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■女の子たちのBoost Up(3)

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ところで、旭川N高校、お隣の旭川M高校、そして旭川L女子高の3校の女子バスケ部は今年も5月の連休明けから、インターハイ道予選に向けて毎日場所持ち回りで練習試合をしていた。道予選には旭川からこの3校が出場するが、インターハイに行けるのは北海道から2校のみである。しかも強豪の札幌P高校、札幌D学園、釧路Z高校、函館F高校、などもいる。昨年は旭川地区からN高校とM高校の2校が出たものの、頑張ってレベルを上げなければ今年は旭川地区から代表校ゼロというのも充分あり得る。
 
この3校はいづれも昨年秋以降3年生が抜けて2年生(現在の3年生)主体のチームになっていたのだが、新入生が入って来て、各々充実している。
 
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N高校も絵津子(SF), 耶麻都(C)の2人が即戦力で、寿絵もリリカもお尻に火が点いた感じで、これまでより練習に熱が入るようになった感じだし、不二子(PF)・愛実(PG)・ソフィア(SG/SF)の3人も秋以降の新チームでのレギュラーを狙う態勢である。
 
L女子高ではPFの緑川さんがなかなか凄くて鳥嶋さんが少し焦っているようだし、SFの黒浜さんも夏以降はベンチ枠に割り込んで来そうな感じであった。L女子高も新入部員が20人ほどあって一時的に40名を越える大所帯になっている(夏頃までに新入部員の3割ほどが例年辞めるらしい)。緑川さんたちのような即戦力に近い子もいれば、初心者で基礎から教えている子も居た。練習試合中にモップ持ってスタンバイしていて、ゲームが笛で中断する度に飛び出して行っては床掃除をしている子たちも、来年はレギュラーになっている可能性もあるよなと思い、千里は彼女たちを見ていた。
 
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M高校でも橘花が新入生部活説明会の日に、バレー部の部室に入ろうとしていたところを誘拐(?)してきたという柿沼さんが身長178cmで、取り敢えず今リバウンドだけ教えているものの、道大会に何とか間に合いそうな感じであった。彼女は中学時代は女子ラグビー部に入っていてバスケット部とバレー部の双方に助っ人で出ていたらしいが、M高校には女子のラグビー部が無いので、バレーかバスケットのどちらかに入ろうと思っていたらしい。ラグビーをやっていただけあり体格が良く、ゴール下の争いで橘花が(味方なのに!)はじき飛ばされたりしていた。
 

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千里は平日の5月12-14日(月−水)にU18代表候補の合宿で愛知県まで行ってきたのだが、その直後17-18日(土日)にはN高校の校内施設を使ってミニ合宿をした。この18日午前中にはA大学の男子バスケットボール部の人たちを招待して練習試合をする。
 
普通なら男子大学生は女子高生チームの相手などしてくれない所だが、A大学女子バスケ部に今年入った、久井奈さん・麻樹さん経由で「ちょっと後輩たちに指導してあげて欲しい」と言ってお願いし、ラーメン村ギフト券20枚でOKしてくれた。来てくれたのは10人で1人2杯ずつ食べるつもりらしい。
 
「まあ北海道総合で優勝してオールジャパンに行ったチームなら少し指導してあげてもいいかな」
などと彼らは言っていた。仲介した久井奈さん・麻樹さんが今回マネージャー役で帯同してきている。
 
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暢子と向こうのキャプテン川崎さんとで握手してから試合を始める。向こうのセンター吉田さんは190cmくらいの身長がある。こちらのセンター留実子との身長差は10cmほどである。しかしティップオフで留実子はボールを巧みにこちらにタップした。
 
雪子がボールを受け取りドリブルで攻め上がる。先行している千里にパスして千里はスリーポイントラインの手前からシュート。まずは入れて3点先制した。
 

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「へー。君、すごくきれいなフォームで撃つね〜」
と向こうのSG岸さんが千里に話しかけてくる。
 
