合計15人で、国体優勝の報告をした。市長からはお祝いのことばがあり、旭川市長賞という賞状と、記念品ということで優佳良織のストラップをもらった。
 
その後、今度は上川支庁(北海道庁の出先機関)にも行き、支庁長からお祝いのことばをもらった。こちらはメッセージだけで記念品とかは無かった!(後日あらためて知事賞という賞状だけもらった)
 
そのあと、みんなでお昼を一緒に食べてチーム解散式とした。
 
「みんな進路は?」
と暢子が訊く。
 
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「私は就職だな」
と麻依子が言っている。
「私は札幌の専門学校に行くつもり」
と矢世依。
「麻依子は道内?」
「実は関東方面に出るつもり」
「へー」
「バスケは落ち着いたらまた考える。私はこの国体優勝がいい想い出になったよ」
と麻依子は言う。
 
「私は関東方面の大学。W大学かTS大学を狙っている」
と橘花。
 
「どちらも関女1部リーグだね」
「うん。私はバスケやめられないよ」
 
「私もW大学狙い」
と容子。
 
「お。すごーい」
「橘花ちゃんと一緒になれるかな?」
「なれたらいいけど、私は家が貧乏だから行けたら国立に行くよ。ごめん」
「ううん。でもそうか、そちらはW大学が滑り止めか」
 
「なんか天上世界の話だな」
と暢子が言う。
 
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「暢子は?」
「志望校は最初適当にA大学と書いていたんだけど、教頭先生から教育大の旭川校を受けろと言われた」
 
「そっちの方がバスケは強い」
「うん。だから教頭先生の話に乗って頑張ろうと思う」
「何の先生になるの?」
「英語好きだし、英語の先生もいいかも知れないと思ってる」
「いいかもね」
 
「橘花もTS大学なら学校の先生なんでしょ?」
「うん。私は数学の先生かな」
「すげー」
「数学なんて頭痛くなりそう」
 
「でもN高校さんは、みんな受験大学を指定されたって話だったね」
「うん。私が教育大旭川校、サーヤがH大学、薫がL女子大学」
と暢子が言う。
 
「薫、女子大に行けるの?」
「来てくれるなら歓迎と理事長さん言ってたよ」
と瑞穂先生が言う。
 
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「私、実は父親から、女の子になったこと許してやるから東京に戻ってこないかと言われてるんですよ。もしかしたら、東京方面に行くかも知れないです」
 
「ああ、それは戻った方がいいよ」
と言う子が多い。
 
「その場合、考えているのがKS大学なんですけどね。実は実家から近いのと臨床心理学のコースがあるから。偏差値としてはL女子大と同程度なんで教頭先生に確認したら、そこでもいいと言われたので」
 
「バスケ部あったっけ?」
「関女4部なんですよねー」
「薫のレベルじゃ4部なら、まともにパスできる相手がいないと思う」
「でも私、女子バスケ部に入れてもらえないかも。N高校はほんとに理解あったんだけど」
「大変だね」
 
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「そういえば千里は?」
「私はC大学が志望なんだけど、教頭先生から□□大学の医学部受けろって言われた」
「どちらもハイレベルだ」
「C大学も医学部?」
「ううん。C大学は理学部」
「だったらハイレベルと、超ハイレベルだな」
 
「千里、最初は志望校、J大学かK大学くらいにしておけばよかったのに」
「私、特待生の授業料免除を維持したいから勉強も頑張ってたのよね」
「ああ、それがあったのか」
 
「だけどC大学も□□大学もバスケ部無いのでは?」
「どちらも関女3部みたい」
 
「千里、□□大学じゃなくてW大学受けたら? W大学は関女1部だもん。レベルは同じでしょ? 一緒にやろうよ」
とW大学が志望校だという容子が言った。
 
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「実は□□大学からもW大学からも、他にK大学とかからも監督さんがわざわざうちの高校まで来て勧誘されたんだよ」
 
「そりゃ勧誘したくなるよね」
「でも困ったことにW大学には医学部が無い」
「無かったんだっけ?」
「無いとは思ってない人が多いよね」
 
「知らなかった!」
「なぜW大学に医学部が無いのかは関東大学七不思議のひとつらしい」
「ほほぉ」
 
「だけどさ」
と麻依子が言う。
 
「千里って、絶対医者向きの性格じゃないと思う」
 
「うん。私が医者になったら、毎年20-30人殺す自信がある」
と千里も言う。
 
「怖ぇ〜〜!」
「紐医者ってやつか」
 
「パタリロ!用語だな」
「何だっけ?」
 
「藪(やぶ)医者より酷いのが雀医者。今から藪に向かう所。もっと酷いのが土手医者。藪にもなれない。紐医者は、これに引っ掛かると確実に死ぬという話」
 
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「まあ、だから合格しても入学はしないよ」
と千里は言った。
 

千里はこの年の山駆けは9月15日に玲央美や江美子たちと一緒に月山・湯殿山に行ったのを皮切りに、24日まで10日間参加し、そのあと国体前の合宿・本戦をしている間の休みを経て、10月2日・3日にまた2日間参加した。この10月2日のスタート地点に江美子の姿があった。
 
「不思議〜。これってどうなってんの?」
「まあ幽体離脱のようなものだよ」
「そっかー。じゃ私の身体の本体は松山にあるのか」
 
「こないだ江美子が実際に出羽まで来たから、ここに飛ばせるようになったんだよ」
「へー」
 
それでこの日も歩き始めるが、30分もすると少し上り坂になった所で江美子が遅れる。
 
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「遅れる〜。待ってはもらえないよね?」
と情けない声を出している。
 
