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■女の子たちの水面下工作(4)

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この土日の練習は学校の設備を使っておこなったもので「合宿」ではなかったのだが「家まで帰る気力無い」「学校に泊まってもいいですか?」という声があったので、校内の研修施設を開けてもらい、そこでかなりの子が寝泊まりした。
 
8日の練習が終わってベンチ組(睦子を含む)の16人だけ特に南野コーチから呼ばれて特別な注意を受ける。
 
やはり各々の体調管理をしっかりすることというのが基本であった。風邪を引かないようにむやみな夜更かしをしないこと、当面ゲームなども控えて規則正しい生活を送ること、感染症予防のため、人混みにはあまり近づかないこと、などを言われる。
 
「千里ちゃん、バイトの方は休める?」
「6月30日の夏越の大祓には出ましたが、その後はインターハイが終わるまで1ヶ月休ませてもらっています。夏休みはバイトの巫女さんもいるから何とかなるんですよ」
「なるほどね」
 
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「みんな生理のタイミングはどう? インハイの期間に生理が来そうな子は?」
 
手を挙げたのは、みどりと寿絵である。
「でも40分走り回るのは平気ですから」と寿絵。
「私もこれまで何度も生理中に試合が来たことあるけど、何とかなりましたから」
とみどりも言う。
 
南野コーチは念のため特に主力には個人的に確認する。
 
「久井奈ちゃんはいつあった?」
「昨日あたりからちょっとおかしいんです。たぶん週明けに来ます」
「穂礼ちゃんは?」
「私も同じです。多分週明けですから、その次はインハイの決勝戦の後になると思います」
 
「留実子ちゃんは?」
 
どうも南野さんは背番号順に確認しているようだ。
 
「月末に来たので、インハイ直前に次は来ると思います。でも私の周期は結構乱れるからピル使った方がいいかなという気はしてます」
「ピル持ってるんだっけ?」
「持ってるから大丈夫ですよ」
 
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「間違って男性ホルモン飲むなよ」
と暢子から言われる。
 
「アロンアルファで蓋を留めてるから大丈夫だよ」
と留実子。
 
アロンアルファで留めてないと、フラフラと飲みたくなることがあるのだろう。自分の意志のコントロールは大変である。
 
「暢子ちゃんは?」
「私もインハイ直前に来ると思います。私のは周期あまり乱れないから大丈夫だと思う」
 
「スターティング5の2人がインハイ後、2人がインハイ前というのは理想的だな」
などと南野さんは言っている。そして
 
「千里ちゃんは?」
とうっかりコーチは訊いてしまった。
 
「私も昨日あたりからお腹が少しおかしいので恐らく火曜日くらいだと思います」
と千里は答えた。
 
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「・・・・・」
 
「千里ちゃん、生理あるんだっけ?」
「こないだは中間試験の2日目、6月12日だったんですよね。だから28日後が7月10日、次は8月7日で、うまい具合に道大会にもインハイにもぶつからないタイミングです」
 
「なんで生理があるの〜〜〜!?」
「私、女の子ですから」
 
「へー」という顔をしている部員が多いが、留実子と暢子は苦しそうにしていた。
 

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7月13日。体育祭が行われる。この学校の体育祭は球技大会に近いもので昨年は男女バスケット・男女バレー・女子ソフトボール・男子サッカー・陸上リレー(男子1600m,女子800m)、水泳リレー(男子400m,女子200m)といった種目だったのだが、今年は女子がソフトではなくサッカー、男子はサッカーではなく野球に変更された。また陸上に男子3000m,女子2000mというのが追加された。
 
去年は千里は女子ソフトボールのピッチャーをしたのだが、今年はさて何に出ればいいのかなと考えていた所、男子から言われる。
 
「村山、凄いピッチャーなんだって?」
「バスケットのゴールにあんな遠くから入れられるんだもんなー。ソフトや野球のボールも正確になげられる訳だよな」
「村山がまだ男だったら野球チームに欲しかったところだ」
 
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「ボクまだ男だけど」
「あ、戸籍は20歳まで直せないんだってね?」
「手術は去年の夏休みにラトビアのリガでしてきたって聞いたけど」
 
ラトビア!?それは私も初耳だ!リガってどこ?と千里は思った。
 
「取っちゃったチンコまた付ける訳にもいかないだろうし、女子の方で頑張れよ」
などと男子たちは言っていた。
 
「千里、シャトルランで130出したんだって?」
と学級委員の徳子から言われる。
 
「うん、そんなものだったかな」
「じゃ女子2000mに出てよ。そんな長い距離全力疾走できる子はそうそう居ないからさあ」
「私体力無いよぉ」
「シャトルラン130ってオリンピック選手並みの数値なんでしょ? 男子でも100越えたのって、数人しかいないみたいだし」
「だってボク男子だし」
「え?でも既に性転換してるんでしょ? スウェーデンのストックホルムで中3のお正月に手術したって聞いたけど」
 
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スウェーデン!?どこからそんな話が!?
 

