広告:ここはグリーン・ウッド (第2巻) (白泉社文庫)
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■女の子たちのウィンターカップ高2編(2)

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ふたりは結局3時間ほどバスケのことで色々おしゃべりをし、お互いとても充実した時間となった。
 
「私もまた頑張ります。またやりましょう」
「うん、またやろう。次は新人戦の道大会かな」
「ウィンターカップ頑張ってください」
「そちらもオールジャパン頑張ってね」
 
それでまた握手をして別れた。
 

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帰りの電車を待っていた時、母から電話がある。
 
「お父ちゃんにお金持って行ってくれたのって千里だよね?」
「うん。そうだけど」
「なんかお嬢さんが持って来てくれたと言われたから、愛子ちゃんか誰かが来てくれたんだっけ?とお父ちゃん言うからさ」
「あはは」
「もしかして女の子の格好で行ったの?」
「えーっと。私の普通の格好だけど」
「普通が女の子なのか・・・」
 
「でも私女の子だし」
「確かにそうだけどね。制服?」
「そうだよ。学校から直接だから」
「じゃ今日は女子制服を着てたの?」
「うーん。いつも女子制服を着ているというか」
「先生何も言わない?」
「この春までは時々男子制服着てたら、それが違反だと言われた」
 
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「うーむ・・・」
 
母はお金は給料出たら返すねと言ったが、千里はお母ちゃんのへそくりにしておきなよと言い、そうしようかなと向こうも言っていた。
 

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その女性は40歳くらいに見えたが、女性の年齢はわかりにくいからなあと医師は内心思った。
 
「何か治療に関して教えてほしいということでしたが」
「済みません。お時間を取って。あの、相談料はお支払いしますので」
「どういうことでしょう?」
 
「実は息子が女の子になりたがっているんです」
「今日はそのお子さんはいらっしゃってないんですか?」
「いえ。息子からは色々話を聞いたものの、性転換手術っていったいどういう手術なのか、私自身全く知識がないので、どう対応していいのかわからなくて。それで少しそのあたりを教えてもらいたいと思いまして」
 
「ああ、なるほどですね」
「男の子から女の子への性転換手術って実際どういうことをするんでしょうか?結婚とかもできるのでしょうか?」
 
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「そうですね。男性から女性への手術の場合は、大雑把に言うと、ペニスと睾丸、および陰嚢を除去して、大陰唇・小陰唇・陰核・膣を形成します」
「やはりおちんちんは取っちゃうんですね?」
「まあ女にペニスは無いですから」
 
「陰核とか膣とかも作るんですね」
「膣が無いと結婚できませんからね」
「そうですよね!」
 
「逆に女性から男性への手術では、卵巣を除去して膣の入口を縫い合わせ、ペニス、睾丸・陰嚢を形成します」
「おちんちん作っちゃうんですか?」
「ええ。作ります」
「凄いですね!」
 
「でもですね」
「はい」
「性転換手術でいちばん世間の人が誤解している点なのですが」
「ええ」
「性転換手術を受けることによって、男が女になったり、女が男になったりする訳じゃないんです」
「え?何か他にも必要なんですか?」
 
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「性転換手術というのは、実は既にもう女の子になってしまっている人に、ペニスや睾丸が付いているのはふさわしくないから、取っちゃいましょうということなんですよ」
「へ?」
 
「性転換手術を受けようという人は、それ以前の段階で、どこからどう見ても女という状態になっているんですよ。見た目も、性格も、生活も仕事も交友関係も。それほど完璧に女なのに、おちんちんが付いてたら変でしょ?」
「確かに変ですね」
「だから、お股の形を変えようということなんです。性転換手術というのは実は男を女にする手術じゃなくて、女を女にする手術なんですね」
「はあ」
 
「性転換手術の技法を開発したジョルジュ・ブローという医師はこんなことを言っています。私は男を女に変えるなどという大それたことをしているのではない。もう既に女になってしまっている人が、女として生きやすくするために身体を少し修正してあげているだけなんだ、と」
「うーん。。。何だかよく分かりません」
 
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「あなたのお子さん、そのお子さんが背広着て会社に出かけて行く姿とか想像できますか?」
 
母親はしばらく考えていた。そして嫌そうな顔をして言った。
 
「無理です」
「でしたら、そのお子さんはもう既に性転換を終えているのですよ。ペニスが付いているかどうかなんて、もう些細なことなんです」
 
母はしばらく考えてからため息をついて言った。
 
「そうかも知れない。あの子はもう女の子なのかも」
 

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「えー!? 久井奈先輩、また落ちたんですか?」
私たちは仮設体育館に顔を出した久井奈さんから話を聞いて半分驚き半分呆れた。
 
「うん。かなり頑張って勉強したつもりなんだけどなあ」
「そしたら、また1ヶ月くらい置いて他の所を受けるんですか?」
 
「もういっそ大学を受けようかな」
「えーーー!? だってセンター試験の出願期間はとっくに終わってますよ」
「私が国公立に通る訳無い。私立だよ」
「どこ受けるんです?」
「やはりA大学かな。いっそ看護師を目指そうかなと思って。いや歯科衛生士の資格取っても仕事無いよと聞いてさ」
「まあ歯医者さんがどんどん潰れているから」
 
