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■女の子たちの事故注意(6)

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その日は試験なので部活は無かったが、翌12日からは再開される。それで練習していて千里はあれ?と思った。
 
試験前までの方が身体自体は作り上げられていた。しかしこの身体もそう悪くない感じなのである。そして何よりも、試験前までの練習で鍛えていたものがちゃんと使える感じなのが不思議な気がした。
 
その日の練習試合はL女子高とであったが、試合後溝口さんから言われた。
 
「村山さん、お姉さんいないよね?」
「私に姉がいるという話は聴いたことない」
「じゃ性転換して女になった元お兄さんとか?」
「そんなのもっと聞いたこと無い」
 
「いや先週対戦した人とは別人の感じでさ」
「私、劣化してた?」
「微妙」
「微妙?」
「先週、先々週の村山さんはまるで4〜5年後の村山さんがタイムスリップしてきていたみたいだった。女子大生と闘(や)ってる感じだったんだよ」
 
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溝口さんってやっぱり霊感あるんだなと千里は思った。
 
「先週の方が筋力はあったけど、瞬発力は今日の方が凄い」
 
そういう反射神経的なものは若い方が有利かもね。
 
「それと触った時の感触が先週の方が色っぽかった」
「私って実は12人いるんだよ」
「へー」
「そして毎日その中の誰かが出てくるんだ」
「その話信じたくなるかも」
 

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その日の夜、パソコンのDAW上で朝までに提出しなければならない楽曲の調整作業をしていた時、千里はふと思いついて尋ねた。
 
『ねえ、いんちゃん』
『うん』
『要するに、私って身体的には高2の秋に性転換手術を受けて、その後1年近く療養・リハビリして、今はその後の身体を使っているんだよね?』
『そうそう』
 
『つまり高3の秋から卒業までの半年くらいの時間をバスケの大会に参加する時に割り当てて、ふだんの時間は女子大生になった時の時間を使用している』
『そういうこと』
 
『最初そういう話を聞いた時、それなら女子大生の身体である時間に練習しても、それって女子大生になった後でしか使えなくて、女子高生の時間を使って出る大会には役に立たないんじゃないかという気がしたけど、そういう訳ではないんだね』
 
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『そりゃそうだよ。こないだ御主人様も言っていたように、女子大生の身体というのはハードウェアにすぎない。千里が女子大生の身体を使って今練習していた分は、ソフトウェア上はハードが女子高生の身体に戻っても引き継がれるんだよ。練習ってハードとソフトの両方を鍛えているから』
 
『だから女子大生の身体になっている時も練習するのは意味のあることなんだね』
『うん。だから頑張ろう』
 

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千里は結局ほぼ徹夜して13日朝5時に楽曲を3つ完成させて雨宮先生にメールした。幸いにもその日は試験の直後で朝の補習が無かったので2時間ほど寝てから学校に出かけた。雨宮先生から昼休みに連絡があった。
 
「今回はコードの勘違いのようなものが全く無かった。優秀優秀」
「ありがとうございます。音楽理論に詳しい友人から本を貸してもらってだいぶ読みましたので」
「そういう勉強をするのも偉いよ。あ、そうそう。例のAYAだけど明日14日にデビューイベントやることになったから。連休中は17日までの連休中札幌・仙台・大阪・神戸・福岡・横浜と6ヶ所でミニコンサート」
 
「え?9月1日にデビューしたんじゃなかったんですか?」
「音源を作り直したんだよ」
「えーー!?」
「いったん作って取り敢えず5000枚プレスしたCDを聞いた出版社の社長がこのユニットは、ゆみちゃんをメインボーカルにした方が売れると言い出して、1日のイベントは握手会のみ。CDはその場で予約した人には後日郵送するということにして、先週末録り直したんだよ。プレスしたのは廃棄」
 
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「なんと」
「でもメインボーカルを変えるというのに、あすかちゃんが猛反発してね」
「そりゃ反発するでしょうね」
 
「あすかちゃんのお父さんも入れて、出版社の社長とプロデューサーのロイヤル高島さんと4人で会談して、声質の問題もあって、音の調和が、ゆみちゃんの声を中心にした方がまとまりがいいのだということを説明して何とか納得してもらった。実はその納得してもらうのに時間が掛かったんだよ」
 
「ああ」
「やはりこれまで2度もレコード大賞取ってるロイヤル高島さんに言われては向こうも引っ込まざるを得なかった」
「でも良い方向性だと思います」
 
「立ち位置に関してはこないだの最初の音源制作でやったように曲によって交替する。でもメインボーカルは一貫して、ゆみちゃん」
「ああ。立ち位置くらいどうでもいいでしょう」
 
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「作り直したCD、週明けにでもそちらに1枚送るように手配しておくから」
「ありがとうございます」
 
という会話はしたものの、そのCDは一向に送られてこなかった。雨宮先生は決断力もあるし、その場ですぐしてくださることは素早いのだが、翌日以降になると忘れてしまうという大きな欠点がある。しかもこちらからは連絡が取れないことが多い!
 
