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■女の子たちのベビー製造(4)

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整列する。
 
「74対64でN高校の勝ち」
 
「ありがとうございました!」と挨拶した後、お互いに握手する。何人かハグし合う姿も見られる。千里も自分をずっとマークしていた溝口さん、キャプテンの池谷さん、シューターの登山さんとハグした。
 
お互い完全燃焼であった。
 

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試合終了後、更衣室で下着を交換してから帰ろうとしていたら、今対戦したL女子高の登山さんから声を掛けられた。
 
「村山さんって、去年N高男子チームに居た凄いシューターの村山さんの妹さんなんですって?」
「え?」
 
「兄妹そろって凄いシューターですね。でもお兄さん亡くなったんだそうですね。大変だったろうけど、頑張って下さいね」
「あ、えっと。ありがとうございます」
と言っといて、自分でも千里は変な挨拶だと思う。
 
「うちのキャプテンがM高校の松村さん(友子)から聞いた話では、お兄さん、睾丸の癌で治療のために女性ホルモンの投与を受けて、睾丸もペニスも手術で取ったので、女性的な外見になってたんだそうですね。随分大変な闘病生活だったんでしょうね」
 
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自分のことを一番知っている筈の友子から聞いたというのに、なぜこんなにも情報が変形しているのだ!?
 
「なんか、それ話が違っている気がするんですけど」
「あれ? そうですか」
 
などと言っていた時に、登山さんを呼ぶ向こうのコーチの声がする。
 
「あ、呼ばれてる。今日は負けたけど、道大会で当たったらリベンジするから」
「ええ。こちらも負けないように、また鍛えていきます」
 
それで笑顔で握手して別れた。
 
「人の噂って凄いね」
と暢子が呆れたような顔をしていた。
 
「あの話、きっと妹さん本人からも聞いたから間違い無いってことになって更に広まって行くよ」
と寿絵が言った。
 

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なお、留萌の方では、貴司たちのS高校は男子も女子も地区大会で優勝して、道大会への出場を決めていた。女子は今年の春から「女子バスケット同好会」が「女子バスケット部」に昇格したので、部になってから初めての道大会出場ということになる。
 
ゴールデンウィーク前は学校の中も、気がそぞろの雰囲気になる。
 
古文の授業を受けていた時、千里はふと窓の外で鳥が鳴いているのに気付く。何の鳥かな? 南の方から飛んできたのだろうか?などと考えていたら
 
「村山」
と先生から当てられる。
 
「今僕が読んだ歌の意味を述べなさい」
 
『えーん。聞いてなかったよぉ。《りくちゃん》教えて』と後ろの子に言うと、《りくちゃん》は少し呆れた感じで『副教材の12ページ5番目の歌』と教えてくれる。千里は慌ててそのページを開き、歌をまずは読んでから解釈する。
 
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「鶯の谷より出づる声無くは、春来ることを誰(たれ)か知らまし。ウグイスが谷から出て来て鳴く声が聞こえないので、これでは春が来たことを誰が知るだろうか?誰も知らない。つまり、早くウグイスさん谷から降りて来て鳴いてくれ、要するに、春よ早く来い、という歌です」
 
「ほほぉ。ボーっとしていた割りにはちゃんと聞いてたんだな」
「はい。大江千里(おおえのちさと)の歌ですから」
 
「ああ、お前の専門だな。大江千里の歌で百人一首に入っているのは?」
「月見れば千々に物こそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど」
「さすが、さすが」
 
「ちなみに大江千里(おおえせんり)も好きですよ。母がファンなもので、よく聞いてました」
 
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「大江千里(おおえのちさと)と大江千里(おおえせんり)の違いは何だと思う?」
「あ、えっと・・・歌人と歌手の違いかな」
 