「自分の勘を信じて歩き続けて。2時間歩いたら30分休むから、その時に追いついて」
「道に迷ったら?」
「その時は運が無かったと思って」
 
「幽体離脱している私が行き倒れたら本体に戻れるのかな?」
「まあ一緒に死ぬだろうね」
「きゃー」
「まあ死にたくなかったら頑張って歩こう」
「頑張る」
 
それで何とか追いついてくるものの、それでもまた30分もすると遅れ始める。千里は《りくちゃん》に『彼女を守ってあげて』と言って先に進んだ。
 
やがて途中の休憩ポイントで休んでいると、15分ほどした所で江美子が追いついてきた。
 
「良かった。居たぁ!」
と江美子は息も切れ切れに言っている。
 
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「もうひとり遅れた方が居て、その人と一緒に歩いたんです。顔が見えなかったけど。って、私、皆さんの顔がよく分からない」
と江美子が言ったので、千里は
「ここでは自分よりハイレベルな修行者の顔は見えないんだよ。自分がレベルアップしていくと、少しずつ見える人が増えてくる」
と説明する。
「なるほどー!」
 
「若いの。これ飲むと少し力が出るよ」
と年配の修行者が江美子にコップを渡す。
 
「これは?」
「どぶろく」
「どぶろくってお酒ですかぁ〜」
 
「癖になるといけないけど、まあ今日は初めてみたいだから」
 
「飲みます!」
と言って江美子は飲むと
「美味しい!」
と言う。
 
「お代わりあります?」
「おお、飲め飲め」
と言って飲ませている。いいのかなあ、などと思いながら千里は見ていた。
 
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休憩を少し長めにやってから出発する。するとお酒でのブースト効果が出たのか、江美子は今度はかなり頑張った(即使用できるグリコーゲンが増えた効果もあると思う)。それでこの2時間は江美子は遅れず付いてくることができたのである。
 
しかし次の2時間になると、お酒でのブーストをしていても、やはり筋肉の疲労がどうにもならない。かなり遅れてしまう。千里は美鳳さんと話して、取り敢えずこの日は6時間で江美子を帰すことにした。
 
「今年は初心者多いし、6時間でいったん湯殿山に行って、そこから上級者だけ再度歩こうか」
 
ということになった。
 
それで湯殿山まで来て先に温泉に入りながら待っていると30分遅れで江美子はたどりついた。千里は彼女をナビゲートしてあげていた《りくちゃん》に『ありがとう』と声を掛けた。
 
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「疲れたぁ」
と江美子はほんとにクタクタの様子である。
 
「お疲れ様。温泉入るといいよ」
「入ります」
 
それでマッサージの上手い人が江美子のツボを押さえてあげた。
 
「凄く気持ちいいです」
「こういうツボは覚えるといいよ」
「これ練習の後にもいけそう」
「うん。使える使える」
と言ってあちこち押してあげていたが、
 
「あんた、生理不順だろ?」
と彼女が言う。
 
「ええ、結構」
と江美子。
 
「ここのツボを覚えて。ここ押さえていると調子よくなるよ」
「わあ、ありがとうございます!」
 
江美子は結局温泉に10分くらい浸かったところで眠ってしまったので自宅に転送された。他にも数人の初心者が帰されたようである。
 
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「じゃ、中上級者はこのあと8時間か12時間ほど歩こうか」
と美鳳さん。
「私、まだ初級者ですよね?」
と千里は言ったが
 
「あんたは上級者心得予科見習いで12時間コース」
と言われた。
 
「なんか銀行の行員さんの肩書きみたい!」
 

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国体チームの解散式があった翌日・10月3日の午後、千里は再び旭川空港から羽田に向かった。U18チームの(事実上最後の)合宿が行われるのである。この後はアジア大会直前の第六次合宿があるだけである。
 
しかし結局学校の授業は10月2日の6-8時間目と10月3日の0-4時間目に出ただけである。受験生なのに全然授業に出られない日々が続くが、千里も一応ちゃんと担任から渡された宿題や、蓮菜から渡された問題集などを頑張って解いていた。
 
3日の夕方(例によって本蓮沼駅からジョギングで)東京北区のNTC(ナショナル・トレーニング・センター)に入る。今回も途中で江美子に追いついたが、江美子は今日は走っていた。
 
「初めての山駆けどうだった?」
と並走しながら話しかける。
 
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「大変だったけど、自分の課題がよく分かった。次千里ちゃんはいつ参加するの?」
「次は10月9日」
「じゃ私もその日に参加したい」
「OKOK。言っとくね。じゃ先に行くね」
 
と言ってゆっくり走っている江美子を置き去りにし千里は先に走って行った。
 

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また今回も部屋は玲央美と相部屋である。
 
「お疲れ様ー」
「こないだは面白い体験させてもらった」
と玲央美。
「うん。雨宮さんの提案に、出羽の人達が乗っかって、私たちちょっとおもちゃにされたみたいね」
と千里。
 
「あの月山や湯殿山にいた神主の格好していた人、実は神様か精霊でしょ?」
「そのあたりはノーコメントで。まああの人たちも暇なんだよ。娯楽が少ないから霊感の強い子で遊んでる。あそこに居たメンバーは全員『見える子』だったからね」
 
玲央美は頷いて言う。
 
「私はとても山駆けはできないから、地上をたくさん走って負けないようにするよ」
「うん。みんな自分なりの鍛錬法を見付けるのがいいと思う」
 
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女の子たちの国体・少女編(5)

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