そういう訳で、うやむやの内に千里は女子2000mに出ることになった。出場者は各クラス1名ずつで18人で走る。
 
メンツを見ると全員運動部の所属だ。陸上部員も3人入っているので、この3人で上位独占かなと思ったら、とっても気楽になった。バスケ部の夏恋と揚羽も入っていたので手を振っておく。
 
号砲でスタートする。この校庭のトラックは1周200mなので10周することになる。長丁場なので無理せず最初は第3グループに入って走って行った。第1グループは陸上部の1年生のSさんと2年生のMさん、それにバレー部の3年生Kさんの3人。第2グループは4人で、千里が入っている第3グループは5人。ここに夏恋も入っている。揚羽はもっと後ろにいるようだ。
 
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4周目まで行った所で第1グループの陸上部Sさんが遅れ始める。5周目の所で第2グループに吸収されてしまったが、その第2グループも2人と3人に分裂。第3グループも千里・夏恋と、他の3人に分裂。これが6周目になると結局、第1グループ2人、第2グループ2人、第3グループ5人になり、第3グループには第1グループから落ちてきた陸上部Sさん・千里・夏恋が入っていた。
 
そのSさんが7周目でスパートを掛けた。これに千里・夏恋が付いていく。彼女はどんどんスピードを上げるが、千里も夏恋もここまで体力を温存していたので、しっかり付いていく。付いてこられると彼女も走りにくい雰囲気ではあったが、それでも頑張る。やがて3人は第2グループを捉え、一気に抜いてしまった。
 
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3人は第1グループからは半周離されている。第1グループの先頭争いをしているMさんとKさんもスパートを掛けているのでなかなか追いつけないが、千里たちは結果的に3位争いをしながらスピードを上げていた。
 
その時、猛然と後ろから迫る足音がある。
 
ここまで下の方にいたもうひとりの陸上部員Tさんだ。彼女はやがて千里たちの集団に追いつくと、一気にそれを抜いていく・・・・が、これに千里が付いていった。
 
夏恋とSさんの2人は置き去りである。
 
既に8周半走っていて、残りは1周半である。千里とTさんがデッドヒートをする。その半周前では最初から先頭を走っている陸上部Mさんとバレー部Kさんがデッドヒートをしている。あっという間に残り1周の鐘を聞き、千里は気合いを入れ直し、ピッチを早める。Tさんの前に立つ。すぐ後ろにTさんの足音が聞こえる。ここでスパートを掛ける。
 
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千里の力強いステップにTさんの足音が遠くなる。少し前でMさんとKさんが激しい争いをして、やがてMさんがKさんより少し前に立つ。そのままゴール。続いてKさんがゴール。そしてそれにほんの5-6秒遅れて千里はゴールした。最後の方で再びTさんの足音が近づいてくるのは感じたが、千里の逃げ切り勝ちであった。
 

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結局優勝は陸上部のMさん、2位がバレー部のKさん、3位が千里、4位が陸上部のTさん、5位には陸上部のSさんをゴール直前で抜いた夏恋が入った。ここまでがポイントをもらった。揚羽も7位だった。
 
「さすがインターハイに行くだけあって今年のバスケ部は凄いな」
などと表彰をしてくれた陸上部顧問から言われた。
 
「3位までに入れなかったTとSは後でロード10km」
「はい!頑張ります」
「でも少し休ませてください」
と疲れ切った表情の2人は言っていた。
 
「でも村山さん、ペース配分間違ったでしょ?」
と3位争いをしたTさんから言われる。
 
「うん。実は余力がかなり残ってた。やはりこういうレースに慣れてないからだよ」
と千里。
「ああ。バスケットは40分間走り回るからな」
と陸上部顧問。
 
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「まあ途中に休憩はありますけど」
「2000mは8分くらいの勝負だもんな。村山、ハーフマラソンとかに出てみない?」
「インターハイ終わってから考えます」
 

