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■女の子たちの水面下工作(3)

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血液検査と尿検査の結果を聞く。
 
「女性ホルモンの量も男性ホルモンの量も通常の女性の範囲内ですね。女子スポーツ選手の中には別にドーピングとかしてなくても、結構男性ホルモンの値が高い人もいるのだけど、あなたの場合、男性ホルモンが凄く低い」
 
「私、去勢する前から、そんなこと言われてました」
「女性ホルモンは注射?飲み薬?」
「飲み薬です」
 
見せて下さいと言われるので、千里は常備薬を見せる。
 
「こちらがプレマリン、こちらがプロベラの、どちらもジェネリックです。どちらも毎日3錠ずつ飲んでいます」
 
「ちょっと2〜3錠ずつもらっていい? 念のため成分検査したい」
「なんでしたら1シートどうぞ」
と言って、千里は両方のお薬を1シートずつ渡した。
 
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「これはどうやって入手してるの?」
「個人輸入です。ガイドラインだと20歳になるまでこういうお薬もらえないから」
「処方箋を書いてあげようか? そしたら普通に薬局で買えるよ」
「わあ、それは助かります!」
「既に性転換手術まで終わってるんだったら、もう今更ガイドラインも何も無いよ」
「私の先輩が、性転換なんてやったもの勝ちって言ってました」
「ああ、そういう意見は聞いたことある。それから札幌の医師でも良ければ知り合いの医師を紹介するけど」
「ああ。じゃ、時々診てもらおうかな」
「うん。それがいいよ。調子良くしていても人工の女性器は天然の女性器よりトラブルが起きやすいから」
 

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停留睾丸などが存在しないことをチェックしなければならないのでということでMRIにも掛けられた。ところが、一度検査されてから再確認したいと言われて再度装置に入ったのだが、医師は悩んだ末「ごめん。もう1度」と言って、最後はオープンMRIに入り、リアルタイムで体内の様子を撮影しながら医師と対話した。このオープンMRIでの検査は1時間以上に及んだ。しかし医師は更に混乱したようであった。
 
「こんなのって有り得ない」
などと言って医師は本格的に悩んでいる。
 
「あまり悩むと身体に良くないですよ。理屈に合わないことは一番それらしい解釈をしておくことが、研究者として長生きする道だと、私の知ってる、ある大学の教授は言っていました」
 
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「そうかも知れない。でも村山さんが間違い無く女性であることだけは、私がしっかり確認させてもらったよ。ごめんね。いろいろ恥ずかしい検査までさせてもらって」
 
「いえ。お医者さんに見られるのは別に気にしません。まあ、こんな所まで見せるのは、お医者さんと彼氏だけですけどね」
 
「まあ確かに彼氏にはある程度見せるかもね」
「私おちんちんがまだ付いていた頃もうまく誤魔化していたから、彼は私がいつ女の身体になったか分からないみたいですけどね」
 
「・・・村山さん、彼にはしっかり避妊してもらってよね」
「はい。大きくなったらすぐに付けてくれています」
 
医師は頷いていた。
 

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病院での検査の後、またバスケット協会の方に行き、千里が間違いなく女子であること。去勢から長時間経ち、男性的な筋肉は残っていないので、女子として参加してもらってよいというのを再確認してもらった。
 
「1年前に性転換したというのは正直、私も気付かなかったのですが、村山さんが体力とか筋力とかを付けてきたのは今年のお正月以降なんです。男子チームに入っていた頃ってシュートはうまいけど体力が無いというのが凄い課題だったんですよね。あとスピードが無かったから上手い人にマークされると完全に封じられていたんです。でも1月以降凄い努力してそれを克服してきている。ですから今村山さんに付いている筋肉はまちがいなく、女になって以降のものですよ」
と南野コーチは言ってくれた。
 
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「男性と女性では筋肉の付き方も違うのですが、村山さんは間違いなく女性の筋肉の付き方をしています。正直、見た感じでは実質去勢してから3−4年は経っている感じなんですけど。中学1年の時から女性ホルモンの注射とかしてもらっていたというので、その時点でもう男性でなくなっていたのでしょうね」
と診察してくれたL医師も言う。
 
