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■女の子たちのBoost Up(6)

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P高校側も先日の非公開練習試合で見せたような新戦術は使わずに戦っている。第1ピリオドは24対22と競り合う点数になった。点数が多めなのはどちらも怪我を避けるためゴール下での接触をできるだけ避けているためである。
 
第2ピリオドは敦子をPGに使い、暢子も休ませてPFの位置にリリカ、Cに留実子を出す。敦子は絵津子の加入で、リリカは耶麻都の加入で、それぞれ危機感を持っているのでこの2人が凄く頑張る。それでこのピリオドではこちらがリードを奪い、46対50となる。
 
第3ピリオドではメグミ/夏恋/絵津子/睦子/揚羽というラインナップにする。するといつも個人的に一緒に練習している夏恋と睦子のコンビが息のあった所を見せる。更に絵津子がこの強豪相手にも萎縮せずにのびのびとプレイする。それでこのピリオドは千里も暢子も出ていないのに更に点差を付けて68対76となる。
 
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第4ピリオドで向こうは中島/河口/宮野/佐藤/歌枕と長身のフォワードをずらりと並べて追いつく体勢にする。こちらは雪子/千里/寿絵/暢子/留実子とベストメンバーで応じる。P高校側が猛攻を見せて前半で一気に86対84と逆転するところまで行く。しかしこちらも反撃してそこから3分で96対100と逆に4点差を付ける。そこからは激しい点の取り合いである。どちらもディフェンスで無理をしないので、どんどん得点が入る。残り1分の所で108対108の同点になっている。
 

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ここでP高校はゆっくりと攻め上がってくる。残りの攻撃機会をP高校2回とN高校1回にするためである。少しゆっくりとパス回しをした上で歌枕さんと並木さんがきれいなピック&ロールを見せて1年生の並木さんがこの試合初得点。これで110対108。
 
寿絵のスローインから、この試合最後のPGを任された永子がドリブルで攻め上がる。こちらが初心者とみて徳寺さんがスティールを狙って迫ってくる。永子は冷静にボールを身体の後ろに回してビハインドパスで左側に居る千里にボールを送ろうとするが、そこまで徳寺さんは読んでいて、永子の左側に飛び込んでくる。
 
ところがそれがフェイクで永子はそのボールを左肘に当ててボールを右側に居る寿絵に送った。エルボーパスと呼ばれるトリックプレイである。寿絵はそのボールを持ち徳寺さんが飛び出してきたことによって出来たスペースに飛び込む。歌枕さんがフォローに来るが、フェイントで交わしてそのままゴールそばまで行き、華麗にシュートを決める。
 
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こういう残り時間が少ない場面では信頼性の高い千里か暢子を使うことが多いので、そもそも寿絵には相手があまり警戒をしていなかった。それを狙った永子の頭脳プレイだ。徳寺さんが自分に迫ってきた瞬間思いついたのだと永子は後で言っていた。
 
これで110対110となって残り時間は26秒。
 
つまりN高校はもう一度攻撃ができること確定である。しかしP高校としてはできるだけこちらに時間を残したくないので、ゆっくりと攻め上がろうとする。そこでこちらはプレスに行く。そう簡単にはフロントコートにボールを運ばせないぞという態勢である。実際徳寺さんはパスをカットされたものの、佐藤さんが何とかカバーし、向こうは8秒ギリギリでボールをこちらのコートに進めることができた。N高校は急いでディフェンスの体勢を取る。
 
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するとこちらが下がったのを見て佐藤さんがいきなりスリーを撃った。
 
この戦略は正しい。ここで3点差を付ければ負けはなくなる。
 
しかしボールはリングには当たったものの、惜しくも外れる。しかしそこで跳ね上がったボールに宮野さんが飛び込んで行ってタップし、ボールをゴールに放り込んだ。
 
これで112対110。残り時間は10秒もある。
 
寿絵から永子へのスローインでこちらの攻撃を始めるが向こうは当然物凄いプレスに来る。しかし永子は冷静だ。基本に忠実に上手なフェイントで相手を交わし、左手からのサイドハンドパスでフォローに来た暢子に送る。永子は左手を鍛えるため、1年の夏からずっと御飯を左手で箸を使って食べている。その成果で、左手からでも正確にパスを出すことができる。
 
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暢子から千里に回して千里がドリブルでボールをフロントコートに入れたが、ここまでで5秒使っているので、残りは5秒である。千里のスリーを警戒して佐藤さんが強烈なチェックに来る。
 
ここで千里は最もマークの甘い永子にパスをした。この残り秒数でまさか永子にボールを渡すとは相手も思ってもいなかったようである。永子はそのままドリブルインする。慌てて猪瀬さんがフォローに来るが永子はその猪瀬さんを華麗なステップで交わして更にゴールに近づきシュートを撃つ。
 
