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■女の子たちの出会いと別れ(3)

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翌日の朝、千里が学校で少しボーっとしていると、京子が後ろからいきなり千里の両胸をつかみ
「だ〜れだ?」
と言う。
 
「これ普通、目をふさがない?」
「千里はこのあたりに目があるかと思った」
と京子。
「着ぐるみだと、そのあたりに目があることもあるよね」
と鮎奈。
 
「私、着ぐるみなの〜?」
「男の娘を装っているけど、実は中の人は純正の女の子ではないかという疑惑がある」
「蓮菜とか恵香の話を聞いていると、千里におちんちんが付いてたのを目撃したことのある人というのが、そもそも存在しないっぽい」
 
「でもどうしたのさ? 今日から期末テストというのに、ぼんやりしてて」
「うん・・・」
 
千里が答えあぐねていると、少し離れた席にいた蓮菜が言った。
 
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「彼氏が就職で大阪に行っちゃったんだよ」
 
「ああ、それで?」
「夜が寂しくて、寝付けないのね?」
「うーんと。。。」
「彼氏のおちんちんの型取りとかしておけば良かったのに」
「何それ?」
「シリコンで型取りするキットとか売っているんだよ」
とこの手の話に異様に詳しい京子が言う。
 
「それ、どうやるわけ?」
「大きくなったアレを粘土の中に突っ込んで、固まった所で抜くのよね」
「ほほぉ」
「でもそれ固まったら抜けるの?」
「小さくなれば抜けるよ」
「なるほどー」
「男の子の身体って便利だね」
「女の子の胸も伸び縮みするといいのに」
「それ、ブラジャーが大変!」
 
「それで、そのあと粘土の型にシリコン樹脂を流し込んで固めるんだよ」
「面白い」
「粘土のマトリックスがあれば、何本でもおちんちんを生産できる」
 
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「マトリックスって何だっけ?」
「母型。父型はパトリックス」
「映画のマトリックスもそれ?」
「そうそう。元々はドクターフーというSFで使用された言葉で、この方面では記念碑的な作品『ニューロマンサー』で有名になったんだけどね」
「マトリックスと言ったら、行列と思ってたから、行列がどう関わっているんだろうと、疑問だった」
「行列も要するにベクトル変換の母型ということだよ」
「ああ、そういうことか」
 
「おちんちんの型取りの場合は、オリジナルのおちんちんがパトリックスになるわけね」
「そうそう」
「パトリックスからマトリックスを作り、そのマトリックスから具体的なオブジェクトが生産される」
「パパからママができるのか」
「ママはパパの裏返し」
「性転換手術でも、おちんちんの皮を裏返して、ヴァギナ作るんでしょ?」
と京子。
「うん、そうだよ」
と千里は苦笑しながら答える。
 
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「えー!? そうやってヴァギナ作るんだ?」
といつの間にか寄ってきている梨乃が驚いたように言う。
 
「おちんちんの皮をひっくり返してヴァギナを作れば、ちょうどおちんちんが入るサイズのヴァギナができるんだよ」
と京子。
「なるほどー。合理的な気がする」
と梨乃。
 
「そういえばマトリックスの監督の兄弟の兄の方が、性転換したという噂があるね」
「嘘!?」
「パトリックスをマトリックスに変えちゃったんじゃない?」
「ほほぉ」
 
そういう訳で千里は何だか訳が分からない内に、友人達の会話のネタにされて少し元気が出た。
 

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昼休みにメールチェックをしていたら、何と毛利さんからメールが入っていた。電話が欲しいということだったので、教室の隅の方に行って電話する。
 
「お疲れ様です。もう東京に戻ってこられたんですか?」
 
毛利さんは昨年起きた新潟県中越沖地震の後片付けをするボランティアに行っていたのだが、3月末まで向こうにいると聞いていた。
 
「うん。それがちょっと大きな作業に組み込まれちゃって。なりゆき上5月くらいまでかかりそう」
「それは大変ですね!」
 
「それでさ。ちょっと頼まれてくれない?俺の所に、藤吉真澄(木ノ下大吉の弟)さんから連絡があってさ。木ノ下さんに依頼のあった作曲をこちらで頼むと言われたんだけど、俺まだ今月までは謹慎中だから」
 
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毛利さんの謹慎は本来は2月末で明ける予定だったのが、1月に臨時で2週間ほどやむを得ない作業で一時復帰したので3月末まで延長になっていた。
 