この千里の解答に教室内から思わず「おぉ」とか「凄い」という声があがる。
 
「いい回答だな。僕もそれを採用することにしよう」
と先生も千里の答えを気に入ったようであった。
 
「私個人では森高千里(もりたかちさと)も好きです」
「まあ、千里という名前は男も女もあるよな」
「ええ、それでよく小さい頃から私も性別を間違われていました」
 
と千里が言うと、教室内で忍び笑いの声が多数聞こえる。
 
「うんうん。でもそうやってちゃんと女子制服を着ていたら、間違えようが無いよな?」
と先生が言う。
 
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それで千里は「え?」と思って自分の服を見ると、普通に女子制服を着ているし頭にもショートヘアのウィッグを付けている。
 
「あれ〜〜〜?」
 
なんか前にもこのパターンはあったぞ、と千里は思った。
 

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授業が終わった後、千里は男子制服に着替えて来ようとしたが、クラスメイトに停められる。
 
「女子生徒は女子制服を着ているのが本来なんだから、その服で良いはず」
 
と言われて、結局その日はずっと女子制服を着ていることになった。
 
「まあ千里が朝から女子制服を着て授業に出ているということは、つまりボーっとしている時だというのが、先生にも認識された気がする」
と京子に言われる。
 
「でも、ああいう状況で当てられた時って、千里、ちゃんと正しく反応するよね」
と梨乃は感心したように言う。
 
「あれはね、耳の1%で聞いているんだよ」
「凄い」
 
「その感覚を残せる人は自動車のドライバー向きと聞いたことがある」
「ほほぉ」
「運転中に睡魔に襲われたような時に、そのまま完全に眠ってしまう人は事故を起こすんだよね」
「まあ睡眠しながらは運転できないだろうな」
 
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「ところが運転中に眠り掛けても1%だけ感覚が起きている人って居るんだよね。そういう人はその1%の感覚で運転し続けるから、車をちゃんとコントロールして、いったん安全な場所に停めたり、あるいは窓を開けて風を顔に当てたりして自分を再覚醒させたりできる」
「へー」
 
「長距離の運転をするドライバーには、このタイプがいるんだよ」
「逆にそういう人でないと、長距離トラックの運転手とかは務まらないかも」
「ハードスケジュールだもんね。わずかの遅れも許されないし」
 
「そういう感覚って、傭兵なんかで生き残れるタイプでもあるよね?」
「うんうん。敵襲を即察知できないと、戦場では生き残れない」
「熟睡してたら、気付いた時には既に死んでるだろうね」
「武士はクツワの音で目が覚めなければならないってのも多分同じ話」
「香箱になって寝ている猫なんかもその状態だよね。あの体勢は即動けるんだ」
 
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「千里、トラックの運転手か傭兵さんか武士になる?」
「どれもハードそうだなあ。野良猫とかも大変そうだし」
 

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ゴールデンウィークの直前、千里たち2年生の女子たちの間に衝撃的な情報が流れてきた。
 
「3組の忍ちゃんが妊娠したんだって」
「えーーー? どうすんの? 中絶?」
 
「そうそう。最初は本人もそのつもりで、クラスの女子でカンパして手術代を作ってあげて、学校に知られないうちに中絶しちゃおうということになったらしいのよ。ところがさ」
「うん」
 
「病院に行って中絶の方法とか聞いてるうち『私、この子を殺したくない』って言い出して」
「じゃ、産むの?」
「本人、産む気満々」
「すごーい、で学校は?」
 
「普通なら退学じゃん。ところが忍ちゃん、教頭先生と凄いディベートやったらしい」
「ほおほお」
「16歳の女の子は法的に結婚できる年齢ですって。だから自分は結婚して産むから休学を認めて欲しい、というのよ」
「へー」
「だって子供のいる女性が社会人入学してきたら、ママさん女子高生になるわけじゃん」
「確かに」
「それが認められるのなら、適法な結婚をして、適法に子供を産むのに退学処分にするというのは道理が通らない、と」
「うむむ」
 
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「それで、生活指導の先生とか、保健室の先生とか、担任・学年主任に、途中で呼びだされた忍ちゃんのご両親に、最後は校長や急遽出て来た理事長さんまで入って大激論の末、法的に結婚している生徒が子供を産むのは退学処分の対象外だし、出産前後の休学も認めるということになったのよ」
 