しかし宮野さんがブロックを決める。
 
がそのリバウンドを根性で留実子が確保し、矢のようなパスを千里の右側に送る。千里が必死で飛びついて2歩で体勢を立て直し、距離はあったもののスリーを撃つ。
 
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同時に試合終了のブザーが鳴る。
 

審判は右手の指を3本立てて上に挙げ、スリーポイントシュートが成り立っていることを示す。
 
そしてボールはゴールに飛び込む。審判は左手も指を3本立て上に挙げる。ゴール成功。
 
112対113。
 
N高校はぎりぎりの所でP高校を逆転した。
 
整列する。
 
「113対112で札幌P高校」
とまで言っちゃってから
「え?」
というみんなの驚く声で気付いて慌てて修正する。
「を倒したN高校の勝ち」
 
審判は少し照れていたが、このミスでよけい和やかになった感じで、両軍はお互いに握手したりハグしたりしあった。
 
こうして今年のインターハイ道予選決勝リーグはP高校の敗戦という波乱含みの幕開けとなった。
 
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続く決勝リーグ第二戦は旭川L女子高−釧路Z高校である。
 
P高校の敗戦で、インターハイがぐっと近くなったと感じた両校はどちらも激しい戦いをする。物凄いシーソーゲームが続き、最後は86対85でZ高校が勝った。
 
取り敢えず決勝リーグ1戦目を終えて、N高校とZ高校が1勝、L女子高とP高校が1敗である。
 
「今年のインターハイはまた得失点差勝負になるかもね」
と寿絵が言う。
 
「どういこと?」
と千里が尋ねる。
 
「P高校は今日は落としてしまったけど、L女子高やZ高校に負けるとは思えない。つまりP高校は2勝1敗になる」
「かもね」
 
「だとすると、L女子高を除く3校が2勝1敗になって得失点差勝負になる可能性が出てくる訳よ」
「うちが負けなきゃいいじゃん」
「でもZ高校はうち打倒に燃えてるもん。必死になって来るだろうからさ、ひょっとしてという可能性あるじゃん」
「でL女子高が3敗な訳?」
「L女子高がP高校に勝てるとは思えない。今日は向こうも何だか本気じゃなかった気がするし。それで負けちゃったんだろうけどさ。さすがに2敗はやばいから万一負けそうになったら本気出すでしょ」
「だろうね」
 
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「となると、私たちも明日午前中のL女子高との試合ではできるだけたくさん点差を付けて勝つようにしないといけないよ」
「まあでも3勝で本戦に行きたいね」
「うん。それが一番スッキリする」
 

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その日宿で千里と暢子がお風呂に行くと、昭子がまたまた川南や葉月にいじられている。おそらく川南が強引に昭子を女湯に連行したのだろう。
 
「あれ?薫は来てないの?」
「薫さんは何かチェックしたいものがあるとかで、ビデオ見てました」
と昭子が言う。
「へー。何だろうね」
 
今日も昭子はみんなから「早く女の子になっちゃいなよ」と煽られている。
 
「精子の保存は終わったの」
「一応終わりました」
「だったら、もう去勢してもいいじゃん」
「えー?でも手術は高校卒業してからにしなさいと言われてるんです」
「取り敢えず去勢しておけばいいんだよ。今去勢したら大学ではもう女子選手として活動できるでしょ?」
「でもお金無いです」
「お年玉とか貯めたの無いの?」
「そんなのでは足りませんよー」
「千里は手術代はどうしたの?」
と唐突にこちらに話が飛んでくる。
 
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「小学生の頃から少しずつ貯めていたんだよ」
と千里は答える。
 
「なるほど。長期間掛けて貯めたのか」
「薫はどうしたんだっけ?」
「お父さんの貯金を勝手に使ったって言ってたよ」
「だから殺され掛けたのかな?」
「いや。それはさすがに関係無いと思う」
 

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お風呂から上がって部屋に戻って行っていたら、薫が部屋から出てきて千里と暢子を呼ぶ。
 
「どうしたの?」
「ちょっと見て欲しいものがあるんだ」
 
それで薫の部屋に入る。薫と一緒にビデオを見ていた風の南野コーチも難しい顔をしている。なお昭子は葉月たちが「着せ替え人形」にするのに連行して行った。
 
(今回の部屋割りでは千里・暢子・薫・夏恋が同室で、南野コーチの部屋に昭子と留実子が泊まっている)
 
「L女子高さん、隠し球を持っている」
と薫は言った。
 
「へ?」
 

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翌日。2008年6月22日。インターハイ道予選は3日目に入る。今日は決勝リーグの第二戦・第三戦が行われる。
 