「村山さん、最後に勃起したのっていつだっけ?」
「小学生の時です。実は昨年性転換前に1度夢精したことはあるのですが、射精経験もその一度だけです」
「精子がなくても射精機構は働くからね。女性ホルモンを長年やっている人って、勃起せずに射精しちゃうんですよね。むろん精液に精子は入ってないのですが」
 
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「私、性転換の後5ヶ月くらいはほとんど療養していたんですよね。ですから、本格的なリハビリと練習を再開したのは5ヶ月経ってからだったんです」
と千里。
 
「つまり今年初めからだよね?」
「毎日何十kmというロードワークやってましたから。学校にバレると叱られるから黙ってましたが」
と千里。
 
「うちの学校は進学校なので、本当は部活の時間以外の練習とかは禁止なんですよね」
と山本先生が言うと、委員長さんも「なるほどですね」と言って頷いていた。
 

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バスケ協会を辞してからホテルに入り、部屋の中で3人で少しお話しした。
 
「でも7月の中旬に手術を受けるというのはいちばん上手いタイミングだよね。夏休みの間、身体を休めていられるもん」
と山本先生が言う。
 
「ええ。学業とかに影響が出ないように手術を受けるにはそのタイミングしかないんです」
と千里。
 
「さっきの手術明細書だっけ、もう一度見せてくれる?」
「はい」
 
と言って千里はそれを山本先生・南野コーチに見せる。
 
「タイ語は分からないなあ」
「そこ日付が月日しか入ってないんですよね。本来内部的な書類だったのを記念にもらったので」
「7月18日って言ってたね。18は数字で書いてあるけど、その後が読めない」
「カラカダーコムと読むそうです。そこだけ教えてもらいました」
 
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「あれ?去年の7月18日ってまだ夏休みに入ってないよね?」
「それ実は2012年7月18日なんですよねー」
「へ?」
 
「私が性転換手術を受けたのは5年後なんです」
「はぁ?」
「意味が分からない」
「私も実はよく分からなくて困っているんです」
 
と千里は本当に困っているような顔で言った。
 
「つまりですね。1年前の私が5年後にタイムスリップして性転換手術を受けてきて、今の私はそれから1年経った状態みたいなんですよね」
 
「えっと・・・」
 
「なんてこと言ったら、今度はきっと精神鑑定受けさせられますよね」
「うん。そういう話は人にはしない方がいい」
「ええ。ですから聞かなかったことにしてください」
 
「そうしよう。何だかよく分からない!」
 
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翌7月3日、東京から旭川に千里たちが帰る前に再度バスケ協会から連絡があり、旭川N高校への正式なインターハイへの参加案内の書類が南野コーチに渡された。明日4日に組合せ抽選が行われるので、ギリギリのタイミングである。本来は道大会が終わってすぐ渡されるべきだったもので、遅くなって申し訳なかったと言われた。おそらく千里の性別を再確認することが、N高校を女子代表として認めるために必要なことだったのであろうと千里は思った。南野コーチはその場で予め用意していた参加申込書を提出した。これも実は6月27日が提出期限だったのを、そもそも正式な参加案内をもらっていなかったので提出保留していたのであった。
 
南野コーチと宇田先生は恐らく念のため千里の入ったメンバー表と千里を抜いたメンバー表を用意していたとは思うが、万一自分が男と判定されていたら、N高校の出場自体が取り消されていたかもと千里は冷や汗を掻いた。
 
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やはり性転換しておいて良かった!
 