「いつまでですか?」
「明日の午前中までなんだけど」
 
千里の所に回ってくるのはだいたいそんな話だ。千里はため息をつく。
 
「それ誰が歌う作品なんですか?」
「聞いてない。ただ詩をゆきみすずさんが書くらしいんで、たぶん女性歌手じゃないかと思うんだけどね」
 
ゆき先生は概して曲先の仕事が多い。おそらく曲を聴いてそこからイメージを膨らませて歌詞を書くのだろう。
 
「じゃ、詩は無しで曲だけでいいんですね?」
「そうそう。3−4分程度にまとめて。取り敢えずメロディーとギターコードだけでいいから」
 
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藤吉さんに毛利さんの名前で送ってと言われて、毛利さんのメールアドレスのログインidとパスワードを教えてもらった。
 
千里はその日(期末テストで)部活がお休みなので、6時間目の試験が終わると、旭川駅に出て、17時の留萌行き快速バスに乗った。車内から貴司の母に「ちょっと寄っていいですか」とメールしたら「歓迎」という返事がある。
 
19時に留萌駅前に着くと、お母さんが迎えに来てくれていたので、車に乗せてもらって貴司の家に行く。
 
「別に用事は無いんですけど、朝まで貴司さんの部屋で過ごさせてもらっていいですか?」
「うん、いいよ、いいよ。あの部屋はそのままにしてるし、千里ちゃんの部屋と思って自由に使ってもらっていいし」
「ありがとうございます」
 
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貴司の妹さん2人・お父さんと一緒に晩御飯を頂く。後片付けなどを手伝い、お風呂ももらって22時頃に貴司の部屋に入った。
 
電話を掛ける。
 
「ああ、貴司、もう練習終わった?」
と言うと
「今、終わって帰る所」
と言う。
 
「今どんなところに住んでるんだっけ?」
「取り敢えず社員寮の空きに入れてもらっているんだけどね。適当な物件を探すことにしている」
「マンションでも買うの?」
「そんな金無いよ! でも賃貸マンションにしようかと。今日チームに合流して、監督に僕のプレイ見てもらって、ベンチ入り確約してもらったんで、住宅手当が結構もらえるみたいだから。スターターになれるかどうかは分からないけど、一応スターターやそれに準じるレベルの選手は、セキュリティ付きのマンションに住んで欲しいと言われているんだよね。会社のイメージ戦略もあるみたい」
 
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「それ家賃高いでしょ?」
「15万はすると思う」
「きゃー。さすが大阪だね」
「でも20万円までは全額会社が出してくれると言われた。それ以上は自己負担」
 

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「今、私どこにいるか分かる?」
「え?旭川じゃないの?」
「留萌の貴司んち」
「えーー!?」
「寄っていいですか?とお母さんに言ったら歓迎と言われたから押しかけてきちゃった」
「まあいいけどね」
「ついでに**ちゃんの写真見付けちゃったんだけど、破棄していい?」
「人の机勝手に開けるなよ!」
「大丈夫。呪(のろ)いを掛けたりはしないから」
「千里の呪いは効きそう!」
 
貴司と結局1時間くらい電話で話したら、けっこう気が晴れた。それで電話の向こうとこちらで『リモートキス』をしてから、おやすみを言って電話を切る。そして千里は貴司と話して高揚した気持ちの中で、五線紙に音符を綴り始めた。
 
私、貴司とそういえばそんなにたくさんデートしてないよな、などというのも考える。お互い休みの日もずっとバスケの練習をしていたから、あまり浮ついたことをした覚えがない。
 
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そんな中で、留萌の黄金崎でデートした時のことを思い出した。あれ〜?私ってそういえば晋治ともあそこでデートしたよな、などと考えたりする。まあデートスポットなんてそう多くないから、どうしてもダブるもんね〜などと考えていた時、ふたつのメロディーが折り重なるような不思議な旋律が頭の中に聞こえてきた。
 
それを忘れないうちに書き綴っていく。
 
お、これ魅力的。これサビにしよう。
 
それは2つのボーカルがお互い独立に動きながらずっと調和を保つという不思議なメロディーであった。
 
千里はその日、夜中過ぎまで楽曲の制作を続け、2時頃にcubase上のデータを整備しおえて、藤吉さん宛てメールした。『風の色』というタイトルを付けておいた。
 
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その晩は何だかぐっすり眠ることができた。(テストの勉強は全然してない!)
 