それで千里はこのCDが気になったので北原さんに紹介したところ、北原さんが再度千里に1枚送ってきてくれた。録り直しにあたって歌詞の一部を北原さんが書き直したということで、前回の音源でとっても演歌的だった部分が今回はちゃんとアイドル歌謡の世界に修正されていた。
 

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そのAYAが全国イベントをしていた9月中旬の連休。千里はウィンターカップに向けてのまずは地区予選に出場した。
 
久井奈さんたちが抜けて、1〜2年生だけで構成する新チームのデビューである。この地区予選のベンチ入りメンバーは次のようになっていた。
 
2年生
PF.暢子(4) SG.千里(5) C.留実子(6) SF.寿絵(9) SF.夏恋(10) PF.睦子(11) PG.メグミ(12) SF.敦子(13) PF.川南(16) PF.葉月(17)
1年生
PG.雪子(7) C.揚羽(8) C.リリカ(14) PF.蘭(15) SG.結里(18)
 
インターハイのベンチ枠12人の内3年生が5人だった。その5人が抜けて、ウィンターカップは予選も本選も15人枠なので8人新たに追加されたことになる。昨年秋からメンバーに入ったり出たりしていた、敦子・睦子の2人が無事入ったし、インハイ直前で涙を呑んだメグミとリリカも復帰した。そして「ボーダー組」から、川南・葉月・蘭・結里が入ったものの、このあたりは現時点では「暫定的に入れてみた」レベルだ。
 
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なおインハイまではパワー・フォワードとして登録していた揚羽とリリカは今回からふたりともセンターとして登録することになった。また1年生の結里は本当はレギュラー枠の水準には全然達していないものの、1年生の中ではもっともスリーが巧いので千里のバックアップシューターとしてシューティングガード登録である。
 
なお、川南と葉月は進学コースに入っているので、10月上旬の振り分け試験あるいは12月の実力試験で学年20位以内に入らない限り、2年生までで部活は終了になる。
 
千里の場合はこれまでずっと20位以内をキープしているのでこのまま成績を落とさなければ来年のインターハイまで活動できる。暢子はビジネスコースなのでこの制約と無関係に来年の夏まで活動できる。一番問題なのが留実子であった。
 
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「実弥君の場合は、やはり2年生で部活終了と考えておいた方がいいかな」
 
と南野コーチは、千里と暢子を呼んで3人で話した。
 
「実弥、いっそビジネスコースに変わろうかなとかも言っていたのですが、部活を半年長くできることより自分の将来設計を優先した方がいいと私は言いました」
と千里。
 
「まああいつ試験の要領がいいからわりと上位にはいるけどさすがに20位以内になるのは厳しいと思う」
と暢子。
 
「実弥君が抜けるのは痛いけどやむを得ないね」
と南野コーチも苦渋の表情である。
 
「それより千里、勉強手抜くなよ。成績20位以内から落ちたら、殴るぞ」
と暢子が言う。
 
「うん。私もそれは頑張る。春頃は規定通り2年生で部活終了でもいいかなと思ってたけど、インハイに行って凄い所と対戦して、俄然やる気出た」
 
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「千里ちゃんが外れたら辛すぎるよ」
と南野コーチ。
 
「千里ってそのやる気出すのに時間がかかるからなあ」
と暢子は困ったように言った。
 

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そして地区予選である。旭川地区の男女各12の高校のチームでトーナメントを行って、上位2チームが道予選に進出できる。L女子高やE女子高など女子しかない所もあるが、男子の方もB工業・V農業と男子チームしかない学校があるので、今回どちらも同数になっている。
 
V農業は一応女子バスケ部があって、夏に旭川地区のインハイに出ない学校で行われていた大会には出ていたのだが、今回は2年生以下の正部員が4人しか居ないため不参加ということであった。正規の大会はバスケット協会に登録されている部員しか出られないので臨時の助っ人は使いにくい。
 
12チームでトーナメントなので4チームがシードされている。今回のシード枠はインハイに行ったN高校・M高校、それに常勝校のL女子高ともうひとつはR高校が取った。R高校と実力的には拮抗しているA商業は今回は1回戦からであった。
 
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「一時は道大会に行く学校は3校ならL女子高・うち・R高校で、2校の大会なら、L女子高が指定席でもうひとつをうちとR高校で争うという3強時代が結構あったんだけどね」
と南野コーチが言う。
 
「M高校がやはり中嶋さんの加入で強くなったし、A商業も愛沢さんが入ったので強くなったから」
と寿絵が言う。
 
「だけど愛沢さんは3年生で、もうこの大会からは出ないからね」
と暢子。
「3年生は夏の大会までって所は多いよね」
とメグミ。
 
「愛沢さん、専門学校進学か、あるいはそのまま就職のつもりだったけど、バスケ続けたいから大学目指すと言ってた。夏休みもずっと塾通いだったみたいだよ」
と千里。
 
「やはりバスケ都合で進路変える人たちも多いんだろうな」
と暢子は遠くを見るような目で言った。
 
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暢子はビジネスコースに入っていて、既に日商簿記3級や英検2級・漢検2級に秘書検定、基本情報技術者試験(昔の二種情報処理技術者試験)などに合格しているし原付免許も持っている(但し免許証は学校に預けている)ものの、どうも内心は旭川市内のバスケが強い某私立大学を狙っているようなことを千里の前ではほのめかしていた。しかし進学コースに変わると部活を2年でやめなければならないので来年のインターハイに行けないというジレンマがある。
 

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女の子たちの事故注意(6)

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