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■女の子たちの秋の風(2)

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2008年8月31日(日)、埼玉県・大宮アリーナ。
 
3万人の満員の観客を魅了したParking ServiceとPatrol Girlsが大きな拍手を受けながら退場した。この日限りでの卒業を表明していたカリユは抱えきれないほどの花束を抱えている。
 
「何とか成功して良かった」
と斉藤社長と白浜さんは胸をなで下ろしながら彼女たちを迎えた。
 
なお、最初は一時的な復帰ならと言っていたメイルは活動再開してみたら楽しくなったということで取り敢えず正式復帰して活動継続することになった。新人のアリス(梨子)も男の娘ということが今までと違った層のファンを集めたようで、リーダーのマミカ、XANFASから移籍になった元Patrol Girlsの新リードボーカル・オウリン(逢鈴)などの人気を食ってしまう勢いであった。
 
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「でもアリスちゃん、ほんとに女の子にしか見えない」
「ありがとう。でも私、女の子の声がうまく出せなくて」
「練習すればちゃんと出るようになるよ」
「うん。頑張る」
 
「ところでアリスちゃん、おちんちんあるんだっけ?」
「秘密」
 
なお、カリユの後任には緊急オーディションをやって、ライサという女子高生が選ばれ、この日のライブでお披露目された。
 

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9月1日。
 
オーストラリアから帰国した千里は帰国早々、新島さんから「仕事の振分」作業の代行を頼まれ、羽田空港で大量の資料を渡された。11時の新千歳行きANAに乗るのに一緒に待っててくれた玲央美が「大変そう!」とその資料の山を見て言った。
 
旭川空港に12:05に到着すると、叔母が会社を抜け出してお迎えしてくれたので荷物をそのまま叔母に渡すとびっくりしていた。そのまま叔母の車で学校に行き、教頭先生と宇田先生に合宿終了の報告をした。
 
すると教頭先生と宇田先生は「相談がある」と言って、千里を会議室に連れて行く。そこには暢子・留実子・薫・揚羽・雪子が集まっている。
 
「村山君が戻ってきたので、あらためて話をしたい」
と教頭先生は切り出した。
 
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「実は村山君がオーストラリアに行っている間に発表になったのだけど、今年からインターハイの1位・2位のチームは無条件でウィンターカップに参加できることになった。その結果、今年は1位の札幌P高校、2位の静岡L学園は無条件で出場できて、北海道と静岡ではそれを除いた学校で予選を実施し、各々の優勝校がウィンターカップに行ける。つまり今年は北海道と静岡は2校出場できることになる」
 
「はい、その話は合宿でも話題になっていました」
と千里は答える。
 
「それで実は女子バスケット部の原口(揚羽)新部長から要請があったのだけど、北海道内で実力がずば抜けている札幌P高校が道予選に出場しない今年、旭川N高校にとっては12年ぶりのウィンターカップ出場のチャンスだと言うのだよ」
 
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「前回出た時は札幌P高校の主力がインフルエンザにやられたんだとかいう話でしたね」
と千里。
 
「そうそう。普通じゃ勝てない」
と宇田先生は開き直って言う。
 
「それで全力で道予選を戦いたいのだけど、今の1−2年だけではどうしても戦力不足だというのだよ」
 
千里は考えてみた。今の1−2年生だけでオーダーを組んだ場合。
 
PG 雪子・永子 SG 結里・ソフィア SF 絵津子・海音
PF 志緒・瞳美・不二子 C 揚羽・リリカ・蘭・来未・耶麻都・紅鹿
 
といった感じか。確かに軽量すぎる。インハイ代表12名の内3年生が8名もいた。それがごっそり抜けてしまうと大幅な戦力ダウンは避けられない。今の1年生がもう少し成長するとともに来年新1年生に有望な子が入ってくれば何とかなるかも知れないが、このメンツでは旭川L女子高にも、札幌D学園にも厳しい。
 
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「原口君や副部長の森田君、そして宇田先生・南野コーチなどの意見も聞いたのだけど、1−2年生だけで戦った場合、ウィンターカップ本戦へは何とか行けるかも知れない。でも本戦では1−2回戦で負けてしまうだろうと。やはり全国上位に食い込むには来年の夏までに自分たちがまだまだ進化しなければ難しいと原口君たちは言うんだよね。インターハイで2年連続3位という立派な成績をあげておいて、それは許されないのではないだろうと話し合ったんだよ」
と教頭先生は言う。
 
「それで3年生も特例で出そうということですか?」
と千里は訊く。
 
「うん。去年オールジャパンの道予選に3年生を2人出したのが前例として今年も同様のことができないだろうかという提案があったんだよ。むろん3年生でどうしても出たいという選手がいればだけどね」
と教頭先生。
 
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そうだよね。やはり去年、北海道総合で、穂礼さんと麻樹さんが出てくれたのが前例として効くんだ! 組織って前例があることには、わりと柔軟に対応してくれるんだよね。
 
