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■女の子たちのオールジャパン(4)

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「どういう組み合わせになるんですか?」
「監督同士でじゃんけんして決めた。ひとつは福岡C学園と岐阜F女子高」
 
「ということは・・・」
「うちと愛知J学園ですか!」
 
「やるよね?」
「やりたいです!」
 
「ちなみに歌子(薫)君についてもエキシビションなら出してもいいと許可が出た」
「おお、凄い!」
「背番号はどうしましょう?」
「16で。ついでにこの試合は15人登録していいらしいから、赤塚(来未)君と越路(永子)君も選手登録するから」
「マネージャー3人がそのまま選手に横滑りか」
 
ところがこの宇田先生の話に
「異議あり」
と川南が手を挙げて言う。
 
「私も葉月も、来未ちゃんや永子ちゃんに負けているつもりがありません。テストして出る人を決めてください」
 
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「うん。そういう積極的な姿勢は良い。では最後の2枠はテストで決めよう。参加したいのは?」
 
という宇田先生の声に、川南・葉月・来未・永子だけでなく、結里・志緒・聖夜の3人も参加を希望した。
 
それでV高校に戻ってから、7人でシュート10本、リバウンド10本、ドリブル速度、パス精度のテストを行った。その結果、1位永子、2位川南、3位結里という成績で、永子と川南がエキシビションのベンチに入ることになった。永子は元々レイアップシュートがお手本にしたいほどきれいで、正確なフォームで放り込むが、ここの所ずっと千里の練習に付き合っていてパス精度も上がってきている。
 
「では次点の川中(結里)君をマネージャーということで」
 
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「川南、主張しただけのことあるな」
「田崎さんに無茶苦茶言われたから少し頑張ってみた」
「ああ、川南はこれまでそのあと少しの頑張りが足りなかった」
 
最初の予定ではベンチに入れるはずだったものの落ちた来未は「また自分も鍛えます」とリベンジを誓っていた。
 

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そういう訳で旭川N高校は1月5日まで滞在を延ばして、愛知J学園とのエキシビション・マッチをすることになった。試合は女子の準々決勝の前に福岡C学園と岐阜F女子高の試合を9時から、男子の準々決勝の前に旭川N高校と愛知J学園との試合を15時から行うということであった。
 
この様子は録画ではあったもののyoutubeに期間限定で配信され、千里と花園さんの対決に全国のバスケファンが息を呑むことになる。
 

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V高校の体育館で川南や永子たちがテストを受けていた頃、高岡C高校の織絵は今夜の急行《能登》で帰ることにしたものの、母から頼まれたものを買うのに鈴子たちと別れてひとり新宿の街を歩いていた。
 
するとばったりと&&エージェンシーの白浜マネージャーに遭遇する。
 
「あら、あなた去年の夏に北陸で会った子ね」
「おはようございます、白浜さん。その節はお世話になりました」
 
織絵は昨年夏にParking Serviceが富山・高岡・金沢・福井でキャンペーンライブをした時、友人に誘われてそのバックダンサーを務めた。Parking Serviceの本来のダンスチームはPatrol Girlsなのだが、この北陸遠征では元々掛け持ちの仕事が多いPatrol Girlsたちの都合がつかず、この4公演のみの臨時ダンスチームを現地の女子高生・女子中生を集めて結成したのである。
 
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Patrol Girlsたちの振り付けは中高生の女子に人気なので、踊れる子が多く、スムーズに編成ができた。織絵は小さい頃バレエを習っていたので、身体の動きが良く、そのダンスチームのリーダーを務めた。
 
「ね、あんた今夜時間ある?」
と白浜さんが訊く。
 
「今夜の夜行急行で富山に帰るんですけど」
「それ何時?」
「上野を23:33です」
「あ、それには間に合うよ。ちょっと顔貸してくれない? 実はPatrol Girlsが今夜は4人しか集まらなかったのよ」
 
「あ、いいですよ。本物の皆さんには全然かないませんけど、私程度の踊りでよければ」
「いや、充分あんたは巧い。なんだったら正式加入も考えない?」
「富山に住んでてそういうのに正式参加するのは無理ですー」
「東京の高校に転校してくるとかは? 食っていける程度のお給料払うよ」
「うーん。。。それはまた後日検討ということで」
 
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ともかくも織絵は鈴子に連絡し、途中で白浜さんが鈴子と直接話して、その夜の公演に臨時参加することにしたのである。
 
「公演が終わったら、上野駅まで送ってあげるから」
「助かります!」
 
桃香の顔をギリギリまで見なくて済むしなと織絵は思っていた。昨夜、体育館の裏で桃香に告白され、キスされてしまった記憶がフラッシュバックする。だって私、女の子に好きになられても困るよぉ。
 