「ありがとうございます」
「ちなみにうちに来る気無い?」
「私、東京方面に出ようかと思っているんですよねー」
「こんなきれいなシュート撃つ子はうちのチームに欲しい」
「私、女ですけど」
「男に性転換するつもりは?」
「ちんちん嫌いなので」
「レズなの?」
 
下ネタに走った所で川崎さんから蹴りを食らっていた。
 
その後も向こうの選手は暢子や寿絵などに色々話しかけてくる。しかし彼らは次第に口数が少なくなっていった。
 
5分経過した所で12対18でN高校リードである。
 
「ちょっとタイム」
と川崎さんが言って、向こうはベンチの所に集まり何やら話し合っている模様。
 
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そして川崎さんがこちらのベンチに来て暢子に訊いた。
 
「ね、少し本気で行ってもいい?」
「100%本気で来て下さい」
「そうだね。80%本気で行こうかと話していた所だけど、君たちなら100%本気で行ってもいいかも」
「お願いします」
「よし」
 

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そこから向こうの選手の動きがまるで変わった。
 
物凄いスピードでドリブルしてくる。パスのボール自体が速い上に間髪無く回すので気を抜くと今どこにボールがあるのか見失いそうだ。中に進入してくる時、留実子や暢子が簡単に吹き飛ばされる。強烈なダンクシュートを打ち込む。
 
しかしこちらも負けてはいない。向こうがスティールしようと近づいて来ても雪子にしても千里にしても簡単には盗らせない。千里は華麗なフットワークで岸さんを抜いてスリーを決める。留実子が根性でダンクを叩き込むと向こうの選手が「すげー!」と言っていた。
 
向こうは100%でやるとは言っていたものの最初やはり80%本気程度だったのがそのうちマジで100%本気までブーストしてきた。
 
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J学園迎撃戦の時、短時間ではあったもののJ学園がマジ本気を見せたことがあったが、あれより凄い。さすが男子大学生である。千里は先日のU18代表候補合宿でのエレクトロ・ウィッカとの練習試合と、どちらが凄いだろうなどと考えながら試合をしていた。
 
こちらは薫・夏恋・メグミ・揚羽・リリカ・敦子・睦子などを少しずつ交代で入れるが、薫以外は最初の内気合い負けしていた。しかしそれでもみんな数分出ていると途中でけっこう相手に対抗していた。技術と速度では負けるものの、気持ちだけは負けない姿勢ができていく。
 
試合は104対68と大差であったが
 
「50点差付けてやろうと思ったのに」
という試合終了後の川崎さんの言葉が、向こうがほんとにマジで戦ってくれたことを表していた。
 
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「また対戦してもらえませんか?」
と暢子が言う。
 
「じゃラーメンのサービス券で」
「そんなんで良ければぜひ」
「じゃ、またお腹空いたら、寄せてもらうね」
 
と言って川崎さんは暢子と握手をしていた。
 

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5月25日。千里は市民オーケストラの公演に参加した。この公演に参加するのは1年ぶりである。昨年の8月と12月の公演は、千里のバスケの大会に日程がぶつかっていたので欠席させてもらったのである。
 
今回の演奏題目はシューベルト作曲リスト編曲『魔王』をはじめととして歌曲をオーケストレーションしたものが多い。モーツァルト『魔笛』から『夜の女王のアリア』では布浦さんがフルートをピッコロに持ち替えて演奏したが『鳥刺しパパゲーノ』は千里がいつものフルートで独奏した。千里は他にイギリス民謡の『夏の最後の薔薇』(一般に『庭の千草』の邦題で知られる)・『ロンドンデリーの歌』なども演奏した。
 
最後に滝廉太郎の『四季』(『花』『納涼』『秋の月』『雪』)を演奏して終えたがアンコールを求める拍手があったので、ピアニストと布浦さん・千里の3人で出て行って滝廉太郎の『荒城の月』を演奏する。それでもまだ拍手が鳴り止まないので、千里が《横笛》の篠笛を持って『ソーラン節』を演奏して、和やかな雰囲気の中で演奏会は終了した。
 