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体育祭の翌日14日(土)から16日(祝)は女子バスケ部のインターハイに向けての第一次合宿が行われた。
 
合宿は女子部員36人全員参加だが、特にこの第一次合宿では基本を押さえることを重視した。遊びに行く場所の無い山中の少年自然の家に泊まり込み、アップダウンのある山道のジョギング3kmのあと、ドリブル練習、シュート練習、リバウンド練習、パス練習、ブロック練習、などをひたすらやる。最後は合宿所の周囲(300m)を20周回って終了(その後整理運動・マッサージ)である。
 
ただし、この時期に故障しては意味が無いので「きついと思ったらサボれ」というのを徹底した。3年生の麻樹はそれでかなりサボっていたので(実は南野コーチに頼まれてサボる見本になってあげた)、おかげで下級生も無理せず自分の体力に合わせたトレーニングを積んでいた。
 
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メニューをフルにこなしていたのは、久井奈・千里・暢子・夏恋・揚羽の5人だけであった。特に千里・暢子は最後の合宿所の周りのジョギングを自主的に倍の40周、夏恋と揚羽も30周やっていた。睦子と敦子もやろうとしたが、南野コーチにあんたたちはまだ身体ができてないから足腰を痛めるからダメと停められた。ちなみに麻樹は5周しか走っていなかった。
 
食事は14日のお昼はフライドチキン、夕食が焼肉、15日は朝がカレー、昼はハンバーガー、夕食がスキヤキ、16日は朝がシシカバブー、昼がハマチの刺身、と蛋白質たっぷりのメニューで、お代わり自由だったので、みんなたくさん食べていた。ハンバーガーの中身だけお代わり!とかカレーの具だけお代わりなんてやっていた子も結構いた。
 
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朝の山道(実は遊歩道)のジョギングでは、千里と揚羽が先頭に立ってみんなを引っ張る形になった。それに留実子・暢子・夏恋あたりが続く構図になることが多かった。むろん最後尾は麻樹である!
 
「揚羽ちゃん、スタミナあるね」
と暢子が言う。
 
「私、小学校が凄い山の中にあったんです。もう廃校になっちゃったけど」
「へー」
「毎日通学が登山でしたから」
「それは鍛えられてるね」
「千里さんは留萌ですよね。網を引いてたとかですか?」
とリリカが尋ねた。
 
「私は山駆けをしてるんだよ」
「へ!?山伏みたいなのですか?」
「ああ、今ホラ貝習っているんだよ。あれ結構難しい」
「へー!」
 

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「千里、練習もたくさんこなしているけど、食事もたくさん食べてるね」
 
と食事の時に南野コーチから言われる。
 
「トレーニングと食事は表裏一体ですよ。身体を動かして蛋白質を取ることで使える筋肉が発達するんです」
「なんか1年生の頃のとんでもない少食を知ってると、千里の発言とは思えない発言だ」
「まあ練習サボってましたから」
「なるほどね〜」
 
「千里、男の子の目がある所とない所の差ってわけじゃないよね?」
と寿絵から言われる。
 
「そういう表裏は無い子だったよ」
と古くからの千里を知る留実子が言った。
 
「だけど最近るみちゃん、ますます男っぽくなってきている」
「男性ホルモンとか飲んでたりはしないよね?」
「それ飲むとドーピングになっちゃうから、飲めません」
「そうか。それは難しい問題だね」
「それに彼氏が子供2人くらい産むまでは女やめないでくれと言ってるので」
「それも悩ましいね」
 
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「千里は女性ホルモン飲んでるの?」
「飲んでますよ。それでちゃんと女性ホルモンの濃度がふつうの女子と同じ程度になるようにしてるんです」
「そうか! 千里の場合は女性ホルモンを飲まなかったらドーピングになるのか」
「うん。だから最近は真面目に飲んでる」
と千里。
 
「1年の頃はかなりサボってたもんね」
と留実子が言う。
 
「なるほど、何でもサボるのが千里だ」
と南野コーチが納得するように言った。
 

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「でも最近、るみちゃん凄く男らしいから『るみちゃん』って女名前で呼ぶのが申し訳ないくらい」
 
「るみちゃん、男名前も使ってるんでしょ? 男名前は何ていうの?」
「あ、えっと・・・実弥(さねや)かな」
「へー!」
 
「じゃ、サネちゃんとか呼ぶ?」
「その呼び方は放送禁止用語っぽい」
「うっ・・・」
 
 
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