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1月4日。N高校のメンツは、この日は滞在が延びたので少し買い出しをしようということになり、力仕事担当の薫と昭ちゃん、腕力のありそうな睦子・揚羽・リリカ、それに千里と寿絵が南野コーチと一緒に朝食後、新宿まで出てきていた。宿舎に残っているメンバーは今日は大掃除である。半月近く滞在してやはりゴミなども溜まっているのでそれを片付け拭き掃除などもしている。
 
千里たちはドラッグストアで衛生用品を買い、電器店で電池やデータカードに保存用のハードディスクなどを買っていた時、「千里ちゃん、携帯が光ってるよ」と南野コーチが教えてくれる。
 
「済みません」
「かなり長時間光っているみたいだから、もしかして緊急かもと思って」
 
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早朝ミーティングをしていたので、その時マナーモードにしたまま忘れていたのである。それで携帯を開いてみると美空だ。
 
「明けましておめでとうございます、美空ちゃん」
「明けましておめでとうございます、千里さん」
「どうしたの?」
「千里さん、お忙しいですよね? 今日も試合あったんでしたっけ?」
「昨日で負けちゃったんだけど、明日エキシビジョン・マッチがあるんで居残りしている」
 
「今どこに居ます?」
「新宿だけど」
「あ、代々木じゃないんですね。でも新宿ならいけるかな?10時に青山に来られませんよね?」
「何かあったの?」
 
今は9:30すぎである。
 
「実は今日KARIONのデビュー記者会見なんだけど、その場で歌を歌うのに予定していた伴奏者さんが他に取られてしまって」
「ダブルブッキング?」
「ううん。今日年明けライブをするMURASAKIさんのキーボード奏者が会場の真ん前で飲酒運転の車にはねられて」
「うわぁ、お正月は飲酒運転多いんだよ」
 
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「それでこちらに入る予定だった人をそちらに回すことにしたのよ。もう時間が無かったんで」
「それでKARIONの演奏者が居なくなったんだ!」
 

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南野コーチに尋ねたら、緊急事態の応援ということであれば、そちらが終わったらすぐ戻るのであればいいという許可が出る。それで千里は電車の駅の方に行こうとしたのだが・・・・
 
『千里、急いでるんだろ? 俺に乗ってかない?』
と《りくちゃん》が言う。
 
千里は考えた。ここから青山の★★レコードに行くにはJRで原宿まで行き地下鉄に乗り換えるのが多分早い。それでも恐らく10-15分くらいだ。結構ギリギリである。万一うまい連絡が無かったりして自分も間に合わなかったらやばい。
 
『じゃ、乗せて』
『よっしゃ』
 
この日、新宿から明治神宮の付近で龍を見たという目撃者が数人おり、お正月からめでたいと一部で話題になった。
 
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千里が★★レコードの美空から言われた部屋にたどり着いたのは9:50であった。《りくちゃん》のおかげで、ビルの玄関までは5分で来れた。ところが入館証の類いを持っていないので入口で少し揉めてしまう。そこで千里は加藤課長に電話して中に入れてもらったのである。誰か玄関の所にでも立っていて欲しかったぞ!と思った。
 
部屋には以前DRKの録音で関わった三島さんがいる。
 
「おはようございます。伴奏頼むと言われて来たのですが」
「あら、確か旭川で会った子ね」
「その節はお世話になりました」
「譜面はこれなんだけど弾けます?」
 
と言って五線紙を渡される。『幸せな鐘の調べ』『小人たちの祭』『鏡の国』
の3曲である。千里はぱらぱらと譜面をめくった。自分が把握しているアレンジと同じだ。これなら問題無い。
 
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「大丈夫ですよ」
「それじゃもう記者会見が始まりますから」
 
というので千里は(体操服ではさすがにあんまりということで)黒いドレスを着せられ、会見場の隅に置かれたキーボードの前に座った。
 
記者は見た所5人しか居ない。筆記用具を持っているだけでカメラを持つ人もいない。千里はせっかくのデビュー記者会見なのに寂しいな思い
 
『ね、《きーちゃん》、撮影してくれない?』
と頼む。
 
『カメラはどうする?』
『あ、そうか。宿舎に戻ると試合撮影用のビデオカメラがあるんだけどな』
 
『それ、俺が取ってくるよ』
と言って《りくちゃん》が5分で取って来てくれた。さっき千里を乗せて飛んできてくれたのにお疲れ様である。それでそのカメラを構えてこの発表記者会見の様子は全部《きーちゃん》が撮影してくれた。記者では撮影した人が居なかったので、KARIONのデビュー記者会見に蘭子も入っている貴重な映像は千里の手元にだけ残ることになる。
 