「A大学は美々先輩が受けるんじゃなかった?」
「いや、美々先輩はA大学の短大部の方と聞いたけど」
 
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「でもA大学に看護師コースなんてありましたっけ?」
「今度開設されるんだよ。保健福祉学科というのが」
「へー」
「でも久井奈先輩、看護師のコースって結構レベル高いですよ」
「今から受験勉強して大丈夫ですか?」
「最初の年だし何とかなるんじゃないかなあ」
 

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「みなさーん、こんにちは。不思議探訪スペシャル北海道編。2日目は旭川にやってきました」
と谷崎潤子は旭川市内で明るくカメラに向かって語った。
 
「そして我らがつよーい味方、スーパー霊能者の火喜多高胤先生です。拍手」
と言って自分で拍手をしている。
 
やや派手な和服を着た60歳くらいの男性が笑顔で会釈する。
 
「火喜多先生は一昨日は函館で2ヶ所、昨日は札幌で3ヶ所、呪いのスポットを解消しちゃいましたね。今日は旭川でまずはここ《おいでの木》と呼ばれるスポットにやってきました。ここは夜このそばを通ると『おいでおいで』と呼ばれるという噂があるそうです」
と谷崎潤子は言う。
 
「先生、何かここ見えますか?」
「ああ、確かに何か居ますね」
「だったら、祓っちゃえば安全なスポットになりますかね?」
 
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「これはちょっと手強いですよ。うかつに向こうのペースに巻き込まれると、頭がおかしくなって自分でも訳の分からない行動をとってしまいます。犯罪を犯してしまう場合もありそうですね」
と高胤。
 
「実はですね。今年旭川では大きな放火事件があったのですが、その犯人はここで『おいでおいで』されて、その後、おかしな行動を取るようになった、という噂もあるんですよ」
と潤子。
 
「うん。そのくらいおかしなことになる可能性もある。特に日没前後にここに来るとダークサイドに引き込まれてしまいますよ」
 
「じゃ、やはり放火魔が放火に走った原因はこの《おいでの木》?」
「ありえますね」
 
と言いながら高胤は少し緊張した面持ちになる。数珠を取り出し、潤子に少し静かにしているように言う。この付近は放送の時はカットすることになるだろう。
 
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高胤はなにやら真言のようなものを唱える。しかし
「わっ」
と言って、はじき飛ばされるように数歩後ろに下がった。
 
「大丈夫ですか?」
思わず潤子と、ディレクターさんが声を掛けた。
 
高胤は
「大丈夫です。ちょっと油断しただけ」
と言って、再び数珠を持ち、その木に向かって歩み寄ろうとした。
 
その時。

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高胤の前に割り込んだ姉妹(?)が居た。15歳くらいと12歳くらいであろうか。
 
「済みません。今撮影中なんですが」
とディレクターが声を掛ける。しかしその妹の方は言った。
 
「あなた間違っている。これは邪悪なものではない。これは神様。神様を祓おうとしたら、あなた自身が死にますよ」
 
「ですよね?」
と姉の方に投げる。
 
「うん。これは神聖なものだよ。それを粗末に扱ったら、たたられて当然。これは祓うんじゃなくて、ちゃんとお祀りしてあげなきゃダメ」
と姉は言って少し目をつぶって考えるようにしてから
 
「例の子はストレス解消しようと、ここ蹴ったり石投げたりしたみたいね」
と言った。
 
「あんたたちテレビ局なら予算あるでしょ? 小さなのでいいから祠(ほこら)でも作って置くといいよ。ちゃんと祀れば、むしろ御利益(ごりやく)があるよ」
 
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そう妹のほうが言った時、そばで控えていた老人が出てくる。
 
「それは本当ですか?」
「あなたここの土地の地主さん?」
「そうです」
 
「お金あるなら祠を自分で作ればいいし、お金無かったらどこか縁のある神社に頼むといいよ。まともな神職さんならこれ見て対処法が分かるはず」
 
潤子が高胤を見る。
 
「この2人が言っているのは正しいです。私は見誤っていた。確かにこれは神様です」
 
「ここ、祠を設置しますよ。例の放火魔の噂の件もあってずっとここ気になっていたんだ」
と老人が言う。
 
「話はまとまった所でさ、千里さん」
「うん。ちょっとだけ処理する必要があるよね。天津子ちゃん」
 
ふたりはそう言うと《おいでの木》を見つめる。
 
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突然物凄い竜巻が起きて、潤子が思わず悲鳴をあげた。
 
「取り敢えずのガス抜きは出来たかな」
「うん。かなりよどんでいたもんね」
「余分なものはほぼ全部潰した」
「周囲に随分と雑多なものがあったからね」
「飛ばしてしまわないと神様自体がきちんと動けない」
 
「このくらいやっておけば後はふつうの神職さんでもできるよね」
「じゃ」
と言って撮影クルーに手を振り、千里と天津子はその場を去った。
 
「なんかここ凄くきれいになった気がする」
と谷崎潤子が言う。
 
呆然としてディレクターはふたりを見送っていたが、その潤子の言葉でハッと我に返る。
 
「今のカメラ回してた?」
「一応」
「よし。編集してうまくつないで適当にまとめるぞ」
 
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