旭川に戻ってから、書類を宇田先生に渡す。そして部活の時間にあらためて教頭先生から披露されて、女子部員たちの歓声と、男子部員たちの「いいなぁ」「頑張ってね」という声が上がっていた。
 
ここで宇田先生からインターハイの登録メンバーが発表される。道大会は15名登録できたのだが、インターハイの本大会は12名である。3人は漏れてしまうことになる。むろん逆にギリギリの付近だった子は道大会に入っていなくても本大会でベンチ枠に入る可能性もある。
 
「ベンチから漏れた選手も含めて部員全員佐賀には連れて行くから。やはり、レベルの高い試合を見て勉強して欲しいというのが第一。それと対戦校の試合を偵察撮影して欲しいんだよね。ただ撮影するだけなら誰でもできるけど、それ以上にバスケをする人の目で見た試合の印象が大事だと思う。それはバスケ部員にしかできないんだ」
と南野コーチは事前に説明した。
 
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「4番主将ポイントガード岬久井奈、5番副主将スモールフォワード土田穂礼、6番センター花和留実子、7番パワーフォワード若生暢子、8番シューティングガード村山千里、9番センター高橋麻樹、10番シューティングガード広沢透子、11番センター原口揚羽、12番ポイントガード森田雪子、13番スモールフォワード根岸寿絵、14番スモールフォワード木崎みどり、15番パワーフォワード白浜夏恋。これにマネージャー登録で瀬戸睦子」
と宇田先生がメンバー表を読み上げた。
 
「睦子ちゃんは声援係だね」
と南野コーチ。
 
「分かりました。声援、頑張ります!」
と本人は言っているがさすがに悔しそうだ。
 
「メグミちゃん、敦子ちゃん、リリカちゃん、あたりはボーダーラインで凄く悩んだんだけど、現時点でいちばん力を出してくれそうな所を選択した。ウィンターカップは15人出られるから、また頑張ろう」
「はい!」
 
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インターハイ本戦のベンチに入れるのはコーチ兼引率責任者(宇田先生)、アシスタントコーチ(南野コーチ)、選手12名、そしてマネージャー1名である。
 
旭川N高校は女子高時代からの伝統で、男子野球部以外では本来マネージャーという制度が無い。掃除や洗濯、スコア付けなどは部員が自分たちでやることになっている。女子高にはこういう所が結構多いのである。
 
睦子は地区大会ではベンチ枠に入っていたものの道大会では敦子と入れ替わりでメンバーから外れた。しかし本戦では睦子・敦子ともに涙を呑むことになった。ただ睦子の頑張りは凄いので、声援係としてマネージャー登録でベンチに入れることにしたのだろう。
 
みどり・夏恋・メグミ・リリカあたりは実力的にはほとんど変わらない。むしろリリカが頭一つ出ている感じさえある。南野コーチも宇田先生もかなり悩んだと思うが、みどりを入れたのは3年生優先、夏恋を入れたのは彼女が地区大会・道大会でラッキーガールになっていたからであろうと千里は思った。
 
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夏恋は地区大会決勝の旭川L女子高戦でも最後にダメ押しとなるスリーポイントシュートを入れたし、何と言っても道大会決勝リーグでN高が代表となるのを決めた最後のフリースローを入れている。
 
ベンチ枠から漏れたメグミ・リリカ・睦子・敦子に道大会でマネージャー枠でベンチに座った蘭あたりが秋に向けてベンチ枠を再度競うことになる。
 

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7月7-8日の週末は朝から晩まで練習をした。インターハイ出場が決まった女子バスケ部だけの特例であったが、この2日間は基礎体力の充実というのに主眼を置いた。校庭30周に始まり、遠泳でプール20往復、シャトルラン!、反復横跳びとやらされて「体力測定を再度やってる感じ」という声も出ていた。
 
ベンチ枠に入っている子は(睦子も含めて)フルメニューをこなすことという指示で、入っていない子は自主的に距離を短くしてもいいと言われたのだが、敦子・メグミ・川南・リリカ・蘭・結里などボーダー組はベンチ組と同じメニューをちゃんとこなしていた。
 
2日目になるとシュート300本というのもやった。南体育館(朱雀)には試合用・練習用あわせて20個ものゴールがあるので、インハイに出るメンバーは1人1個を占有し、インハイに出られない1年生メンバーが1人ずつ球拾い係になって付いて、ひたすらシュートを撃った。
 
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また平均台の上でドリブルするなどというのもやった。ドリブルの精度を上げるのが目的である。
 
ハードな練習なので3時間やったら1時間休むというサイクルで練習したが、休憩時間には仮眠している子もいた。
 

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女の子たちの水面下工作(3)

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