3月12日。東京∴∴ミュージック。
 
畠山は、ゆきみすずさんから送られて来た楽曲を聴いて少し悩んでいた。そこに鈴木聖子さんが来て
「あれ〜、社長、なんだか機嫌が悪いっぽい」
と言う。
 
「いや、例のKARIONの件でさ。今週末から2枚目のCDの制作を始めるんで、その楽曲の仮歌を聴いてたんだけどね」
「あ、私にも聴かせてよ」
 
と鈴木さんが言うので送られて来た3曲を聴かせる。
 
「なんか大人っぽいね。こないだのはけっこうアイドル色が強かったのに」
「うん。ゆき先生も最初はアイドルというので簡単な楽曲をそろえてくれたんだけど、あの子たちかなり歌えるというので、本格的な曲を用意してくれたみたい」
 
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「3曲目は作曲者が違うよね?」
「いや、1曲目・2曲目も違う」
「あれ?そう?1曲目と2曲目は同じ人かと思った」
 
「1曲目は木ノ下大吉先生の『風の色』、2曲目は鴨乃清見さんの『丘の向こう』。どちらも作詞はゆき先生だけどね。3曲目は広田純子作詞・花畑恵三作曲『トライアングル』」
 
「おお、『See Again』の人か。なんかすげー格好いい曲だと思った。あれで津島瑤子もsinger againという感じになったね」
「春のツアーのチケットは全部ソールドアウトらしい」
「凄い、凄い。私も復活したいなあ」
 
などと言っていたら、三島さんと打ち合わせをしていた槇原貞子が
 
「あんた、復活の前にそもそも売れてないじゃん」
などと言う。
「おていちゃんに言われたくないな」
と聖子。
 
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槇原貞子・田上純子・鈴木聖子・立花弓子・香田時子の5人は∴∴ミュージックの「5人娘」と言われているが、3万枚以上売れたことがないのが共通点である!
 

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「だけどこの『丘の向こう』って、これもしかして元の楽曲を途中でぶった切ってません?なんか不完全っぽい気がする」
と聖子が言う。
 
「鴨乃清見さんの曲なら私にも聴かせて」
と言って槇原貞子が寄ってきて仮歌を聴かせてもらう。
 
「ああ、これ大西典香のアルバムに収録されていた『カタルシス』という曲の後半だよ」
と貞子が言う。
 
「へー!」
「前半はね、これ商業作品として売る気あるのか?と思うどろどろした曲。不協和音だらけというか、むしろ無調音楽という感じ。それが後半はすごくきれいな調性音楽に変わるんだよ。凄く意欲的な作品だけど、一般向けではない。その後半だけ使ったね」
 
「なるほど!」
 

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「でも社長、何を悩んでいたんですか?」
「いや、実は僕、ゆき先生に、蘭子が離脱したことを言ってなかったんだよね。それでアレンジが4声ボーカルなんだよ」
 
「蘭子ちゃん、辞めたんだっけ?」
「というか実は彼女とは契約がそもそも成立していない」
「嘘」
「ちょっと彼女の家庭の事情があってね。お父さんを説得する以前に、お父さんに会うこと自体が困難なんだよ。お母さんとは何度か話したんだけどね」
 
「なぜ契約していない人が参加している?」
「ちょっとやむを得ない事情でね」
 
「でも週末から音源製作なんでしょ?」
「うん」
「だったら、急いで3声に書き変えてもらうか」
と貞子さん。
 
「いや、この『風の色』は4声、『トライアングル』に至っては5声か6声のボーカルでないと演奏できない。本質的に4声、5声使っているから3声にはアレンジできないよ、これ」
と聖子。
 
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「5声のはどうするんですか?」
「お正月のキャンペーンに参加してくれた、長丸さんっていう短大生に頼んでいる」
 
「要するに音源製作のスタッフですよね?」
「うん。基本的にはそういう扱い。ただし報酬はKARIONのメンバーと印税山分けにしようかという話にしている」
「ああ、準メンバーという感じですか」
「そうそう。彼女には今後も継続して音源製作やライブに協力して欲しいから」
 
「だったら蘭子も同じ方式で呼び出しちゃえばいいですよ」
「なるほど、そういう手があるか」
「何度も音源製作に参加させているうちになしくずし的にメンバーということで」
 
「よし、その手で行くか」
と言って、畠山は携帯を手に取った。
 
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女の子たちの出会いと別れ(3)

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