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「お疲れ様でした〜」
「次は8月10日だからよろしくー」
「千里、空いてる?」
 
千里は手帳を見る。
 
「奇跡的に空いてます」
「よし、それではよろしく」
「練習出られそう?」
「無理です」
「そんなに忙しいんだっけ」
「3日までインターハイ、17日は国体予選、24日と31日は日本代表合宿」
 
「お、インターハイ出るんだ?」
「予選はこれからです。出られるよう頑張ります」
「日本代表になったの?」
「まだ代表候補ですけどね」
「すごーい」
「じゃバスケやりながらフルートの練習を」
「それ無茶です」
 
「12月14日は空いてる?」
 
千里は手帳を確認する。
 
「空いてますけど、私受験生だから遠慮させてください」
「大丈夫。フルート吹きながら勉強しよう」
「それも無茶です」
「どこ受けるの?」
「東京方面の大学に行こうかと」
「あら、それじゃ旭川離れちゃうの?」
「すみませーん」
「残念だね」
「じゃ、12月の公演は村山さんのラスト公演ということで、村山さんのフルート・ソロをフィーチャー」
「えーーーー!?」
 
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翌週。N高校女子バスケ部は、帯広市で開かれたシニアバスケット大会にゲスト参加させてもらった。
 
「シニア」というのは男子40歳以上・女子35歳以上のメンバーで構成されたチームである。男子の方は更にスーパーシニア(50歳以上)・ゴールデンシニア(60歳以上)も設定されていて、シニア16チーム、スーパーシニア9チーム、ゴールデンシニア4チームが集まっていた。シニアは札幌など一部の地区では地区予選までしたらしいが、女子は予選も何も参加したのが全部で3チームしか居なかった。
 
「男子40歳・女子35歳って男女で年齢が違うんですね」
「体力のピークが違うんじゃない?厄年も女性の方が早いし」
「早くシニアに参加したい男子は性転換すれば5年早く参加できる」
「そのために性転換する人はいないのでは?」
「いや、千里みたいなのは居る」
 
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女子3チームでは、リーグ戦をしても各チーム2試合ずつで1日で終わってしまう。しかしせっかく帯広まで遠路はるばる来たのに帯広の温泉に入らずにそのまま帰るのももったいない(帯広はあまり知られていないが実は温泉の町である)。それで1泊して、交流試合もしようということになったのである。
 
シニアではあるものの、この3チームは各々結構強い(有力クラブチームOGや元プロまでいるらしい)ので、ある程度強いチームと対戦できないかという打診があり、会場提供高の帯広C学園、地元の強豪・帯広B高校、そしてC学園からの招きで旭川N高校が参加することになったのである。ブロックエンデバーで一緒になった縁で武村さんから千里に照会があったのに応じることにした。
 
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「招待と言っても予算が無くて交通費が出ないんだけど」
「それはOKOK」
「実は近いしと思って(釧路Z高校の)松前さんに打診したら、ばあちゃんたちとやれるかって言われて」
「あはは。ノノちゃんらしい」
 
ということで宿舎は主宰者が用意してくれたものの、交通費はこちら負担で出ることにした。
 
今回、ベンチ人数は「制限無し!」なので23名連れていくことにした。
 
PG 雪子(7) メグミ(12) 永子(20) 愛実(26) SG 千里(5) 夏恋(10) 結里(19) 昭子(23) ソフィア(24) SF 寿絵(9) 敦子(13) 薫(15) 絵津子(17) PF 暢子(4) 睦子(11) 川南(16) 蘭(21) 葉月(22) 不二子(25) C 留実子(6) 揚羽(8) リリカ(14) 耶麻都(18)
 
ボーダー組全員と1年の即戦力・準即戦力の5人を入れるとこの人数になった。インターハイの道予選メンバー登録は週明けに行うことになっている。つまりこの23人の中から、女子の道大会に参加資格が無い薫・昭子を除いた21人で15人枠を争うことになる。ボーダー組と1年生にとっては最後のアピール機会である。
 
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女の子たちのBoost Up(3)

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