「すごーい!」
「どうも春休みにやったセックスで妊娠したみたいなのよね。避妊はしたつもりだったらしいけど失敗したみたいね。それで向こうの両親とも話してすぐに籍を入れて。予定日は12月だから、今年の2学期と来年の1学期の1年間を休学するんだって」
 
「でも、凄いなあ。私たちと同い年でお母さんになっちゃうなんて」
「頑張って議論して休学を認めさせたのが偉いよね」
「やはり、母は強いんだよ。それに忍ちゃん、休学中もしっかり勉強続けるし復学した後は北大を目指すから、復帰後は進学コースに入れて欲しいと言ったらしい」
「すげー」
「彼女、1年生最後の振り分け試験では100位以内に入ってたから、進学コースに入る権利あったんだけど、大学進学はお金掛かるからって情報処理コースにしてたらしいのよね。教頭先生も復学の時に振り分け試験受けてもらって、その成績が良ければ進学コースに入れると約束してくれたんだって」
 
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「ママさん北大生を目指すのか。実現したら凄いね」
「うんうん」
 
「だけど結婚をすんなり認めてあげた両親も偉いと思うなあ」
「なんか、彼氏も彼氏のお父さんも忍ちゃんのお父さんの前で土下座して謝ったらしい」
「まあ、そうなるだろうね」
 
「でもお父さんとしても、結婚することで退学を回避できるというのがあって認めることにしたのもあったみたい。彼氏は大学生ですぐ学校辞めて働くと言ったらしいけど、それはもったいないから、卒業までは双方の親で経済的に支えてあげるから学業を全うしなさいということになったらしい」
 
「まあ親も大変だね」
「でも避妊何やってて失敗したの?」
「どうも最初付けずにやってて、射精前に付けたらしいよ」
「それはとっても危険なパターン」
「全く全く」
「ちゃんと大きくなったらすぐ付けなきゃダメ」
 
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「千里、よく彼氏とHしてるみたいだけど、最初から付けさせてる?」
「うん。大きくなったらすぐ付けてくれてるよ」
 

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今年のゴールデンウィークは4月28-30日と5月3-6日の前後半に別れている。バスケ部は学校から後半の3-6日の午前中、9時から12時まで練習する許可を取ったが、前半は休みということにした。それで千里は留萌の実家に帰るつもりで、28日のお昼頃、お土産に妹から頼まれたケーキなど買って留萌駅まで行った。
 
駅でバッタリ同じ中学出身で隣のクラスの恵香に会う。汽車の時間まであるので、自販機のジュースなど買って飲みながらしばしおしゃべりしていたら、携帯に着信がある。見ると雨宮先生である。
 
「お早うございます、雨宮先生」
「お早う、千里ちゃん。今忙しい?」
「あ、えっと田舎に帰ろうと思っていたところですが」
「あんたの田舎ってどこだっけ? 得撫(ウルップ)島?」
「えっと、あそこには人は住んでなかったと思いますが」
「それでさ、申し訳ないけど、ちょっとこちらに来てくれない?」
「こちらというと?」
「あれ?私言わなかったっけ?」
「聞いてません」
「じゃ、当ててみて」
 
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千里はため息を付いた。
 
荷物の中から愛用のバーバラ・ウォーカーのタロットの入ったポーチを取り出す。シャッフルも何もせず、いきなりポーチの中から1枚引き抜く。出たカードはワンドの4である。
 
「四方を山に囲まれた場所ですね。山梨か奈良か・・・・京都ですか?」
「ピンポーン。じゃ、今すぐこちらに来てくれる?」
「ちょっと待って下さい。私、今から帰省する所で。春休みは部活やバイトで帰省できなかったから、ちょっと顔見せろと言われてるんですよ」
 
「芸人は親の死に目にも会えないのよ」
「私、芸人なんですか〜?」
「もう、あんたはこちらの世界にどっぷり浸かってるからね。今旭川市内?」
「旭川駅です」
「だったらすぐ空港連絡バスに飛び乗って。空港に着くまでに時刻調べておくから」
「分かりました」
 
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千里は仕方無くそう返事した。
 
 
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