「私は出たいぞ。あんな所で滑って勝利を逃したのがもう一生悔いに残ると思っていた。ウィンターカップに再度賭けたい」
と暢子が熱い口調で言った。
 
「私も道大会まででいいから出たい。インターハイは地区大会までしか出られなかったもん」
と薫が言う。
 
留実子は無言だが、その表情からは熱い意志がうかがえる。そして千里は言った。
 
「私も出たいです。その分出られなくなる下級生には悪いけど。私も不完全燃焼です。インターハイこそが目標でした。正直国体やU18なんて、どうでもいいくらいです。ウィンターカップならインターハイと同レベルの大会だと思っています。それに正直インターハイの後のことは何も考えていなかったんですが、今年は北海道から2校という話を聞いて、だったら何とかウィンターカップに出してもらえないだろうか。それを自分のバスケット人生の最後のゲームにしたいという気持ちになってきました」
と千里は言った、
 
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「バスケット人生最後というのはないと思う」
と宇田先生。
「千里がバスケを辞める訳が無い」
と暢子。
「ウィンターカップで自分を燃え尽きさせたいんだよ」
と千里。
 
「まあウィンターカップの後のことはまた後で考えてもらうことにして、今、村山君も言ったように、3年生を出せばその分1−2年生が出られないことになる。特にボーダー組からは不満が出るかも知れない。それで出すのは3名まで。それも1−2年生の子との対決に勝ったらという条件。更にこれは教職員や生徒会の方から出た要請なのだけど、3年生の部員を12月まで稼働させることで、その部員が有力大学に進学できなかったら問題だというのだよ」
と教頭先生は語る。
 
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「私はウィンターカップに出して頂いたとしても、きっちり志望校のC大学に合格する自信があります」
と千里は言い切った。
 
「うん。でも村山君はそもそも君の成績でC大学は易しすぎる」
「はあ」
 
「校長と進学指導主任とが話し合って、この4人に各々次の大学を指定するから、それに合格して欲しい。4人の内もし2人以上、失敗した場合は来年からはこのような特例措置は一切認めない」
 
「逆に私たちがその大学に合格できたら、来年もウィンターカップまで一部の3年生を稼働させていいということですか?」
「うん」
「来年の3年生でウィンターカップに参加する生徒にも同様の課題が課せられるのでしょうか?」
 
「それについては僕の私見なんだけどね」
「はい」
「ウィンターカップで君たちがある程度の実績をあげたら、こんな話は来年以降は出てこなくなると思う」
と教頭先生。
 
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「そもそもウィンターカップを12月に開催するのは3年生にこの大会までは出てもらって、ちゃんと現役から遠ざかってない状態で大学や企業チームに入ってきて欲しいというのがあったんだよね」
と宇田先生が言う。
 
「ウィンターカップができる以前は、夏頃で部活を終了する学校が多かったから半年間競技から遠ざかっていた学生を大学は受け入れていたんだ」
 
「確かにそんなに離れていたら、随分力が落ちてしまいますね」
「うん。半年間休んでいたものを取り戻すには1年以上かかる」
 
「私は2年かかると思う」
と暢子は言う。
 
「まあそれで君たち4人に課す大学。若生君はA大学志望と言っていたけど、学校から要求するのはH教育大旭川校、村山君はC大学理学部ということだけど、同じ関東で□□大学医学部」
 
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「そんな無茶な!」
 
「花和君はH教育大旭川校ということだったけどH大学、歌子君はS大学ということだったけどL女子大学」
と教頭は言う。
 
「歌子は女子大に入れるんですか?」
と千里は訊く。
 
「旭川L女子高の校長先生がバスケットの試合や練習で歌子君を見ているのでこの子なら問題ありませんと言っているそうだ。受けるならぜひバスケット部に入ってくれと」
 
「あそこバスケット部ありましたっけ?」
「作るそうだ」
 
(札幌の)L女子大にバスケ部ができるなら、旭川L女子高からそこに進学する子が結構出るかも知れないなと千里は思った。麻依子はどうするのだろう?
 
「ただ今言ったのは例なので、このレベル以上の大学に変えてもらってもいい」
と教頭は言うが、千里は
 
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「□□大学の医学部より上ってどこですかね?」
と半ば自問するように言う。
 
「東大・京大・阪大・名大・東京医科歯科大の医学部」
と薫が言うので
「ひぇーっ!」
と千里はマジで悲鳴をあげた。
 

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「ところで最大3名とおっしゃった気がするのですが、ここには4名の3年生が居ますよね」
と千里はふと気付いたことを質問する。
 
「歌子君がまだ出場制限が掛かっていて、ここだけの話だけど実は再来年の2月まで全国大会には出られないのだよ。その一方で、村山君はU18代表に選ばれた場合、アジア選手権の日程とウィンターカップ道予選の日程が重なっている」
 
「わっ」
 
「だから地区予選は1−2年生だけで戦う。道予選で若生君・花和君・歌子君に出てもらう。そして東京での本戦では、若生君・村山君・花和君に出てもらう」
と宇田先生は説明する。
 
「なるほど。分かりました。あと1−2年生と対決して勝ったらとおっしゃったような気がするんですが」
 
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「うん。若生君と北本(志緒)君で1on1勝負、村山君と川中(結里)君でスリーポイント勝負、歌子君と杉山(蘭)君でフリースロー勝負、そして花和君と原口(揚羽)君でリバウンド勝負という案が出ている」
 
「私も蘭も志緒も、3年生の出場を阻止すべく頑張りますから、それを更に越えてください」
と揚羽が言う。
 
「心配しなくても圧倒するよ」
と暢子は答える。
 
「結里は?」
「あの子は千里先輩に勝てる訳ないですと言ってました」
 
「諦めが良すぎるな」
 

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