朝最初に行われたP高校−Z高校の試合では、96対62の大差でP高校が勝った。これでP高校・Z高校ともに1勝1敗になった。得失点差はP 33 Z -33 である。
 
「けっこう大差が付いたね。私たちもL女子高に40点差付けるくらいの気持ちで頑張ろうよ」
と寿絵は言っているが、千里も暢子も厳しい顔をした。
 
L女子高とN高校の試合が始まる。
 
向こうは藤崎/大波/風谷/鳥嶋/溝口というスターティング5で来た。こちらは雪子/千里/夏恋/暢子/留実子というメンツで行く。
 
ティップオフは留実子が取り、こちらが攻め上がる。夏恋−暢子とつないでまずは2点先制する。向こうが藤崎さんのドリブルで攻め上がってくるが、こちらは溝口さんに千里、鳥嶋さんに暢子、そして風谷さんに夏恋がマークに入った。
 
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風谷さんに夏恋がマークに入ったことで、溝口さんが「ああ、バレたか」という表情をしている。実はこの風谷さんがL女子高の秘密兵器だったのである。
 

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薫は昨日のL女子高とZ高校との戦いを見ていて、第3ピリオドに5分間だけ出た1年生の風谷さんの動きに違和感を覚えたという。
 
なぜ違和感を覚えたかというと、風谷さんが物凄く上手かったからである。
 
L女子高の新1年生の中ではC学園の開校延期でL女子高に入った緑川さんが卓越していて、地区大会でも大いに活躍したし、道大会でもここまでの試合で結構な時間プレイしている。風谷さんはその緑川さんと同じ中学だったということで、いわば「ついでに」入ったようなことを言っていた。
 
実際彼女はバスケは初心者レベルという話で、日々行っているN高校・M高校との夕方からの練習試合でもコートインしたことはなく「私、掃除係なんです」と言ってモップを持ってコートそばに控えており、ひたすら床掃除をしていた。ところがその風谷さんがZ高校との試合で見せているプレイは上手い。こんなにうまい選手をなぜ今まで使っていなかったのかというのを考えて、薫はこの選手は決勝リーグ用の隠し球だということに思い至った。
 
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L女子高は選手層が厚いから、彼女ひとりくらい外していても決勝リーグへは、P高校のような所に当たらない限りは行ける可能性が高い。N高校とは同じ旭川代表なのでブロック決勝以下では当たらない。つまり決勝リーグまでは使わずにおいて、他の高校に情報を与えないようにし、インターハイの椅子を獲得するための隠し球にしておいたのだろう、というのが薫の推測であった。
 
それで遅れて部屋に戻ってきた夏恋に雪子も呼んで来させて、昨夜、薫がピックアップして、道予選での数少ない風谷さんのプレイを再生し、千里・暢子・薫・夏恋・雪子と南野コーチ・宇田先生で見て、この人が超要注意人物であることを確信した。
 
「うちも隠し球したかったな」
と暢子が言うが
「永子ちゃんは隠し球に近かったかも」
と夏恋が言う。
 
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「彼女の場合はこの数ヶ月で急成長したね」
と宇田先生。
「強い所とたくさん当たったからですよ。秋以降のチームでは中核のひとりになると思う」
と千里は言った。
 
他の選手にも伝えることも検討したのだが、突然前夜に言われてよけい混乱してもいけないので、この4人で対処することにした。
 
「メグミや敦子は雪子の対応を見たら自分たちもできるはずだから」
「うん。あの子たちは問題無いし、むしろ口で説明するより雪子のプレイを見せた方が良い」
 
「留実子は言われたからといってプレイが変化する子ではない」
「うん。あの子は不器用だから」
 
「寿絵は少し口が軽いからやめとこう」
「あの子、頭はいいんだけどねぇ」
 
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マークがうまい夏恋に付かれて、せっかく出ているのに風谷さんは最初なかなか活躍の場面が無かった。しかし大波さんがうまいスクリーンプレイを仕掛けて風谷さんを一瞬フリーにすると、風谷さんは華麗にシュートを決めた。
 
その後も、大波さん・鳥嶋さんがうまく風谷さんとのコンビネーション・プレイを決めて彼女がどんどん得点する。しかし風谷さんに警戒しすぎると、溝口さんがゴールを決めるし、鳥嶋さんや大波さん自身もシュートを撃ってくる。
 
それでこちらが充分警戒していたにも関わらず、第1ピリオドは風谷さんの活躍で26対20と大きくリードを許す。
 
「なんかあの18番の子、うまいね。あんな子居たっけ?」
と寿絵がインターバルに訊く。
 
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「L女子高の秘密兵器だよ」
と暢子。
「秘密兵器?格好いいー」
と寿絵。
 
「寿絵出てみる?」
「出る出る」
と寿絵。
 
すると川南まで
「私も出たーい」
と言ったが、暢子は
「じゃ来年のインターハイで」
などと言う。
 
「来年はもう卒業してるよ!」
と川南は抗議した。
 

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女の子たちのBoost Up(6)

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