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やがて、∴∴ミュージックの畠山社長、★★レコードの鷲尾さんという若い女性、に続いて可愛いミニスカの衣装を着た4人の女の子が入ってくる。先頭から黄色い服を着た小風、赤い服を着た和泉、ピンクの服を着た蘭子、青い服を着た美空である。そのままの順序で席に着く。
 
「お忙しい所お集まり下さいましてありがとうございます。1月2日にデビューCDを発売しましたピッチピッチの女子高生4人組、KARIONです」
と畠山さんは4人を紹介した。
 
各々自己紹介する。
 
「KARIONのリードボーカル・ソプラノでリーダーのいづみ。8月14日生れの獅子座です」
「KARIONの愛嬌担当・ファンクラブ会長・メゾソプラノのこかぜ。7月17日生れの蟹座です」
「KARIONの不思議担当・食事係・アルトのみそら。9月10日生れの乙女座です」
「KARIONのサブボーカル・ソプラノで落ち担当のらんこ。10月8日生れの天秤座です」
 
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美空が食事係って、それ食事を作る係じゃなくて食事を食べる係だな、と千里は思った。
 
会見は2日に発売されたCDの曲が流される中、進むが、ほとんど質問も出ない。畠山さんがしゃべる内容をただ記者が書き留めているだけのようである。
 
千里は美空以外は初めて見たのだが、蘭子に関してどこかで見たような記憶があった。記者会見が進む中ずっと観察していたのだが、やがて突然思い出す。
 
そうだ。夏にインターハイで唐津に行った時に見た、Parking Service のバックダンサーの子じゃん。とうとうデビューしたのか。でも4人組というのはもったいないな。凄く光り輝いているのにと千里は思った。
 
でも男の娘だったなんて全然気づかなかった!!
 
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もっとも会見では蘭子の性別については触れないので、当面伏せておく方針か。
 
ちなみに千里は記者会見場のひな壇で記者の方を向いてキーボードを置き、そこに座っているので、KARIONの4人を後ろから見る形になる。しかし自分の意識の一部を、記者席の後ろで撮影している《きーちゃん》の所にも飛ばして向こう側からも見ているので、4人の顔を確認できるのである。
 
こういう一種の幽体離脱は千里は物心ついた頃から普通にやっていたので、それが特別な能力であることに気づいていない。
 

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やがてデビュー曲を演奏することになる。4人が席から立って前面に並ぶ。和泉がこちらを向いてぺこりと会釈し、こちらも会釈を返す。『幸せな鐘の調べ』
の伴奏を始める。4人が歌い出す。
 
へー!
 
と思う。この曲の音源は事前に美空からもらっていたのだが、生で聴いてみると、4人の上手さがよく分かる。記者たちも、それまであまりやる気が無さそうな顔をしていたのが「おっ」という表情で、雰囲気が変わったのを感じる。それで演奏が終わった所で、ひとりの記者が
 
「済みません。サンプルCDとかありませんか?」
と訊くので
 
「どうぞお持ち下さい」
と言って、三島さんがCDを渡す。
 
「あ、僕も」
などと他の記者も言って、結局5人の記者全員がCDをもらった。《きーちゃん》までもらったので、この貴重な発表記者会見で配られた2008.1.4日付の(四分割)サインが入っていて『献納』シールが貼られたCDが千里の手元に残ることになった。
 
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続いて『小人たちの祭』を演奏する。自分が書いた曲を発表記者会見で伴奏するというのは、ちょっと面はゆい感じだ。
 
でも美空が、この曲がいちばん好きと言ってくれたのが自分でも納得できる気がする。『幸せな鐘の調べ』はモチーフが単純で、あまり歌唱力の無い子にも歌える曲という気がする。ただ、おそらく音源製作過程で手を入れたからだろうが、蘭子と小風のパートでかなり広い音域が使用されており、カラオケで1人で歌うなら難易度は無いが、合唱などでやろうとするとソプラノ2とメゾが苦労するだろう。
 
最後に『鏡の国』を演奏する時に、4人のメンバーが上着を脱ぐ。「おぉ!」という声があがる。4人は鳥の絵が描かれたキャミソールを下に着ていたのだが、和泉と蘭子、小風と美空のキャミソールに描かれた鳥の絵が左右対称になっているのである。配色も、和泉と蘭子がピンク、小風と美空がレモンイエローと左右対称になる配色にしている。
 
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そして歌っている時の4人の振り付けも左右対称な動きにしている。背丈も蘭子と和泉は背が高く164-166cm程度、小風と美空は154-156cm程度で、きれいな対称になっている。千里はこの4人の並びはこの順序がいちばん自然だなと思った。
 
演奏が終わると、大きな拍手が送られた。4人が笑顔で深くお辞儀をしてこの記者会見は終わった。
 
 
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